第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後51~55】

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問題51 消毒と滅菌で誤っているのはどれか。

1.グルタラールは粘膜に対して刺激性が弱い。
2.クロルヘキシジンはMRSAに対して有効である。
3.次亜塩素酸ソーダはウイルスに対する効果が高い。
4.ポビドンヨードはタンパク質の存在下で殺菌力が低下する。

答え.1

解説
1.× グルタラールは粘膜に対して刺激性が「弱い」のではなく強い
グルタラールは、被消毒物の材質に与える影響が少なく、各種器具・機器、内視鏡などの消毒に有用である。しかし、薬液が皮膚に付着した場合、皮膚の着色や発疹、発赤等の過敏症状を起こすことがあり、また、蒸気は眼や呼吸器等の粘膜に対して刺激作用を示すことなどから、その使用には十分な 注意が必要である。

2.〇 正しい。クロルヘキシジンはMRSAに対して有効である。
クロルヘキシジングルコン酸塩液は、手術時手洗い、手術部位の皮膚、創傷部位(創傷周辺皮膚)、血管内留置カテーテル挿入部位の皮膚などに使用する。特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対しても有効である。

3.〇 正しい。次亜塩素酸ソーダはウイルスに対する効果が高い。
次亜塩素酸ソーダは、パルプの漂白、プールの殺菌、上下水道の殺菌消毒、家庭用の殺菌・消毒・漂白剤など幅広く使用されている製品である。長期にわたって皮膚に触れていると、刺激により皮膚炎、湿疹を生じるため注意が必要である。

4.〇 正しい。ポビドンヨードはタンパク質の存在下で殺菌力が低下する。
ポビドンヨードとは、世界中で感染対策に使われている代表的な殺菌消毒剤の有効成分のひとつである。施設に感染症が流行していない場合は、ポビドンヨードやアルコール溶液などで断端を消毒することは勧められていない。

M R S A(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)とは?

 黄色ブドウ球菌は非常にありふれた常在菌で、健常者でも髪の毛や鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着している。

 

 

 

 

 

問題52 外出血の部位と症候の組合せで誤っているのはどれか。

1.気管:喀血
2.小腸:吐血
3.膀胱:血尿
4.子宮:性器出血

答え.2

解説
1.〇 正しい。気管:喀血
喀血とは、気道(気管・肺)から出血した時に見られる出血である。気道の出血が少量であれば痰に血が混じっている状態、血痰という。喀血は血液そのものを咳とともに吐く状態である。一方、吐血との区別は口から血が出たときに伴う症状で区別する。①喀血:下気道(気管支肺)からの出血、②吐血:上部消化管からの出血がある。したがって、喀血は吐血と比べると赤みが強く、泡が混じることが多く、固まりにくいという特徴がある。

2.× 吐血は、小腸ではなく上部消化管である。
上部消化管とは、食道、胃、十二指腸のことである。

3.〇 正しい。膀胱:血尿
血尿とは、尿に血液が混ざっている状態を指す。主な原因として、悪性腫瘍や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓の内科的な病気などが考えられる。

4.〇 正しい。子宮:性器出血
子性器出血とは、宮や膣からの出血である。これは月経、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮頸がんなどが原因となることがある。

 

 

 

 

 

問題53 成人に対する胸骨圧迫心臓マッサージのテンポで適切なのはどれか。

1.40回/分
2.60回/分
3.80回/分
4.100回/分

答え.4

解説

一次救命処置とは?

 一次救命処置とは、呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置であり、胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、そしてAEDの使用を主な内容とする。

成人に対する一次救命処置では、胸骨圧迫を30回したのち、人工呼吸を2回行い(30対2)、これを繰り返す。成人であれば胸骨が少なくとも5~6cm沈むように圧迫し、1分間に100~120回のテンポで行う。絶え間なく圧迫することが重要である。

1~3.× 40回/分,60回/分,80回/分は、成人のテンポとして少ない。
4.〇 正しい。100回/分は、成人に対する胸骨圧迫心臓マッサージのテンポである。

 

 

 

 

 

問題54 心原性脳塞栓症の治療に続いて起こり得るのはどれか。

1.ウイリス脳動脈輪閉塞症
2.脳動静脈奇形
3.動脈瘤破裂
4.出血性梗塞

答え.4

解説

脳塞栓症とは?

脳塞栓症(心原性脳塞栓症または心原性脳梗塞)とは、不整脈が原因で心臓内に血栓ができ、これが血流に乗って脳内の血管で詰まった場合をいう。心原性脳塞栓症とは、心臓内でできた血栓が脳の血管を閉塞して起こる脳梗塞である。 脳梗塞の中で 20~25%を占めており、他のタイプの脳梗塞と比較して前触れなく突然発症し、梗塞巣が広範囲で重症になりやすい。血栓ができる原因としては、心房細動が最も頻度が高く心原性脳塞栓症の約 7 割以上を占めており、その他には洞不全症候群、人工弁、発症4週間未満の急性心筋梗塞、心筋症などがある。

1.× ウイリス脳動脈輪閉塞症
ウイリス動脈輪閉塞症とは、日本人に多発する原因不明の進行性脳血管閉塞症であり、脳血管撮影検査で両側の内頚動脈終末部に狭窄ないしは閉塞とその周囲に異常血管網を認めるものをいう。発症には遺伝的要因が関与する。家庭内発症を10~20%に認め、男女比は1:2.5とされる。好発年齢は、二峰性分布を示し5~10歳を中心とする高い山と、30~40歳を中心とする低い山を認める。機序としては徐々に内頚動脈終末部が狭窄・閉塞し、それに伴い非常に細い血管径の異常血管網、いわゆるもやもや血管が増生する。(※参考:「もやもや病(指定難病22)」難病情報センター様HPより)

2.× 脳動静脈奇形
脳動静脈奇形とは、発症は原因不明、脳の中で異常な動脈と静脈が毛細血管を介さず直接つながり、この部分がとぐろを巻いたような塊(ナイダス)となっている状態の血管奇形である。正常な血管に比べて壁が薄く、破れやすいため、破れると脳出血、くも膜下出血となる。

3.× 動脈瘤破裂
動脈瘤破裂は、脳動脈瘤が破裂し、脳内出血を引き起こす状態を指す。

4.〇 正しい。出血性梗塞は、心原性脳塞栓症の治療に続いて起こり得る。
なぜなら、治療において、抗凝固療法や血栓溶解療法が用いられるため。心原性脳塞栓症は脳浮腫による脳ヘルニアや出血性梗塞、誤嚥性肺炎などを合併しやすく、 他のタイプの脳梗塞より死亡率が高いことが知られている。

 

 

 

 

 

問題55 胸部外傷で正しいのはどれか。

1.緊張性気胸の治療は酸素療法である。
2.内開放性気胸では膿胸を起こしやすい。
3.肋骨骨折の好発部位は第1~3肋骨である。
4.第5~8肋骨の多発骨折で胸壁動揺を起こしやすい。

答え.4

解説
1.× 緊張性気胸の治療は、「酸素療法」ではなく胸腔ドレナージである。
胸腔ドレナージにより、直ちに太い針を胸腔に刺し、空気を除去する必要がある。ちなみに、緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。

2.× 内開放性気胸では膿胸を起こしやすいとはいえない
内開放性気胸とは、肺が外傷により損傷され起こる気胸のことである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ときにショックに至る。ちなみに、膿胸とは、細菌などの病原微生物が、肺の周りの胸腔という空間に強い炎症を起こし、膿を作る病気のことである。原因は、ほとんどが細菌による感染症である。

3.× 肋骨骨折の好発部位は、「第1~3肋骨」ではなく第4~9肋骨である。
なぜなら、これらの肋骨は外傷に対して比較的脆弱であるため。

4.〇 正しい。第5~8肋骨の多発骨折で胸壁動揺を起こしやすい
胸壁動揺とは、複数の肋骨が骨折することで正常な胸壁運動が障害され、換気が困難になることである。 フレイルチェスト、胸郭動揺ともいう。 重篤な胸部外傷である。

 

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