第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午後81~85】

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問題81.橈骨骨幹部円回内筋付着部遠位骨折の転位で正しい組合せはどれか。

1.近位骨片回内位:遠位骨片中間位
2.近位骨片回外位:遠位骨片回内位
3.近位骨片中間位:遠位骨片回内位
4.近位骨片回外位:遠位骨片中間位

解答

解説

円回内筋

【起始】上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側
【停止】橈骨外側面の中央部
【作用】肘関節回内、屈曲
【支配神経】正中神経。

1.× 近位骨片回内位:遠位骨片中間位
4.× 近位骨片回外位:遠位骨片中間位
これら、遠位骨片が中間位となることは考えにくい。なぜなら、遠位骨片は、円回内筋の張力の影響を受けるため。

2.× 近位骨片回外位:遠位骨片回内位
これは、橈骨骨幹部円回内筋付着部「近位」骨折の転位でおきやすい。なぜなら、近位骨片は、回外・屈曲位(回外筋・上腕二頭筋)の作用を受け、円回内筋の張力の影響を受けないため。

3.〇 正しい。近位骨片中間位:遠位骨片回内位
これは、橈骨骨幹部円回内筋付着部「遠位」骨折の転位で正しい組合せである。なぜなら、近位骨片は、回外・屈曲位(回外筋・上腕二頭筋)の作用に対し、円回内筋の張力と相殺するように作用するため。

 

 

 

 

 

問題82.コーレス(Colles)骨折の合併症で正しいのはどれか。

1.尺骨茎状突起骨折は屈曲骨折第1型の機序で発生する。
2.長母指伸筋腱断裂は受傷時に発生する。
3.手根骨骨折の合併は月状骨に多くみられる。
4.掌側傾斜角の減少により屈曲制限が出現する。

解答

解説

コーレス骨折とは?

コーレス骨折は、橈骨遠位端部伸展型骨折のことで、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。

1.× 尺骨茎状突起骨折は、屈曲骨折第1型の機序で発生する「とはいえない(別の機序である)」。
・尺骨茎状突起骨折は、コーレス骨折の合併症の一つであるが、屈曲骨折ではない。屈曲骨折型(2型)はスミス骨折である。
・尺骨突き上げ症候群とは、手首の小指側にある尺骨が橈骨より長くなり、手を使うとその突き出た部分が手首の軟骨や靱帯を圧迫して痛みを引き起こす状態である。

2.× 長母指伸筋腱断裂は、「受傷時」ではなく受傷数週間後(遅発性)に発生する。なぜなら、長母指伸筋腱断裂の原因は、骨折部周囲の骨棘による摩耗や腱の循環障害であるため。したがって、受傷から2〜6週間後に「急に親指が伸ばせなくなった」と訴えて発見されることが多い。

3.× 手根骨骨折の合併は、「月状骨」ではなく舟状骨に多くみられる。なぜなら、転倒して手をついた際に衝撃が橈骨遠位端と舟状骨に集中するため。一方、月状骨は脱臼の方が多く、骨折はまれ。

4.〇 正しい。掌側傾斜角の減少により、屈曲制限が出現する。なぜなら、橈骨遠位端は、本来 10〜15°の掌側傾斜を持っており、これが消失・減少すると屈曲方向での運動余裕が失われるため。つまり、背側傾斜になってしまうと、伸展は比較的維持されるが、屈曲は制限される。

 

 

 

 

 

問題83.手舟状骨骨折で多いのはどれか。

1.結節部
2.近位1/3部
3.腰部
4.遠位1/3部

解答

解説

手舟状骨骨折とは?

手舟状骨骨折とは、サッカーなどの運動時に後ろ向きに転倒して、手関節背屈で手をついた時に受傷することが多い。10〜20代のスポーツ競技者によくみられる骨折である。急性期では、手首の母指側が腫れ、痛みがある。急性期を過ぎると一時軽快するが、放置して骨折部がつかずに偽関節になると、手首の関節の変形が進行し、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また動きにくくなる。

1.× 結節部のの骨折は、比較的まれである(※参考文献も少ない)。なぜなら、舟状骨結節は、靱帯や筋の付着が強くないため。

2.× 近位1/3部は、舟状骨骨折の約2割である。ただし「頻度が高い部位」ではなく、「合併症が多い部位」として重要である。なぜなら、舟状骨の血流は遠位から近位へ流入しているため、近位部骨折では血行が途絶しやすく、骨癒合不全や壊死を残しやすいため。

3.〇 正しい。腰部(中央部)は、舟状骨骨折の最多部位(約6割)である。なぜなら、舟状骨は手関節の荷重軸上に位置しており、転倒時に手をつくと力が舟状骨腰部(中央部)に集中するため。

4.× 遠位1/3部は、舟状骨骨折の約1割である。なぜなら、舟状骨遠位部は関節面が広く、衝撃が分散されやすいため。

 

 

 

 

 

問題84.上前腸骨棘裂離骨折の骨片転位を起こすのはどれか。2つ選べ。

1.縫工筋
2.大腿直筋
3.大腿筋膜張筋
4.長内転筋

解答1・3

解説
1.〇 正しい。縫工筋は、上前腸骨棘裂離骨折の骨片転位を起こす。なぜなら、縫工筋は、上前腸骨棘に起始を持つため。したがって、裂離骨折の骨片を牽引して転位させる。
・縫工筋の【起始】上前腸骨棘、【停止】脛骨粗面の内側(鵞足を形成)、【作用】股関節屈曲、外転、外旋、膝関節屈曲、内旋、【神経】大腿神経である。

2.× 大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲である。

3.〇 正しい。大腿筋膜張筋は、上前腸骨棘裂離骨折の骨片転位を起こす。なぜなら、大腿筋膜張筋は、上前腸骨棘に起始を持つため。したがって、裂離骨折の骨片を牽引して転位させる。
・大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転。膝関節伸展、【支配神経】上殿神経である。

4.× 長内転筋の【起始】恥骨結節の下方、【停止】大腿骨粗線内側唇の中部1/3、【作用】股関節内転、屈曲、【支配神経】閉鎖神経前枝である。

 

 

 

 

 

問題85.ダッシュボード損傷で起こりにくいのはどれか。

1.小転子骨折
2.後十字靭帯断裂
3.膝蓋骨骨折
4.股関節後方脱臼

解答

解説
1.× 小転子骨折は、ダッシュボード損傷では起こりにくい。なぜなら、小転子は、大腿骨近位部内側(深層)にあり、ダッシュボード損傷(膝前面を打ちつけて大腿骨に後方への力が加わる外力機序)では関与しにくいため。
・ルドロフ徴候とは、大腿骨の小転子が腸腰筋の収縮によって引きちぎられる「裂離骨折」をしたときに起こる徴候である。イスなどに座ったときに、膝関節以上に足を上げることができなくなるが、あおむけになった場合は可能となる所見である。

2.〇 後十字靭帯断裂は、ダッシュボード損傷では起こりやすい。なぜなら、ダッシュボード損傷は、受傷時、脛骨が後方に押し込まれるため。
・後十字靭帯は、脛骨の後方への逸脱を防ぐ靭帯である。検査は、膝屈曲位での下腿の後方落ち込み現象(サギング)を観察する。

3.〇 膝蓋骨骨折は、ダッシュボード損傷では起こりやすい。なぜなら、膝蓋骨に、直達外力が加わるため。

4.〇 股関節後方脱臼は、ダッシュボード損傷では起こりやすい。なぜなら、膝がダッシュボードに押されると、大腿骨頭が股関節に後方へ押し込まれ、関節包や靱帯を破って後方に脱臼するため。

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)

【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など

 

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