第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後46~50】

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問題46 汚染創の管理で誤っているのはどれか。

1.創洗浄
2.デブリドマン
3.消毒薬塗布
4.ドレッシング

解答

解説

汚染創とは?

汚染創とは、細菌、異物が創面に付着してはいるものの増殖して創周囲組織に浸潤していない状態である。感染創とは、菌が増殖して創周囲組織内に浸 潤している状態である。震災時に治療の対象となる創傷は、汚染創もしくは感染創である。

(※図引用:「これからの正しい創傷治療―湿潤療法の取り組み―」安藤 善郎)

1.〇 正しい。創洗浄によって、細菌や異物を除去することができる。

2.〇 正しい。デブリドマンとは、感染・壊死組織を除去し、創を清浄化することで他の組織への影響を防ぐ外科処置のことである。つまり、壊死組織や感染した組織、異物を創から除去することで、健康な組織が新たに形成されるのを助ける。これは感染創の治療である。

3.× 消毒薬塗布は、汚染創の管理ではない。なぜなら、消毒は、創傷治癒を遅延するため。消毒薬は、細菌だけに作用するのではなく、創傷修復に必要な細胞に対しても毒性がある。創傷は、消毒よりも創傷周囲の皮膚を洗浄し、過剰な水分を取り除いた(洗浄)後、湿潤環境を保持する。近年、創傷治療は「創面を消毒し、ガーゼをあてて乾燥させる」従来の方法から、「創面を消毒しない,乾燥させない」方法へと大きく変化している。

4.〇 正しい。ドレッシングによって、創における湿潤環境形成を促せるため。ちなみに、ドレッシング材とは、「創における湿潤環境形成を目的とした近代的な創傷被覆材をいい、従来のガーゼは除く」と定義されている(日本褥瘡学会)。

 

 

 

 

 

問題47 熱傷で誤っているのはどれか。

1.熱傷とは熱による皮膚・粘膜の損傷である。
2.成人の熱傷面積の概算には「5の法則」を用いる。
3.熱傷は皮膚損傷の深度によってⅠ~Ⅲ度に分類される。
4.広範囲熱傷患者のストレス潰瘍をカーリング(Curling)潰瘍という。

解答

解説
1.〇 正しい。熱傷とは、熱による皮膚・粘膜の損傷である。皮膚のどの層までが障害されたかによって重症度が分類される。

2.× 成人の熱傷面積の概算には「5の法則」ではなく9の法則を用いる。9の法則とは、体表面積を9%ごとに、11のブロックに分けたものである。熱傷評価などで用いられる。部位は、①頭部、②〜④体幹(前面、後面、胸部、腹部)、⑤〜⑥上肢(左・右)、 ⑦〜⑪下肢(左・右、前・後)である。残りの1%は外陰部である。ちなみに、小児は、5の法則となる。頭部15%、前面体幹部20%、後面体幹部15%、左右上肢各10%、左右下肢各15%である。

3.〇 正しい。熱傷は皮膚損傷の深度によってⅠ~Ⅲ度に分類される。
~熱傷の分類~
Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

4.〇 広範囲熱傷患者のストレス潰瘍をカーリング(Curling)潰瘍という。熱傷に合併するストレス性潰瘍病変をCurling潰瘍(カーリング潰瘍)という。受傷後一週間以内に起こることが多く、初期の症状は食欲不振、重度になると、突然の吐血や下血など、胃・十二指腸潰瘍と同じ症状が見られる。

 

 

 

 

 

問題48 感染と原因菌の組み合わせで誤っているのはどれか。

1.中心静脈カテーテル感染-アスペルギルス
2.術後尿路感染-大腸菌
3.術後呼吸器感染-緑膿菌
4.抗菌薬関連腸炎-MRSA

解答

解説
1.× アスペルギルスは、「中心静脈カテーテル感染」ではなく肺感染を呈す。アスペルギルス症とは、アスペルギルス属の真菌によって引き起こされる通常は肺の感染症である。肺や副鼻腔内に、菌糸、血液のかたまり、白血球が絡まった球状のかたまりが形成される。一方、中心静脈カテーテル感染は、皮膚常在菌(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、腸球菌、カンジダ属など)である。中心静脈栄養のことをさし、感染の原因としては、チューブ挿入部の皮膚からの汚染、輸液セットや接続部からの汚染、調剤した薬剤からの汚染が考えられる。またこの他、カテーテルの自己抜去や合併症がある。

2.〇 正しい。大腸菌は、術後尿路感染を呈す。尿道口から大腸菌などの細菌が入り、尿路感染となる。尿路感染とは、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。

3.〇 正しい。緑膿菌は、術後呼吸器感染を呈す。緑膿菌は、術後の人工呼吸管理に関連して発症する外因性感染症の起因菌である。ちなみに、緑膿菌とは、水まわりなど生活環境中に広く常在し、健常者に感染を起こすことはまれだが、抵抗力の低下した患者(易感染性宿主)には感染することがある。緑膿菌は、グラム陰性桿菌の一種ともいわれ、急性腎盂腎炎の原因菌である。急性腎盂腎炎とは、細菌が主として上行性に腎盂腎杯および腎実質に感染し、急性の炎症を生じた病態のことを指す。

4.〇 正しい。MRSAは、抗菌薬関連腸炎を呈す。これをMRSA腸炎という。抗菌薬関連下痢症の一つで、抗菌薬治療をおこなっている患者が下痢をし、下痢をした患者さんの便を培養するとMRSAが検出される。ちなみに、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は、非常にありふれた常在菌で、健常者でも髪の毛や鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着している。

 

 

 

 

 

問題49 腫瘍に対する非侵襲的な検査はどれか。

1.CT(コンピューター断層撮影検査)
2.超音波検査
3.シンチグラフィ
4.PET(陽電子放射断層撮影検査)

解答
※選択肢のいずれも、腫瘍に対する非侵襲的な検査である。問題の意図と答えを推測すると、「放射線被曝を伴わない検査」を聞きたかったのだと思われる。放射線被曝を伴う検査=侵襲的と定義している教科書か資料がもしありましたら教えていただけると幸いです。

解説

侵襲性とは?

非侵襲的とは、「生体を傷つけない」という意味である。身体に負担を与えないことを意味し、皮膚や身体の開口部に器具の挿入を必要としない手技に対して用いられる。非侵襲的検査の代表としてMRIやCT検査などがある。

侵襲とは、内部環境を一定に維持しようと調整するはたらき(ホメオスタシス)に変化をもたらすような外部刺激のことを指す。例えば、手術操作による循環動態の変動や組織の損傷、手術部位露出による寒冷刺激や手術への不安、恐怖などの心理的ストレスなどのことである。手術によって生じる侵襲は、手術侵襲と呼ぶ。

1.△ CT(コンピューター断層撮影検査)は、腫瘍に対する非侵襲的な検査である。(※著者は、この選択肢も十分正解と考えます。分かる方いらしたら、コメント欄にて教えてください)。CT(コンピューター断層撮影検査)とは、エックス線を使用した撮影である。頭部CT検査とは、脳内の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。

2.〇 正しい。超音波検査は、腫瘍に対する非侵襲的な検査である。乳癌の検査における超音波検査とは、乳房に直接プローブを当てて超音波が跳ね返ってくる様子を画像にし、乳房の状態を調べる検査である。

3.△ シンチグラフィは、腫瘍に対する非侵襲的な検査である。(※著者は、この選択肢も十分正解と考えます。分かる方いらしたら、コメント欄にて教えてください)。シンチグラフィとは、体内に投与した放射性同位体から放出される放射線を検出し、その分布を画像化したものである。血行動態や炎症あるいは腫瘍の有無を評価する検査である。

4.△ PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影検査)は、腫瘍に対する非侵襲的な検査である。(※著者は、この選択肢も十分正解と考えます。分かる方いらしたら、コメント欄にて教えてください)。PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影検査)とは、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種である。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化する。PET検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されている。アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われている。

乳がんの検診について

乳がん検診(一次)は、国の指針によりますと、対象は40歳以上で、問診、乳房X線検査(マンモグラフィ)が基本になっています。視触診の推奨はされていませんが、実施する場合はマンモグラフィ検査と併用します。乳がん検診はマンモグラフィ検査が国際基準ですが、乳腺の密度が高い40代の検診精度が低くなるという課題があり、近年、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を組み合わせたり、単独で用いたりする方法を採用しているところもあります。約7万6千人の40代の女性を、マンモグラフィ検査を受けたグループと、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えたグループに無作為に分けて比較する大規模な臨床研究の結果、がんの発見率が、超音波検査を加えたグループの方が1.5倍高かったという報告があります。

(※一部抜粋:「乳がんの検診について」日本対がん協会HPより)

 

 

 

 

 

問題50 抗原抗体反応(不適合輸血)の早期症状で誤っているのはどれか。

1.発熱
2.発疹
3.けいれん
4.悪心・嘔吐

解答

解説

抗原抗体反応とは?

抗原抗体反応とは、抗原と抗体間に起こる結合のこと。生物体に異物(抗原)が侵入した場合に、これに応じてリンパ細胞などで作られる抗体(免疫グロブリン)と抗原との特異的な結合によって生じる反応をさす。

1.〇 発熱/発疹/悪心・嘔吐は、不適合輸血の初期症状である。なぜなら、輸血開始後5分~15分以内に、血管内の溶血反応(赤血球がこわれる)が現れるため。血管に沿った熱感や顔面の紅潮、腰背部痛、腹痛、頚静脈の怒張、頻脈、胸部の絞扼感、呼吸促拍などがみられる。

3.× けいれんは、抗原抗体反応(不適合輸血)の早期症状とはいえない。けいれんとは、自分の意志とは無関係に勝手に筋肉が強く収縮する状態である。けいれんの原因はさまざまで、慢性の脳疾患である「てんかん」の発作として起こるけいれんのほか、脳血管疾患や頭部外傷、身体疾患の急性症状としてみられるけいれん、薬物やアルコールに関連して発生するけいれん、発熱をきっかけに発生するけいれん、心因性に発生するけいれんなどさまざまである。

 

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