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問題56.第6胸髄レベルの脊髄損傷で生じるのはどれか。
1.ホルネル徴候
2.上腕内側の感覚障害
3.横隔膜の麻痺
4.肋間筋の麻痺
解答4
解説
交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。
交感神経遠心路には、3つのニューロンがあり、そのいずれが障害されても発症する。交感神経遠心路は、①視床下部→脳幹→脊髄毛様脊髄中枢に至る。その後、②節前ニューロンは、肺尖部を通り上行し,上頸部交感神経節で終わる。③節後ニューロンは、顔面の血管、発汗神経は外頸動脈に沿って走り、一方眼瞼、眼球へのそれは内頸動脈に沿って頭蓋内にもどり各効果器を支配する。
①の領域の障害の代表例は、Wallenberg症候群。
②の領域の障害は、直接の外傷、頸胸部リンパ腺腫大による圧迫、腫大した甲状腺の圧迫、頸部胸部動脈瘤、癌の転移、頸部膿瘍の圧迫、肺尖部肋膜癒着などにより生じる。
③の領域の障害は、内頸動脈系の動脈瘤、閉塞などにより生じる。
1.× ホルネル徴候は、頸髄(特にC8〜Th1)レベルの交感神経遠心路の障害によって生じる。
2.× 上腕内側の感覚障害は、第1〜2胸髄(Th1~2)レベルの障害によって生じる。
3.× 横隔膜の麻痺は、頸髄(C3〜C5)レベルの障害によって生じる。
・横隔膜の【起始】胸郭下口の全周で、腰椎部、肋骨部、胸骨部の3部からなる。①腰椎部は、内側脚:第1~4腰椎体、外側脚:内側弓状靭帯と外側弓状靭帯、②肋骨部は、第7~12肋軟骨(肋骨弓部)の内面、③胸骨部は、剣状突起。一部は腹横筋腱膜の内面、【停止】腱中心、【作用】その収縮によって円蓋を下げ、胸腔を広げる(吸息)、【支配神経】横隔神経と副横隔神経(30~40%で欠如)である。
4.〇 正しい。肋間筋の麻痺は、第6胸髄レベルの脊髄損傷で生じる。なぜなら、肋間筋は胸髄の前枝(主にTh1〜Th11)から支配を受けているため。
①安静吸気:横隔膜・外肋間筋。
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。
問題57.コラーゲンの異常が原因となるのはどれか。
1.軟骨無形成症
2.骨形成不全症
3.モルキオ症候群(Morquio)
4.大理石骨病
解答2
解説
1.× 軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。
2.〇 正しい。骨形成不全症は、コラーゲンの異常が原因となる。
・骨形成不全症とは、「骨が非常にもろい」という特徴を持つ、遺伝性の病気である。骨形成不全症の90%以上の症例では、結合組織の主要な成分であるⅠ型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1,COL1A2)により、質的あるいは量的異常が原因で発症するとされている。症状として、骨折のしやすさ、骨の変形などの骨の弱さに加え、成長障害、目の強膜が青い、歯の形成が不十分、難聴、関節皮膚が伸びやすい、背骨の変形による呼吸の障害、心臓の弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。
【治療】①内科的治療(骨粗鬆症に使用されるビスホスホネート製剤投与)、②外科的治療(骨折した際に外科的な骨接合術、四肢の変形に対して骨切り術、四肢の長い骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入術、背骨の変形に対する矯正固定術など)が行われる。
3.× モルキオ症候群(Morquio)とは、ムコ多糖症IV型とも呼ばれ、特定の酵素の欠損により、細胞内にムコ多糖(ケラタン硫酸など)が蓄積し、骨、関節、心臓、気道などに進行性の障害を引き起こす希少な遺伝性疾患である。主な症状として、短胴性低身長、脊柱側弯・後弯、X脚、関節の異常(過伸展・硬直)などがみられる。
4.× 大理石骨病とは、破骨細胞という骨を溶かす役割をする細胞の機能が障害され、全身の骨がびまん性に硬くなる病気である。臨床症状は重症なものから軽症まで極めて多彩で、重症型(新生児型・乳児型)、中間型、遅発型などに大別され、それぞれの治療や予後は大きく異なる。重症型では貧血、出血傾向、感染しやすいなどの骨髄機能不全症状や著しい成長障害、脳神経障害、水頭症、低カルシウム血症などが早期より発症し、長期生存できない場合もある。
問題58.骨粗鬆症で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.椎体の圧迫骨折が生じやすい。
2.骨吸収が骨形成に比べ減少している。
3.骨量の減少は骨皮質に著しい。
4.力学的負荷が骨量維持に重要である。
解答1・4
解説
骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。
1.〇 正しい。椎体の圧迫骨折が生じやすい。圧迫骨折は特に胸腰椎に起きやすく、ほかにも大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。これは、海綿骨が多く構成しており、骨粗鬆症では海綿骨の骨梁が細く・減少するため。
2.× 逆である。「骨形成」が「骨吸収」に比べ減少している。言い換えると、骨吸収が骨形成を上回っている。なぜなら、破骨細胞の活動が優位になることが骨量減少の主因であるため。
・破骨細胞とは、造血幹細胞から分化した細胞が融合して多核巨細胞になったものである。骨再構築の際の骨吸収の役割を担っている。
3.× 骨量の減少は、「骨皮質」ではなく海綿骨に著しい。骨には、①外側(皮質骨)と②内側(海綿骨)がある。
4.〇 正しい。力学的負荷が骨量維持に重要である。これをウォルフの法則(Wolffの法則)という。骨はそれに加わる力に抵抗するのに最も適した構造を発達させる。
問題59.デュシェンヌ(Duchenne)型進行性筋ジストロフィーで正しいのはどれか。2つ選べ。
1.伴性劣性遺伝である。
2.20歳代に発症する。
3.筋力低下は四肢近位筋に強い。
4.痙性歩行がみられる。
解答1・3
解説
Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。
1.〇 正しい。伴性劣性遺伝(X連鎖劣性遺伝)である。
・X連鎖劣性遺伝とは、変異遺伝子が劣性遺伝子のX染色体にあるものである。
2.× 「20歳代」ではなく幼児期(2〜5歳)に発症する。歩行開始後まもなく転倒しやすくなる・走れない・階段昇降困難などが最初に現れる。
3.〇 正しい。筋力低下は四肢近位筋に強い。なぜなら、ジストロフィン異常により筋線維が壊れやすく、まずは大腿・骨盤周囲の大きな筋が影響を受けやすいため。
4.× 「痙性歩行」ではなくトレンデレンブルグ歩行がみられる。なぜなら、大腿・骨盤周囲の大きな筋力が低下しやすいため。
・トレンデレンブルグ歩行とは、動揺歩行やアヒル歩行ともいい、肢帯筋の筋力低下(中殿筋の筋力低下やDuchenne型筋ジストロフィー)で起こる。
・痙性歩行とは、ハサミ歩行ともいい、膝を伸ばしたまま振り出す歩行である。上位運動ニューロン障害にみられる。
問題60.関節リウマチの手指の所見でないのはどれか。
1.尺側偏位
2.ボタン穴変形
3.鷲手変形
4.スワンネック変形
解答3
解説
①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。
1.〇 尺側偏位は、関節リウマチの手指の所見である。
・尺側偏位とは、手関節が尺骨側(手の小指側)に偏位する変形をいう。
2.〇 ボタン穴変形は、関節リウマチの手指の所見である。
・ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。
3.× 鷲手変形は、関節リウマチの手指の所見でない。
・鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。
4.〇 スワンネック変形は、関節リウマチの手指の所見である。
・スワンネック変形とは、MP関節屈曲、PIP関節過伸展、DIP関節屈曲する変形をいう。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)
国試オタク 