第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問36 うっ血性心不全の患者で歩行時に呼吸困難や動悸を生じるNYHA分類はどれか。2つ選べ。

1.Ⅰ度
2.Ⅱ度
3.Ⅲ度
4.Ⅳ度

答え.2・3

解説

NYHA心機能分類

NYHA分類(New York Heart Association functional classification)は、自覚症状から判断する心不全の重症度分類である。

Ⅰ度:心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。
Ⅱ度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの。安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発言するもの。
Ⅲ度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの。安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。
Ⅳ度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、労作によりそれらが増強するもの。

1.× Ⅰ度は、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないものを指す。

2~3.〇 正しい。Ⅱ度/Ⅲ度は、うっ血性心不全の患者で歩行時に呼吸困難や動悸を生じるNYHA分類である。設問において、歩行の状況設定がないため、坂道歩行の可能性も考えられる。したがって、Ⅱ度・Ⅲ度の場合もあり得る。

4.× Ⅳ度の場合、安静時でも愁訴が出現する。

 

 

 

 

 

問37 神経障害が出現するのはどれか。

1.溶血性貧血
2.鉄欠乏性貧血
3.再生不良性貧血
4.ビタミンB12欠乏性貧血

答え.4

解説

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

1.× 溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。これにより、血液中の赤血球の数が減少し、貧血状態になる。溶血性貧血は、血液中のビリルビン(赤血球の分解産物)の量が増加することで黄疸となる。

2.× 鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

3.× 再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などが指定されている。

4.〇 正しい。ビタミンB12欠乏性貧血は、神経障害が出現する。葉酸欠乏・ビタミンB12欠乏によって、DNA合成障害になったものを巨赤芽球性貧血という。心筋梗塞、脳梗塞を発症しやすくなり、高齢者においては認知症も発症しやすくなるといわれている。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。

 

 

 

 

 

問38 慢性腎不全の原因とならないのはどれか。

1.高血圧
2.糖尿病
3.尿崩症
4.糸球体腎炎

答え.3

解説

慢性腎不全とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.〇 正しい。高血圧は、慢性腎不全の原因となる。なぜなら、持続的な高血圧状態は、腎臓の血管に負担をかけ、腎機能の低下を引き起こすため。腎臓は血圧を調節する役割も果たしており、高血圧が腎臓に悪影響を及ぼすと、悪循環が生じる。

2.〇 正しい。糖尿病は、慢性腎不全の原因となる。なぜなら、糖尿病による慢性的な高血糖状態は、腎臓の糸球体に負担を与え、腎機能の低下を引き起こすため。蛋白尿(アルブミン尿)が出ることによって、糖尿病性腎症と呼ばれる合併症を発症する。

3.× 尿崩症は、慢性腎不全の原因とならない。尿崩症とは、多尿 (3L/日以上)を呈し、多尿と希釈尿を引き起こす状態である。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。

4.〇 正しい。糸球体腎炎は、慢性腎不全の原因となる。なぜなら、糸球体腎炎(腎臓の糸球体が炎症状態)により、腎機能が低下するため。糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

糖尿病性腎症とは?

糖尿病性腎症とは、糖尿病の合併症で、糖尿病によって高血糖状態が持続し、腎臓の内部に張り巡らされている細小血管が障害を受けることで発症する。悪化すると腎不全に移行し、血液透析などが必要となる。糖尿病性腎症の場合、徐々に病気が進行するため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要である。糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%と最も多い割合を占めている。一般的な糖尿病の食事療法としては、標準体重と身体活動量により摂取エネルギー量を算出し、50~60%が糖質、蛋白質が20%までとし、残りは脂質とする。また、糖尿病腎症の治療には血糖・血圧コントロールが重要であり、腎症 3 期(顕性腎症)では、食塩制限に加えたんぱく質摂取量にも注意が必要である。これは、たんぱく質や塩分がさらに腎臓に対し負担をかけるためである。つまり、①エネルギー量の管理、②食塩量の制限、③タンパク質量の調整が必要となる。

 

 

 

 

 

問39 膀胱炎の症状はどれか。

1.高熱
2.頻尿
3.浮腫
4.背部叩打痛

答え.2

解説

急性膀胱炎とは?

急性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起きることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。症状として、頻尿や残尿感などである。

1.4.× 高熱/背部叩打痛は、腎盂腎炎の症状である。腎盂腎炎とは、尿を出すところから細菌(大腸菌など)が入り込み、膀胱から腎臓まで感染が広がることである。膀胱炎と同様に排尿時痛、頻尿、残尿感などの症状に加え、発熱、全身倦怠感などの全身症状、腰や背中の痛み、悪心、嘔吐などの消化器症状などがあげられる。

2.〇 正しい。頻尿は、膀胱炎の症状である。急性膀胱炎とは、機能的・形態的に尿路に異常のない人の膀胱炎である。 原因として、女性では尿意を我慢したり、冷えや月経が原因で起きることがある。また、妊娠や便秘、性交渉などが誘因となって起こる。症状として、頻尿や残尿感などである。

3.× 浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

 

尿路感染症

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し
薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」総合南東北病院様HPより)

 

 

 

 

 

問40 発汗過多、眼球突出、頻脈および手指振戦を示すのはどれか。

1.アジソン(Addison)病
2.クレチン病
3.バセドウ(Basedow)病
4.クッシング(Cushing)病

答え.3

解説
1.× アジソン(Addison)病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

2.× クレチン病とは、先天性の甲状腺機能低下症であり、独特の顔貌と低身長、知能低下を来たす。症状として、元気がない、体重が増えない、かすれた声、手足が冷たい、むくみ、皮膚がカサカサ、黄疸が長引く、出べそが目立つ、舌がぼってり大きい、小泉門が大きいなどがみられる。

3.〇 正しい。バセドウ(Basedow)病は、発汗過多、眼球突出、頻脈および手指振戦を示す。バセドウ病とは、甲状腺刺激ホルモン受容体に対する自己抗体による甲状腺機能亢進症である。

4.× クッシング(Cushing)病とは、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

 

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