第20回(H24年)柔道整復師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101.46歳の男性。3年前から左手に軽いしびれを感じるようになり、最近、細かい指先での作業が困難となっている。左肘関節は約20度外反しているが屈伸運動は正常であった。なお、6歳頃、左上腕骨外顆骨折の既往があり、この損傷による後遺症と考えられた。
 手指の機能障害はどれか。

1.小指DIP・PIP関節の完全伸展不能
2.小指MP関節の完全伸展不能
3.中指掌側面の感覚障書
4.母指の対立運動不能

解答

解説

本症例のポイント

・46歳の男性(6歳頃、左上腕骨外顆骨折)。
・3年前:左手に軽いしびれを感じる。
・最近:細かい指先での作業が困難。
左肘関節は約20度外反しているが屈伸運動は正常。
→本症例は、小児期の上腕骨外顆骨折後の外反肘→遅発性の尺骨神経麻痺(肘部管症候群)を来していると考えられる。尺骨神経支配の骨間筋・尺側虫様筋の麻痺により小指・環指のIP関節伸展ができなくなる(鉤爪変形)。

・外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘関節伸展位において伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。尺骨神経麻痺では、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

1.〇 正しい。小指DIP・PIP関節の完全伸展不能となる。本症例は、小児期の上腕骨外顆骨折後の外反肘→遅発性の尺骨神経麻痺(肘部管症候群)を来していると考えられる。尺骨神経支配の骨間筋・尺側虫様筋の麻痺により小指・環指のIP関節伸展ができなくなる(鉤爪変形)。

2.× 小指MP関節の完全伸展不能は、主に橈骨神経麻痺によって起こる。
・橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。

3~4.× 中指掌側面の感覚障書/母指の対立運動不能は、主に正中神経麻痺によって起こる。
・正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。特徴的な症状として、①猿手変形(母指対立障害による)、②母指球筋の萎縮手指の感覚障害(母指~環指橈側)がみられる。ちなみに、ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

 

 

 

 

 

問題102.9歳の女児。一輪車から転落し左手の手掌を衝いて倒れ、左肘部に疼痛を訴えて来所した。腫脹は肘関節全体にみられ、自動運動は困難である。近医で診察を依頼するため、応急処置として三角巾で提肘することにした。
 三角巾のあて方で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.a
2.b
3.c
4.d

解答1・4

解説

本症例のポイント

・9歳の女児(左肘部に疼痛)。
・一輪車から転落:左手の手掌を衝いて倒れた。
・腫脹は肘関節全体にみられ、自動運動は困難。
→三角巾とは、正方形の布を対角線に2つ折りしたものである。布が大きく患部を広く覆うことができるため、応急処置として患部を保護・固定する際に用いられる。包帯を巻き終わった後は、①循環障害を起こしていないか、②可動性は認められるかなどに配慮する。

(図引用:横手市HPより)

1.4.〇 正しい。a/dが三角巾のあて方となる。なぜなら、肘関節を軽度屈曲した状態で、腕全体を安定させることができるため。これにより、筋緊張が少なく痛みが最小限になり、腫脹の悪化も防げる。

2.× bは、三角巾のあて方が、肘関節まで覆いきれていない。また、肘の位置が高く、肘関節過屈曲となり、疼痛を誘発しやすい

3.× cは、三角巾の向きが不適切である。肘の固定性も悪く、三角巾が腕を支えきれない。

 

 

 

 

 

問題103.15歳の男子。柔道で第2中手骨骨幹部を骨折した。整復を行い、手関節軽度伸展位で示指をMP関節30°・PIP関節90°・DIP関節45°屈曲位でアルミ副子で3週固定した。固定除去後、指を屈曲させると、示指が中指に重なっていた。
 この重なりを予防する初期の対応で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.中指とともに固定する。
2.手関節を屈曲位で固定する。
3.MP関節を伸展位で固定する。
4.指先を舟状骨結節に向けて固定する。

解答1・4

解説

本症例のポイント

・15歳の男子(第2中手骨骨幹部骨折)。
・整復後:手関節軽度伸展位で示指をMP関節30°・PIP関節90°・DIP関節45°屈曲位でアルミ副子で3週固定。
・固定除去後:指を屈曲させると、示指が中指に重なっていた(オーバーラッピングフィンガー)。
→オーバーラッピングフィンガーに対する処置をあげられるようにしよう。
・オーバーラッピングフィンガーとは、手の中手骨・基節骨を骨折した際に回旋転位(捻転転位)を残してしまった時に見られる変形治癒のことをいう。指の骨折が原因で指が重なる変形が残ってしまう状態である。

1.〇 正しい。中指とともに固定する。なぜなら、第2中手骨(示指の中手骨)は、中指と連動して動くため。したがって、隣指と一緒に固定することで、回旋変形(オーバーラッピングフィンガー)を防ぐことができる。

2.× 手関節を「屈曲位」ではなく軽度伸展位で固定する。なぜなら、手関節を屈曲位で固定すると、指屈筋が短縮位となり、関節可動域制限を起こしやすくなるため。

3.× MP関節を「伸展位」ではなく屈曲位で固定する。なぜなら、MP関節を伸展位で固定すると、側副靱帯が短縮して拘縮(伸展拘縮)を起こすため。

4.〇 正しい。指先を舟状骨結節に向けて固定する。なぜなら、指先が舟状骨結節(母指基部の橈側隆起)を向くように固定することで、生理的な回旋軸を保つことができるため。

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

 

 

 

 

 

問題104.35歳の男性。7目前、重量物を持ち上げた際、強い腰部および右下肢痛が出現し、歩行困難となった。現在、脊柱起立筋部に緊張感があるものの、棘突起の叩打痛もなく、腰痛は消失し、歩行の異常はみられない。体幹を右回旋位で伸展させると右大腿後面から下腿後面にかけて放散痛がみられた。右足部外側の感覚障害、足母指底屈筋力の低下が認められた。膝・足クローヌスは認められなかった。
 他に認められる右下肢の所見はどれか。

1.FNSテスト陽性
2.膝蓋腱反射亢進
3.アキレス腱反射減弱
4.バビンスキー反射陽性

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の男性。
・7目前、重量物を持ち上げた際:強い腰部および右下肢痛歩行困難
・現在、脊柱起立筋部に緊張感があるものの、棘突起の叩打痛もなく、腰痛は消失し、歩行の異常はみられない。
・体幹を右回旋位で伸展させると、右大腿後面から下腿後面にかけて放散痛がみられた(ケンプテスト陽性)。
右足部外側の感覚障害足母指底屈筋力の低下が認められた。
・膝・足クローヌスは認められなかった。
→本症例は、L5/S1腰椎椎間板ヘルニアが疑われる。腰椎椎間板ヘルニアは、障害された神経根によって症状が異なるため、症状によってどの神経根が障害されているか判断できるようにしておこう。(詳細は、解説下を参照)。
・Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。

1.× FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。

2.× 膝蓋腱反射亢進は、上位運動ニューロン障害で見られる。膝蓋腱反射が「亢進」ではなく低下(または消失)の場合、L3・L4の神経根障害でみられる。
・膝蓋腱反射は、単シナプス反射で大腿四頭筋の筋紡錘による伸張反射である。膝蓋腱反射の【中枢】L2~L4(大腿神経)、【検査法】背臥位検査:患者を背臥位にし両膝を軽く屈曲し立てる。検者は前腕をその膝の下に入れて下肢を支える。または、一側の下肢を膝立て位にして、その膝の上に他側の膝を乗せる。膝蓋腱部を触知してその腱部を叩打する。【判定】膝関節の伸展が起これば反射出現(+)

3.〇 正しい。アキレス腱反射減弱は、他に認められる右下肢の所見である。なぜなら、本症例は、L5/S1腰椎椎間板ヘルニアが疑われるため。
・L5‒S1間(支配神経根S1)の椎間板ヘルニアの場合、アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下がみられる。

4.× バビンスキー反射陽性の場合、錐体路(上位運動ニューロン)障害の所見が疑われる。末梢神経根レベルの障害では、バビンスキー反射は出現しない。
・バビンスキー反射とは、下肢の病的反射で、皮膚への刺激によって母趾がゆっくりと背屈すれば陽性(母趾現象または伸展足底反射)ときには他の4指が開く(開扇現象)。正常では足底反射より母趾屈曲が起こる。

腰椎椎間板ヘルニアとは?

椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

問題105.62歳の男牲。10目前、バス乗車中に吊革を右手で力を入れて持っていたところ、バスが急停車した瞬間に鋭い疼痛が肩に生じた。3日で疼痛は軽快したが、肩の挙上が不自由なため来所した。大結節部に圧痛がみられる。
 考えられるのはどれか。

1.腱板損傷
2.肩鎖関節脱臼
3.ベネット損傷
4.肩関節脱臼

解答

解説

本症例のポイント

・62歳の男牲。
・10目前:バス乗車中に吊革を右手で力を入れて持っていたところ、バスが急停車した瞬間に鋭い疼痛が肩に生じた。
・3日で疼痛は軽快したが、肩の挙上が不自由なため来所した。
大結節部に圧痛がみられる。
→ほかの選択肢が消去できる理由も上げられるようにしよう。

1.〇 正しい。腱板損傷が考えられる。なぜなら、腱板断裂(特に棘上筋腱)は、大結節圧痛と挙上障害が生じるため(代表的な所見)。
・腱板損傷とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱が損傷・断裂していることをいう。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。好発年齢は、40歳以上の男性であり、腱板の上にある滑液包が強い炎症をおこし腫れたり、充血したり、水がたまったりする。

2.× 肩鎖関節脱臼より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の疼痛部位と一致しないため。肩鎖関節脱臼では鎖骨遠位端部に圧痛・変形が出る。
・肩鎖関節脱臼とは、肩鎖関節がぶつけるなどのけがで靱帯を損傷し、病状が重くなると骨がずれてしまっている状態をさす。肩鎖関節脱臼全体の2/3は経過を見るのみで治る軽症であるが、全体の1/3では手術が必要になる。主な合併症は肩の不安定性や慢性的な痛みなどである。

3.× ベネット損傷より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の疼痛部位と一致しないため。ベネット損傷では、肩関節後面に疼痛が出る。
・ベネット損傷とは、軟部組織損傷ともいい、投球動作により上腕三頭筋長頭や肩関節後方関節包に繰り返しの牽引力がかかり起こる骨膜反応である。野球暦の長い選手、特に投手に多く、上腕三頭筋長頭や後方下関節包の拘縮を合併する。炎症を伴うため、疼痛があるときは投球を中止し、初期は、冷罨法、固定、提肘により運動を制限する。疼痛軽減後は、ストレッチ運動や筋力強化訓練を行う。

4.× 肩関節脱臼より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の疼痛部位(症状)と一致しないため。肩関節脱臼の場合、肩関節挙上だけでなく、他の方向の肩の運動も困難なことが多いため。

 

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