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問題56 20歳の男性。高所作業中に転落し腹部を強打して緊急搬送された。到着時血圧68/48mmHg、脈拍数122拍/分、CTで腹腔内に大量の出血がみられた。
考えられるのはどれか。
1.心原性ショック
2.血液分布異常性ショック
3.閉塞性ショック
4.循環血液量減少性ショック
解答4
解説
・20歳の男性(緊急搬送)。
・高所作業中に転落し腹部を強打。
・到着時血圧68/48mmHg、脈拍数122拍/分。
・CT:腹腔内に大量の出血がみられた。
→大量出血によるショックが起こっている。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。
1.× 心原性ショックとは、心ポンプ機能の低下により、全身諸組織における循環不全(安静時における組織代謝需要を満たす血流が供給されない状態)が生じ、低酸素、アシドーシス、毛細血管透過性亢進をきたす重篤な病態を指す。全身および心筋組織の循環不全、低酸素化が生じ、アシドーシス、フリーラジカルの発生、サイトカインの増加、白血球凝集、血管内皮障害、微小循環障害などが生じる。心原性ショックの原因として最も多いのは急性心筋梗塞である。他にも、心臓ポンプ機能の異常による心筋収縮力低下のほか、心筋変性や心タンポナーデによる心室拡張不全、頻脈や徐脈などの不整脈で心拍出量が低下するなど、さまざまな病態が原因になる。
2.× 血液分布異常性ショックとは、血管の特定箇所が何らかの異常により拡張した結果、相対的に循環血液量が減少し、起こるショックである。循環血液量は正常に保たれているのが特徴である。例えば、アナフィラキシーショックである。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。アレルギー反応によって血管透過性が亢進し、血管内外の血液分布が乱れるため、血液分布異常性ショックの原因となる。
3.× 閉塞性ショックとは、心臓は元気で循環血液量も十分あるのに心臓に血液が帰ってこないのが原因でショックとなるものである。原因としては、肺塞栓症、心タンポナーデ、緊張性気胸などがあげられ、胸痛、頻呼吸、頻脈、患側の呼吸音低下と胸郭運動低下、低血圧などの症状がみられる。
4.〇 正しい。循環血液量減少性ショックが考えられる。循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。
問題57 スポーツ障害で正しいのはどれか。
1.急激な外力が加わることで生じる。
2.捻挫はスポーツ障害にあたる。
3.要因に関節弛緩性がある。
4.用具は原因とならない。
解答3
解説
スポーツ障害とは、使い過ぎ症候群とも呼ばれ、スポーツによって関節、靭帯、腱、骨などに繰り返し外力が加わることで引き起こされる障害のことである。身体に過度の負担が繰り返しかかることで、負担のかかっている部分が徐々に損傷し、痛みを主症状とした慢性状態に移行したものをいう。例えば、オスグット病、シンスプリント、疲労骨折、腰椎分離症、野球肩、野球肘、テニス肘などである。
1.× 「急激な」ではなく慢性的な外力が加わることで生じる。
2.× 捻挫はスポーツ障害には「あたらない」。なぜなら、捻挫とは、急性外傷であり、急激な外力によって関節が過度に伸展されたり捻られたりすることで生じるため。
3.〇 正しい。要因に関節弛緩性がある。なぜなら、関節の弛緩性が高い選手は、関節が不安定な状態のままで動かし続けると、周囲の靭帯が完全に伸びきってしまったり、関節軟骨への負担が大きくなったりして、大きな外傷や変形性の変化につながってしまうことがあるため。
4.× 用具も原因となる「ならない」。なぜなら、不適切な用具の使用や用具のサイズ・フィットが合わない場合、特定の部位に過度のストレスがかかるため。特に、シューズの選択が重要である。
問題58 骨肉腫で正しいのはどれか。
1.長管骨骨幹部に好発する。
2.効率に肝転移をきたす。
3.単純エックス線でスピクラ状骨形成を示す。
4.血液所見でアルカリフォスファターゼは低値を示す。
解答3
解説
骨肉腫は原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。
1.× 長管骨「骨幹部」ではなく骨幹端に好発する。特に、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。
2.× 効率に「肝」ではなく肺転移をきたす。なぜなら、骨肉腫は血液の流れで運ばれて転移することが多く、その転移先はほとんどが肺であるため。
3.〇 正しい。単純エックス線でスピクラ状骨形成を示す。スピクラ状骨形成とは、悪性腫瘍の骨皮質外増殖に伴って生じる骨膜反応の1つで、X線像で骨皮質に対して垂直に外に向かって伸びる線状の硬化陰影のことである。腫瘍の発育に沿って骨が形成される現象で、血管に富む悪性腫瘍でみられる。
4.× 血液所見でアルカリフォスファターゼは、「低値」ではなく高値を示す。アルカリフォスファターゼ値(ALP)値は、肝臓や骨の疾患の診断などに用いられる。アルカリフォスファターゼとは、リン酸化合物を分解する働きを持つ酵素で、肝臓や小腸、腎臓、骨などの多くの臓器や器官に存在している。これらの組織に異常があるとアルカリフォスファターゼが血液のなかに漏れ出てくる。基準値:38〜113U/L(成人男女)である。
問題59 骨粗鬆症の治療薬でないのはどれか。
1.ビタミンC
2.活性型ビタミンD製剤
3.ビスフォスフォネート製剤
4.選択的エストロゲン受容体調整薬
解答1
解説
骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。
1.× ビタミンCは、骨粗鬆症の治療薬でない。ビタミンCとは、抗酸化作用をもち、多くのホルモン合成や薬物代謝に関わる。ビタミンC欠乏は、壊血病を生じる。壊血病は、結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる。
2.〇 活性型ビタミンD製剤は、骨粗鬆症の治療薬である。活性型ビタミンD製剤とは、腸管からカルシウムの吸収を促進するとともに、骨代謝を調整する作用がある薬である。具体的には、骨吸収抑制作用により骨密度を改善する効果がある。ちなみに、ビタミンDとは、カルシウムとリンの吸収を促進する働きがある。ビタミンDの欠乏によりくる病をきたす。
3.〇 ビスフォスフォネート製剤は、骨粗鬆症の治療薬である。ビスフォスフォネートとは、骨粗鬆症や骨転移するがんなどに対して用いられる薬である。骨の新陳代謝(骨形成と骨吸収)のうち、骨吸収(骨が壊される)のをブロックすることで、骨を強くする薬である。
4.〇 選択的エストロゲン受容体調整薬は、骨粗鬆症の治療薬である。選択的エストロゲン受容体調整薬はと、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用し、閉経によるエストロゲン分泌の低下によってバランスが崩れた骨代謝を調整することで、骨量の低下を改善する効果をあらわす薬剤である。ちなみに、エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。エストロゲンが減少することで、骨吸収を抑制し骨粗鬆症につながる。
①原発性骨粗鬆症とは、閉経後や高齢者にみられる骨粗鬆症のことである。
②続発性骨粗鬆症とは、結果として二次的な骨量喪失が起こる骨粗鬆症のことをいう。例えば、骨代謝に影響を及ぼすホルモンやサイトカイン異常、不動など骨への力学的負荷の減少、骨構成細胞や物質の異常、全身的および血管障害などの局所的栄養障害などによって起こる。これら骨粗鬆症は原疾患に基づいて発症する続発性骨粗鬆症であるため、原疾患の適切な治療により正常化することが期待しうるが、骨代謝の正常化を期待するには不十分であることが多く、また先天性異常では改善は望めず、多くの症例で骨量喪失に対する治療を要することが多い。
問題60 低身長をきたさないのはどれか。
1.軟骨無形成症
2.モルキオ(Morquio)病
3.偽性上皮小体機能低下症
4.マルファン(Marfan)症候群
解答4
解説
1.〇 正しい。軟骨無形成症は、低身長になる。軟骨無形成症とは、先天異常(常染色体優性遺伝)で、成長軟骨と言われる部分の変化により、低身長や四肢の短さ、指の短さ、特異顔貌が引き起こされる病気である。合併症である肥満、水頭症、閉塞性睡眠時無呼吸、中耳炎、脊柱管狭窄症などの治療または予防が必要になる場合がある。軟骨無形成症の人の平均寿命は健常者の平均寿命より約10年で短いといわれている。
2.〇 正しい。モルキオ(Morquio)病は、低身長になる。Morquio病とは、骨の変形が非常に強く、重症の方は身長も100cm前後となる特徴を持つ。ちなみに、知能は障害されません。幼児期から手足の変形、背骨のゆがみ、短い首と胴、X脚、低身長が観察される。また、背骨が強く変形して扁平になるために胴が短くなる。関節の靱帯が弛緩するために、関節がぐらぐらと不安定となる。
3.〇 正しい。偽性上皮小体機能低下症は、低身長になる。偽性上皮小体機能低下症とは、副甲状腺ホルモンが正常に分泌されているにもかかわらず、標的組織が副甲状腺ホルモンに対して抵抗性を示すことで、低カルシウム血症や高リン血症などの副甲状腺機能低下症と同じような症状を引き起こす病気である。比較的特徴的なのは、「テタニー」と呼ばれる特徴的な手足の筋肉の「つっぱり」や「けいれん」、手足や口の周りの「しびれ感」、けいれんが高度の場合には全身におよぶ「てんかん」のような発作になったり、意識消失発作のような形をとることもある。また、この病気にはいくつかのタイプがあり、骨格の変化(皮下の本来骨のない場所に骨ができる、手足の指が短い、身長が低い、丸顔)、肥満、知的障がいを伴うことの多いタイプもある(※参考:「偽性副甲状腺機能低下症(指定難病236)」難病情報センターHPより)。
4.× マルファン(Marfan)症候群は、低身長をきたさない。むしろ、高身長を特徴とする。Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。