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問題66.骨嚢腫による上腕骨骨折が起こりやすいのはどれか。
1.骨頭部
2.近位骨幹端部
3.骨幹中央部
4.顆上部
解答2
解説
孤立性骨嚢腫とは、良性の骨腫瘍で、骨の中に空洞ができるまれな疾患である。好発部位は上腕骨・大腿骨近位骨幹端であり、女性に比較し男性に多く、発症平均年齢は9 歳前後と報告されている。特段症状のない場合は放置、病的骨折を起こす可能性が高い場合、実際に病的骨折を起こした場合などは手術適応となる。
1.3~4.× 骨頭部/骨幹中央部/顆上部より、骨嚢腫の好発部位が他にある。
2.〇 正しい。近位骨幹端部は、骨嚢腫による上腕骨骨折が起こりやすい。なぜなら、この部位は力学的ストレスがかかりやすく、嚢腫による骨脆弱化で骨折が生じやすいため。単純性骨嚢腫は小児〜青年期に発症し、特に上腕骨近位と大腿骨近位に好発する。
問題67.転倒後、腰痛を訴える患者。体幹側屈で疼痛が増強し、膝関節屈曲の坐位からの股関節屈曲運動でも痛みが増強した。
考えられるのはどれか。
1.腰椎椎間板ヘルニア
2.チャンス骨折
3.腰部脊柱管狭窄症
4.腰椎肋骨突起骨折
解答4
解説
・転倒後、腰痛を訴える患者。
・体幹側屈で疼痛が増強。
・膝関節屈曲の坐位からの股関節屈曲運動でも痛みが増強。
→ほかの選択肢の消去できる理由をあげられるようにしよう。
1.× 腰椎椎間板ヘルニアは考えにくい。なぜなら、腰椎椎間板ヘルニアの受傷機転は、重い物を急に持ち上げたり、前かがみで体をねじったりしたときに、椎間板に強い圧力がかかって発症することが多いため。また、体幹側屈で疼痛が増強するとは考えにくく、腰椎椎間板ヘルニアは坐骨神経痛主体であるため。
・腰椎椎間板ヘルニアとは、線維輪(外縁部分)と髄核(中心部)の主に線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことである。L4/5とL5/S1が好発部位である。
2.× チャンス骨折は考えにくい。なぜなら、チャンス骨折の受傷機転は、一般的に交通外傷で発生するため。
・チャンス骨折とは、脊椎の過剰な屈曲により生じる脊椎骨折である。通常、第1腰椎~第4腰椎におこりやすい。原因は、2点シートベルト装着状態での衝突事故などで起こる。症状には腹部の痣(シートベルトの痕)があげられる。したがって、疼痛による起立・歩行・前屈運動制限、棘突起の限局性圧痛などが起こる。約半数のチャンス骨折は、脾破裂、小腸損傷、腎臓損傷、腸間膜の破裂などの腹部の外傷と関連している。※備考:骨折線は棘突起、椎弓根、椎弓、椎体を通る。
3.× 腰部脊柱管狭窄症は考えにくい。なぜなら、脊柱管狭窄症は加齢性変化に伴う慢性疾患で、転倒後急に腰痛が出現する疾患ではないため。
・腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。
4.〇 正しい。腰椎肋骨突起骨折が最も考えられる。
・腰椎肋骨突起骨折とは、腰の骨(腰椎)から横に出ている細い骨の突起(肋骨突起)が折れるけがである。転倒や交通事故、スポーツでの強い衝撃、あるいは腰に直接力が加わったときに起こる。多くは強い腰の痛みが出るが、神経の障害は少ないことが多いである。
問題68.好発年齢と骨損傷の組合せで正しいのはどれか。
1.幼児期:腰椎圧迫骨折
2.思春期:脛骨粗面裂離骨折
3.壮年期:上腕骨外科頸骨折
4.老年期:腓骨疲労骨折
解答2
解説
1.× 腰椎圧迫骨折は、「幼児期」ではなく老年期(高齢者)に多い。むしろ、幼児期に腰椎圧迫骨折はまれである。なぜなら、幼児は骨が柔軟で骨梁が強いため。腰椎圧迫骨折は、骨粗鬆症を背景とする高齢者に多い。
・老年期とは、一般的に65歳以上をいう。
2.〇 正しい。思春期:脛骨粗面裂離骨折
なぜなら、成長期には脛骨粗面の骨端核が未成熟で、大腿四頭筋の強い牽引力(ジャンプ・ダッシュなど)で裂離骨折を起こしやすいため。特に、スポーツ活動の盛んな思春期男子に多い。
・脛骨粗面裂離骨折とは、骨端線閉鎖前の活動性の高い14歳~16歳に好発し、比較的まれな骨折(全骨端線損傷例中 0.4%)である。原因として、大腿四頭筋の収縮や膝蓋腱に対する脛骨粗面部の脆弱性が関与していると考えられ、跳躍、着地時等の牽引力による急性発症となる。
3.× 上腕骨外科頸骨折は、「壮年期」ではなく老年期(高齢者)に多い。なぜなら、上腕骨外科頸骨折は骨粗鬆症を背景に転倒した高齢女性に多い骨折であるため。
・上腕骨外科頸骨折とは、上腕骨の骨折の中で、特に高齢者に多く発生する骨折の一つであり、骨頭から結節部にかけての太い部分から骨幹部に移行する部位で発生する。
・壮年期とは、30歳代から60歳代くらいまでを指す。
4.× 腓骨疲労骨折は、「老年期」ではなく思春期に多い。
なぜなら、疲労骨折は繰り返しの微小外力により骨が疲弊して起こるため。したがって、激しいスポーツを行う思春期〜青年期に多い。
疲労骨折とは、1回の大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいう。好発部位は、腰椎が半数以上を占める。次に、中足骨35%、脛骨27%、肋骨12%、腓骨9%、尺骨・大腿骨・足関節の内側がそれぞれ3%である。
問題69.右大腿骨骨幹部骨折後24時間で脂肪塞栓症を疑う所見はどれか。
1.体温が36.4℃
2.右大腿から膝部の皮下出血斑
3.呼吸数が14/分
4.脈拍数が110/分
解答4
解説
脂肪塞栓症候群とは、大腿骨をはじめとする長管骨骨折や髄 内釘手術を契機に、非乳化脂肪滴である中性脂肪が循環系に流入し、肺、脳、皮膚に脂肪塞栓症をきたし、呼吸器症候、中枢神経症候、皮膚点状出血などを呈する症候群である。長管骨骨折での発生率は0.9∼2.2%とされている。
1.× 体温は、「36.4℃」ではなく発熱(微熱〜高熱)を伴う。なぜなら、脂肪塞栓症では炎症性サイトカインの放出によるため。大腿骨骨折後にSpO₂低下・呼吸困難・発熱を呈したら脂肪塞栓症を強く疑う。
2.× 「右大腿から膝部の皮下出血斑」ではなく皮膚点状出血を伴う。なぜなら、骨折した大腿骨の中の脂肪が血液中に流れ出し、全身の細い血管に詰まることで起こるため。皮膚の小さな血管(毛細血管)が詰まると血液がにじみ出し、赤い点のような出血斑ができる。特に胸や首、脇の下などに見られることが多い。
・皮下出血斑とは、皮下出血(内出血)したときに紫色のアザのことである。紫斑病ともいう。内出血が起こるメカニズムは、何かにぶつかるなど外部からの衝撃が身体に加わることにより皮膚や皮下の組織が壊れてしまい出血が身体の内部だけに溜まることで起こる。つまり、原因としては転倒などによる打撲や打ち身、捻挫が多く、ひどい肉離れなどでみられる。
3.× 呼吸数は、「14/分」ではなく頻呼吸を伴う。なぜなら、脂肪塞栓症は肺毛細血管に脂肪滴が詰まってガス交換障害を起こすため。したがって、低酸素血症により呼吸数が増加する。
4.〇 正しい。脈拍数が110/分(頻脈)は、脂肪塞栓症で伴う。なぜなら、低酸素血症や循環不全に対する代償反応として心拍数が上昇するため。
問題70.運動枝のみの神経症状を呈するのはどれか。
1.手根管症候群
2.総腓骨神経麻痺
3.前骨間神経麻痺
4.肘部管症候群
解答3
解説
1.× 手根管症候群は、運動障害だけでなく感覚障害も出る。つまり、感覚枝の神経症状も呈する。
・手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。
2.× 総腓骨神経麻痺は、運動障害だけでなく感覚障害も出る。つまり、感覚枝の神経症状も呈する。
・総腓骨神経麻痺とは、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫などによって、腓骨神経の機能不全をきたしている状態である。腓骨神経は、感覚(下腿外側、足背)や運動(足関節および足趾の背屈)を支配しているため、下腿の外側から足背ならびに足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり、触った感じが鈍くなる。また、足首と足の指が背屈(上に反る)できなくなり、下垂足となる。
3.〇 正しい。前骨間神経麻痺は、運動枝のみの神経症状を呈する。なぜなら、前骨間神経は正中神経から分岐し、長母指屈筋・示指深指屈筋・方形回内筋を支配するが、感覚枝は含まないため。
・前骨間神経麻痺とは、涙のしずくサイン陽性(母指と示指の第1関節の屈曲ができなくなる)、皮膚の感覚障害は見られない場合、疑われる神経麻痺のことである。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査など必要に応じて行う。
4.× 肘部管症候群は、運動障害だけでなく感覚障害も出る。つまり、感覚枝の神経症状も呈する。
・肘部管症候群とは、尺骨神経が肘関節背面内側にある尺側骨手根屈筋下の肘部管を通過する際に生じる絞拒性障害である。尺骨神経麻痺を来し、指の開閉運動障害や鷲手変形を生じる。
前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。
【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。
→涙のしずくが陽性。
【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。