第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61.悪性化する可能性があるのはどれか。2つ選べ。

1.骨軟骨腫
2.内軟骨腫
3.孤立性骨嚢腫
4.線維性骨異形成

解答1・2

解説
1.〇 正しい。骨軟骨腫は、悪性化する可能性がある。良性骨腫瘍の中でも最も悪性化(軟骨肉腫化)する可能性がある。なぜなら、骨軟骨腫(外骨腫)から、軟骨肉腫に変化することがあるため。
・骨軟骨腫とは、長管骨の成長軟骨周囲(骨端部)に発生する軟骨性の良性骨腫瘍である。骨の外側に向かって隆起性に発育することから外骨腫とも呼ばれる。異所性に成長軟骨様軟骨細胞集団が発生し、成長に伴って成長軟骨と同様に軟骨増殖と軟骨内骨化が起きるため、その先端に軟骨帽とよばれる軟骨組織を有する骨性隆起性病変が生じる。

2.〇 正しい。内軟骨腫は、悪性化する可能性がある。なぜなら、内軟骨腫から、軟骨肉腫に変化することがあるため。
・内軟骨腫とは、硝子軟骨を形成する良性腫瘍である。特に長骨の末端(手や足の骨)によく現れる。骨内に硝子軟骨が形成されることで、皮質骨が薄く弱くなる。単発性と多発性があり、骨格の片側に多発するとOllier病(オリエール病)、それに血管腫を合併するとMaffucci症候群(マフッチ病)という。

3.× 孤立性骨嚢腫は、悪性化しない。なぜなら、細胞増殖性変化や異形成はないため。
・孤立性骨嚢腫とは、良性の骨腫瘍で、骨の中に空洞ができるまれな疾患である。好発部位は上腕骨・大腿骨近位骨幹端であり、女性に比較し男性に多く、発症平均年齢は9 歳前後と報告されている。特段症状のない場合は放置、病的骨折を起こす可能性が高い場合、実際に病的骨折を起こした場合などは手術適応となる。

4.△ 線維性骨異形成は、悪性化する可能性が極めて稀である(可能性があるといえば、わずかにもあるため、問題として不適切)。なぜなら、腫瘍性ではあるが良性で経過し、悪性転化(骨肉腫・線維肉腫)は極めて稀であるため。
・線維性骨異形成とは、骨の中が線維化して、骨がもろくなる病気である。主に太ももの骨とすねの骨に多く起こる。骨の痛みが主な症状で、悪化すると歩行困難や骨折がおこる。多くが単骨性に発生する。 10~20歳代に好発し、女性にやや多い。

 

 

 

 

 

問題62.転移性骨腫瘍で正しいのはどれか。

1.温熱療法の適応となる。
2.造骨性転移では病的骨折は少ない。
3.長管骨の骨幹端部に好発する。
4.原発巣の症状が先行する。

解答

解説

転移性骨腫瘍とは?

骨転移とは、転移性骨腫瘍ともいい、がん細胞が血液の流れで運ばれて骨に移動し、そこで増殖している状態のことをいう。骨転移は、どんながんでもおきる可能性がある。乳がん、前立腺がん、肺がんなどが、骨に転移しやすい。骨転移には、3種類(①溶骨型、②造骨型、③混合型)あげられ、①溶骨型骨転移がおきると、骨が弱くなり、痛みがでたり、ちょっとしたことで骨折してしまうことがある。

1.× 温熱療法の適応と「とはならない」。なぜなら、温熱療法は血流を促進させる効果があるため。したがって転移を悪化させる可能性がある。ちなみに、温熱療法の禁忌は、①急性炎症、②悪性腫瘍、③感覚障害と意識障害、④出血傾向、⑤循環障害・動脈硬化などである。

2.〇 正しい。造骨性転移では病的骨折は少ない。なぜなら、造骨性転移の場合、 骨髄内に骨硬化像が出現するため。病的骨折は溶骨性転位が多い。ちなみに、骨転移には、3種類(①溶骨型、②造骨型、③混合型)あげられる。
・病的骨折とは、骨の病変による強度低下が基盤となって、通常では骨折を起こすとは考えられない軽微な外力で生じる。

3.× 「長管骨の骨幹端部」より赤色骨髄の多い部位(椎体・骨盤・肋骨)に好発する。なぜなら、転移性腫瘍は血行性転移が主体であるため。腫瘍細胞は、血流豊富な赤色骨髄領域(成人では脊椎・骨盤・肋骨・大腿骨近位部など)に着床しやすい。むしろ、骨幹端部(関節に近い部位)は血流が少なく、転移は稀である。

4.× 「原発巣」ではなく骨転移の症状が先行する。なぜなら、骨転移はしばしば原発腫瘍の無症候期に生じ、骨痛や病的骨折を初発症状として発見されることがあるため。特に、乳がん・肺がん・腎がん・前立腺がん・甲状腺がんなどは、骨転移が初発の場合がある。

 

 

 

 

 

問題63.検査と疾患との組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.トーマステスト:腸腰筋炎
2.リフトオフテスト:小円筋断裂
3.大腿神経伸展テスト:下位腰椎椎間板ヘルニア
4.前方引き出しテスト:前距腓靭帯断裂

解答1・4

解説
1.〇 正しい。トーマステスト:腸腰筋炎
なぜなら、腸腰筋が短縮または炎症していると、炎症側の股関節を完全に伸展できなくなるため、健側の股関節を屈曲すると、患側大腿が持ち上がる(膝が浮き上がる)という陽性反応を示すため。
・トーマステストとは、股関節屈曲拘縮を診るテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。

2.× リフトオフテストは、「小円筋断裂」ではなく肩甲下筋の機能である。
・Lift Off Test(リフトオフ)は、肩関節の障害部位を予測して不安定さを評価するテストである。主に、肩甲下筋の機能を評価する検査である。

3.× 大腿神経伸展テストは、「下位(L1~L2)」ではなく上位(L3~L4)腰椎椎間板ヘルニアである。
・FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害(腰椎椎間板ヘルニア)で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。

4.〇 正しい。前方引き出しテスト:前距腓靭帯断裂
・足関節の前方引き出しテストとは、前距腓靭帯の安定性を見る。足関節は軽度底屈位で、踵を包むようにして前方へ引き出す。陽性の場合、患側の距骨は健側と比較して前方へ引き出される。また距骨が亜脱臼するため、足を戻す際、患者の痛みの訴えとともに「カクッ」という動きを触知できる。ちなみに、外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

 

 

 

 

 

問題64.肋骨骨折で緊急性が高いのはどれか。

1.胸部の皮下出血
2.骨折部の轢音
3.吸気時の胸痛
4.胸部の握雪感

解答

解説
1.× 胸部の皮下出血より緊急性が高いものが他にある。なぜなら、肋骨骨折による皮下出血は骨折周囲の皮下組織損傷に伴うもので、呼吸障害を引き起こすこと(生命に直接影響)はないため。

2.× 骨折部の轢音(骨と骨が擦れ合う音)は、診断の一助にはなるが、生命に直接影響はない

3.× 吸気時の胸痛は、肋骨骨折の最も一般的な症状だが、緊急性は高くない。肋骨骨折では、呼吸運動に伴う骨片の動きで痛みが増す。

4.〇 正しい。胸部の握雪感は、肋骨骨折で緊急性が高い。なぜなら、皮下気腫の所見であるため。皮下気腫は、皮膚の下の脂肪層に空気が溜まる状態を指す。この空気の存在が、皮膚を押すと雪を握るような音(握雪音)を出す原因となる。
・皮下気腫とは、皮下組織内に空気がたまった状態をいう。空気が侵入する経路としては、皮膚の損傷による外部からの侵入、損傷された壁側胸膜を通しての胸腔内空気(気胸)の侵入、期間・気管支損傷や食道損傷などに伴う縦隔からがある。原因として、交通事故の原因となる外傷(特に胸部の打撲)、高所からの転落、挟まれたことによる挟圧外傷などである。症状として、胸や頚部に空気がたまり、その部位が膨らみ、強い痛みが出る。握雪感や捻髪音も感知でき、胸痛や呼吸困難を訴える場合もある。
・握雪感(あくせつかん)とは、呼吸音の異常の一つで、胸膜炎などで胸膜の表面がこすれ合って粗くなったときに聞こえる音である。聴診すると、靴の底がきしむ音や雪を握りしめるときの「ギュッギュッ」という音のように聞こえる。肺の中の音ではなく、胸膜(肺を包む膜)同士がこすれ合う音であるのが特徴である。

 

 

 

 

 

問題65.57歳の男性。建設業。2週前から左肩甲部に刺すような痛みを自覚した。1週前から痛みは左上肢尺側に放散し同部にしびれも感じるようになった。手指の運動障害はない。
 最も考えられる疾患はどれか。

1.肘部管症候群
2.胸郭出口症候群
3.頸椎症性神経根症
4.石灰沈着性肩関節周囲炎

解答

解説

本症例のポイント

・57歳の男性(建設業)
・2週前から左肩甲部に刺すような痛みを自覚した。
・1週前から痛みは左上肢尺側に放散し同部にしびれも感じるようになった。
手指の運動障害はない
→ほかの選択肢が消去できる理由をあげられるようにしよう。

1.× 肘部管症候群は考えにくい。なぜなら、本症例の左肩甲部に刺すような痛みと手指の運動障害はないことが合致しないため。
・肘部管症候群とは、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫され、小指・薬指がしびれたり、手が使いにくくなる病気である。肘関節を十分に曲げた状態を続けることでしびれ、痛みが悪化するかどうかを見る(誘発テスト)。症状が悪化する場合は肘屈曲テスト陽性と判断する。

2.× 胸郭出口症候群は考えにくい。なぜなら、本症例の左肩甲部に刺すような痛みが合致しないため。
・胸郭出口症候群とは、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

3.〇 正しい。頸椎症性神経根症(特にC7~8神経根障害)が最も考えられる疾患である。なぜなら、C7〜C8神経根が障害されると、肩甲部痛や上腕から前腕尺側のしびれが出るため。手指の運動障害(麻痺)も出現するが、本症例の場合、2週前から左肩甲部に刺すような痛みを自覚した段階で、初期・軽度といえる。したがって、神経根が刺激・圧迫され始めている段階で、まだ運動線維まで影響していない状態と考えるのが妥当である。

4.× 石灰沈着性肩関節周囲炎は考えにくい。なぜなら、本症例の1週前から痛みは左上肢尺側に放散し同部にしびれも感じるようになったことが合致しないため。石灰沈着性肩関節周囲炎では肩関節局所の激痛・可動域制限が主である。

肩関節周囲炎とは?

肩関節周囲炎(五十肩)は、慢性炎症に分類される。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。肩関節周囲炎は痙縮期、拘縮期、回復期と分けられ、筋萎縮は拘縮期に肩甲帯筋の廃用性萎縮としてみられる。リハビリとして、Codman体操(コッドマン体操)を実施する。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。

①痙縮期(約2~9か月):急性期で疼痛が主体となる。明らかな誘因はなく、肩の違和感や痛みで出現。運動時痛や安静時・夜間時痛が出現し、急速に関節が硬くなる。局所の安静、三角巾固定痛みの出る動作は避ける。

②拘縮期(約4~12か月):亜急性期で拘縮が主体となる。徐々に安静時痛・夜間痛は軽減しますが、肩関節は拘縮し、可動域制限が残りやすくなる。過度に動かすと強いつっぱり感が出現する。徐々に運動範囲を広げる(お風呂やホットパックでの保温、愛護的に関節可動域の拡大)

③回復期(約6~9か月):慢性期で、症状は徐々に改善する。可動域制限も徐々に回復し、運動時痛も消失する。積極的な運動(ストレッチング)を実施する。

 

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