第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問題36.疾患とホルモンとの組合せで正しいのはどれか。

1.クレチン症:成長ホルモン
2.尿崩症:抗利尿ホルモン
3.アジソン(Addison)病:甲状腺ホルモン
4.粘液水腫:上皮小体ホルモン

解答

解説
1.× クレチン症は、「成長ホルモン」ではなく甲状腺ホルモンが関与する。
・クレチン症とは、先天性の甲状腺機能低下症であり、独特の顔貌と低身長、知能低下を来たす。症状として、元気がない、体重が増えない、かすれた声、手足が冷たい、むくみ、皮膚がカサカサ、黄疸が長引く、出べそが目立つ、舌がぼってり大きい、小泉門(後頭部の骨の き間)が大きいなどがみられる。

2.〇 正しい。尿崩症:抗利尿ホルモン
・尿崩症とは、多尿 (3L/日以上)を呈する状態である。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。多尿・口渇・多飲を主徴とする。
・バソプレシン(ADH:抗利尿ホルモン )とは、下垂体後葉から分泌され、水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起きる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

3.× アジソン(Addison)病は、「甲状腺ホルモン」ではなく副腎皮質ホルモンが関与する。
・アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

4.× 粘液水腫は、「上皮小体ホルモン」ではなく甲状腺ホルモンが関与する。
・粘液水腫とは、甲状腺機能低下症が悪化し、ホルモンが極端に減少している状態である。甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

 

 

 

 

 

問題37.糖尿病の細小血管障害でないのはどれか。

1.腎症
2.昏睡
3.網膜症
4.末梢神経障害

解答

解説
1.〇 正しい。腎症(糖尿病性腎症)は、代表的な細小血管障害である。なぜなら、長期の高血糖により腎臓の糸球体毛細血管が硬化・肥厚し、ろ過機能が低下するため。
・糖尿病性腎症とは、糖尿病の合併症で、糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症する。悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となる。糖尿病性腎症の場合、徐々に病気が進行するため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要である。糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%と最も多い割合を占めている。

2.× 昏睡は、糖尿病の細小血管障害でない。昏睡は、糖尿病の急性代謝異常による症状である。原因は高血糖(高浸透圧性昏睡・ケトアシドーシス)または低血糖である。
・昏睡とは、覚醒させることができず、閉眼した状態が続く無反応状態である。

3.〇 正しい。網膜症(糖尿病性網膜症)は、代表的な細小血管障害である。なぜなら、高血糖により網膜毛細血管が閉塞・透過性亢進し、出血や新生血管形成が起こるため。
・糖尿病性網膜症とは、網膜の血管障害により生じ、進行すると視力低下をきたす。また、症状は不可逆性であり、進行した糖尿病網膜症は改善されない。わが国における失明原因の上位を占めている。

4.〇 正しい。末梢神経障害(糖尿病性神経障害)は、代表的な細小血管障害である。なぜなら、高血糖による血管内皮障害により、神経栄養が障害され、末梢神経の代謝異常と虚血が生じるため。
・糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する末梢神経障害である。症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、③下肢の腱反射低下、④振動覚障害、しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。

 

 

 

 

 

問題38.ネフローゼ症候群の診断基準で誤っているのはどれか。

1.一日尿蛋白量3.5g以上
2.血清総蛋白量6.0g/100mL以上
3.血清総コレステロール値250mg/100mL以上
4.浮腫

解答

解説

ネフローゼ症候群とは?

ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。

【成人における診断基準】
①蛋白尿:1日蛋白量3.5g以上を持続する。
②低蛋白血症:血清総蛋白量は6.0g/100ml以下(低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン量3.0g/100ml以下)
③高脂血症:血清総コレステロール値250mg/100ml以上
④浮腫

1.〇 正しい。一日尿蛋白量3.5g以上は、ネフローゼ症候群の診断基準である。
なぜなら、糸球体の濾過障害により、アルブミンなどの蛋白が大量に尿中に漏出するため。

2.× 血清総蛋白量6.0g/100mL「以上」ではなく以下が、ネフローゼ症候群の診断基準ではない。
なぜなら、大量の尿蛋白喪失により、血中のアルブミンが減少し、それに伴って血清総蛋白濃度も低下するため。

3.〇 正しい。血清総コレステロール値250mg/100mL以上は、ネフローゼ症候群の診断基準である。
なぜなら、血清蛋白の低下を代償するため、肝臓が蛋白(アルブミン)合成を亢進する際に、同時に脂質合成も増加するため。

4.〇 正しい。浮腫は、ネフローゼ症候群の診断基準である。
なぜなら、血中アルブミン減少により血漿膠質浸透圧が低下し、血管内の水分が組織間に移行してしまうため。

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起こることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

 

 

 

 

 

問題39.急性腎盂腎炎で認めないのはどれか。

1.黄疸
2.発熱
3.頻尿
4.肋骨・脊椎角部(CVA)の叩打痛

解答

解説

急性腎盂腎炎とは?

急性腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。 20~40歳代では、男女比は1対30である。なぜなら、膀胱炎からの逆行性感染によって生じることが多いため。したがって、解剖学的に尿道が短く膀胱炎になりやすい女性に多い。また、女性は男性よりも尿道が短く尿道口と肛門が近いため、細菌が膀胱へ侵入しやすいことが原因の一つとして挙げられる。症状が急に現れるが、治療が早くできると症状は3日~5日で落ち着く。 しかし、症状が悪くなれば入院する必要があるため、注意する必要がある。

1.× 黄疸は、急性腎盂腎炎で認めない。なぜなら、黄疸と腎感染とは関係がないため。黄疸は、血中ビリルビンが上昇し、皮膚や眼球が黄染する状態である。原因は、主に肝臓・胆道系疾患(肝炎・胆石・肝硬変など)によって起こる。
・黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。

2.〇 発熱は、急性腎盂腎炎の症状である。なぜなら、細菌感染により全身性炎症反応が生じるため。

3.〇 頻尿は、急性腎盂腎炎の症状である。なぜなら、下部尿路感染(膀胱炎)から上行感染として発症するため。したがって、膀胱粘膜の炎症による刺激症状が残存しており、頻尿を呈することが多い。

4.〇 肋骨・脊椎角部(CVA)の叩打痛は、急性腎盂腎炎の症状である。なぜなら、腎盂および腎実質に炎症が波及すると、腎被膜が伸展して痛覚刺激を生じるため。

尿路感染とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し
薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」より)

 

 

 

 

 

問題40.デュシェンヌ(Duchenne)型筋ジストロフィーの遺伝形式はどれか。

1.常染色体優性遺伝
2.常染色体劣性遺伝
3.伴性優性遺伝
4.伴性劣性遺伝

解答

解説

デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは?

Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

1.× 常染色体優性遺伝とは、遺伝によって子孫に伝えられる性質(形質)が常染色体上の遺伝子で決定され、その形質が現れる場合のことを指す。

2.× 常染色体劣性遺伝とは、常染色体上の遺伝子の変異が2つある場合に発症する遺伝形式である。男性と女性の両方に現れる。

3.× 伴性優性遺伝とは、変異遺伝子が優性遺伝子のX染色体にあるものである。

4.〇 正しい。伴性劣性遺伝は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝形式である。
・X連鎖劣性遺伝とは、変異遺伝子が劣性遺伝子のX染色体にあるものである。

X連鎖性遺伝性とは?

X連鎖性遺伝性とは、X染色体上にある遺伝子の変化によって発症する疾患である。女性はX染色体を2本、男性はX染色体とY染色体を1本持っている。

 

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