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問題26 圧痛が上腕骨近位前方に限局するのはどれか。
1.SLAP損傷
2.動揺性肩関節
3.リトルリーガー肩
4.上腕二頭筋長頭腱炎
解答4
解説
1.× SLAP損傷は、圧痛より動作時痛が主である。SLAP損傷とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。
2.× 動揺性肩関節は、特定の部位の痛みではない。動揺性肩関節とは、原因が外力や肩関節の軟部組織に異常がないにも関わらず、肩関節に動揺性を認める関節不安定症をいう。若年者や女性、投球やスパイクなどでオーバーアーム動作を行うスポーツ選手に多い。急性期は安静、ストレッチ、痛み止め・湿布の使用、物理療法などを行う。 回復期はリハビリテーション(筋力強化、ストレッチなど)の機能回復を行う。また、リハビリでは再発予防の指導も適宜行う。
3.× リトルリーガー肩は、圧痛より動作時痛が主である。リトルリーガー肩とは、成長過程にある少年、中学生前後では腕の骨の付け根に骨が伸びるための成長線が残っており、繰り返しの投球による牽引と回旋の力がかかることで、成長線を損傷することをいう。症状は、投球時の肩付近の痛みで発症する。痛みは投げるたびに徐々に強くなり、じっとしていても痛みを感じることがある。肩全体の痛みを訴えることが多いが、診察すると腕の付け根の外側に押すと痛い場所がある。ちなみに、野球肩は、滑液包炎、棘上筋腱炎、上腕二頭筋腱炎、肩甲上神経麻痺による棘下筋萎縮、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグ肩)など多くが含まれる。
4.〇 正しい。上腕二頭筋長頭腱炎は、圧痛が上腕骨近位前方に限局する。なぜなら、上腕二頭筋の長頭腱は、肩関節の前面を走行し、上腕骨の結節間溝という溝を通っているため。上腕二頭筋長頭腱炎とは、上腕二頭筋の長頭腱や腱鞘に炎症が起きる病気である。したがって、炎症が起きている部位(特に結節間溝)、圧痛がみられる。
問題27 伸長性収縮を評価するのはどれか。
1.スピードテスト
2.ホーキンスサイン
3.ヤーガソンテスト
4.ドロップアームサイン
解答1
解説
伸長性収縮=遠心性収縮
・遠心性収縮とは、加えられた負荷が筋張力よりも大きく、筋は収縮しているが伸びる状態のこと。これは最大張力の場合だけでなく、種々の筋張力レベルで起こる。
1.〇 正しい。スピードテストは、伸長性収縮(上腕二頭筋長頭腱)を評価する。
・Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。【方法】被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。
2.× ホーキンスサインは、インピンジメントサイン(等尺性収縮)を評価する。患者の腕を90度まで上げ、肘を90度に屈曲させ、強制的に肩関節を内旋し、痛みの有無を調べる。
3.× ヤーガソンテストは、上腕二頭筋腱炎(等尺性収縮)を評価する。患者の肘90°屈曲させ、検者は一側の手で肘を固定して、他方の手で患側手首を持つ。次に患者にその前腕を外旋・回外するように指示し、検者はそれに抵抗を加える。
4.× ドロップアームサインは、腱板損傷(等尺性収縮)を評価する。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離すテストである。
問題28 膝関節側副靭帯の第Ⅰ度損傷で正しいのはどれか。
1.機能障害は生じない。
2.靱帯線維の微小損傷である。
3.膝関節伸展位で側方動揺性がみられる。
4.膝関節屈曲5度で側方動揺性がみられる。
解答2
解説
グレードⅠ:靭帯が引き延ばされた状態
グレードⅡ:靭帯が部分断裂した状態
グレードⅢ:靭帯が完全断裂した状態
グレードⅢの「靭帯の完全断裂」の場合にはもっとも重傷で、外くるぶしが腫れて血腫が溜まり、痛みが強くなるので歩行は困難となる。
1.× 必ずしも、機能障害は、「生じない」と断言できない。なぜなら、膝関節側副靭帯の第Ⅰ度損傷は、靭帯線維のごく一部が損傷した状態であるが、損傷部位には炎症が生じているため。
2.〇 正しい。靱帯線維の微小損傷である。靭帯損傷のグレードⅠ(靭帯が引き延ばされた状態)は、アイシングとテーピングをして安静にしていれば、約1~2週間程度で回復が見込める。
3~4.× 膝関節伸展位/膝関節屈曲5度で側方動揺性がみられるのは、グレードⅡ(靭帯が部分断裂した状態)以降である。なぜなら、靭帯損傷のグレードⅠ(靭帯が引き延ばされた状態)は、炎症が起こっているものの靭帯としての機能は比較的維持されているため。
・膝関節側副靭帯は、膝関節屈曲30度程度で弛緩される。
問題29 膝関節内側側副靱帯損傷の検査でないのはどれか。
1.グラビティテスト
2.外反ストレステスト
3.グラスピングテスト
4.牽引アプライテスト
解答3
解説
内側側副靭帯とは、膝の外側からのストレス(外反ストレス)に抵抗することで、関節の内側部分が開きすぎるのを防ぐ役割を持つ靭帯である。
1.△ グラビティテストは、主に膝関節後十字靱帯損傷の検査である。両下肢を後方引き出しテストと同様の肢位とし、脛骨粗面の位置を側面から観察する。健側に比べ、患側の脛骨上端が後方に落ち込んでいる場合が陽性である。
2.〇 正しい。外反ストレステストは、膝関節内側側副靱帯損傷の検査である。外反ストレステストは、背臥位にて患側膝30°屈曲位と伸展位の両方で、検者は外反方向にゆっくりと強制する。側方動揺性や関節裂隙の開大が認められれば陽性と判断する。
3.× グラスピングテストは、膝関節内側側副靱帯損傷の検査でない。Graspingテスト(グラスピングテスト)は、腸脛靱帯炎の検査である。腸脛靭帯を圧迫してテンションをかけた状態で、膝の曲げ伸ばしで症状が再現されるかどうかで判断する。腸脛靱帯炎の原因は、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生する。
4.〇 正しい。牽引アプライテストは、膝関節内側側副靱帯損傷の検査である。アプレー圧迫テストは、半月板損傷、アプレー牽引テストは、側副靭帯損傷を疑う。アプレー牽引テストは、うつ伏せで膝を90°屈曲し、大腿部を検者の膝で固定する。下腿を上方に引っ張り上げて膝の関節包を緊張させ、疼痛が誘発されると陽性である。
問題30 前十字靱帯損傷で誤っているのはどれか。
1.非接触型損傷は女性に好発する。
2.急性期には関節血症で可動域が制限される。
3.競技レベルが低いほど発生のリスクが高くなる。
4.接触型損傷は膝関節に外反力が作用し発生する。
解答3
解説
前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。Lachman test(ラックマンテスト)/軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト)/Jerkテスト(ジャークテスト)は、膝前十字靭帯損傷を検査する。
1.〇 正しい。非接触型損傷は女性に好発する。なぜなら、これは主に体の構造や運動時の動作パターンの違い、ホルモンの影響などが要因とされているため。ちなみに、膝前十字靭帯損傷は、男性に比べ女性の受傷率が4~6倍高く、受傷機転の70~80%が損傷者単独で行う非接触型損傷という特徴がある(※引用:「女性の非接触型膝前十字靭帯に関わる因子について」J-STAGE様より)。
2.〇 正しい。急性期には、関節血症で可動域が制限される。なぜなら、前十字靭帯損傷により、膝関節内に血が溜まり、膝関節内血症(関節内血腫)、激しい痛み、腫れを伴うため。
・膝関節血症とは、関節を構成する骨、靱帯、半月板などからの出血のことをさす。
3.× 競技レベルが、「低い」ではなく高いほど発生のリスクが高くなる。なぜなら、前十字靭帯損傷は、膝に大きな負担がかかる急激な動作(急停止、方向転換、ジャンプからの着地など)を伴うため。高強度の運動をより速く、より複雑に行う機会が多い。
4.〇 正しい。接触型損傷は、膝関節に外反力が作用し発生する。典型的な発生機序として、膝が少し曲がった状態で、足が地面に固定されている時に、膝の外側から内側に向かう強い力(外反力:X脚)が作用することが挙げられる。この外反力によって、膝関節の内側にある内側側副靭帯が損傷し、さらに前十字靭帯も損傷することが多い。