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問題116 35歳の男性。テニス中に転がっていたボールを踏み転倒し、右母指を外転強制された。MP関節の圧痛、運動痛、側方動揺性がみられる。医科での単純エックス線検査では骨損傷は確認されなかった。
正しいのはどれか。
1.MP関節伸展位で固定する。
2.ステナー損傷が必発する。
3.IP関節に弾発現象が現れる。
4.IP関節伸展位で副靱帯は弛緩する。
解答1
解説
・35歳の男性(右母指を外転強制)。
・テニス中に転がっていたボールを踏み転倒。
・MP関節:圧痛、運動痛、側方動揺性がみられる。
・単純エックス線検査:骨損傷なし。
→本症例は、スキーヤー母指を呈していると考えられる。スキーヤー母指とは、母指MP関節尺側側副靭帯損傷ともいい、原因は、親指の先から2番目の関節が、スキー中に転倒した場合などにストックによって外側に強制的に曲げられたときに、靭帯に損傷が起こって生じる。不安定性のほか、物をつまんだり、にぎり動作で痛みが増強する症状がみられる。損傷の程度は、指を横に曲げてみて判定し、軽度の場合は保存的治療法を選択し、過度に横に曲がってしまう場合は手術によって切れた靭帯を再建する必要がある。
1.〇 正しい。MP関節伸展位で固定する。MP関節伸展位で、アルミ副子などで3週間程度固定する(※参考:「手指側副靭帯損傷」スポーツ整骨院様HPより)
2.× ステナー損傷が「必発する」と断言できない。なぜなら、ステナー損傷は、MP関節尺側側副靭帯「損傷」ではなく完全断裂にみられる症状であるため。ステナー障害とは、靭帯の断端が反転して、母指内転筋腱膜の下に挟まっている状態を指す。ステナー障害を発症すると治癒不能となってしまうため靭帯縫合術を行う。靱帯再建術とは、切れた靭帯の代わりの腱を、自分の膝の裏から移植する手術である。
3.× IP関節に弾発現象が現れるのは、ばね指である。弾発現象は、関節の可動に伴って「ポキッ」「クリッ」などの音がしたり、バネのようにひっかかる現象である。ちなみに、弾発指(ばね指)とは、指を曲げて伸ばそうとしたときに、弾くようなバネに似た動きをする状態のことである。ばね指は、指を曲げるのに必要な腱や腱鞘に炎症が起こり、腱鞘炎が悪化することで発症する。特に手指を使いすぎていたり、スポーツをしたりしているとかかりやすいといわれている。
4.× IP関節伸展位で副靱帯は、「弛緩」ではなく緊張する。なぜなら、副靭帯は、側副靭帯の掌側を走行するため。ちなみに、側副靭帯は伸展位で弛緩、屈曲位で緊張する。
問題117 34歳の女性。ジムでチューブトレーニング中、右第2MP関節が突然動かなくなり来所した。屈曲は可能だが、伸展が不能であった。触診では同部の手掌橈側に圧痛がみられた。腫瘤や瘢痕はない。
考えられるのはどれか。
1.オーバーラッピングフィンガー
2.ロッキングフィンガー
3.マレットフィンガー
4.スナッピングフィンガー
解答2
解説
・34歳の女性。
・ジムでチューブトレーニング中:右第2MP関節が突然動かなくなった。
・屈曲:可能、伸展:不能。
・触診:同部の手掌橈側に圧痛。
・腫瘤や瘢痕はない。
→各選択肢が否定できる理由をしっかり押さえておこう。
1.× オーバーラッピングフィンガーは考えにくい。なぜなら、今回はまだ治癒過程を経ていないため。オーバーラッピングフィンガーとは、手の中手骨・基節骨を骨折した際に回旋転位を残してしまった時に見られる変形治癒のことをいう。指の骨折が原因で指が重なる変形が残ってしまう状態である。
2.〇 ロッキングフィンガーが考えられる。ロッキングフィンガーとは、骨に靭帯が引っかかり、指が伸ばせない状態である。すべての手指に起こりえる。ただし、中手指節関節(MP関節)で発生することが多く発生し、2〜5指では中手骨骨頭の掌橈側にできた骨棘に副靭帯が引っ掛かり発生することが多いとされている。また、20〜40歳代の女性の右手に好発するともいわれている。
3.× マレットフィンガー(槌指)は考えにくい。なぜなら、DIP関節に起こる症状であるため。ちなみに、槌指は、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。
4.× スナッピングフィンガー(弾発指:ばね指)は考えにくい。なぜなら、本症例の屈曲:可能、伸展:不能と症状が合致しないため。スナッピングフィンガーとは、指を曲げて伸ばそうとしたときに、弾くようなバネに似た動きをする状態のことである。ばね指は、指を曲げるのに必要な腱や腱鞘に炎症が起こり、腱鞘炎が悪化することで発症する。特に手指を使いすぎていたり、スポーツをしたりしているとかかりやすいといわれている。弾発現象は、関節の可動に伴って「ポキッ」「クリッ」などの音がしたり、バネのようにひっかかる現象である。
問題118 14歳の男子。肥満体型。はっきりとした原因はなく、1か月くらい前から遊んでいるときに、右膝に痛みを感じるようになったため来所した。3日前から右膝部や股関節部の痛みが増強してきたと訴えている。腫脹、圧痛、熱感はみられないが、下肢の他動運動で股関節に屈曲制限がみられた。
最も考えられるのはどれか。
1.大腿骨骨肉腫
2.単純性股関節炎
3.大腿骨頭すべり症
4.腸腰筋膿瘍
解答3
解説
・14歳の男子(肥満体型)
・はっきりとした原因はない。
・1か月くらい前:右膝に痛みを感じるようになった。
・3日前:右膝部や股関節部の痛みが増強してきた。
・腫脹、圧痛、熱感はみられない。
・下肢の他動運動で股関節に屈曲制限がみられた。
1.× 大腿骨骨肉腫は考えにくい。なぜなら、大腿骨骨肉腫の初期症状である腫脹、圧痛、熱感はみられないため。また、股関節屈曲制限も症状と合致しない。ちなみに、骨肉腫とは、原発性悪性骨腫瘍の中で最も多い。10歳代に好発し、大腿骨遠位部と脛骨近位部の骨幹端部に多く発生する。骨Paget(骨ページェット病)などに続発する場合がある(二次性骨肉腫)。肺転移が多いが、5年生存率は近年70%以上にまで改善してきている。
2.× 単純性股関節炎は考えにくい。なぜなら、単純性股関節炎は、急性の股関節の痛みと一過性の炎症を特徴とするため。ちなみに、単純性股関節炎とは、原因は不明で、1週間ほど安静にしていれば痛みも治まり、自然治癒する。エックス線写真において、特段異常所見は見られない。3~10歳に好発する。超音波検査やMRIで関節液の貯留が確認される。ほとんど片側性で、強い発赤や腫脹、発熱は見られないが、股関節の運動時疼痛を訴え、運動制限、跛行が見られる。
3.〇 大腿骨頭すべり症が最も考えられる。大腿骨頭すべり症とは、大腿骨近位骨端軟骨の脆弱化、体重負荷により、大腿骨頭が頚部に対して、後下方に転位する疾患である。原因として、肥満と成長期のスポーツ活動による力学的負荷が大腿骨に加わるために生じる。成長ホルモンと性ホルモンの異常で発症することもある。9歳から15歳頃の股関節の成長軟骨板(成長線)が力学的に弱い時期に発症する。
4.× 腸腰筋膿瘍は考えにくい。なぜなら、腫脹、圧痛、熱感はみられないため。膿瘍とは、組織のなかに膿がたまった状態のことをいう。う蝕や歯周病など歯が原因で感染し炎症をおこしてできる場合がほとんどである。
問題119 39歳の男性。マラソンが趣味である。左大腿の筋肉痛で、図に示す締め付け圧が調整できるサポーターを装着して練習をしていた。強く締めたほうが効果があると感じ、できるだけ強めに締めていたところ、膝内側の疼痛と下腿内側の違和感が生じてきた。
考えられるのはどれか。
1.滑膜ヒダ障害
2.膝蓋軟骨軟化症
3.内側半月損傷
4.ハンター管症候群
解答4
解説
・39歳の男性(趣味:マラソン)。
・左大腿の筋肉痛:サポーターを装着して練習。
・強く締めたほうが効果があると感じ、できるだけ強めに締めていた。
・膝内側の疼痛と下腿内側の違和感が生じてきた。
→本症例は、サポーターの圧迫が原因で、血流障害や神経圧迫が起きていると考えられる。
1.× 滑膜ヒダ障害は考えにくい。なぜなら、サポーターの圧迫との関連性や、下腿内側の違和感が症状と一致しないため。ちなみに、滑膜ヒダ障害とは、棚障害ともいわれ、膝内側滑膜ヒダなどが膝関節の屈伸時に内側膝蓋大腿関節内に挟まれて疼痛などの症状を生じる障害である。若い女性に好発する。症状として、運動時の膝蓋骨内下縁の疼痛・違和感、圧痛、引っかかり感、膝関節屈伸時のクリック音などがあげられる。保存療法が基本であるが、頑固な疼痛や嵌頓症状が残る場合は関節鏡視下に切除することもある。
2.× 膝蓋軟骨軟化症は考えにくい。なぜなら、膝内側の疼痛と下腿内側の違和感が、症状と一致しないため。膝蓋軟骨軟化症とは、15~30歳に好発し、膝蓋骨関節軟骨に軟化・膨隆・亀裂などをきたした状態のことである。症状として運動時・階段昇降時などに、膝前方の疼痛があげられる。膝蓋骨グラインディングテストにて検査する。
3.× 内側半月損傷は考えにくい。なぜなら、半月損傷の場合、クリック音が認められるため。また、サポーターの圧迫との関連性や、下腿内側の違和感が症状と一致しない。McMurrayテスト(マックマリーテスト)の陽性は、半月板損傷を疑う。①背臥位で膝を完全に屈曲させ片手で踵部を保持する。②下腿を外旋させながら膝を伸展させたときに痛みやクリックを感じれば内側半月の損傷、下腿を内旋させながら膝を伸展させたときに生じるならば外側半月の損傷を示唆する。
4.〇 ハンター管症候群が考えられる。Hunter管症候群(ハンター管症候群:内転筋管の絞扼)は、伏在神経が絞扼されている状態である。内転筋管とは、膝関節内側の筋で囲まれた孔である。症状として、膝から下のふくらはぎの内側あたりと内くるぶし周辺にしびれや痛みがあり、立ち上がる時や膝を伸ばす時にピリッと痛みが強くなる。膝の内側がズキズキ痛かったりする場合もあるので、膝の痛みと間違われることもある。ほとんどの場合は、運動などによる筋肉の使い過ぎが原因で起こる。
問題120 17歳の男子。高校でテニス部に所属している。1か月前から体力強化のためにダッシュ、ジャンプ、ターン、ストップを主としたトレーニングを行ったところ、下腿内側に疼痛を自覚した。来所時、脛骨内側後縁に圧痛があり、扁平足がみられた。部活が休みの日には目立った疼痛はないという。
考えられるのはどれか。
1.テニスレッグ
2.シンスプリント
3.後脛骨筋炎
4.アキレス腱周囲炎
解答2
解説
・17歳の男子(高校でテニス部)。
・1か月前:体力強化のためにダッシュ、ジャンプ、ターン、ストップを主としたトレーニングを行った。
・下腿内側に疼痛を自覚。
・来所時:脛骨内側後縁に圧痛、扁平足。
・部活が休みの日:目立った疼痛はない。
→各選択肢の症状をしっかり押さえておこう。①トレーニング後に疼痛を自覚したこと、②扁平足が誘因となることなどから絞ろう。
1.× テニスレッグより優先されるものがほかにある。なぜなら、本症例の受傷起点が、体力強化のためのトレーニング実施後であるため。肉離れの場合、トレーニング中に起こることが多い。ちなみに、下腿三頭筋肉離れ(テニスレッグ)とは、ふくらはぎの筋肉(特に内側の)肉離れのことである。ボールに素早く反応して瞬発的に動いた際に、収縮していた筋肉が急激に伸び縮みして、筋線維が割ける。肉離れとは、筋肉が過度に引き伸ばされたり、筋肉が縮んだ状態から引き伸ばされた際に筋線維が切れることである。肉離れの予防として、①柔軟性の向上、②血行改善、③アイシング、④違和感があった際の中断が必要となる。
2.〇 シンスプリントが考えられる。シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。超音波にて治療を行う際は、下腿中央から遠位1/3部の脛骨後内方、前脛骨筋部、骨間膜などに照射する。足の裏のアーチ(いわゆる土踏まず)は着地によって地面から受ける衝撃を和らげるクッションのような役割を果たしている。土踏まずのない扁平足の人は地面からの衝撃がダイレクトに伝わるため、シンスプリントになりやすい。
3.× 後脛骨筋炎は考えにくい。なぜなら、疼痛部位が症状と一致しないため。後脛骨筋腱腱鞘炎(後脛骨筋腱腱鞘滑膜炎)は、後脛骨筋腱の周りを保護している被膜(腱鞘)の炎症である。扁平足が誘因となる。中年以降の女性に多いとされている。内くるぶしや足裏に痛みが生じるが、初期段階では程度は軽く痛みを感じない方もいる。痛み自体は弱いものの初期でも内くるぶしの下に腫れなどの症状は見られる。この状態で放置すると、徐々に症状は進行し、痛みが強くなり、体重をかけたり、つま先立ちをすることができないほどになる。
4.× アキレス腱周囲炎は考えにくい。なぜなら、疼痛部位が症状と一致しないため。アキレス腱周囲炎とは、アキレス腱を覆うパラテノンと呼ばれる組織に炎症が生じた状態を指す。スポーツなどで走ったり、ジャンプしたりすることにより、アキレス腱周囲が過度に引っ張られることなどが原因で発症する。高校生から社会人までの幅広い年代で発生がみられるが、比較的若い世代に多い。