第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

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問題41.筋萎縮性側索硬化症の症状はどれか。

1.筋固縮
2.構音障害
3.膀胱直腸障害
4.手袋・靴下型感覚障害

解答

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1.× 筋固縮は、パーキンソン病などの錐体外路障害でみられる現象である。

2.〇 正しい。構音障害は、筋萎縮性側索硬化症の症状である。なぜなら、舌・咽頭・喉頭などの球麻痺(延髄支配筋の麻痺)が起こるため。したがって、発音・嚥下・呼吸運動が障害される。

3.× 膀胱直腸障害は、ほとんどみられない(4大陰性徴候)。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症は運動ニューロン疾患であり、自律神経系(排尿・排便を司る神経)は比較的保たれるため。

4.× 手袋・靴下型感覚障害は、糖尿病性神経障害にみられる現象である。

糖尿病神経障害とは?

糖尿病には、主に3大合併症として、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があげられる。なかでも糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する末梢神経障害である。症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、③下肢の腱反射低下、④振動覚障害、しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。

 

 

 

 

 

問題42.65歳の男性。6か月前に脳出血のため右片麻痺となった。杖歩行可能だが、右前腕は強く屈曲し、右下肢は痙性となって足が足底側に屈曲し、内反した肢位をとっている。
 この姿勢はどれか。

1.エビ姿勢
2.脊柱側弯姿勢
3.前かがみの姿勢
4.マン-ウェルニッケ姿勢

解答

解説
1.× エビ姿勢は、腹痛などで苦しむときに自然にとる姿勢である。

2.× 脊柱側弯姿勢は、脊椎の構造変形によるものであり、側弯症でみられる。
・側弯症とは、背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うことがある。通常、小児期にみられる脊柱変形を指す。左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起(前かがみをした姿勢で後ろから背中をみた場合)、などの変形を生じる。診断基準として、「コブ角」が 10°以上の場合が一般的である。コブ角とは、脊柱の上下で最も曲がりの強い椎体 から直線を伸ばし、その 2 本の直線の交差する角度のことである。

3.× 前かがみの姿勢は、パーキンソン病にみられる姿勢である。

4.〇 正しい。マン-ウェルニッケ姿勢が該当する姿勢である。
・マン・ウェルニッケ姿勢とは、Wernicke-Mann肢位(ウェルニッケマン肢位)ともいい、大脳皮質から大脳脚の間(脳幹より上位)で運動制御系が片側性に障害されたときに、病巣の対側上肢が屈曲位、下肢が伸展位を呈する肢位のことをいう。脳血管障害の後遺症としてしばしば認められる。【上肢】肩関節内旋・内転位、肘関節屈曲位、手関節掌屈位、手指屈曲位、【下肢】股関節伸展・内旋・内転位、膝関節伸展位、足関節内反尖足位となる。

 

 

 

 

 

問題43.45歳の女性。3か月前から朝の手のこわばりと全身の関節痛が持続するために来院した。両側手指関節と両側手関節に腫脹と圧痛、両膝関節に圧痛を認める。血液検査で、抗CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体が陽性であった。
 考えられる疾患はどれか。

1.痛風
2.関節リウマチ
3.結節性多発動脈炎
4.全身性エリテマトーデス

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性。
3か月前から朝の手のこわばり全身の関節痛が持続。
両側手指関節と両側手関節に腫脹と圧痛、膝関節に圧痛を認める。
・血液検査:抗CCP抗体が陽性
→関節リウマチでは、赤沈・CRP・リウマトイド因子(RA-F)・抗CCP抗体などが高値となる。

1.× 痛風より考えられるものが他にある。なぜなら、本症例は慢性・多関節・対称性炎症が認められるため。
・痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

2.〇 正しい。関節リウマチが最も考えられる疾患である。
・関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

3.× 結節性多発動脈炎より考えられるものが他にある。なぜなら、結節性多発動脈炎は中小動脈の壊死性血管炎であり、関節リウマチとは異なる全身性血管炎であるため。
・結節性多発動脈炎とは、中型血管を主体として、血管壁に炎症を生じる疾患である。原因不明であるが、血管炎の組織には多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられている。38℃以上の高熱、体重減少、高血圧、紫斑や皮膚潰瘍、筋肉痛・関節痛、四肢のしびれ、脳出血・脳梗塞、胸膜炎、尿蛋白や尿潜血陽性、腎機能低下、腹痛・下血、狭心症・心筋梗塞など様々な症状がおきる。

4.× 全身性エリテマトーデスより考えられるものが他にある。なぜなら、全身性エリテマトーデスは、関節破壊を伴わない可逆性関節炎が特徴であるため。
・全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の蝶形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

 

 

 

 

 

問題44.感染とその原因菌との組合せで正しいのはどれか。

1.IVHのカテーテル感染:アスペルギルス
2.化膿性骨髄炎:ブドウ球菌
3.丹毒:ウェルシュ菌
4.ガス壊疽:溶血性連鎖球菌

解答

解説
1.× IVH(中心静脈栄養)のカテーテル感染は、「アスペルギルス」ではなくブドウ球菌属である。
・IVHとは、中心静脈栄養のことをさし、感染の原因としては、チューブ挿入部の皮膚からの汚染、輸液セットや接続部からの汚染、調剤した薬剤からの汚染が考えられる。またこの他、カテーテルの自己抜去や合併症がある。
・アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症である。肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成される。

2.〇 正しい。化膿性骨髄炎:ブドウ球菌
・化膿性骨髄炎とは、骨髄を中心に骨皮質や骨膜にも細菌が感染して起こる炎症である。代表的な病原体は黄色ブドウ球菌(MRSAを含みます)であり、その他にもA群溶連菌、B群溶連菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられる。

3.× 丹毒は、「ウェルシュ菌」ではなく溶血性連鎖球菌である。
・丹毒とは、主にA群β溶血性レンサ球菌の感染により皮膚~皮下脂肪に熱をもって赤く腫れ、痛む病気である。顔に多く見られる。水ぶくれや内出血は重症化のサインである。
・ウェルシュ菌は、細菌であり産生する毒素により消化器症状(腹痛、下痢、悪心)を呈する。発症に至る原因としては、煮込み(カレーやシチュー)で料理の加熱が不十分である場合が多い。潜伏期間は6~18時間である。

4.× ガス壊疽は、「溶血性連鎖球菌」ではなくウェルシュ菌である。
・ガス壊疽とは、ガス産生菌が傷口から侵入して感染し、筋肉が壊死に陥り、全身に中毒症を起こす致死性の感染症である。筋肉を中心としてメタンや二酸化炭素などのガスが発生することにより、感染が広がる。クロストリジウム属(ウェルシュ菌など)の菌により起こるクロストリジウム性ガス壊疽と、他の細菌で起こる非クロストリジウム性ガス壊疽の2つに大別される。深刻な感染症で、急速に進行し、強い痛みを伴い、皮膚の下にある組織が壊死し、ガスを生じることからこの名前が付けられている。

 

 

 

 

 

問題45.癌腫と比較した肉腫の特徴で正しい組合せはどれか。

1.年齢:若年者
2.頻度:多い
3.発育速度:遅い
4.予後:良い

解答

解説

癌腫と肉腫の比較

肉腫は、癌腫より若年、発育早い、血行転移、頻度低い。

1.〇 正しい。年齢:若年者(特に、小児・青年)
なぜなら、肉腫は間葉系組織(筋・骨・脂肪・血管など)由来であり、これらの組織は成長期に代謝・分裂が活発なため。

2.× 頻度は、「多い」ではなく少ない。なぜなら、人体の組織の大部分は上皮性(皮膚・粘膜・臓器上皮)であり、これらから発生する癌腫の方が圧倒的に多いため。肉腫は全悪性腫瘍の約1%以下である。

3.× 発育速度は、「遅い」ではなく速い。なぜなら、肉腫は、間葉系細胞の未分化な悪性増殖によって生じるため。細胞分裂が活発で増殖スピードが速く、局所破壊性・転移性も強い。

4.× 予後は、「良い」ではなく悪い。なぜなら、肉腫は早期から血行性転移(特に肺・肝)を起こしやすく、局所再発もしやすいため。

 

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