第26回(H30年)柔道整復師国家試験 解説【午後76~80】

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問76 骨折と好発部位の組合せで誤っているのはどれか。

1.頚椎楔状圧迫骨折:第3頚椎
2.頚椎棘突起骨折:第7頚椎
3.胸椎椎体圧迫骨折:第7胸椎
4.腰椎椎体破裂骨折:第1腰椎

答え.1

解説
1.× 頚椎楔状圧迫骨折は、「第3頚椎」ではなく第5~6頸椎が好発部位である。※第3頚椎が好発部位という資料や文献などがありましたら、コメント欄にて教えてください。ちなみに、頚椎楔状圧迫骨折とは、強力な屈曲力・圧迫カにより起こり、第5~6頸椎に好発する。症状として、椎体の楔状変形、頸部の痛み、運動制限、神経症状などがみられるが、後縦靭帯、脊髓損傷を合併することは少ない。

2.〇 正しい。頚椎棘突起骨折は、第7頚椎が好発部位である。頚椎棘突起骨折とは、自家筋力によるものが多く、下部頭椎:特に第7頸椎に好発する。症状として、頸部の軽度疼痛、運動制限、棘突起の圧痛、叩打痛などがみられる。スコップ作業者などでは疲労骨折として発生する。高度な骨片転位は少なく、脊髄損傷を合併することはない。

3.〇 正しい。胸椎椎体圧迫骨折は、第7胸椎が好発部位である。胸椎椎体圧迫骨折とは、高所からの転落、尻森などが原因として、第6~8胸椎に好発する。破傷風の痙攣発作や電気ショック療法でも生じる。症状として、棘突起突出:亀背、凸背、疼痛による起立・歩行・前屈運動制限、棘突起の圧痛・叩打痛、受傷椎高位の帯状痛、椎体楔状変形などがみられる。脱臼骨折の形でなければ脊髄損傷の合併は少ない。

4.× 腰椎椎体破裂骨折は、第1腰椎が好発部位である。椎体破裂骨折とは、椎体の前方の壁だけではなく、後方の壁も割れる骨折で、脊髄症状(麻痺、シビレ、脚の痛み)を生じる。これらは胸椎下部~腰椎上部に多く発生する。

(※図引用:「イラスト素材:脊柱(側面)」illustAC様より)

 

 

 

 

 

問77 肩甲骨体部骨折で正しいのはどれか。

1.粉砕骨折が多くみられる。
2.骨片の転位が大きい。
3.患肢は内転位で保持する。
4.深呼吸によって疼痛が軽減する。

答え.3

解説
1.△ 粉砕骨折が多くみられる「と一概にいいがたい」。何と比較して「多く」なのか?、「多く」の基準が不明であるため、△とした。肩甲骨体部骨折の様式は、①横骨折、②粉砕骨折、③縦骨折の順で多い。

2.△ 骨片の転位が大きい「と一概にいいがたい」。これも何と比較して「大きい」なのか?、「大きい」の基準が不明であるため、△とした。とはいえ、肩甲骨は周囲の筋肉によって、保護・安定しているため、骨折しても骨片の転位が比較的少ないことが多い。

3.〇 正しい。患肢は内転位で保持する。筋内出血により、腱板筋群の攣縮が起こる。これにより、肩関節外転障害をきたす。

4.× 深呼吸によって疼痛が「軽減」ではなく増大する。なぜなら、深呼吸により胸郭が膨らむと、肩甲骨の骨折部にも負担がかかるため。肩甲骨体部骨折の症状として、患肢内転、限局性圧痛、皮下出血斑、深呼吸による限局痛などがあげられる。

 

 

 

 

 

問78 上腕骨近位端部骨折で正しいのはどれか。

1.骨頭骨折は骨癒合が良好である。
2.解剖頚骨折は関節内血腫が著明である。
3.骨端線離開は肩関節内転・屈曲位固定する。
4.小結節単独骨折は肩関節前方脱臼に合併する。

答え.2

解説

上腕骨近位端部骨折とは?

【分類】①結節上骨折(骨頭骨折、解剖頸骨折)、②結節下骨折(外科頸骨折、大結節・小結節単独骨折、結節部貫通骨折)、③骨端線離開があげられる。
【原因】主に介達外力により発生する。少年期・高齢者に多い。※直達外力の場合は青壮年にも生じる。

1.× 骨頭骨折は骨癒合が良好「である」とは言い切れない。どの骨折と比較しているか不明であるが、骨頭骨折は骨癒合が不良であることが多い。なぜなら、上腕骨骨頭骨折は血行が乏しいため。したがって、壊死や偽関節を形成するリスクが高い。骨頭骨折とは、激突などの肩部の強打で生じる。単独骨折はまれで、症状として、肩関節挫傷・打撲傷、疼痛著明(自発痛、限局性圧痛、関節運動時痛)関節内血腫、著しい機能障害、腫脹、軋轢音などがみられる。関節内骨折のため骨癒合が悪く、骨頭の阻血性壊死や外傷性関節症を起こすことがある。高齢者では関節拘縮に注意する。固定は、転位がなければ肩関節外転70~80°、水平屈曲30~40°で行う。

2.〇 正しい。解剖頚骨折は関節内血腫が著明である。なぜなら、解剖頚骨折は関節内に位置するため。ちなみに、解剖頸とは、肩関節内、上腕骨骨頭の半球部分に位置するくびれ部分のことである。 上腕骨頭と大結筋、小結筋の間のある浅い溝にあるくびれである。上腕骨解剖頸骨折の原因として、転倒時に肩を強打して生じて起こることが多い。したがって、高齢者に多い。症状は、関節内骨折であるため、著明な関節内血腫・上腕の運動機能障害・自発痛・限局性圧痛、軋轢音などがみられる。噛合骨折の場合は動かせる。基本的に、転位・変形は少ない。噛合骨折の場合はわずかに転位し短縮する。固定する際は、肩関節外転70~80°、水平屈曲30~40°で固定する。予後は、噛合骨折の場合に良好である。ただし、高齢者では癒合困難なことが多く、長期固定による関節拘縮をきたし、肩関節の機能障害を残す。阻血性骨頭壊死、外傷性関節炎などを生じることがある。

3.× 骨端線離開は、「肩関節内転・屈曲位」ではなく敬礼位固定する。敬礼位とは、肩関節外転90°以上、水平屈曲45°、肘関節90°屈曲、肩関節外旋位のことである。ちなみに、上腕骨骨端線離開とは、その名の通り、上腕骨の骨端線が離開していることであり、新生児、乳幼児、少年期に特有の骨折で、打撲や壁落など直接衝撃(まれに分娩時)が加わる外力で生じる。症状として、疼痛、腫振、自動運動不能(上肢は内旋下垂)、運動時激痛などが起こる。固定は、敬礼位(肩関節外転90°以上、水平屈曲45°、肘関節90°屈曲、肩関節外旋位)を用いる。成長障害の発生に注意する。

4.× 小結節単独骨折は、肩関節「前方」ではなく後方脱臼に合併する。小結節単独骨折とは、直達外力、付着筋による裂離骨折で、発生はきわめてまれに起こる。肩関節後方脱臼に合併して起こる。上腕二頭筋長頭腱脱臼を合併する。固定は、転位の少ないものは肩関節下垂・内旋位で安静保持する。

大結節単独骨折とは?

大結節単独骨折とは、直達外力または付着筋による裂離骨折である。肩関節前方脱臼に合併して起こることが多い。固定は、転位が著しい場合は肩関節外転、外旋位で固定する。転位が少なければ三角巾で吊る。整復不良のときは観血療法を実施する。

 

 

 

 

 

問79 介達外力による上腕骨骨折で遠位骨片が前上方に転位するのはどれか。2つ選べ。

1.外科頚内転型骨折
2.骨幹部骨折(三角筋付着部より遠位骨折)
3.顆上屈曲型骨折
4.外顆骨折

答え.1・3

解説
1.〇 正しい。外科頚内転型骨折は、介達外力による上腕骨骨折で遠位骨片が前上方に転位する。上腕骨外科頸内転型骨折とは、主に転倒時に肘や手をついた時の介達外力で、高齢者に好発する。
近位骨片の転位は、軽度外転・外旋、遠位骨片は軽度内転する。一方、遠位骨片は、前外上方へ転位、骨折部は前外方凸に変形する。骨頭は、軽度外転、肩峰と大結節が接近し、上腕軸は内転する。
固定は、70~90°外転位である。ほかにも、外転副子、ミッデルドルフ三角副子、ハンギングキャストなどを使用し、外転型、内転型ともに30~40°水平屈曲、肘関節90°屈曲、前腕中間位とする。

2.× 骨幹部骨折(三角筋付着部より遠位骨折)
①三角筋付着部より近位での骨折
近位骨片:大胸筋、大円筋、広背筋により内方へ転位
遠位骨片:三角筋、上腕二頭筋・三頭筋、鳥口腕筋により外上方へ転位
②三角筋付着部より遠位での骨折
近位骨片:三角筋によりやや前外方へ転位
遠位骨片:上腕二頭筋・上腕三頭筋により後上方へ転位

3.〇 正しい。顆上屈曲型骨折は、介達外力による上腕骨骨折で遠位骨片が前上方に転位する。
【顆上屈曲型骨折の転位】
伸展型:骨折線は前方から後上方へ走行し、遠位骨片は近位骨片の後上方に転位する。
屈曲型:骨折線は後方から前上方へ走行し、遠位骨片は近位骨片の前上方に転位する。
【顆上屈曲型骨折の固定】
伸展型:肘関節0~100°屈曲、前腕回内位。肩~MP関節手前まで固定する。
屈曲型:肘節80~90°屈曲、前腕中間位約4週間固定する。

4.× 外顆骨折は、遠位骨片の転位はみられない。なぜなら、上腕骨外顆は、上腕骨の遠位であるため。
上腕骨外顆骨折とは、①pull off型(肘伸展位で手掌を衝いて転倒し、肘に内転力が働き、前腕伸筋群の牽引作用により発生)と②push off型(肘伸展位または軽度屈曲位、前腕回内位で手を衝き転倒して発生)するタイプがある。症状は、疼痛や腫脹、異常可動性、運動障害がみられる。固定は、肘関節80~90°屈曲位、手関節軽度伸展、前腕回外位である。

 

 

 

 

 

問80 上腕骨骨幹部横骨折で偽関節が発生しやすい原因はどれか。

1.接触面積が広い。
2.海綿質が豊富である。
3.整復位保持が困難である。
4.軟部組織が介在しやすい。

答え.3

解説

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部の癒合不全により異常可動をきたすことである。血流が少なく、骨癒合が起こりにくい部位の骨折が好発部位である。つまり、①大腿骨頸部骨折、②手の舟状骨骨折、③脛骨中下1/3骨折等は偽関節を起こしやすい。

1.× 接触面積が広い場合、偽関節が発生しやすい要因とはいえない。なぜなら、接触面積が広いことは、通常は骨折の治癒(骨癒合)に有利に働くため。

2.× 海綿質が豊富である場合、偽関節が発生しやすい要因とはいえない。なぜなら、海綿質が豊富であること自体は、骨折の治癒に有利であるため。ただし、上腕骨骨幹部は主に緻密骨で構成されており、海綿質は少ない。長管骨の骨幹には緻密骨で囲まれる髄腔がある。骨髄腔には骨髄が詰まっており、造血を行っている。海綿質とは、網目状の構造を持ち、骨折の衝撃吸収や骨髄の収容に役立つ。

3.〇 正しい。整復位保持が困難である。なぜなら、上腕には多くの筋肉がつき、筋力による捻転骨折も伴いやすいため。骨折した面が不安定となり、ずれの力で偽関節になりやすい。

4.△ 軟部組織が介在しやすい場合、偽関節が発生しやすい要因といえる。この設問は、「介在」という意味があいまいであるため判断が難しい。一般的に、「介在」とは、両者の間に他の事物がはさまってあることである。これを選択肢に当てはめると、骨折面に軟部組織が間に挟まっていることを指すと考えられる。骨折部に軟部組織(特に筋肉)が介在することで、骨折部が安定せず骨癒合が阻害され、偽関節が発生しやすくなると考えられる。※分かる方いらしたら、コメント欄にて教えてください。

MEMO

軟部組織とは、筋肉や脂肪、血管、リンパ管、神経など、体を作る軟らかい組織を指す。臓器や骨組織を除く。

 

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