この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
問71 脱臼で誤っている組み合わせはどれか。
1.肩鎖関節上方脱臼:肩鎖靱帯損傷
2.肩関節烏口下脱臼:バンカート損傷
3.肘関節後方脱臼:関節包後面断裂
4.示指MP関節脱臼:掌側板断裂
答え.3
解説
好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間
1.〇 正しい。肩鎖関節上方脱臼:肩鎖靱帯損傷
肩鎖関節上方脱臼時のピアノキー症状は、肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることである。上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くこと。肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示している。
2.〇 正しい。肩関節烏口下脱臼:バンカート損傷
バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。
3.× 肘関節後方脱臼は、関節包「後面」ではなく前面断裂が起こる。
肘関節後方脱臼の好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間
4.〇 正しい。示指MP関節脱臼:掌側板断裂
掌側板とは、四角い線維軟骨性の板で、関節の掌側にひろがってその底部を形成している。停止部の厚さは2~3mmであるが、中枢に向かって薄くなり、弾力性のある膜状構造となっている。
烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。
問72 誤っている組み合わせはどれか。
1.手根管症候群:正中神経
2.肘部管症候群:尺骨神経
3.円回内筋症候群:橈骨神経
4.ギヨン(Guyon)管症候群:尺骨神経
答え.3
解説
1.〇 正しい。手根管症候群:正中神経
手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。
2.〇 正しい。肘部管症候群:尺骨神経
肘部管症候群とは、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫され、小指・薬指がしびれたり、手が使いにくくなる病気である。肘関節を十分に曲げた状態を続けることでしびれ、痛みが悪化するかどうかを見る(誘発テスト)。症状が悪化する場合は肘屈曲テスト陽性と判断する。
3.× 円回内筋症候群は、「橈骨神経」ではなく正中神経である。
円回内筋症候群とは、円回内筋の支配神経で上肢腹側の真ん中を通っている正中神経が、肘関節周辺で圧迫されて痛みや痺れ、筋肉の衰えなどの症状を起こす疾患である。
4.〇 正しい。ギヨン(Guyon)管症候群:尺骨神経
ギヨン管:Guyon管は、尺骨神経管ともいい、豆状骨と有鈎骨、そして豆鈎靱帯によって形成されたトンネル(管)のことである。通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。Guyon管症候群は、尺骨神経麻痺が起こる。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
問73 初期評価でないのはどれか。
1.業務範囲であるかどうかの判断
2.患者が自己管理するための助言
3.クリティカルパスに沿った説明
4.治癒に至る治療プログラムの設定
答え.2
解説
PDCAサイクルは、計画(P)→実施(D)→再評価(C)→アセスメント(A)というサイクルのことを指す。ケアプランと利用者のニーズとの問にミスマッチがある場合をモニタリングで発見し、利用者の状況に応じた修正をする必要がある。
1.〇 正しい。業務範囲であるかどうかの判断は、初期評価である
評価を基に、対応できるかどうかを判断する。
2.× 患者が自己管理するための助言は、初期評価でない。
これは、評価・計画(P)を経て、PDCAサイクルの実施(D)に該当する。
3.〇 正しい。クリティカルパスに沿った説明は、初期評価である。
初期評価の段階で患者に説明することが求められる。
ちなみに、クリティカルパスとは、良質な医療を効率的、かつ安全、適正に提供するための手段として開発された診療計画表である。同一疾患の患者に対する医療の質の均一化(標準化)・向上にも寄与する。
4.〇 正しい。治癒に至る治療プログラムの設定は、初期評価である。
これは、初期評価を行い、計画(P)に該当する。
問74 受傷1週間以内に行う指導管理で正しい組み合わせはどれか。
1.上腕骨顆上骨折:疼痛増強時には患部を十分冷却させる。
2.橈骨遠位端骨折:手指の自動運動を積極的に行わせる。
3.アキレス腱断裂:固定状態での患肢荷重訓練をさせる。
4.前距腓靱帯損傷:就寝時に踵部を床に接地させる。
答え.2
解説
上腕骨顆上骨折とは、小児の骨折中最多であり、ほとんどが転倒の際に肘を伸展して手をついた場合に生じる。転移のあるものは、肘頭が後方に突出してみえる。合併症は、神経麻痺(正中・橈骨神経)、フォルクマン拘縮(阻血性拘縮)、内反肘変形などである。ちなみに、フォルクマン拘縮とは、前腕屈筋群の虚血性壊死と神経の圧迫性麻痺により拘縮を起こすものである。
1.× 上腕骨顆上骨折は、「疼痛増強時」ではなく炎症時には患部を十分冷却させる。炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。
2.〇 正しい。橈骨遠位端骨折:手指の自動運動を積極的に行わせる。なぜなら、患部外の関節の筋力低下や関節可動域制限、浮腫を予防するため。
3.× アキレス腱断裂は、固定状態での患肢荷重訓練をさせるべきではない。なぜなら、再断裂の可能性が高いため。荷重訓練を開始する場合、医師の指示と許可が必要で、主に理学療法士が病院内で実施する。
4.× 前距腓靱帯損傷は、就寝時に踵部を床に接地させるべきではない。なぜなら、前距腓靱帯損傷の場合、前方引き出しテストが陽性となり、就寝時に踵部を床に接地すると、損傷部位に負荷がかかりすぎるため。ちなみに、足関節の前方引き出しテストとは、前距腓靭帯の安定性を見る。足関節は軽度底屈位で、踵を包むようにして前方へ引き出す。陽性の場合、患側の距骨は健側と比較して前方へ引き出される。また距骨が亜脱臼するため、足を戻す際、患者の痛みの訴えとともに「カクッ」という動きを触知できる。ちなみに、外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。
アキレス腱断裂は、完全断裂と部分断裂にわけられる。したがって、断裂の程度に応じて保存療法と手術療法のどちらかに選択される。
【保存療法の治療】最大6週間、アキレス腱にストレスが加わらないようにする。大腿中央から足MP関節手前まで副子固定を行い、膝関節:90°屈曲位、足関節:最大底屈位または自然下垂位にする。このときに、踵部は、アキレス腱断裂の固定において圧迫がかかりやすい部位である。固定装置が踵部に適切な圧力を与えることで、アキレス腱の治療に必要な安定性が確保されるが、その反面、皮膚障害が生じやすい。
問75 胸腰椎移行部圧迫骨折で誤っているのはどれか。
1.脊柱屈曲位でしりもちをつき発生する。
2.受傷椎高位に一致する帯状痛がみられる。
3.腹部膨満感を訴える。
4.脊髄損傷を合併しやすい。
答え.4
解説
圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。椎体骨折(圧迫骨折)の場合は、画像所見で①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少などがみられる。好発部位は、第11~12胸椎、第1腰椎である。これは、この部位が脊椎のカーブ(胸腰椎移行部)に位置し、骨の強度と比較してストレスが集中するためである。
胸椎椎体圧迫骨折とは、高所からの転落、尻もちなどが原因として、第6~8胸椎に好発する。破傷風の痙攣発作や電気ショック療法でも生じる。症状として、棘突起突出:亀背、凸背、疼痛による起立・歩行・前屈運動制限、棘突起の圧痛・叩打痛、受傷椎高位の帯状痛、椎体楔状変形などがみられる。脱臼骨折の形でなければ脊髄損傷の合併は少ない。
1.〇 正しい。脊柱屈曲位でしりもちをつき発生する。骨粗鬆症を伴った女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。
2.〇 正しい。受傷椎高位に一致する帯状痛がみられる。なぜなら、圧迫骨折により、損傷部位の神経根が刺激されると、帯状痛(皮膚分節に沿った痛み)を生じるため。
3.〇 正しい。腹部膨満感を訴える。なぜなら、背骨が歪んで腹部を圧迫するため。腹部が圧迫されると胃が圧迫され、胃液が食道へ逆流する逆流性食道炎を引き起こす可能性もある。
4.× 脊髄損傷を合併しやすい「とはいえない」。なぜなら、胸腰椎移行部(Th12-L1)の圧迫骨折では、脊髄円錐や馬尾神経が関与するため。
(※画像引用:医療法人鉄蕉会様HP)