第23回(H27年)柔道整復師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86.距骨骨折と踵骨骨折との共通点で正しいのはどれか。

1.高所からの転落により発生する。
2.関節包外骨折である。
3.ベーラー角が減少する。
4.無腐性骨壊死を合併する。

解答

解説

踵骨骨折とは?

踵骨骨折とは、足根骨骨折の中で最も頻度が高く、受傷機転の多くは高所からの転落による高エネルギー直達外力である。踵骨骨折のうち関節内骨折は65〜75%を占めるとされる。踵骨の大部分は海綿骨であり骨癒合は良好とされる。その反面、骨萎縮や可動域制限による疼痛などの機能障害が残存しやすい病態であり、適切な時期に的殺な治療を行うことが予後を大きく左右するとされる。

1.〇 正しい。高所からの転落により発生する。なぜなら、足底に強い垂直方向の圧力が加わると、その力が「距骨→踵骨→下腿骨」へと伝達されるため。したがって、両者とも高所落下・転落事故・墜落災害で頻発する。

2.× 関節包外骨折は、「踵骨骨折」の特徴である。ただし、ただし、骨折のタイプによって異なる。踵骨の上面には距骨との関節(距踵関節)があり、ここは関節包の中に含まれる。一方、距骨骨折は、関節包内骨折である。距骨は足関節(距腿関節)や距踵関節など、いくつもの関節の中に深く包まれており、骨の大部分が関節包の内側にある。

3.× ベーラー角が減少するのは、「踵骨骨折」の特徴である。なぜなら、踵骨骨折は高所からの転落で足底から強い外力が加わり、踵骨後方関節面が陥没して高さが減少するため。
・ベーラー角(Böhler角)とは、X線足部側面像で踵骨隆起の上端と踵骨の上方頂点を結ぶ線、および、踵骨の上方頂点と前距骨関節面の先端を結ぶ線がなす角のことで、20~30°である。

4.× 無腐性骨壊死を合併するのは、「距骨骨折」の特徴である。なぜなら、距骨は血行が乏しく、動脈が骨内に深く入る構造で、骨折で血管が損傷されると容易に虚血に陥るため。
・距骨骨折とは、足根骨の中では踵骨の次に多い骨折である。転倒時など足部が背屈位に強制されたときに脛骨の前方部が距骨の頚部に衝突して骨折が生じる。距骨体部の阻血性壊死が起こりやすい。

 

 

 

 

 

問題87.踵骨体部圧迫骨折の徒手整復操作で誤っているのはどれか。

1.足関節の屈曲を強制する。
2.両手掌で踵骨内外側を圧迫するように把持する。
3.踵部を末梢方向に牽引する。
4.連続的に踵部の内外転を繰り返す。

解答

解説
1.× 足関節の屈曲(=底屈)を強制する必要はない。むしろ足関節底屈を行ってはならない。なぜなら、足関節を屈曲させるとアキレス腱が緊張し、踵骨を後上方に引き上げて整復を妨げるため。

2.〇 正しい。両手掌で踵骨内外側を圧迫するように把持する。なぜなら、踵骨圧迫骨折では、踵骨体が外側に拡がる(踵骨の幅が増す)ことが多いため。

3.〇 正しい。踵部を末梢方向に牽引する。なぜなら、踵骨圧迫骨折では、距骨に押しつぶされて踵骨が短縮しているため。

4.〇 正しい。連続的に踵部の内外転を繰り返す。なぜなら、内外転を交互に行うことで関節面の噛み込み(嵌頓)を解除し、骨片の整復を促すことができるため。

 

 

 

 

 

問題88.過伸展外力で発生するのはどれか。

1.顎関節後方脱臼
2.肘関節後方脱臼
3.股関節後方脱臼
4.膝関節後方脱臼

解答

解説
1.× 顎関節後方脱臼の原因は、後方からの直接打撃で起こる。一般的に、顎関節(下顎頭)は通常前方脱臼が多い。

2.〇 正しい。肘関節後方脱臼は、過伸展外力で発生する。なぜなら、転倒時に手をつくと肘関節が急激に伸展され、橈骨頭と尺骨鉤状突起が上腕骨の後方に押し出されて橈尺骨が後方脱臼するため。

3.× 股関節後方脱臼は、膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。

4.× 膝関節後方脱臼は、脛骨前面への強打(ダッシュボード損傷など)で生じる。一方、膝関節が過伸展するとむしろ前方脱臼を起こしやすい。

 

 

 

 

 

問題89.大結節骨折を伴う肩関節前方脱臼で正しいのはどれか。

1.肩甲下神経損傷を伴う。
2.整復は脱臼から行う。
3.高齢者では徒手整復は禁忌である。
4.ハンギングキャスト固定を行う。

解答

解説
1.× 「肩甲下神経」ではなく腋窩神経損傷を伴う。なぜなら、腋窩神経は、上腕骨外科頸の後方を走行するため。脱臼時に、骨頭が腋窩神経を牽引・圧迫する。一方、肩甲下神経は肩甲骨前面を走行する。

2.〇 正しい。整復は脱臼から行う。なぜなら、脱臼整復により、大結節に付着する大胸筋や小円筋の牽引力が軽減し、骨片の転位が自然に整復される場合が多いため。

3.× 高齢者では徒手整復は、「禁忌とはいえない」。ただし、高齢者では関節包や筋腱が脆弱であるため、慎重に徒手整復を行う必要がある。

4.× ハンギングキャスト固定を行うのは、「上腕骨近位端骨折」である。
ハンギングキャストは、ずれのある上腕骨近位端骨折に用いられる。脇の下から手部までギブスをまいてその重みで整復する。ちなみに、ずれが少ないもの(上腕骨解剖頸骨折)は、三角巾固定で行う。

烏口下脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

 

 

 

 

 

問題90.肘関節後方脱臼の整復確認で誤っているのはどれか。

1.整復音の触知
2.疼痛の軽減
3.ヒューター三角の正常化
4.他動的な正常可動域確認

解答

解説

肘関節後方脱臼とは?

肘関節後方脱臼は、青壮年に好発する。
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間

1.〇 正しい。整復音の触知は、肘関節後方脱臼の整復確認である。なぜなら、骨頭(橈骨頭・尺骨鉤状突起)が関節窩に復位する瞬間に、「コツッ」という整復音が伝わることが多いため。
・整復音とは、脱臼した関節を元の位置に戻すときに「コツッ」や「パキッ」といった音や感触がすることを指す。これは骨が関節の正しい位置におさまる瞬間に生じる音であり、手で触って感じる「整復感」としても確認されることがある。ただし、音がなくても整復できている場合もあり、整復音の有無だけで成功を判断してはいけない。

2.〇 正しい。疼痛の軽減は、肘関節後方脱臼の整復確認である。なぜなら、脱臼位では関節包や周囲組織が強く牽引されて疼痛が強いが、整復によりこれらの緊張が解けるため。

3.〇 正しい。ヒューター三角の正常化は、肘関節後方脱臼の整復確認である。なぜなら、脱臼時にはこの関係が崩れるため。
・ヒューター三角とは、肘関節屈曲位で内側上顆・外側上顆・肘頭を結ぶ二等辺三角形のことである。

4.× 他動的な正常可動域確認は、肘関節後方脱臼の整復確認ではない。なぜなら、整復直後は、関節包や靱帯が損傷しており、他動的に動かすことで再脱臼・靱帯損傷・骨折の再転位を招く恐れがあるため。

 

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