問題31 膝関節90度屈曲位から下腿内旋、膝関節外反のストレスをかけながら膝関節を伸展させて、膝関節15~30度付近で脛骨の前方への亜脱臼を確認するのはどれか。
1.ピボットシフトテスト
2.ラックマンテスト
3.ブラガードテスト
4.Nテスト
解答4
解説
1.× ピボットシフトテストとは、前十字靭帯損傷の回旋不安定性現象を検査する。前十字靱帯損傷膝では膝伸展位において外反、軸圧のストレスをかけることにより脛骨は前方にずれる。そして、屈曲とともに 20°~30°付近で脛骨は突然整復位に外旋するように、即ち、後方の正常な位置に戻る。
2.× ラックマンテストは、膝関節の前十字靱帯損傷を確認する徒手検査法である。背臥位で膝関節を20~30度屈曲させて、下腿部近位端を斜め前方へ引き出す。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。
3.× ブラガードテストは、椎間板ヘルニアの検査である。下肢伸展挙上テスト(SLR)で下肢痛を生じた位置より、角度を少し減じた位置で、足関節を背屈させ、同様の下肢痛を認めたときに陽性とする。
4.〇 正しい。Nテストは、膝関節90度屈曲位から下腿内旋、膝関節外反のストレスをかけながら膝関節を伸展させて、膝関節15~30度付近で脛骨の前方への亜脱臼を確認する。
・Nテストは、膝前十字靭帯損傷を検査する。足部と下腿近位を把持し、膝関節屈曲位から腓骨頭を押し出すように下腿を内旋させ、そのまま他動的に伸張させる。膝屈曲20°付近から脛骨が前方・内旋方向へ亜脱臼すると陽性となる。
問題32 膝関節半月板損傷の所見で誤っているのはどれか。
1.腫脹
2.荷重時痛
3.ロッキング
4.裂隙部の陥凹
解答4
解説
半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある板で、内側・外側にそれぞれがある。役割として衝撃吸収と安定化をはたす。損傷した場合、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりが起こる。重度の場合は、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」が起こり、歩けなくなるほど痛みが生じる。
1.〇 正しい。腫脹/荷重時痛/ロッキングは、膝関節半月板損傷の所見である。なぜなら、半月板損傷により、膝関節の内部で炎症が生じるため。
4.× 裂隙部の陥凹は、膝関節半月板損傷の所見で誤っている。なぜなら、膝関節半月板損傷は、炎症による関節の腫れによって関節の周りが膨らんで見えるため。ちなみに、裂隙部の陥凹とは、関節の隙間が物理的にへこむ(陥凹する)ことである。
・裂隙部(関節裂隙)とは、大腿骨と脛骨の間にある関節の隙間のことである。
問題33 膝関節半月板損傷の検査はどれか。
1.マックマレーテスト
2.前方引き出しテスト
3.トンプソンテスト
4.ケンプテスト
解答1
解説
1.〇 正しい。マックマレーテストは、膝関節半月板損傷の検査である。【方法】①背臥位で膝を完全に屈曲させ片手で踵部を保持する。②下腿を外旋させながら膝を伸展させたときに痛みやクリックを感じれば内側半月の損傷、下腿を内旋させながら膝を伸展させたときに生じるならば外側半月の損傷を示唆する。
2.× 前方引き出しテストは、膝関節前十字靱帯損傷の検査である。【方法】背臥位にて患側膝90°屈曲位で、検者は下腿を前方に引く。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。
3.× トンプソンテストは、アキレス腱断裂の検査である。【方法】患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。
4.× ケンプテストは、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアの検査である。【方法】検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。
問題34 膝関節内側側副靱帯損傷の治療で誤っているのはどれか。
1.急性期にはRICE処置を行う。
2.固定を膝関節伸展位で行う。
3.動揺があれば免荷を指示する。
4.回復期には大腿四頭筋の運動療法を指示する。
解答2
解説
1.〇 正しい。急性期にはRICE処置を行う。なぜなら、膝関節内側側副靱帯損傷の症状に、著明な炎症がみられるため。炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
2.× 固定は、膝関節「伸展位」ではなく軽度屈曲位(約20~30度)で行う。なぜなら、膝関節伸展位では、膝関節内側側副靭帯が伸張ストレスが起こるため。
3.〇 正しい。動揺があれば免荷を指示する。なぜなら、動揺が認められている場合、グレードⅡ(靭帯が部分断裂した状態)以上が予想されるため。したがって、体重をかけたり、靭帯に負荷がかかると、より靭帯損傷の悪化が助長される。
4.〇 正しい。回復期には大腿四頭筋の運動療法を指示する。なぜなら、大腿四頭筋(膝関節周囲筋)は、膝関節を保護・安定させる働きがあるため。したがって、再損傷の予防や日常生活、スポーツへのスムーズな復帰につながる。
グレードⅠ:靭帯が引き延ばされた状態
グレードⅡ:靭帯が部分断裂した状態
グレードⅢ:靭帯が完全断裂した状態
グレードⅢの「靭帯の完全断裂」の場合にはもっとも重傷で、外くるぶしが腫れて血腫が溜まり、痛みが強くなるので歩行は困難となる。
問題35 下腿三頭筋肉離れで誤っているのはどれか。
1.足関節底屈の筋力が低下する。
2.マットレステストが陽性となる。
3.足関節の自動的な底屈で疼痛が増強する。
4.足関節の他動的な背屈で疼痛が増強する。
解答2
解説
肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。
【好発部位】
大腿四頭筋:太ももの前側(大腿直筋)で起こりやすい。なぜなら、股関節と膝関節の二つの関節の動きに作用する二関節筋であるため。
ハムストリングス:大腿二頭筋(筋腱移行部)で起こりやすい。
下腿三頭筋:筋線維の多くは筋腱移行部での部分損傷で、特に腓腹筋内側頭で起こりやすい。10代からみられ、各年齢層にまんべんなく発生する。受傷機序として、日常生活中やスポーツ現場では階段を下りた際や、ランニングやダッシュの途中などにふくらはぎに鋭い痛みが走り、その後の歩行が困難になるケースがよく見られる。足関節底屈の際、親指のほうが大きく力を発揮するのに適しており、親指側に力が入りやすいため、外側より内側のほうが受傷しやすい。
1.〇 正しい。足関節底屈の筋力が低下する。なぜなら、下腿三頭筋は、足関節底屈に作用する筋であるため。損傷の程度が重いほど、炎症が強くなり筋の収縮時の痛みに伴い、筋力低下は顕著になる。
2.× マットレステストは、「陽性」ではなく陰性である。なぜなら、肉離れは筋線維の損傷であり、腱の損傷や断裂ではないため。
・マットレステスト(Matles test)は、アキレス腱の損傷の検査である。【方法】患者を腹臥位で、膝関節を90度屈曲位、足関節の状態を評価する。①アキレス腱に損傷がない場合、足関節が20~30°底屈する。②アキレス腱に裂傷がある場合、足が下がり中間位となる。
3.〇 正しい。足関節の自動的な底屈で疼痛が増強する。なぜなら、下腿三頭筋は、足関節底屈に作用する筋であるため。損傷の程度が重いほど、炎症が強くなり筋の収縮時の痛みに伴い、筋力低下は顕著になる。
4.〇 正しい。足関節の他動的な背屈で疼痛が増強する。なぜなら、足関節の他動的な背屈により、下腿三頭筋が伸張ストレスがかかるため。特に、足関節を最大まで背屈させた際に痛みが強く誘発される。
下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。
腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経
ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経