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問題86.大腿骨近位部骨折で正しいのはどれか。
1.転子貫通骨折では下肢の延長がみられる。
2.中間部骨折では下肢が内旋位を呈する。
3.転子間骨折では外反股がみられる。
4.骨頭下骨折では大転子高位がみられる。
解答4
解説
1.× 転子貫通骨折では、下肢の延長がみられる「とはいえない」。なぜなら、大腿骨転子部は強力な筋群(腸腰筋、大殿筋、中殿筋など)が付着しており、骨折すると筋牽引により骨片が互いに重なって短縮転位を起こすため。
2.× 中間部骨折では、下肢が「内旋位」ではなく外旋位を呈する。なぜなら、外旋筋群や重力の作用により、大腿骨遠位骨片が外旋方向に引っ張られるため。
3.× 転子間骨折では、「外反股」ではなく内反股がみられる。なぜなら、転子間骨折では骨折部がつぶれるように転位し、頸体角が減少するため。
4.〇 正しい。骨頭下骨折では、大転子高位がみられる。なぜなら、大腿骨転子部は強力な筋群(腸腰筋、大殿筋、中殿筋など)が付着し、牽引により下肢短縮と外旋を起こすため。したがって、結果として大転子が相対的に高い位置に観察される。
問題87.足根骨骨折で正しいのはどれか。
1.立方骨骨折は外脛骨との鑑別を要する。
2.距骨骨折は過剰仮骨形成を起こしやすい。
3.舟状骨骨折は直達外力によるものが多い。
4.踵骨骨折ではベーラー角が減少しやすい。
解答4
解説
1.× 立方骨骨折と外脛骨は、鑑別対象ではない。なぜなら、立方骨骨折と外脛骨は、解剖学的位置が異なるため。
・外脛骨とは、足の舟状骨の内側に位置する骨をいう。正常な人の15%程度にみられる足の内側にある余分な骨である。
・立方骨骨折とは、原因により2種類に分けられ、①直達外力(粉砕骨折、縦骨折、骨片骨折となる)、②介達外力(中足骨から踵骨間に挟まれる、舟状骨骨折に合併など)である。症状として、腫脹、限局性圧痛、第4~5中足骨からの介達痛、回内外運動制限、荷重痛、前足部変形などがみられる。まれにリスフラン関節脱臼を合併することがある。
2.× 距骨骨折は、「過剰仮骨形成」ではなく骨壊死を起こしやすい。なぜなら、距骨は血流が乏しいため。
・距骨骨折は、足根骨の中では踵骨の次に多い骨折である。転倒時など足部が背屈位に強制されたときに脛骨の前方部が距骨の頚部に衝突して骨折が生じる。距骨体部の阻血性壊死が起こりやすい。
3.× 舟状骨骨折は、「直達外力」ではなく介達外力によるものが多い。なぜなら、舟状骨は足のアーチ中央に位置し、踵からの力が前足部に伝わるるため。
・足舟状骨骨折とは、①体部骨折と②粗面骨折に分かれる。一般的に、介遠外力によることが多い。①舟状骨体部骨折は、転落時の強い圧追などであり、②舟状骨粗面骨折は、足部の外転(後脛骨筋の牽引)などにより起こる。症状として、腫脹、限局性圧痛、骨片突出、第1~3中足骨からの介達痛、荷重痛、步行困難(踵での歩行は可能)、足関節の回内・外制限などがみられる。外傷性扁平足が残ると難治性の足痛となる。外脛骨や第1ケーラー病との鑑別が必要である。
4.〇 正しい。踵骨骨折ではベーラー角が減少しやすい。なぜなら、踵骨骨折は高所からの転落で足底から強い外力が加わり、踵骨後方関節面が陥没して高さが減少するため。
・ベーラー角(Böhler角)とは、X線足部側面像で踵骨隆起の上端と踵骨の上方頂点を結ぶ線、および、踵骨の上方頂点と前距骨関節面の先端を結ぶ線がなす角のことで、20~30°である。
・踵骨骨折とは、足根骨骨折の中で最も頻度が高く、受傷機転の多くは高所からの転落による高エネルギー直達外力である。踵骨骨折のうち関節内骨折は65〜75%を占めるとされる。踵骨の大部分は海綿骨であり骨癒合は良好とされる。その反面、骨萎縮や可動域制限による疼痛などの機能障害が残存しやすい病態であり、適切な時期に的殺な治療を行うことが予後を大きく左右するとされる。
問題88.胸鎖関節脱臼と肩鎖関節脱臼とに共通するのはどれか。
1.小児の発生頻度が高い。
2.上方脱臼が最も多い。
3.直達外力で発生しやすい。
4.変形が残存しやすい。
解答4
解説
胸鎖関節は、鎖骨近位端が胸骨と接する部分で、前に解説した肩鎖関節の反対に位置している。胸鎖関節脱臼は、衝突や墜落などで、肩や腕が後ろ方向に引っ張られた際に、鎖骨近位端が、第1肋骨を支点として前方に脱臼することが多い。ずれの少ない軽症である場合見た目の変化は少なく、肩鎖関節を押したり肩を動かした時に、肩鎖関節に一致した痛みを感じる。ずれが大きくなると、鎖骨の出っ張りが明らかとなり、損傷が大きくなるため周囲が腫れる。青壮年に多発し幼少児には少なくコンタクトスポーツをやる人に多く発生する。
1.× 小児の発生頻度が高い「とはいえない」。むしろ、胸鎖関節脱臼も肩鎖関節脱臼も、小児よりも 成人に多い。なぜなら、小児では関節の靭帯や骨端部が柔らかく、外力が加わると「脱臼」ではなく「骨端線損傷(骨折)」になることが多いため。
2.× 上方脱臼が最も多いのは、肩鎖関節脱臼である。一方、胸鎖関節脱臼は、前方脱臼が多い。
3.× どちらも「直達外力」ではなく介達外力で発生しやすい。なぜなら、肩鎖関節脱臼は、肩峰部を打撲して外力が肩鎖関節に伝わることで生じ、胸鎖関節脱臼も肩関節から伝わる外力で起こることが多いため。
4.〇 正しい。変形が残存しやすい。なぜなら、どちらも解剖学的に浅く不安定で、靭帯損傷を伴うため。したがって、整復後も転位が残りやすい。例えば、肩鎖関節脱臼では「ピアノキー徴候」として鎖骨遠位端の突出が残る。ピアノキー症状は、肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることである。上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くこと。肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示している。
問題89.肩鎖関節損傷のトッシー(Tossy)分類で重要なのはどれか。
1.腫脹
2.圧痛
3.反跳症状
4.運動制限
解答3
解説
炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
1~2.4.× 腫脹/圧痛/運動制限は、Tossy分類の判定基準ではない。これらは、炎症症状の一つであるが、打撲や骨折でも起こるため、特異的な所見とはいえない。
3.〇 正しい。反跳症状(ピアノキー徴候)は、肩鎖関節損傷のトッシー分類で重要である。肩鎖関節脱臼(肩鎖関節の損傷)には、トッシー分類(Tossy分類)がある。3型に分けられ、
Grade1:靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、レントゲンで明らかな関節のずれはない。触診では肩鎖関節部の突出はなく軽度の圧痛がある。
Grade2:肩鎖靱帯の損傷があり、レントゲンで亜脱臼位を呈する。触診で肩鎖関節の圧痛と軽度の動揺性がある。
Grade3:肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、レントゲンで完全脱臼位を呈する。触診で肩鎖関節部に一致した突出があり、同部を押すとピアノの鍵盤の様な浮き沈みを認める。
ピアノキー症状は、肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることである。上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くこと。肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示している。
問題90.肩関節前方脱臼で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.鎖骨下脱臼は烏口下脱臼に比べ外転角度が大きい。
2.バンカート損傷は上腕骨頭外側の欠損をいう。
3.ヒル・サックス損傷は再脱臼の原因となる。
4.スティムソン法による整復は背臥位で行う。
解答1・3
解説
烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。
1.〇 正しい。鎖骨下脱臼は、烏口下脱臼に比べ外転角度が大きい。なぜなら、受傷時の肩関節外転角度が関係するため。
・鎖骨下脱臼は、肩関節外転時に起こりやすい。肩関節外転すると、肩甲骨が上向きに回転し、鎖骨も後ろ上方に動くため、鎖骨の内側端に強い力が加わる。
・烏口下脱臼は、外転が比較的小さい角度で起こり、上腕骨頭が烏口突起の下にずれ込む形になる。そのため、鎖骨下脱臼はより大きな外転角度で発生するのである。
2.× バンカート損傷は、「上腕骨頭外側の欠損」ではなく関節唇損傷をいう。
・バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。
3.〇 正しい。ヒル・サックス損傷は、再脱臼の原因となる。なぜなら、陥没(圧迫)骨折により、関節窩に引っかかって再脱臼を起こしやすくなるため。
・ヒルサックス損傷とは、肩関節が脱臼した際に、上腕骨頭の後外側が、肩甲骨の角に押し付けられる力がかかり、陥没(圧迫)骨折を起こした状態をいう。
4.× スティムソン法による整復は、「背臥位」ではなく腹臥位で行う。
・スティムソン法とは、患者を腹臥位にしてベッドの横から患肢を垂れさせ、患者の手に重りをつけ、重りの力で自然整復を促す方法である。