第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後76~80】

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問題76 頭蓋底骨折で誤っているのはどれか。

1.介達外力の発生が多い。
2.小児では陥凹骨折が多い。
3.眼窩周辺に皮下出血斑がみられる。
4.バトル徴候がみられる。

答え.

解説

頭蓋底骨折とは?

頭蓋底骨折は、頭蓋冠(椀を伏せた形のドーム型の部分)の線状骨折や陥没骨折とは病態も治療方針も異なる。なぜなら、頭蓋骨の底面である頭蓋底は、でこぼこして多くの孔が開いている複雑な構造をしているため。

【頭蓋底骨折の症状】主に①髄液漏と②脳神経麻痺があげられる。
①髄液漏とは、頭蓋底骨折をとおしてなかの脳脊髄液がもれ出てくる状態である。出てくるのは耳の穴(髄液耳漏)か鼻の穴(髄液鼻漏)で、髄液漏では頭蓋内(頭蓋骨よりも内側)に細菌が入って髄膜炎を起こす危険がある。また、髄液が流れ出る代わりに空気が頭蓋内に入る気脳症を起こすこともある。
②脳神経麻痺について、頭蓋底の孔の多くには、脳から出て顔面や内臓に至る脳神経がとおっている。この孔に骨折が及ぶと、なかをとおっている脳神経を傷つけて脳神経麻痺を来すことがある。

1.〇 正しい。介達外力の発生が多い。
頭蓋底骨折の原因は、頭蓋冠の骨折と同じく、骨折部位への直接の衝撃である。介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。

2.× 小児では陥凹骨折(陥没骨折)が多いのは、頭蓋骨骨折である。
陥没骨折とは、骨折の種類のひとつで外側からの強い衝撃により骨が内側にへこんだ形状で折れることである。好発部位は、頭蓋骨、頬骨、鼻などの頭部である。特に、頭蓋骨に大きな陥没骨折が起きやすい。脳を圧迫したりとがった骨の先端が内部に影響を与えている場合、外科手術で陥没した部分を挙上したり取り除くことが必要である。

3.〇 正しい。眼窩周辺に皮下出血斑がみられる。
頭蓋底骨折の症状として、目の周囲の皮下血腫(パンダの目のようになる)や耳の後ろに皮下血腫がある。

4.〇 正しい。バトル徴候がみられる。
バトルサインとは、頭蓋底骨折の際の徴候のひとつで、耳介後部の斑状皮下出血がみられているものをさす。

 

 

 

 

 

問題77 スポーツと肋骨骨折の好発部位の組合せで正しいのはどれか。

1.ゴルフ:第3・4肋骨
2.長距離走:第1・2肋骨
3.相撲:第10~12肋骨
4.ウエイトリフティング:第7~9肋骨

答え.

解説

肋骨の疲労骨折とは?

肋骨の疲労骨折は、上部と下部で原因が異なる特徴を持つ。上部肋骨骨折(特に、第一肋骨の疲労骨折)は、ウェイトリフティングやベンチプレスなどのウェイトトレーニングでも生じる。一方、下部肋骨骨折は、主に体幹のひねり動作(ゴルフややり投げ、体操競技)で起こる。また咳のしすぎで生じる場合もある。

1.× ゴルフは、「第3・4肋骨」ではなく第6肋骨である。
肋骨骨折は、転倒して浴槽や椅子の角に胸を打ちつけたときに骨折しやすいが、ゴルフの練習で同じ動作であるスイングを過度に反復していると、肋骨の同じ部位にストレスを加え続けることになり、疲労性骨折をおこす。右利きであれば、左側の第3~9肋骨にこの骨折は発生する。多くは第6肋骨にみられ、この肋骨骨折をゴルフ骨折という。

2.〇 正しい。長距離走は、「第1・2肋骨」である。
なぜなら、長距離選手は、常に努力呼吸を強いられるため。努力吸気において、呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与し、第1肋骨を上に牽引し、肋骨へストレスを加える。

3.× 相撲は、「第10~12肋骨」ではなく第7肋骨である。
相撲では、力士同士の強い接触や落下、つまり外力によって肋骨骨折が起こる。直接肋骨に力が加わった際に起こる骨折では骨折は第5〜8肋骨に多く、特に第7肋骨に多い。

4.× ウエイトリフティングは、「第7~9肋骨」ではなく第1肋骨である。
上部肋骨骨折(特に、第一肋骨の疲労骨折)は、ウェイトリフティングやベンチプレスなどのウェイトトレーニングでも生じる。これは、斜角筋が第1肋骨を上に牽引、前鋸筋というわき腹の筋肉が下に牽引するため、第1肋骨にストレスが加わり発症する。

呼吸運動について

①安静吸気:横隔膜・外肋間筋。
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気:呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気:内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。

 

 

 

 

 

問題78 上腕骨顆上骨折の整復で側面評価に用いるのはどれか。

1.キャリング角
2.バウマン角
3.ベーラー角
4.ティルティング角

答え.

解説


1.× キャリング角(肘角、運搬角、キャリングアングル)
正面から測定する。キャリング角とは、上腕軸と前腕軸とがつくる角度のことであり、正常では160~170度である。

2.× バウマン角
成長期の子どもにおける骨折治療の評価である。バウマン角とは、上腕骨長軸に垂直な線と外顆部の成長軟骨の線とのなす角のことである。正常は10~20°で、減少によって肘の内反を示唆する。

3.× ベーラー角
踵骨(足)に関与する角度である。ベーラー角(Böhler角)とは、X線足部側面像で踵骨隆起の上端と踵骨の上方頂点を結ぶ線、および、踵骨の上方頂点と前距骨関節面の先端を結ぶ線がなす角のことで、20~30°である。

4.〇 正しい。ティルティング角は、上腕骨顆上骨折の整復で側面評価に用いる。
ティルティング角(Tilting angle)とは、上腕骨長軸と外顆長軸のなす角のことである。上腕骨顆上骨折の整復で側面評価に用いる。

 

 

 

 

 

問題79 前腕屈筋の牽引で発症する骨折はどれか。

1.1
2.2
3.3
4.4

答え.

解説

前腕屈筋群について

主な前腕屈筋群の【起始】上腕骨内側上顆、【停止】手根骨や指の骨である。 円回内筋、尺側手根屈筋、橈側手根屈筋、長掌筋、浅指屈筋などがあげられる。

1.3.× 1/3は上腕骨外側上顆である。主に前腕伸筋群の牽引で発症する骨折である。

2.〇 正しい。2(上腕骨内側上顆)が前腕屈筋の牽引で発症する骨折である。なぜなら、前腕屈筋群の起始が上腕骨内側上顆に該当するため。

4.× 4は上腕骨遠位部である。受傷機転として、交通事故、労働災害、高所からの落下などの大きな力が加わっておこる。

 

 

 

 

 

問題80 発生頻度の最も高いのはどれか。

1.末節骨骨折
2.中節骨骨折
3.基節骨骨折
4.中手骨骨折

答え.

解説
1.〇 正しい。末節骨骨折は、発生頻度の最も高い。
「発生頻度は指節骨骨折の中では最も多く,また開放骨折の頻度が高い.粗面部,骨幹部,基部に分類され,骨片の安定性は爪甲による安定性と腱停止部との関係に関連する.」(※引用:「手指骨骨折の治療」著:畑中 渉)

2.× 中節骨骨折
「発生頻度は比較的少ない.頚部骨折,骨幹部骨折,基部骨折に分類され,骨折線は横骨折が多い.転位の方向は浅指屈筋腱と総指伸筋腱のバランスにより規定される.」(※引用:「手指骨骨折の治療」著:畑中 渉)

3.× 基節骨骨折
「発生頻度は高く,腱や皮膚損傷を合併しやすい.頚部骨折,骨幹部骨折,基部骨折に分類される.転位の方向は骨間筋と総指伸筋腱のバランスにより規定される.」(※引用:「手指骨骨折の治療」著:畑中 渉)

4.× 中手骨骨折
「発生頻度は高く,腱や皮膚損傷を合併しやすい.骨頭骨折,頚部骨折,骨幹部骨折,基部骨折に分類される.」(※引用:「手指骨骨折の治療」著:畑中 渉)

 

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