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問題71.フォルクマン(Volkmann)拘縮に対するPassive stretch testの疼痛部位で正しいのはどれか。
1.上腕屈側
2.前腕屈側
3.手背部
4.手掌部
解答2
解説
フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。
1.× 上腕屈側/手背部/手掌部/は、フォルクマン拘縮に対するPassive stretch testの疼痛部位ではない。
2.〇 正しい。前腕屈側は、フォルクマン拘縮に対するPassive stretch testの疼痛部位である。なぜなら、Passive stretch(受動的伸展)により、フォルクマン拘縮は前腕屈筋群の虚血性壊死(線維化)がされており、強い疼痛が出現するため。
問題72.単独脱臼で整復後でも疼痛が軽減しにくいのはどれか。
1.肩鎖関節上方脱臼
2.肩関節前方脱臼
3.膝蓋骨外側脱臼
4.第1中足趾節関節背側脱臼
解答1
解説
1.〇 正しい。肩鎖関節上方脱臼は、単独脱臼で整復後でも疼痛が軽減しにくい。なぜなら、肩鎖関節上方脱臼では、烏口鎖骨靱帯(円錐靱帯・菱形靱帯)と肩鎖靱帯の断裂が生じ、整復しても関節の安定性が失われたままになるため。
2.〇 肩関節前方脱臼は、整復すれば通常、疼痛は速やかに軽減することが多い。なぜなら、肩関節前方脱臼では、主に関節包前部の弛緩と関節唇損傷が原因で、関節の安定性は保たれやすいため。
3.〇 膝蓋骨外側脱臼は、整復すれば通常、疼痛は速やかに軽減することが多い。なぜなら、整復により関節面が再接触して安定するため。軟部組織の損傷も少ない。
4.〇 第1中足趾節関節背側脱臼は、整復すれば通常、疼痛は速やかに軽減することが多い。なぜなら、整復によって、関節の安定性は保たれるため。主に関節包や底側板の損傷によるもので、軽い腫脹だけが残るケースがほとんどである。
烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。
問題73.チネル徴候で正しいのはどれか。
1.neurapraxiaで特徴的にみられる。
2.経時的に近位に移動していく。
3.Waller変性が起こる前にみられる。
4.末梢神経の再生状況を評価できる。
解答4
解説
Tinel徴候は、損傷神経を叩打すると支配領域にチクチク感や走感を生じる現象で、神経の回復状況を知る目安となる。機序は、末梢神経の切断後、近位端から軸索の再生が始まるが、再生軸索の先場はまだ髄鞘に覆われていないため起こる。絞扼性神経障害など神経の連続性が保たれている場合、Tinel様徴候とよばれる。
1.× 「neurapraxia(一過性神経伝導障害)」ではなく軸索断裂(axonotmesis)や神経断裂(neurotmesis)で特徴的にみられる。なぜなら、neurapraxia(一過性神経伝導障害)は、軸索や髄鞘の連続性が保たれており、Waller変性や再生過程が起こらないため。チネル徴候は、再生中の軸索が再び標的器官に向かって伸びていく際に生じる電気的過敏反応を利用した徴候であるため、軸索断裂(axonotmesis)や神経断裂(neurotmesis)など「再生を伴う障害」で出現する。
・neurapraxia(ニューラブラキシア:一過性神経伝導障害)とは、損傷部で伝導が障害されてはいるが一過性であり、早期に自然回復するため、末梢神経損傷で予後が最も良い。ちなみに、神経細胞の一部が傷つけられると、その場所よりも細胞体から遠い側は変性して壊れてしまう順行性変性という。一方、逆行性変性とは、細胞体のある側にも変性が進行することである。逆行性変性は、一般的に軸索断裂(アクソノトメーシス:axonotmesis)や神経断裂(ニューロトメーシス:neurotmesis)に見られる。
2.× 経時的に「近位」ではなく遠位に移動していく。なぜなら、神経損傷後の再生は、中枢端から末梢方向に向かって進行するため。
3.× Waller変性が、「起こる前」ではなく起こった後(再生期)にみられる。なぜなら、チネル徴候は、神経再生過程の軸索伸長時に発生する電気的刺激反応であるため。Waller変性(軸索断裂後の遠位側の変性)が完了した後、中枢端から再生軸索が伸び始める。この再生軸索が叩打刺激に反応して痛みやしびれを誘発するのがチネル徴候である。
・ワーラー変性とは、損傷部より遠位が軸索変性(軸索の連続性が絶たれる)をきたした状態で、一部回復を見込める。軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)と、神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)の状態でみられる。
4.〇 正しい。末梢神経の再生状況を評価できる。なぜなら、チネル徴候の反応部位が、経時的に末梢方向へ移動することで、神経再生の進行を反映するため。臨床的には、「叩打で痛みが出る位置=神経再生の到達点」として用いられる。
神経損傷の分類では、次の3段階に分類している。
一過性神経伝導障害:ニューラプラキシア(neurapraxia)
軸索断裂:アクソノトメーシス(axonotmesis)
神経断裂:ニューロトメーシス(neurotmesis)
問題74.胸骨骨折で誤っているのはどれか。
1.体部骨折が多い。
2.横骨折が多い。
3.腹式呼吸となる。
4.偽関節になりやすい。
解答4
解説
胸骨骨折とは、野球の球が飛んできて前胸部にあたる、あるいは車の運転中に事故にあい、ハンドルに前胸部を強く打ちつけるなど、強い圧力が前胸部の中央部にかかって起こる骨折のことをいう。 骨折の中では、比較的まれなものだが、胸骨の裏には心臓があるため、心臓の損傷や心破裂が起こる場合もある。
1.〇 正しい。体部骨折が多い。なぜなら、胸骨体部は、前胸部の突出部であり、外力を直接受けやすい位置にあるため。交通事故や胸部打撲時のシートベルト圧迫などで体部が折れることが多い。
2.〇 正しい。横骨折が多い。なぜなら、胸部を前方向から圧迫される外力(交通事故・転倒など)により、胸骨が前方に曲げられて屈曲応力が集中するため。
・横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。
・斜骨折とは、骨の長軸に対して骨折線(骨折部に生じる亀裂)が斜めに入っているものをいう。
3.〇 正しい。腹式呼吸となる。なぜなら、胸骨骨折の場合、呼吸により肋骨の動き、痛みを伴う胸式呼吸を避ける傾向にあるため。
4.× 偽関節に「なりにくい」。なぜなら、胸骨は骨皮質が薄く、骨髄や線維組織による癒合が早いため。
偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。
問題75.肋骨骨折で正しいのはどれか。
1.小児に多い骨折である。
2.ゴルフによる疲労骨折は下位肋骨に多い。
3.多発・複数骨折でフレイルチェストがみられる。
4.固定は最大吸気時に素早く施行する。
解答3
解説
1.× 小児に多い骨折「とはいえない」。なぜなら、小児の肋骨は、弾性に富み柔軟性が高いため。したがって、外力を受けても折れにくい。肋骨骨折は、胸部を強く打撲したり、衝突・転倒した際に起こる(交通事故でハンドルやシートベルトに胸を打つ、転倒して胸を地面や家具にぶつける)。
2.× ゴルフによる疲労骨折は、「下位肋骨」ではなく上位〜中位肋骨(第2~9肋骨)である。なぜなら、ゴルフや野球スイング動作では、体幹の回旋筋群(前鋸筋・外腹斜筋など)に強い牽引力がかかり、これらの筋が付着する中位肋骨に繰り返しストレスが集中するため。
3.〇 正しい。多発・複数骨折でフレイルチェストがみられる。
・動揺性胸郭とは、通常3本以上の肋骨が連続して、それぞれが2ヶ所以上骨折することで、その部分の胸郭が周囲の胸郭と独立して動き、呼吸運動とは逆の動き(奇異呼吸)をする重篤な状態を指す。
4.× 固定は、「最大吸気時」ではなく最大呼気時に素早く施行する。なぜなら、最大吸気時に固定した場合、呼気するとすぐ緩みをきたして十分な固定を得られないため。肋骨骨折の治療では、疼痛コントロールとある程度の固定が必要である。
国試オタク 