第24回(H28年)柔道整復師国家試験 解説【午後91~95】

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問題91.成人の肘関節後方脱臼で合併しにくいのはどれか。

1.上腕骨内側上顆骨折
2.尺骨鉤状突起骨折
3.内側側副靭帯断裂
4.尺骨神経損傷

解答

解説

肘関節後方脱臼とは?

好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間

1.× 上腕骨内側上顆骨折は、「成人」の肘関節後方脱臼で合併しにくい。上腕骨内側上顆骨折の合併症として、肘関節後方脱臼はあげられるが、特に小児においては生じることが多い。なぜなら、小児は、上腕骨内側上顆の骨端核が未発達で靱帯より弱く、外反ストレスが加わると靱帯が切れずに骨が裂離しやすいため。

2.〇 尺骨鉤状突起骨折は、「成人」の肘関節後方脱臼で合併しやすい。なぜなら、肘関節が後方へ脱臼する際に尺骨鉤状突起が上腕骨滑車に引っかかり、骨片が折れることが多いため。

3.〇 内側側副靭帯断裂は、「成人」の肘関節後方脱臼で合併しやすい。なぜなら、肘関節の安定性は靭帯によって保たれており、脱臼時にはこれらが一緒に損傷・断裂するため。

4.〇 尺骨神経損傷は、「成人」の肘関節後方脱臼で合併しやすい。なぜなら、尺骨神経は肘関節の後内側を走行しているため。後方脱臼の際に牽引や圧迫で損傷を受けやすい。

MEMO

上腕骨内側上顆骨折の合併症として、肘関節後方脱臼、橈骨頭骨折、上腕骨小頭骨折、尺頭骨折(成人)である。後遺症として、①機能障害:肘関節伸展障害、前腕回内運動制限、②変形:内反肘、③神経障害:遅発性尺骨神経麻痺である。

 

 

 

 

 

問題92.股関節脱臼でローゼル・ネラトン線より大転子が高位となるのはどれか。

1.腸骨脱臼
2.恥骨上脱臼
3.恥骨下脱臼
4.中心性脱臼

解答

解説
1.〇 正しい。腸骨脱臼は、股関節脱臼でローゼル・ネラトン線より大転子が高位となる。なぜなら、大腿骨頭が腸骨側後上方へ転位するため。
・腸骨脱臼/坐骨脱臼とは、後方脱臼に分類される股関節脱臼である。股関節に屈曲・内転・内旋力に大腿長軸に外力(ダッシュボード)による介達外力で生じる。症状として、股関節(下肢)屈曲・内転・内旋位となる。ほかにも、①大転子高位、②股関節部の変形、③股関節部の無抵抗、④弾発性固定となる。

2.× 恥骨上脱臼とは、大腿骨頭が恥骨の上方、つまり体の前方に移動する股関節の前方脱臼を指す。股関節過伸展・外転・外旋(恥骨上脱臼)への介達外力で生じる。症状として、軽度屈曲・外転・強度外旋位となる。ほかにも、①骨頭を鼠蹊部に触知、②大腿の運動とともに骨頭の移動が確認、③弾発性抵抗、④他動的内転不能、⑤殿部の隆起現象、⑥大転子の触知不能などがみられる。

3.× 恥骨下脱臼は、大腿骨頭が恥骨の下方、つまり体の後方に移動する股関節の前方脱臼を指す。症状として、強度屈曲・外転・外旋となる。鼡径靱帯の下に転位した骨頭の隆起を認め、殿部の隆起、大転子の突出は触知できない

4.× 中心性脱臼とは、大腿骨頭が寛骨臼を突き破るような脱臼のことである。長年放置していると、股関節部の骨破壊が進み、脆弱した臼底が微小な骨折と修復を繰り返し菲薄化して寛骨臼底突出(股関節の中心性脱臼)が起こる。

股関節後方脱臼とは?

股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。

【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)

【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など

 

 

 

 

 

問題93.膝蓋骨外側脱臼で正しいのはどれか。

1.Q角の減少は発生要因となる。
2.膝の肢位に関係なく脱臼するものを習慣性脱臼という。
3.自然整復されることはまれである。
4.アプリヘンションサインがみられる。

解答

解説

膝蓋骨外側脱臼とは?

概要:膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)が外傷などにより外側にずれてしまい、関節から外れてしまった状態である。膝関節の形態的特徴により、10代の女性に生じることが多く、受傷者の20~50%の方が脱臼を繰り返す「反復性脱臼」へ移行する。

【原因】ジャンプの着地などで、膝を伸ばす太ももの筋肉(大腿四頭筋)が強く収縮した時に起こる。

【症状】炎症期は、膝関節の痛みや腫れが生じる。慢性期:脱臼を繰り返す(反復性脱臼)ようになると痛みや腫れなどは少なくなり、不安定感を強く訴える。

【治療】脱臼後、直ちに整復を行う。ほとんどの患者では鎮静や鎮痛は不要である。

1.× Q角の「減少」ではなく増大は、発生要因となる。なぜなら、Q角が大きいと、大腿四頭筋の力が外側へ働き、膝蓋骨が外方へ引っ張られやすくなるため。
・Q角(Quadliceps Angle:Q angle)とは、大腿四頭筋が膝蓋骨を引っ張る力を示す力線のことである。「上前腸骨棘と膝蓋骨の真ん中とを結んだ直線」と「膝蓋骨の真ん中と脛骨粗面の上縁とを結んだ直線」の交わる角度である。

2.× 膝の肢位に関係なく脱臼するものを「習慣性脱臼」ではなく恒常性脱臼という。
【膝蓋骨脱臼の分類(4つ)】
・外傷性脱臼とは、強い外力により脱臼するもの。
・反復性脱臼とは、初回脱臼後何度も脱臼を繰り返すもの。
・習慣性脱臼とは、同じ姿勢によって毎回脱臼するもの。
・恒常性脱臼とは、姿勢に関係なく常に脱臼しているもの。

3.× 自然整復されることは、「まれ」ではなく多い。なぜなら、膝を伸展させると大腿四頭筋の牽引で膝蓋骨が自然に正しい位置に戻るため。

4.〇 正しい。アプリヘンションサインがみられる
・アプリヘンションサインは、膝蓋骨の不安定性、及び不安定感を観察する検査である。膝蓋骨を外側に偏位させることで検査する。繰り返しの脱臼や亜脱臼が続くと、合併症である膝蓋大腿関節の軟骨軟化症や変形性関節症に移行する。症状の繰り返しと受傷直後の膨隆、その後の膨隆消失は、膝蓋骨の一時的な脱臼とその後の自然還復を示している可能性がある。

 

 

 

 

 

問題94.神経症状をみる検査でないのはどれか。

1.a
2.b
3.c
4.d

解答

解説
1.〇 aは、神経症状をみる検査である。Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。方法として、被験者は頸部伸展し、検査者が上から下に押し下げる。このとき肩や上腕、前腕、手などに痛みやしびれが誘発されるかどうかで神経根に障害が生じているか否かを診断する。

2.× bは、神経症状をみる検査ではない。Edenテスト(エデンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、患者は座位になり胸を張った状態で両方の肩関節を伸展する。検査者は橈骨動脈の拍動をモニターして約1分程度保持する。橈骨動脈の拍動が減弱または消失した場合、胸郭出口症候群と判断する。

3.〇 cは、神経症状をみる検査である。ファーレン徴候とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。正中神経の障害により陽性となる。。

4.〇 dは、神経症状をみる検査である。FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

 

 

 

 

 

問題95.絞扼性神経障害の原因となるのはどれか。

1.梨状筋
2.多裂筋
3.腸腰筋
4.中殿筋

解答

解説
1.〇 正しい。梨状筋は、絞扼性神経障害の原因となる。なぜなら、坐骨神経は、梨状筋の下を走行しており、筋緊張や肥厚により圧迫されると坐骨神経痛が出現するため。
・梨状筋症候群とは、坐骨神経が大坐骨切痕と梨状筋との間で圧迫を受ける絞扼性神経障害で、大腿後面のしびれを生じる。代表的な症状は坐骨神経痛、梨状筋部の痛みや圧痛、足首・足指が動きにくくなるなどである。

2.× 多裂筋は、脊柱起立筋群の深層にある姿勢保持筋である。多裂筋の【起始】仙骨後面、全腰椎の乳頭突起、全胸椎の横突起、第4~5頸椎までの関節突起、【停止】腰椎以上軸椎までの棘突起である。

3.× 腸腰筋とは、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる筋肉である。
①腸骨筋の【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経である。
②大腰筋の【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝である。

4.× 中殿筋の【起始】腸骨翼の外面で前および後殿筋線の間、腸骨稜外唇および殿筋筋膜、【停止】大転子の外側面、【作用】股関節外転、前部:内旋、後部:外旋、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。中殿筋の力が働くことで、大転子が転位する可能性がある。

 

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