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問題91.手指部の脱臼で正しいのはどれか。
1.母指MP関節水平脱臼はZ字型の変形を呈する。
2.母指MP関節背側脱臼の整復は長軸末梢牽引する。
3.示指MP関節脱臼は井桁構造の中に中手骨頭がはまり込む。
4.PIP関節背側脱臼はボタン穴変形を後遺する。
解答3
解説
1.× Z字型の変形を呈するのは、「母指MP関節水平脱臼」ではなく母指MP関節垂直脱臼である。母指が外転・伸展強制、同MP関節に強い疼痛が出現する。整復方法として、①母指MP関節過伸展、②基節骨を第1中手骨長軸方向に押圧、 同時に第1中手骨を中枢方向へ牽引する。
2.× 母指MP関節背側脱臼の整復は長軸末梢牽引する「のは禁忌である」。なぜなら、単純に牽引するとさらに掌側板が中手骨頭の背側に引っかかって嵌頓するため。一般的に、圧迫する方向に整復する。
3.〇 正しい。示指MP関節脱臼は井桁構造の中に中手骨頭がはまり込む。なぜなら、示指MP関節脱臼では脱臼時に掌側板・虫様筋腱・深指屈筋腱・浅指屈筋腱などが中手骨頭の周囲で交差して格子状(井桁状)に絡み合い、骨頭を締めつけて嵌頓状態となるため。
4.× 必ずしも、PIP関節背側脱臼は、ボタン穴変形を後遺する「とはいえない」。
・ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。関節リウマチや正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。
・PIP関節背側脱臼とは、背側脱臼が多く、掌側板の断裂や中節骨基部掌側顆部骨折を伴う。簡単に整復された場合や裂離した骨片が大きくなく転位や回転がほとんどない場合は保存的に治療するが、それ以外は早期に手術を行う。長軸方向への牽引は整復障害を助長するため行わない。背側脱臼では、掌側板損傷を合併しやすい。
【種類】
①背側脱臼:掌側板損傷する
②掌側脱臼:正中索損傷する(ボタン穴変形)
③側方脱臼:側副靱帯損傷する(側方動揺性)
【固定法】
①DIP・PIP関節:軽度屈曲位
②正中索損傷の場合:PIP伸展位
③側副靭帯損傷の場合:隣接指間にパットを挟み固定
※示指PIP関節背側脱臼で正中索損傷を合併している稀な症例であるが、基本的に正中索損傷する(ボタン穴変形)に対する固定方法を行う。
問題92.股関節後方脱臼の整復障害となりにくいのはどれか。
1.関節包裂傷部の狭小
2.大腿骨頭靭帯断裂による不安定症
3.関節窩後縁部骨折による臼蓋の損傷
4.大腿骨骨頭骨折片の関節内介在
解答2
解説
股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。
【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)
【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など
整復障害は、軟部組織や骨片の介在、ボタン穴機構、骨折の合併などがあげられる。
1.× 関節包裂傷部の狭小は、整復障害の要因である。なぜなら、裂隙が小さい(狭小)と、整復時に骨頭が裂隙を通過できず、整復が物理的に妨げられるため。
・股関節後方脱臼では関節包の後方部が裂け、その裂隙を通って大腿骨頭が脱臼する。
2.〇 正しい。大腿骨頭靭帯断裂による不安定症は、股関節後方脱臼の整復障害となりにくい。なぜなら、大腿骨頭靭帯の断裂により、大腿骨の可動範囲が広くなるため。ただし、整復後の不安定性(再脱臼リスク)が高まる。
・大腿骨頭靱帯とは、大腿骨頭と臼蓋を連結しているため股関節内転を制限し、脱臼の予防に働く靭帯である。大腿骨頭靱帯(大腿骨頭)の主要な血液供給源の動脈は、大腿骨頭靭帯動脈である。この動脈は閉鎖動脈から分岐される。大腿骨頭靭帯動脈の特徴として、細い血管であるため、栄養血管としての役割は小さい。
3.× 関節窩後縁部骨折による臼蓋の損傷は、整復障害の要因である。なぜなら、関節窩後縁部骨折が伴うと、骨片が関節内に介在したり、骨片が骨頭をはさみ込み整復が困難となるため。
4.× 大腿骨骨頭骨折片の関節内介在は、整復障害の要因である。なぜなら、大腿骨骨頭骨折片の関節内介在することで、整復操作をしても骨折片が抵抗を与えるため。
問題93.膝関節前方脱臼で正しいのはどれか。
1.膝関節屈曲位で発生するものが多い。
2.不全脱臼となることが多い。
3.下腿部の血行障害を合併するものが多い。
4.膝蓋骨骨折に合併することが多い。
解答3
解説
膝関節脱臼には、一般的に動脈損傷または神経損傷が伴う。膝関節脱臼は肢の温存を脅かす。この脱臼は,医学的評価がなされる前に自然に整復する場合がある。診断は通常,X線による。血管および神経学的評価が必要であり,血管損傷はCT血管造影により同定される。非観血的整復および血管損傷の治療を直ちに行う。(※引用:「膝関節(脛骨大腿関節)脱臼」MSDマニュアル様より)
【原因】膝関節過伸展の強制による介達外力、脛骨近位端に後方からまたは大腿骨遠位端に前方からの直達外力によって生じる。膝関節脱臼の中で最も頻度が高い。【固定】軽度膝関節屈曲位。
1.× 膝関節屈曲位で発生するものが多いのは、膝関節後方脱臼である。ちなみに、膝関節前方脱臼は、膝関節伸展位で発生することが多い。
2.× 「不全脱臼」ではなく完全脱臼となることが多い。なぜなら、膝関節は強固な靭帯(前・後十字靭帯、側副靭帯)で支持されており、脱臼が起こるにはこれらが完全に断裂するほどの強大な外力が必要であるため。
・不全脱臼とは、骨の一部を関節に残したまま、骨が関節からずれた状態のことをいう。 不全脱臼は「亜脱臼」と呼ばれることも多く、一度脱臼を起こした部位に衝撃が加わって起こる症状である。
3.〇 正しい。下腿部の血行障害を合併するものが多い。なぜなら、膝窩動脈の損傷が損傷されることがあり、血行障害が生じることがあるため。膝関節脱臼により膝窩動脈が損傷することが多いため、常に足関節上腕血圧比を測定し、CT血管造影を施行する。
4.× 膝蓋骨骨折に合併することが多いのは、膝関節後方脱臼である。
・膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。
問題94.腋窩神経の絞扼を助長するのはどれか。
1.SLAP損傷
2.バンカート(Bankart)損傷
3.ヒル-サックス(Hill-Sachs)損傷
4.ベネット損傷(Bennett)損傷
解答4
解説
1.× SLAP損傷とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。
2.× バンカート(Bankart)損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。
3.× ヒル-サックス(Hill-Sachs)損傷とは、肩関節が脱臼した際に、上腕骨頭の後外側が、肩甲骨の角に押し付けられる力がかかり、陥没(圧迫)骨折を起こした状態をいう。
4.〇 正しい。ベネット損傷(Bennett)損傷は、腋窩神経の絞扼を助長する。なぜなら、肩関節後下方を腋窩神経・後上腕回旋動脈が通過するため(そこを慢性的に圧迫・絞扼する)。
・Bennett損傷(ベネット損傷)とは、軟部組織損傷ともいい、投球動作により上腕三頭筋長頭や肩関節後方関節包に繰り返しの牽引力がかかり起こる骨膜反応である。野球暦の長い選手、特に投手に多く、上腕三頭筋長頭や後方下関節包の拘縮を合併する。炎症を伴うため、疼痛があるときは投球を中止し、初期は、冷罨法、固定、提肘により運動を制限する。疼痛軽減後は、ストレッチ運動や筋力強化訓練を行う。
問題95.むちうち損傷で最も多いのはどれか。
1.頸椎捻挫型
2.神経根症状型
3.頸部交感神経症候群型
4.脊髄症状型
解答1
解説
1.〇 正しい。頸椎捻挫型は、むちうち損傷で最も多い。なぜなら、むちうち損傷の多くは、追突などによる頸部の過伸展・過屈曲で発生し、この際に損傷を受けるのは、主に頸椎周囲の筋・靭帯・関節包(特に椎間関節)といった軟部組織であるため。
・頸椎捻挫型とは、頸部の筋・靭帯の損傷による局所症状にとどまり、肩が重い、首の筋肉の痛み、熱感の症状にとどまる。
2.× 神経根症状型とは、神経根の圧迫または牽引によって、腕の強い痛み、知覚異常がみられる。
・むちうちの中では約10%前後にとどまる。
3.× 頸部交感神経症候群型(バレ・リーウー症状)とは、事故のあと頚部交感神経が刺激されることによって、後頭部痛、めまい、耳鳴、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状のことをいう(発生自体はまれ)。バレー・リュー症候群、自律神経失調症、外傷性頚部症候群などと呼ぶことがある。
4.× 脊髄症状型とは、下肢のしびれ感や知覚異常、麻痺などを呈する(発生自体は非常にまれ)。
国試オタク 
