第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46.犬に手の甲を約2cm長咬まれた。適切でない処置はどれか。

1.生理食塩水での洗浄
2.デブリドマン
3.一次縫合
4.抗菌薬投与

解答

解説

MEMO

犬の咬傷には細菌が含まれている可能性が高く、感染リスクがある。

1.〇 生理食塩水での洗浄は、適切な処置である。なぜなら、動物咬傷は細菌感染のリスクが非常に高いため。まず徹底した洗浄が基本となる。

2.〇 デブリドマンは、適切な処置である。なぜなら、動物咬傷は細菌感染のリスクが非常に高いため。デブリドマン(壊死組織の切除)が必要である。
・デブリドマンとは、感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のことである。つまり、壊死組織や感染した組織、異物を創から除去することで、健康な組織が新たに形成されるのを助ける。これは感染創の治療である。

3.× 一次縫合は、不適切である。なぜなら、犬咬傷は感染リスクが非常に高いため。一次縫合により、閉鎖すると細菌が閉じ込められ、化膿や膿瘍形成を助長する。
・創傷治癒には、一次治癒(一次縫合)と二次治癒(二次縫合)がある。一次治癒とは、創縁と創縁が密着し、創縁と創縁の間に瘢痕をほとんど形成せずに治癒する状態をいう。二次治癒とは、創縁と創縁の間に肉芽組織を形成し瘢痕となり治癒に至ることをいう。

4.〇 抗菌薬投与は、適切な処置である。なぜなら、犬咬傷による感染症の予防に寄与できるため。

 

 

 

 

 

問題47.輸血の副作用で正しいのはどれか。

1.滴下速度と無関係に発生する。
2.移植片対宿主反応(GVHD)がある。
3.発疹は出現すると長時間持続する。
4.腎不全は不適合輸血直後に起こる。

解答

解説
1.× 滴下速度と「無関係」ではなく関係に発生する。したがって、輸血を開始するときは、輸血による事故(副作用などの出現)を考慮し、最初の10~15分は1mL/分程度の速度でゆっくりと輸血を行う。副作用がないことを確認したら、5mL/分程度の速度で輸血を行う。速すぎる滴下速度は、循環過負荷や急性肺水腫を引き起こす可能性があり、また、遅すぎる滴下速度は、輸血製剤が滅菌不全になるリスクが高まる。

2.〇 正しい。移植片対宿主反応(GVHD)がある。なぜなら、輸血によって生じたリンパ球が患者体内で増殖し、宿主を攻撃することで輸血後移植片対宿主反応(GVHD)が起こるため。
・輸血後移植片対宿主病(PT-GVHD:Post-transfusion graft-versus-host disease)は、輸血後数日から数週間経過してから起こる。輸血後移植片対宿主とは、輸血後に受血者の体内で供血者のリンパ球が生着し、受血者の組織を攻撃する病態である。つまり、輸血製剤中の供血者のリンパ球が増殖し、受血者の組織を攻撃する反応である。家族間の輸血で生じやすい。予防で最も効果が確実なのは、輸血用血液製剤に放射線照射を行い、血液製剤に含まれるリンパ球を排除することである。症状として、輸血後1~2週間で発熱・紅斑が出現し、肝障害・下痢・下血等の症状を伴うとともに、骨髄無形成・汎血球減少症、多臓器不全を呈して、ほとんどの症例で輸血から1カ月以内に致死的経過をたどる。

3.× 発疹は出現すると「長時間持続する」とは一概に言えない
輸血に関連した発疹は、通常輸血を中止するとすぐに消失することが多い。なぜなら、輸血副作用で見られる発疹の多くはアレルギー反応による一過性のものであるため。また、「長時間」持続するという長時間が具体的に何時間であるのかあいまいであるため、選択しにくい。

4.× 腎不全は不適合輸血「直後」ではなく数時間後(経過の中)に起こる。なぜなら、腎不全はその後の溶血による腎障害の結果として二次的に起こるため。抗原抗体反応により引き起こされ、補体系、凝固系、内分泌系を活性化する。ショック、DIC、急性腎不全を起こす可能性がある。

 

 

 

 

 

問題48.麻酔で誤っているのはどれか。

1.胃液の誤嚥による肺炎をメンデルソン(Mendelson)症候群という。
2.悪性高熱症ではアルカローシスを起こす。
3.筋弛緩薬使用時は呼吸管理が必要である。
4.前投薬の目的の一つに気道分泌の抑制がある。

解答

解説
1.〇 正しい。胃液の誤嚥による肺炎をメンデルソン(Mendelson)症候群という
・メンデルソン症候群とは、手術中に胃の中のものが誤って気管や肺に入ってしまい、強い炎症や呼吸障害を起こす状態である。特に妊婦や空腹でない患者に起こりやすく、肺が胃酸でやけどをしたようなダメージを受けるのが特徴である。

2.× 悪性高熱症では、「アルカローシス」ではなくアシドーシスを起こす。なぜなら、悪性高熱症は、筋収縮に伴う代謝亢進により「ATP消費 → 乳酸産生 → 代謝性アシドーシス」を起こすため(詳しくは下参照)。
・悪性高熱症とは、通常は脱分極性筋弛緩薬と強力な揮発性の吸入全身麻酔薬の併用に対する代謝亢進反応により生じる体温上昇である。全身麻酔薬の使用中に発症し、急激な体温上昇や異常な高熱・頻脈・筋硬直・ミオグロビン尿などを特徴とする。遺伝性があるため、術前に家族歴や既往を聴取することが重要である。治療としては麻酔の中止、ダントロレン投与、全身冷却などを行う。

3.〇 正しい。筋弛緩薬使用時は呼吸管理が必要である。なぜなら、筋弛緩薬は、横隔膜や肋間筋も麻痺させるため、自発呼吸が止まりやすくなるため。

4.〇 正しい。前投薬の目的の一つに気道分泌の抑制がある。なぜなら、麻酔導入前の前投薬には、不安軽減・消化管内容物減少・気道分泌抑制など複数の目的があるため。

【全身麻酔前投薬の目的】

①術前鎮静、抗不安作用などの快適性
②口腔内、気道内分泌液の抑制、迷走神経反射の抑制
③誤嚥(誤嚥性肺炎)
※麻酔薬の増強効果を期待して前投与されることもある。

MEMO

代謝性アルカローシスは、嘔吐などで起こる。嘔吐により胃液(酸性)が失われ、HCO3−が高値となるのが特徴である。一方、代謝性アシドーシスとは、HCO₃⁻(重炭酸イオン)が低下している状態である。重炭酸イオンを含んだ膵液や胆汁の喪失、腎臓での再吸収障害、体内の酸性物質が過剰になり、その中和のための消費増大によって起こる。代償として、CO₂を排出する呼吸代償(呼吸性アルカローシス)が起こる。

 

 

 

 

 

問題49.対処法で誤っている組合せはどれか。

1.喀血:気管支動脈カテーテル塞栓術
2.鼻出血:ベロックのタンポン法
3.出血性胃潰瘍:内視鏡的止血術
4.心タンポナーデ:冠動脈ステント留置

解答

解説
1.〇 正しい。喀血:気管支動脈カテーテル塞栓術
・気管支動脈カテーテル塞栓術とは、大量に血を吐く原因となる気管支の血管をふさぐ治療である。足の付け根などから細い管(カテーテル)を血管の中に入れ、出血している気管支の動脈まで進める。そこに薬や小さな粒を流して血管をふさぎ、出血を止める方法である。
・喀血とは、気道(気管・肺)から出血した時に見られる出血である。気道の出血が少量であれば痰に血が混じっている状態、血痰という。喀血は血液そのものを咳とともに吐く状態である。一方、吐血との区別は口から血が出たときに伴う症状で区別する。①喀血:下気道(気管支肺)からの出血、②吐血:上部消化管からの出血がある。したがって、喀血は吐血と比べると赤みが強く、泡が混じることが多く、固まりにくいという特徴がある。

2.〇 正しい。鼻出血:ベロックのタンポン法
・ベロックのタンポン法とは、ガーゼタンポン(綿球)を用い、鼻腔に挿入して鼻出血(特に後鼻出血)に対する止血法である。

3.〇 正しい。出血性胃潰瘍:内視鏡的止血術
・出血性胃潰瘍とは、胃の粘膜が深くただれて血管が傷つき、出血している状態である。胃酸やストレス、薬(痛み止めなど)が原因で胃の壁が溶けてしまうことが多い。症状としては、黒い便(タール便)や吐血、強い胃の痛み、めまいなどがある。放置すると貧血やショックを起こすこともあるため、早めの治療が必要である。
・出血性胃潰瘍による内視鏡的止血術とは、胃潰瘍からの出血を内視鏡を使って止める治療である。口から細いカメラ付きの管を入れ、出血している場所を直接見ながら処置を行う。血を止めるために、薬を注射したり、金属のクリップで血管をはさんだり、熱を加えて焼き固める方法などがある。

4.× 冠動脈ステント留置は、「心タンポナーデ」ではなく心筋梗塞(急性冠症候群)に行う。
・心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。根本的治療は心嚢穿刺(またはドレナージである。
・冠動脈ステント留置とは、心臓の血管(冠動脈)が細くなったり詰まったりした部分を広げる治療である。まず、細い管(カテーテル)を手首や足の血管から入れ、狭くなった場所まで進める。そこで風船をふくらませて血管を広げ、その中に金属の筒(ステント)を置いて血管が再び狭まらないように支える。

 

 

 

 

 

問題50.循環血液量減少性ショックをきたしうる病態はどれか。

1.熱傷
2.急性心筋梗塞
3.敗血症
4.緊張性気胸

解答

解説

循環血液量減少性ショックとは?

循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。

1.〇 正しい。熱傷は、循環血液量減少性ショックをきたしうる病態である。なぜなら、熱傷では毛細血管透過性亢進によって血漿成分が血管外に漏出し、血漿量が著しく減少するため。

2.× 急性心筋梗塞は、心原性ショックをきたしうる病態である。なぜなら、急性心筋梗塞では心筋壊死により心ポンプ機能が低下し、ショックが生じるため。
・心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。

3.× 敗血症は、敗血症性ショック(分布異常性ショック)をきたしうる病態である。なぜなら、敗血症ではサイトカインの過剰放出により血管が拡張し、相対的な循環血液量不足をきたすたため。
・血液分布異常性ショックとは、血管の特定箇所が何らかの異常により拡張した結果、相対的に循環血液量が減少し、起こるショックである。循環血液量は正常に保たれているのが特徴である。例えば、アナフィラキシーショックである。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。アレルギー反応によって血管透過性が亢進し、血管内外の血液分布が乱れるため、血液分布異常性ショックの原因となる。

4.× 緊張性気胸は、閉塞性ショックをきたしうる病態である。なぜなら、緊張性気胸では胸腔内圧が急激に上昇し、心臓の拡張が妨げられることでショックが生じるため。
・閉塞性ショックとは、心臓は元気で循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのが原因でショックとなるものである。原因としては、肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などがあげられ、胸痛、頻呼吸、頻脈、患側の呼吸音低下と胸郭運動低下、低血圧などの症状がみられる。

緊張性気胸とは?

緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。

 

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