第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後66~70】

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問66 小児骨折で誤っているのはどれか。

1.骨折の治癒過程で骨に過成長が起こる。
2.幼小児の脛骨骨幹部では骨膜下骨折が起こりやすい。
3.骨は柔軟性に富んでいるため粉砕骨折を生じることは少ない。
4.骨のリモデリングが盛んで捻転転位の自家矯正は顕著である。

答え.4

解説

骨折の種類

①完全骨折とは、骨が完全にぼきっと折れてしまっている状態である。一般的な骨折とはこの完全骨折を意味する。
②不全骨折とは、何らかの理由により骨が連続性を完全に失わない状態の骨折を指す。いわゆる骨にヒビが入っている状態である亀裂骨折や、緻密層以下の部分が離断しているにも関わらず骨膜に損傷がないため、外形的には変化が見られない骨膜下骨折などがこの不全骨折の典型例である。

1.〇 正しい。骨折の治癒過程で骨に過成長が起こる。なぜなら、小児骨折の治癒機転に伴う血流の増加によって、骨端軟骨板での成長が促進されるため。

2.〇 正しい。幼小児の脛骨骨幹部では骨膜下骨折が起こりやすい。なぜなら、小児の骨の特徴として、骨膜が厚くしなやかであるため。ちなみに、骨膜下骨折とは、不完全骨折のひとつで、骨そのものが完全に離断しているが、骨膜の損傷が全くない状態である。このため骨がずれるなど骨片が散ることがなく、治癒に有利に働くことが多い。骨膜は、骨の表面にある薄い膜で、骨の保護や形成、栄養などにかかわる。

3.〇 正しい。骨は柔軟性に富んでいるため粉砕骨折を生じることは少ない。なぜなら、小児の骨の特徴として、骨膜が厚くしなやかであるため。粉砕骨折とは、ばらばらに折れるような折れ方をした骨折を指す。

4.× 骨のリモデリングが盛んで「あるが」、捻転転位の自家矯正は顕著「である」とはいえない。ちなみに、自家矯正とは、骨折が曲がったまま、変形してくっついたとしても、自然にまっすぐになっていくことをいう。若いほど自家矯正能は高いとされているが、回旋変形は特に自家矯正されにくく、矯正可能な変形の強さは部位や程度、年齢によって変わる。

転移の種類

転位とは、骨折などで骨片が本来の位置からずれた状態にあることをいう。骨転位ともいう。骨折時の衝撃で起こる転位を一次性転位と呼び、骨折後の運搬時などの力で起こる転位を二次性転位と呼ぶ。転位は、形状によっても分類される。完全骨折の場合、一カ所の骨折でも複数種類の転位が見られることが多い。転位の見られる骨折の治療では、整復によって骨を本来の位置に戻してから固定する必要がある。
①側方転位とは、骨折によって分断された骨が側方に平行移動したものをいう。
②屈曲転位とは、傾くように曲がって角度がついたものをいう。
③捻転転位とは、ねじれるように軸回転したものをいう。
④延長転位とは、離れるように動いたものをいう。
⑤短縮転位とは、すれ違うように移動し重なったものをいう。

 

 

 

 

 

問67 骨折と後遺症の組み合わせで正しいのはどれか。

1.前腕骨骨折:過剰仮骨形成
2.肋骨骨折:ズデック(Sudeck)骨萎縮
3.踵骨骨折:阻血性骨壊死
4.上腕骨外科頚骨折:外傷性骨化筋炎

答え.1

解説
1.〇 正しい。過剰仮骨形成は、「前腕骨骨折」に起きやすい。なぜなら、前腕骨骨折は、過剰仮骨形成する要素が複数当てはまるため。過剰仮骨形成とは、粉砕骨折、大血腫の存在、骨膜の広範な剥離、早期かつ過剰に行われた後療法などの仮骨形成を刺激する状態が持続した場合に発生する。血腫が消失した場合は仮骨形成を遷延させる原因となり遷延仮骨や偽関節の原因となる。

2.× ズデック(Sudeck)骨萎縮は、「肋骨骨折」ではなく末梢部の骨折(特に橈骨遠位端骨折)に起きやすい。Sudeck骨萎縮とは、骨折などの外傷、または、その手術の後に、急速な自発痛、運動痛、浮腫とともに著明な骨萎縮をきたす場合の骨変化のことである。骨折に合併した自律神経系の血管運動神経失調によって、末梢血管の血流不全から起こるものといわれている。Sudeck骨萎縮(ズデック骨萎縮)は、CRPS typeⅠに分類される。

3.× 阻血性骨壊死は、「踵骨骨折」ではなく距骨骨折に起きやすい。阻血性骨壊死とは、骨壊死または骨梗塞ともいい、血液供給が阻害されることによりおこる骨組織の壊死である。阻血性骨壊死になりやすい骨折として、①上腕骨解剖頸骨折、②手の舟状骨骨折、③大腿骨頸部内側骨折、④距骨骨折などがあげられる。これらの部位の骨折は栄養血管損傷を起こしやすく、血流が障害されやすい。

4.× 外傷性骨化筋炎は、「上腕骨外科頚骨折」ではなく打撲などの外傷に起きやすい。骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。大腿部前面に強い打撲を受けた後によくみられる。

MEMO

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して、当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として、自律神経性の変化(例:発汗、血管運動異常)、運動機能の変化(例:筋力低下、ジストニア)、萎縮性の変化(例:皮膚または骨萎縮、脱毛、関節拘縮)などがみられる。疼痛をコントロールしながら、左手(疼痛側)の使用機会を増やす介入が必要である。

 

 

 

 

 

問68 反復性脱臼の原因となるのはどれか。

1.骨軟骨の発育障害
2.関節の弛緩
3.自身の筋力
4.腱付着部の裂離骨折

答え.4

解説

MEMO

反復性脱臼とは、一度大きなけがをして関節が脱臼し、その後脱臼を繰り返してしまうものを指す。肩関節、顎関節、膝蓋骨などに発生しやすい。習慣性脱臼や随意性脱臼、反復性脱臼などは病的脱臼に含まれない。

反復性脱臼の主な原因は、上腕骨骨頭の骨欠損、関節包の弛緩、一部の関節唇の剥離によって、正常な構造が破綻することである。

1.× 骨軟骨の発育障害は、反復性脱臼の原因とはいえない。骨軟骨とは、関節軟骨ともいい、関節の表面をやわらかい組織で覆っており、骨と骨をつなぐクッションの働きや、関節を潤滑に動かす働きを担っている。また、関節を物理的な衝撃から守る働きにも関与している。

2.× 関節の弛緩は、必ずしも反復性脱臼の原因とはいえない。なぜなら、関節の弛緩性は、①先天性と②後天性に分けられ、①先天性とは、持って生まれた体質のことである。特に女性は不安定性が高い傾向にあるが、脱臼を伴いやすいとは言えない。ただし、②後天性の関節の弛緩性は、捻挫・脱臼・靱帯損傷などにより関節への外傷よって関節の不安定性を生じたものである。

3.× 自身の筋力は、反復性脱臼の原因とはいえない。むしろ、自身の筋力(特に腱板)は、関節の安定性を保つために働く。筋力がしっかりしていることは、むしろ関節の安定性を高め、脱臼を防ぐ要因となります。ちなみに、腱板とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋である。反復性肩関節脱臼の場合、特に肩甲下筋が損傷しやすい。

4.〇 正しい。腱付着部の裂離骨折は、反復性脱臼の原因となる。なぜなら、腱付着部の裂離骨折は、関節を安定させる腱や靭帯が骨から剥がれて骨片とともに引き離される状態であるため。これにより関節の安定性が損なわれ、脱臼が起こりやすくなる。

バンカート損傷とは?

バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。

 

 

 

 

 

問69 脱臼を疑わせる所見で誤っているのはどれか。

1.弾発性抵抗を認める。
2.関節軸が変化する。
3.関節血腫が著明である。
4.関節窩部に陥凹を触知する。

答え.3

解説

脱臼の固有症状とは?

①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。

1.〇 正しい。弾発性抵抗を認める。これは、脱臼の固有症状として脱臼を疑わせる所見である。

2.〇 正しい。関節軸が変化する。なぜなら、脱臼している場合、正常な関節運動(滑りと転がり)が行えないため。その他にも、脱臼の場合、脱臼肢の長さの変化(延長又は短縮)、関節腔の空虚及び骨頭の異常位置などが認められる。

3.× 関節血腫が著明であるのは、骨折捻挫である。なぜなら、血腫は軟部組織の損傷からの出血が疑われるため。関節血腫とは、関節の血管が損傷して出血が起こり、関節内に血が溜まる。したがって、単純な脱臼では、関節内に血腫が形成されることは稀である。

4.〇 正しい。関節窩部に陥凹を触知する。関節窩部とは、肩関節の肩甲骨のお皿の部分である。脱臼では、関節の骨が正常な位置からずれているため、関節窩部(通常骨が存在する部位)に陥凹を触知することがある。特に、肩関節前方脱臼でよくみられる。

肩関節前方脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

【固定】①材料:巻軸包帯、副子(肩関節前後面にあてる)、腋窩枕子、三角巾。②肢位と範囲:肩関節軽度屈曲・内旋位で肩関節のみ。③期間:30歳代以下は5~6週間、40歳代以上は3週間

 

 

 

 

 

問70 リスフラン関節脱臼で正しいのはどれか。

1.背側脱臼は足背アーチが低下する。
2.底側脱臼は足底部に足根骨前部が突出する。
3.内側脱臼は足内縁に内側楔状骨が突出する。
4.外側脱臼は足外側縁に第5中足骨基部が突出する。

答え.4

解説

リスフラン関節脱臼とは?

リスフラン関節とは、足根中足関節ともいい、3つの楔状骨(内側・中間・外側楔状骨)—立方骨—中足骨で構成する関節のことである。リスフラン関節脱臼とは、足根中足関節脱臼ともいい、原因として、足部底屈位での中足骨強打、前足部に回旋力や軸圧が作用して起こる。部分損傷として、リスフラン靱帯損傷、第1・2中足骨間の離開が起こる。第2中足骨基部骨折など様々な骨折を合併しやすい。

1.× 背側脱臼は、足背アーチが「低下」ではなく上昇する。足背アーチとは、土踏まず部分にあるドーム型のアーチ状の構造である。背側へ脱臼することは、近位の中足骨が上側に骨がずれる状態を指し、アーチは上昇する。他にも、前足部の短縮、軽度尖足位変形、足趾伸展位となる。

2.× 底側脱臼は、「足底部」ではなく足背部に足根骨前部が突出する。なぜなら、底側脱臼は、足の底側、に中足骨がずれる状態を指すため。

3.× 内側脱臼は、足内縁に「内側楔状骨」ではなく第1中足骨基部が突出する。したがって、足外側縁が陥凹し、その後方に立方骨が突出する。

4.〇 正しい。外側脱臼は、足外側縁に第5中足骨基部が突出する。なぜなら、外側脱臼は、足尖がやや外転、足内側縁に第1楔状骨が突出するため。

 

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