第25回(H29年)柔道整復師国家試験 解説【午後56~60】

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問56 骨形成不全症でみられないのはどれか。

1.青色強膜
2.水頭症
3.難聴
4.大腿骨弯曲変形

答え.2

解説
1.3~4.青色強膜/難聴/大腿骨弯曲変形は、骨形成不全症でみられる。骨形成不全症とは、「骨が非常にもろい」という特徴を持つ、遺伝性の病気である。骨形成不全症の90%以上の症例では、結合組織の主要な成分であるⅠ型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1,COL1A2)により、質的あるいは量的異常が原因で発症するとされている。症状として、骨折のしやすさ、骨の変形などの骨の弱さに加え、成長障害、目の強膜が青い、歯の形成が不十分、難聴、関節皮膚が伸びやすい、背骨の変形による呼吸の障害、心臓の弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。
【治療】①内科的治療(骨粗鬆症に使用されるビスホスホネート製剤投与)、②外科的治療(骨折した際に外科的な骨接合術、四肢の変形に対して骨切り術、四肢の長い骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入術、背骨の変形に対する矯正固定術など)が行われる。

2.× 水頭症は、骨形成不全症でみられない。正常圧水頭症とは、脳脊髄液(髄液)の循環障害によって拡大した脳室が、頭蓋骨内面に大脳半球を押しつけることにより、数々の脳の障害を引き起こす一連の病態である。①認知症、②尿失禁、③歩行障害の三徴がみられる。脳外科的な手術であるシャント術で改善する。

 

 

 

 

 

問57 神経疾患の所見で正しい組み合わせはどれか。

1.脊髄空洞症:解離性感覚障害
2.ポリオ:腱反射亢進
3.筋萎縮性側索硬化症:感覚障害
4.神経性進行性筋萎縮症:内反足

答え.1

解説
1.〇 正しい。脊髄空洞症:解離性感覚障害
脊髄空洞症とは、脊髄内に脳脊髄液が溜まって空洞ができ、神経症状や全身症状を引き起こす病気である。脊髄中心付近に発生するため、脊髄内中心を横切るように通る温痛覚神経が障害されやすく、深部感覚は比較的影響されにくい。このように、感覚障害でも温痛覚のみが低下して深部感覚が保たれている現象を解離性感覚障害という。ちなみに、分節性感覚障害とは、あるデルマトームに支配される領域で、片側性にみられる感覚障害をいう。

2.× ポリオは、腱反射「亢進」ではなく低下~消失となる。
ポリオ〈急性灰白髄炎〉は、ポリオウイルスによって引き起こされ、伝播は主に経口(飲食物)を通じて感染するものである。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。

3.× 筋萎縮性側索硬化症は、感覚障害(陰性徴候)はみられにくい。筋萎縮性側索硬化症とは、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

4.× 神経性進行性筋萎縮症は、「内反足」ではなく下垂足がみられる。
神経性進行性筋萎縮症とは、脊髄前角にある運動神経細胞の変性がおこり、進行性に筋力低下・筋萎縮を呈する運動神経疾患である。

 

 

 

 

 

問58 化膿性骨髄炎について誤っているのはどれか。

1.感染経路に骨付着の化膿創からの波及がある。
2.初発時から骨膜反応を認める。
3.化膿巣の周囲は骨柩を形成する。
4.成人では基礎疾患として糖尿病がある。

答え.2

解説

化膿性骨髄炎とは?

化膿性骨髄炎とは、骨髄を中心に骨皮質や骨膜にも細菌が感染して起こる炎症である。代表的な病原体は黄色ブドウ球菌(MRSAを含みます)であり、その他にもA群溶連菌、B群溶連菌、サルモネラ菌、肺炎球菌、緑膿菌などがあげられる。

1.〇 正しい。感染経路に骨付着の化膿創からの波及がある。化膿性骨髄炎の感染経路には以下の3つがある。
①血行性感染(小児に多い):ブドウ球菌(黄色ブドウ球菌が最多)などが血流を介して骨に感染。成長期の小児では骨端近くの血流が豊富な部位(特に大腿骨や脛骨)に好発する。
外傷や手術部位からの直接感染(成人に多い):開放骨折、手術(整形外科手術後)、人工関節置換術 などがリスクである。外傷による細菌の直接侵入や手術部位の感染から発症することがある。
③隣接部位の感染からの波及(波及性感染)(糖尿病患者に多い):褥瘡(床ずれ)や糖尿病性足潰瘍からの感染が骨に及ぶことがある。慢性骨髄炎に移行しやすい。

2.× 「初発時」ではなく進行後(1~2週間前後)から骨膜反応を認める。なぜなら、骨膜反応には時間を要すため。ちなみに、骨膜反応とは、悪性骨腫瘍による骨膜の刺激や、腫瘍の増殖に伴った骨膜の持ち上がりを呼ぶ。疲労骨折、骨髄炎、好酸球性肉芽腫などでも認められる。

3.〇 正しい。化膿巣の周囲は骨柩を形成する。急性期では白血球や炎症細胞が集まり、膿瘍を形成し、感染が長引くと血流が途絶えた骨が死んで、壊死した部分(骨柩) ができるため。ちなみに、骨柩(※読み:こっきゅう)とは、感染や血流障害(骨髄炎)により壊死した骨片(骨変化)のことである。

4.△ 必ずしも、成人では基礎疾患として糖尿病があると断言していいものか・・・(とはいえ、選択肢の優先度から、こちらのほうが正しいといえる)。成人の化膿性骨髄炎は、基礎疾患(特に糖尿病)を持つ人に多い。この理由として、
①血流障害(末梢動脈疾患):免疫細胞が感染部位に届きにくい。
②神経障害(糖尿病性神経障害):足の傷や潰瘍に気づかず、感染が悪化。
③高血糖状態:好中球の機能低下により感染に対する抵抗力が落ちる。
④代表的な病態:糖尿病性足病変(足潰瘍からの感染)。
があげられる。つまり、糖尿病患者の足潰瘍から細菌が骨に波及し、化膿性骨髄炎を発症することが多い。慢性化しやすく、最悪の場合は下肢切断に至ることもある。

 

 

 

 

 

問59 関節リウマチの脱臼・変形でないのはどれか。

1.肘関節の内反変形
2.尺骨頭の背側亜脱臼
3.股関節の中心性脱臼
4.外反母趾変形

答え.1

解説

関節リウマチの変形

①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などがある。

1.× 肘関節は、「内反変形」ではなく屈曲拘縮が起こりやすい。

2.〇 正しい。尺骨頭の背側亜脱臼は生じやすい。尺骨頭が背側脱臼し、疼痛や前腕回外障害、伸筋腱断裂の原因となる。

3.〇 正しい。股関節の中心性脱臼は生じやすい。中心性脱臼とは、大腿骨頭が寛骨臼を突き破るような脱臼のことである。長年放置していると、股関節部の骨破壊が進み、脆弱した臼底が微小な骨折と修復を繰り返し菲薄化して寛骨臼底突出(股関節の中心性脱臼)が起こる。

4.〇 正しい。外反母趾変形は生じやすい。外反母趾とは、足の親指が小指側に変形し、「くの字」になる状態である。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問60 変形性膝関節症にみられないのはどれか。

1.運動開始時の痛み
2.大腿四頭筋萎縮
3.関節液混濁
4.骨棘形成

答え.3

解説

変形性膝関節症とは?

変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。

1.〇 運動開始時の痛みは、変形性膝関節症にみられる。したがって、日常生活の指導では、歩行前に座位で足踏みなど軽く運動するよう伝えることが多い。

2.〇 大腿四頭筋萎縮は、変形性膝関節症にみられる。原因としては、膝関節の疼痛・不活動によるためと考えられている。

3.× 関節液混濁は、変形性膝関節症にみられない。変形性関節症で貯留する関節液は通常、淡黄色透明で、関節液が混濁している場合には、関節リウマチ・偽痛風・化膿性関節炎などを疑う。

4.〇 骨棘形成は、変形性膝関節症にみられる。骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症や変形性股関節症などでよく見られる。レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。

 

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