第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後121~122】

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問題121 29歳の男性。プロバスケットボール選手である。2か月前から右足関節背屈での疼痛を自覚している。足関節前面に骨性隆起を触れるが、同部の圧痛は軽度である。足関節に背屈制限と不安定性がみられる。
 考えられるのはどれか。

1.三角骨障害
2.衝突性外骨腫
3.足根洞症候群
4.足根管症候群

解答

解説

本症例のポイント

・29歳の男性(プロバスケットボール選手)。
・2か月前:右足関節背屈での疼痛を自覚。
・足関節前面:骨性隆起を触れる(同部の圧痛は軽度)。
・足関節に背屈制限と不安定性がみられる。
→各選択肢を否定できる理由をしっかり押さえておこう。

1.× 三角骨障害は考えにくい。なぜなら、本症例は右足関節背屈での疼痛を自覚しているため。三角骨障害は、足関節底屈で痛みを呈す。ちなみに、(有痛性)三角骨障害とは、外くるぶしの後方、アキレス腱前方に痛みがあり、足関節を底屈すると強い痛みを感じるものをさす。クラシックバレエやサッカーなど足関節を底屈するスポーツで多く見られ、繰り返す微小外傷により徐々に症状が出現する事が多い。三角骨は距骨後突起の後方に位置する過剰骨のひとつである。健常者での出現率は約10%で、約2/3が片側性である。

2.〇 衝突性外骨腫が考えられる。衝突性外骨腫とは、フットボーラーズアンクルともいい、サッカーのキック動作や、バスケットボールのジャンプ時など足関節を大きく動かすことで、骨同士が衝突して足首の前や後ろの部分に骨の増殖変化(骨棘形成)、骨軟骨に損傷をきたしている状態をさす。したがって、サッカー選手に多く発生する足首の障害である。また、足関節捻挫の既往により、足関節の不安定性が増すことで発生しやすくなる。

3.× 足根洞症候群は考えにくい。なぜなら、足関節前面の骨性隆起を触れることと症状が一致しないため。足根洞とは、外果のやや前方にあるへこみの奥の部分である。足根洞には浅腓骨神経から分岐する中間足背皮神経の枝と、腓腹神経から分かれる距骨下関節枝の枝が分布し、脂肪組幟や骨間距踵靱帯には固有知覚を司ると思われる神経終末器官や神経自由終末が存在し、後足部の運動制御や知覚に重要な役割を果たしている。原因は、明確ではないが、距骨下関節嚢や骨間距盤戦帯とその周囲軟部組織の損傷による慢性滑膜炎を中心とした炎症と損傷部での修復機転による線維組織と神経終末の侵入、癒痕化による骨間距腫靭帯の機能不全などがあげられている。

4.× 足根管症候群は考えにくい。なぜなら、足関節前面の骨性隆起を触れることと症状が一致しないため。足根管症候群とは、後脛骨神経が脛骨内果後下方の靭帯性の狭いトンネル部で圧迫を受ける絞扼性神経障害である。足根管を通るのは①後脛骨筋の腱、②長指屈筋の腱、③後脛骨動脈、脛骨神経、長母指屈筋の腱である。

 

 

 

 

 

問題122 18歳の女子。バスケットボール練習中に右足部を回外強制で負傷し来所した。写真に示す部位に限局する腫脹と著明な圧痛がみられた。
 考えられるのはどれか。2つ選べ。

1.二分靱帯損傷
2.腓骨筋腱脱臼
3.有痛性外脛骨
4.踵骨前方突起骨折

解答

解説

本症例のポイント

・18歳の女子。
・バスケットボール練習中:右足部を回外強制で負傷。
・写真に示す部位:限局する腫脹と著明な圧痛
→足の構造をしっかり把握しておこう。

1.〇 二分靱帯損傷が考えられる。二分靭帯(Y靭帯)は、縦足弓の外側部を支持する。他にも外側の踵骨・立方骨・舟状骨を硬く締結する。つま先立ちやジャンプの着地で内反捻挫をした際に損傷を受ける。

2.× 腓骨筋腱脱臼は考えにくい。なぜなら、外果の後下方で発生するため。腓骨筋腱脱臼とは、足関節をひねることで腓骨筋腱が本来の位置からずれて、くるぶしの上に乗り上げた状態をいう。スキーで足を板に固定されている状態で足首をひねったり、サッカー・バスケットボールでの切り返し動作時に足を地面に固定した状態で足首をひねったりしたときなどに発生する。初回脱臼時には、4~6週間のギプス固定を行なうが、ギプス固定による治癒率は約50%といわれているため、早期にスポーツ復帰を望む場合には手術することもある。

3.× 有痛性外脛骨は考えにくい。なぜなら、足の内側(舟状骨)に疼痛を自覚するため。外脛骨とは、足の舟状骨の内側に位置する骨をいう。正常な人の15%程度にみられる足の内側にある余分な骨である。有痛性外脛骨とは、その外脛骨が痛みを起こしてしまった状態をいう。スポーツ活動や捻挫などの外傷をきっかけに痛みを起こすことがあり、小児、特に女性での発症が多く、成長期を終えると痛みが治まることが多い。主な症状として、①疼痛(圧痛、運動時痛)、②腫脹(うちくるぶしの下方の腫れ)があげられる。他にも、炎症が強い場合には、熱感も引き起こすことがある。治療として、①薬物療法(鎮痛)、②運動療法、③物理療法(温熱や電気刺激による鎮痛)、④装具療法などがあげられる。

4.〇 踵骨前方突起骨折が考えられる。踵骨前方突起骨折とは、前方突起縁の二分靭帯がついている部分の裂離骨折である。踵骨前方突起は内返しで剥離骨折となり、外返しで距骨と衝突して圧迫骨折となる。初期段階で骨折を発見できれば、3週間程度ギブス固定をすると、後遺障害を残さずに完治することが多い。疼痛が改善しない場合、偽関節が起こっていることが考えられ、手術が検討される。

 

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