この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
問91 肘関節後方脱臼の転位で正しいのはどれか。
1.関節包の後外側面が断裂する。
2.上腕骨遠位端が後方へ転位する。
3.橈骨頭は上腕骨小頭の外側面に接する。
4.尺骨鈎状突起は上腕骨滑車の後壁に接する。
答え.4
解説
好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間
1.× 関節包の「後外側面」ではなく前面が断裂する。
2.× 「上腕骨遠位端」ではなく尺骨近位端(肘頭)が後方へ転位する。
3.× 橈骨頭は上腕骨小頭の外側面に接する場合、「橈骨単独脱臼の側方脱臼」に該当する。肘関節後方脱臼の場合は、「橈骨後方脱臼」を伴いやすい。つまり、橈骨頭は上腕骨小頭の後面に接する。
4.〇 正しい。尺骨鈎状突起は上腕骨滑車の後壁に接する。
誤り。尺骨鈎状突起(coronoid process of the ulna)は通常、肘関節の前方に位置しています。肘関節後方脱臼の場合、尺骨の上端(鈎状突起)が上腕骨滑車(trochlea)からずれることになりますが、「後壁に接する」という表現は正確ではありません。正しくは、尺骨鈎状突起は上腕骨滑車の後方に位置するようになることが多いです。
(※図引用:「上腕骨 完全脱臼」illustAC)
問92 股関節後方脱臼で正しいのはどれか。2つ選べ。
1.股関節過伸展時に股関節の外転、外旋が強制され発生する。
2.転位した大腿骨頭の隆起が鼡径部の皮下で触れる。
3.整復障害因子として関節包裂孔部の狭小がある。
4.下肢の重さと重力を利用した整復法としてスティムソン法がある。
答え.3・4
解説
股関節後方脱臼は、坐骨神経麻痺が生じやすい。膝および股関節を屈曲させた状態で膝に対して後方に強い力が加わった結果生じる(例:自動車のダッシュボードにぶつかる)。ちなみに、分類として、腸骨脱臼、坐骨脱臼が後方脱臼であり、恥骨上脱臼、恥骨下脱臼が前方脱臼である。
【症状】弾発性固定(股関節屈曲・内転・内旋位)、大転子高位、下肢短縮、関節窩の空虚、股関節部の変形(殿部後上方の膨隆:骨頭を触れる)
【続発症】阻血性大腿骨頭壊死、外傷性股関節炎、骨化性筋炎など
1.× 股関節過伸展時に股関節の外転、外旋が強制され発生するのは、「股関節前方脱臼(恥骨上脱臼)」である。股関節後方脱臼は、股関節が屈曲、内転、内旋強制され、衝撃的に大腿骨が後方へ押されて生じる。
2.× 転位した大腿骨頭の隆起が鼡径部の皮下で触れるのは、「股関節前方脱臼」である。股関節後方脱臼は、 転位した大腿骨頭の隆起が殿部の皮下で触れる。
3.〇 正しい。整復障害因子として「関節包裂孔部の狭小」がある。他にも、整復障害因子として、骨盤骨骨折の合併/骨頭と関節窩の間の筋の介在/ボタン穴機構などがあげられる。
4.〇 正しい。下肢の重さと重力を利用した整復法として「スティムソン法」がある。他にも、整復方法として、牽引法、回転法(コッヘル法)があげられる。ちなみに、スティムソン法とは、股関節脱臼を腹臥位で整復する方法で、患者を腹臥位にしてベッドの横から患肢を垂れさせ、患者の手に重りをつけ、重りの力で自然整復を促す方法である。
問93 距腿関節脱臼で正しいのはどれか。
1.前方脱臼では前足部が短縮してみえる。
2.後方脱臼では足が伸展位に固定される。
3.内方脱臼では足が回内している。
4.外方脱臼では足背が内方に向く。
答え.4
解説
1.× 前足部が短縮してみえるのは、「前方脱臼」ではなく後方脱臼である。距腿関節の後方脱臼の原因として、足部の底屈強制により生じ、骨折を合併することが多い。また、症状として踵骨部の後方突出、前足部の短縮、足部底屈位、足背面に脛骨端突出、アキレス腱部が後方凹の弓状彎曲などがあげられる。骨折を合併するものは観血療法を実施する。
2.× 足が伸展位(背屈位)に固定されるのは、「後方脱臼」ではなく前方脱臼である。距腿関節の前方脱臼の原因として、足部の背屈強制により生じ、距骨以下が前方へ脱転する。症状として、足関節の軽度背屈位、前足部延長、踵骨隆起部消失、アキレス腱の両側に両果が位置、両果端が足底に近接などがあげられる。脛骨関節面前縁の骨折を伴うものが多い。
3.× 内方脱臼では、足が「回内」ではなく回外している。距腿関節の内側脱臼(内方脱臼)の原因として、足部の内転・内旋強制で生じ、多くは果部内転型骨折を伴う。症状として、足の回外、腓骨端突出などである。距骨骨折、踵骨骨折を伴うこともある。
4.〇 正しい。外方脱臼では、足背が内方に向く。距腿関節の外側脱臼(外方脱臼)の原因として、足部の外転・外旋強制により生じる。内側脱臼より多い。足部外転、内果突出し完全脱臼を伴う。一方で、距骨は内果下方による不全脱臼または外果の下や外側にある完全脱臼などである。外旋脱臼では足尖が90°外方へ、足の内縁が前方へ向き、
問94 橈骨動脈の拍動を調べないのはどれか。
1.アドソンテスト
2.ライトテスト
3.モーリーテスト
4.アレンテスト
答え.3
解説
1.〇 アドソンテスト(Adsonテスト)の陽性は、胸郭出口症候群を疑う。患者の頭部を検査側に回旋させ、患側上肢を伸展・外転位に保持し、橈骨動脈の拍動を確認したのち、患者に頭部を伸展・深呼吸させる。そして、再び橈骨動脈の拍動を確認する。
2.〇 ライトテスト(Wrightテスト)陽性は、胸郭出口症候群において陽性となる。座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。
3.× モーリーテストは、橈骨動脈の拍動を調べない。Morley test(モーレイテスト、モーリーテスト)は、胸郭出口症候群の誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。
4.〇 アレンテスト(Allenテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、肩関節を90°外転・外旋、肘関節を90°屈曲位に保持させ、頭部を健側に回旋させて橈骨動脈の脈拍をみる。障害側の橈骨動脈の拍動が減弱あるいは消失すれば陽性である。
問95 リトルリーガー肩はソルター・ハリス分類ではどれか。
1.Ⅰ型
2.Ⅱ型
3.Ⅲ型
4.Ⅳ型
答え.1
解説
リトルリーガー肩とは、野球肩のひとつで、反復した投球動作によって起こる。使いすぎ障害として徐々に発症する場合が多い。リトルリーガー肩とは、成長過程にある少年、中学生前後では腕の骨の付け根に骨が伸びるための成長線が残っており、繰り返しの投球による牽引と回旋の力がかかることで、成長線を損傷することをいう。症状は、投球時の肩付近の痛みで発症する。痛みは投げるたびに徐々に強くなり、じっとしていても痛みを感じることがある。肩全体の痛みを訴えることが多いが、診察すると腕の付け根の外側に押すと痛い場所がある。ちなみに、野球肩は、滑液包炎、棘上筋腱炎、上腕二頭筋腱炎、肩甲上神経麻痺による棘下筋萎縮、インピンジメント症候群、上腕骨骨端線障害(リトルリーグ肩)など多くが含まれる。
1.〇 正しい。リトルリーガー肩は、ソルター・ハリス分類Ⅰ型である。タイプⅠは、骨折線が成長板をまっすぐ通って進むものをさす。骨端線の完全分離である。
2.× Ⅱ型は、骨折線が成長板の上方へ伸びる、または成長板から離れて伸びるものをさす。骨端線の完全分離と骨幹端の三角骨片である。
3.× Ⅲ型は、骨折線が成長板の下方へ伸びるものをさす。骨端線の分離と骨端の骨片である。
4.× Ⅳ型は、骨折線が骨幹端、成長板、および骨端を通過して伸びるものをさす。骨幹端から関節軟骨にわたり縦断されたものである。
ソルター・ハリス分類(Salter-Harris分類)とは、成長板(骨端線)の骨折を評価するための一般的な分類法である。小児は大人と違って骨端に軟骨が挟まっており、そこから骨が成長する。タイプⅡは最も一般的なタイプで、成長板と骨端の一部が関与するが、多くの場合、完全に治癒し、長期的な成長障害を引き起こすことは少ない。Salter-Harris法では異なる型に分類される。骨折がⅠ型からⅤ型に進むに従い、成長障害のリスクが高まる。
タイプⅠ:骨折線が成長板をまっすぐ通って進む。骨端線の完全分離である。
タイプⅡ:骨折線が成長板の上方へ伸びる、または成長板から離れて伸びる。骨端線の完全分離と骨幹端の三角骨片である。
タイプⅢ:骨折線が成長板の下方へ伸びる。骨端線の分離と骨端の骨片である。
タイプⅣ:骨折線が骨幹端、成長板、および骨端を通過して伸びる。骨幹端から関節軟骨にわたり縦断されたものである。
タイプⅤ:成長板が押しつぶされている。骨端軟骨が圧挫されたものである。
成長板だけでなく骨端も含む損傷(タイプⅢ~Ⅳ)または成長板を圧縮する損傷(タイプⅤ)は、予後不良である。