第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午前36~40】

 

問題36 アキレス腱断裂の保存療法時の患者への説明で正しいのはどれか。

1.固定期間は約12週です。
2.就寝時に固定を外してもかまいません。
3.固定期間中は足趾を動かさないでください。
4.足関節の固定肢位は徐々に背屈させていきます。

解答

解説

アキレス腱断裂とは?

アキレス腱断裂は、完全断裂と部分断裂にわけられる。したがって、断裂の程度に応じて保存療法と手術療法のどちらかに選択される。
【保存療法の治療】最大6週間、アキレス腱にストレスが加わらないようにする。大腿中央から足MP関節手前まで副子固定を行い、膝関節:90°屈曲位、足関節:最大底屈位または自然下垂位にする。このときに、踵部は、アキレス腱断裂の固定において圧迫がかかりやすい部位である。固定装置が踵部に適切な圧力を与えることで、アキレス腱の治療に必要な安定性が確保されるが、その反面、皮膚障害が生じやすい。

1.× 固定期間は、「約12週」ではなく最大6週間である。アキレス腱にストレスが加わらないようにする必要がある。したがって、膝関節:90°屈曲位、足関節:最大底屈位または自然下垂位にする必要がある。

2.× 就寝時にも、固定を「外してはならない」。なぜなら、寝ている間に無意識に足関節が動いてしまい、再断裂のリスクがあるため。医師の指示がない限り、就寝時も含めて原則として固定は外してはならない。

3.× 固定期間中は足趾を「動かすよう指導する」。なぜなら、足趾を動かすことで、足部の血行を促進することができるため。

4.〇 正しい。足関節の固定肢位は、徐々に背屈させていきます。なぜなら、癒合したアキレス腱に少しずつ牽引刺激を与え、本来の長さや弾力性を取り戻し、機能的な回復を促すため。

 

 

 

 

 

問題37 足関節外側靱帯損傷の足関節固定肢位はどれか。

1.背屈10度
2.背屈0度
3.底屈10度
4.底屈20度

解答

解説

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

1.× 背屈10度/底屈10度/底屈20度は、足関節外側靱帯損傷の足関節固定肢位とはいえない。
なぜなら、靭帯に緊張を加えることになるため。

2.〇 正しい。背屈0度は、足関節外側靱帯損傷の足関節固定肢位である。なぜなら、背屈0度は、損傷した靭帯への負担を最小限にしつつ、靭帯が適切な長さで癒合できるため。

 

 

 

 

 

問題38 下腿骨骨幹部骨折で起こりやすいのはどれか。

1.過成長
2.骨壞死
3.コンパートメント症候群
4.ズデック(Sudeck)骨萎縮

解答

解説

下腿骨骨幹部骨折の介達外力

高エネルギー損傷で発生する。脛骨中下1/3内部骨析が多い(斜骨折、らせん状骨折になりやすい。横骨折は、後方凸変形となりやすい。開放骨折となりやすい。斜骨折の骨折線は前内方から後外上方へ走る。生じやすい後遺症として、①遅延治癒(偽関節)、②変形治癒:反張下腿、③神経損傷:腓骨神経麻痺(尖足位)、④筋萎縮、慢性浮腫などである。

【固定】膝関節30~40度屈曲位で行う。ギプス固定は反張位に注意する。金属副子固定は腓骨頭周囲に綿花を当てる。固定は、大腿近位部から足MP関節まで行う。

1.× 過成長は、小児骨折の治癒機転に伴う血流の増加によって、骨端軟骨板での成長が促進され起こる。
・過成長とは、主に成長期にある子供が腕や足の長い骨を骨折した後に、骨折した骨が健側の骨よりも長く成長することがある現象である。

2.× 骨壞死は、大腿骨頭壊死や舟状骨壊死などに起きやすい。
・骨壊死とは、骨への血液供給が途絶えることで骨組織が死んでしまう病気である。

3.〇 正しい。コンパートメント症候群は、下腿骨骨幹部骨折で起こりやすい。なぜなら、下腿は複数のコンパートメントに分かれており、下腿骨骨折、特に脛骨の骨折では、骨折部からの出血や周囲組織の腫れによってコンパートメント内の圧力が高まりやすいため。
・コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢動脈の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

4.× ズデック(Sudeck)骨萎縮は、末梢部の骨折(特に橈骨遠位端骨折)に起きやすい。
・Sudeck骨萎縮とは、骨折などの外傷、または、その手術の後に、急速な自発痛、運動痛、浮腫とともに著明な骨萎縮をきたす場合の骨変化のことである。骨折に合併した自律神経系の血管運動神経失調によって、末梢血管の血流不全から起こるものといわれている。Sudeck骨萎縮(ズデック骨萎縮)は、CRPS typeⅠに分類される。

阻血性骨壊死とは?

阻血性骨壊死とは、骨壊死または骨梗塞ともいい、血液供給が阻害されることによりおこる骨組織の壊死である。 早期段階では、症状がみられない場合がある。 悪化していくと関節の痛みが増し、動きが制限されることがある。骨壊死が最も起こりやすい部位は、大腿骨頭、膝関節、肩関節の上腕骨頭などである。 男性および30~50歳で起こることが最も多く、しばしば両股関節や両肩関節に起こる。危険因子には、骨折、関節脱臼、アルコール依存症、高用量ステロイドの使用などがあげられる。また、この症状は、明確な理由が無くても発生する場合もある。

 

 

 

 

 

問題39 卷軸包帯のサイズの組合せで正しいのはどれか。

1.4裂:約10cm
2.5裂:約7.5cm
3.6裂:約6cm
4.8裂:約5cm

解答or(複数の選択肢を正解として採点)
理由:複数の選択肢が正解と考えられるため。

解説

包帯の幅(サイズ)

2裂:並幅木綿(幅約28~30cm)を2等分したもの。約14~15cmほど。
3裂:約9~10cm
4裂:約7~7.5cm
5裂:約5.5~6cm
6裂:約4.5~5cm

1.× 4裂は、「約10cm」ではなく約7~7.5cmである。

2.× 5裂は、「約7.5cm」ではなく約5.5~6cmである。

3.△ 正しい。6裂:約6cm
6裂は、約4.5~5cmである。

4.△ 正しい。8裂:約5cm
8裂は、約3.5cmである。

 

 

 

 

 

問題40 太さが一定でない部位に適した包帯法はどれか。

1.亀甲帯
2.折転帯
3.蛇行帯
4.螺旋帯

解答

解説
1.× 亀甲帯は、8字帯ともいい、関節部を中心に8の字に交差させながら巻いていく方法である。 屈曲・伸展がある程度可能なので、肘関節や膝関節、足関節などの被覆(保護)に用いる。

2.〇 正しい。折転帯は、太さが一定でない部位に適した包帯法である(※麦穂帯も適応である)。
・折転帯は、前腕、下腿など太さが変化する部位に、包帯を折り返しながら巻く方法である。折り返すことで包帯が解けにくくなり、広範囲に巻くことができる。
・麦穂帯は、手関節、足関節、股関節、肩といった屈曲する部位、下腿などの太さが一定でない部位に対して行われる方法である。8の字を描くように交差させながら巻く。関節部分をきれいに覆うことができるだけでなく、各関節の良肢位を保ったまま固定できる。

3.× 蛇行帯は、骨折部位のギプスシャーレや副え木を固定するために用いられ、包帯を重ねず、等間隔を空けて巻く方法である。骨折や脱臼などの治療において一時的な固定を行う際に使用される。弾性包帯のような伸縮性のある包帯では、ギプスシャーレや副え木をしっかり固定することが難しいため、伸縮性が低い包帯が用いられる。

4.× 螺旋帯は、包帯を1/2~1/3程度重ねながら、らせん状に巻く方法である。広範囲の保護・固定をする場合や、ガーゼの保護や副え木を固定する場合などに用いられる。

 

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