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問題91 以下に示す徒手検査が陽性であったとき大腿骨小転子骨折を疑うのはどれか。
1.パトリックテスト
2.トーマステスト
3.ニュートンテスト
4.ルドロフテスト
答え.4
解説
1.× パトリックテストは、仙腸関節機能不全(仙腸関節病変:仙腸関節・股関節の変形性疾患や炎症性反応)を検査する。被験者を背臥位で患側側部を反対側の膝の上に置き、股関節屈曲・外転・外旋の肢位をとらせ、患側膝の内側部を背側に圧迫した時に、仙腸関節・股関節に痛みが出る所見である。
2.× トーマステストは、股関節屈曲拘縮を診るテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。
3.× ニュートンテストは、仙腸関節炎を検査する。腹臥位で仙腸関節部を上から押して、仙腸関節の圧痛を確認する。
4.〇 正しい。ルドロフテストが陽性であったとき大腿骨小転子骨折を疑う。
ルドロフ徴候とは、大腿骨の小転子が腸腰筋の収縮によって引きちぎられる「裂離骨折」をしたときに起こる徴候である。イスなどに座ったときに、膝関節以上に足を上げることができなくなるが、あおむけになった場合は可能となる所見である。
問題92 膝蓋骨骨折で誤っているのはどれか。
1.介達外力では横骨折を呈する。
2.骨片は離開転位する。
3.転位の軽度なものは絆創膏を用いて固定する。
4.固定は屈曲60度とする。
答え.4
解説
膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。
1~2.〇 正しい。介達外力では横骨折を呈する/骨片は離開転位する。
なぜなら、大腿四頭筋が強く緊張し、膝蓋腱とともに介達外力によって骨片が上下に離開してしまうため。横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。
3.〇 正しい。転位の軽度なものは絆創膏を用いて固定する。
転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。
4.× 固定は「屈曲60度」ではなく軽度屈曲位とする。
選択肢の文章では、どの関節が屈曲60度なのか分からないが、膝関節と推測して解説する。膝関節屈曲60度で固定した場合、大腿四頭筋の伸張により、さらなる膝蓋骨の離開が助長する。
問題93 関節動揺が出現しないのはどれか。
1.脛骨顆部骨折
2.脛骨顆間隆起骨折
3.脛骨粗面骨折
4.腓骨頭骨折
答え.3
解説
関節動揺とは、動揺関節ともいい、その字の通り、関節の安定性が欠如しており、関節を構成する骨にぐらつく症状が見られている状態である。例えば、膝関節は、膝回りの靱帯が膝関節を支える機能を果たし、その靱帯を損傷した場合に、関節動揺性がみられる。靭帯のほかにも、半月板や関節唇などの損傷をきたしていた場合も同様である。
1.〇 脛骨顆部骨折は、関節動揺がみられる。
なぜなら、半月板や内・外側側副靭帯の損傷を合併しやすいため。脛骨顆部とは、脛骨の上端部の総称であり、外側部のことを外顆、内側部のことを内顆という。近位側に半月板が位置する。
2.〇 脛骨顆間隆起骨折は、関節動揺がみられる。
なぜなら、半月板や前・後十字靭帯の損傷を合併しやすいため。脛骨顆間隆起とは、前・後十字靭帯が付着する部位である。また、内外側には半月板が位置する。
3.× 脛骨粗面骨折は、関節動揺が出現しない(※断言はできない)。
※他の選択肢と比較すると、関節動揺性は出現しにくいが、骨折時の外力や状況によって異なる。ちなみに、脛骨粗面とは、脛骨の上端部に位置し、膝蓋靭帯の付着する部分のこと。一般的に膝関節の安定性は、半月板や内・外側側副靭帯、前・後十字靭帯が働く。膝蓋靭帯(大腿四頭筋)は、立位時の荷重を支える際に寄与する。
4.〇 腓骨頭骨折は、関節動揺がみられる。
なぜなら、腓骨頭に外側側副靭帯が付着しているため。腓骨頭骨折により、外側側副靭帯が十分に働かない可能性がある。
問題94 踵骨体部骨折で正しいのはどれか。
1.凹足変形を呈する。
2.爪先立ちは可能である。
3.ベーラー角は減少する。
4.皮下出血斑の出現はわずかである。
答え.3
解説
踵骨骨折は足根骨骨折の中で最も頻度が高く、受傷機転の多くは高所からの転落による高エネルギー直達外力である。踵骨骨折のうち関節内骨折は65〜75%を占めるとされる。踵骨の大部分は海綿骨であり骨癒合は良好とされる。その反面、骨萎縮や可動域制限による疼痛などの機能障害が残存しやすい病態であり、適切な時期に的殺な治療を行うことが予後を大きく左右するとされる。
機序:ほとんどは下肢からの墜落で起こる。
骨折の種類:圧迫骨折
重症化:距踵関節面が保たれない。
治療:ほとんどは徒手整復と保存。アキレス腱付着部の裂離骨折であれば手術。
リハビリ:踵免荷のための免荷装具を作成・利用して徐々に荷重を開始する。
予後:骨折は治癒しても、内・外反に加え扁平足になり、関節面にも変形を来たす。
【術後のプロトコル】
全例術後8週免荷
術翌日から:足趾・足関節自他動運動を開始。
腫脹軽減後:踵部免荷装具を作製し、装具装着下での歩行練習を開始としている。
術後8週:足底板へ変更し1/3荷重を開始。
2週ごと:1/3荷重ずつ荷重量を増加。
術後12週で全荷重開始。
1.× 「凹足変形」ではなく扁平足を呈する。
なぜなら、踵骨骨折を呈すと、踵骨全体が押しつぶされ、アーチが崩れるため。
2.× 爪先立ちは、「可能」ではなく困難である。
なぜなら、踵骨隆起に付着する下腿三頭筋の収縮に支障をきたすため。ちなみに、下腿三頭筋とは、下腿の強大な筋の総称で、膨隆する2頭をもつ浅側の腓腹筋と、深側にある平たいヒラメ筋とからなる。
①腓腹筋:【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経。
②ヒラメ筋:【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上、【神経】脛骨神経
3.〇 正しい。ベーラー角は減少する。
ベーラー角(Böhler角)とは、X線足部側面像で踵骨隆起の上端と踵骨の上方頂点を結ぶ線、および、踵骨の上方頂点と前距骨関節面の先端を結ぶ線がなす角のことで、20~30°である。
4.× 皮下出血斑の出現は、「わずか」ではなく著明である。
皮下出血斑とは、皮下出血(内出血)したときに紫色のアザのことである。紫斑病ともいう。内出血が起こるメカニズムは、何かにぶつかるなど外部からの衝撃が身体に加わることにより皮膚や皮下の組織が壊れてしまい出血が身体の内部だけに溜まることで起こる。つまり、原因としては転倒などによる打撲や打ち身、捻挫が多く、ひどい肉離れなどでみられる。
問題95 足根骨前部と中足骨部の図を示す。
短腓骨筋が関与したと考えられるのはどれか。
1.a
2.b
3.c
4.d
答え.2
解説
【起始】腓骨外側面、前下腿筋間中隔
【停止】第5中足骨粗面
【作用】足関節底屈、外返し
【支配神経】浅腓骨神経:L4~S1
1.× aは、第5中足骨骨幹部である。
第5中足骨骨折は、基部または骨幹部で起こりやすい。
2.〇 正しい。b(第5中足骨粗面)が、短腓骨筋が関与したと考えられる。
なぜなら、短腓骨筋の停止部は、第5中足骨粗面であるため。Jones骨折(第5中足骨疲労)がよくみられる。
3.× cは、第2中足骨頭部である。
第2ケーラー病とは、足の第2中足骨頭(足の人差し指の付け根の関節部周辺)におこる骨端症である。中足骨頭に繰り返される圧迫力が働き、骨頭部で壊死を起こした状態である。
4.× dは、第2中足骨幹部である。
第2中足骨の疲労骨折は、ポワントポジションを繰り返すバレエダンサーなどに好発する。