第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後66~70】

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問題66 足部に生じないのはどれか。

1.ケーラー(Kohler)病
2.ジョーンズ(Jones)骨折
3.モートン(Morton)病
4.キーンベック(Keinbock)病

解答

解説
1.〇 ケーラー(Kohler)病は、足の舟状骨への血液供給が途絶えるためにその部分が壊死する病気(無腐性壊死)である。ケーラー病は骨軟骨症の一種である。ケーラー病の原因は、足の舟状骨への血液供給不足であるが、なぜ血液の供給が不足するのかは分かっていない。この病気は通常、3~5歳の小児(男児に多い)の片足のみに起こる。足が腫れて痛み、足のアーチ部分に圧痛が生じる。体重支持と歩行によって不快感が増すため、歩き方(歩様)に異常がみられる。スポーツの中止やアーチ足底板の利用により、舟状骨へのストレスを低減させることで良好な予後が期待できる。レントゲンの特徴として、正常よりも小さな舟状骨が確認できる。(※参考:「ケーラー病とは?」MSDマニュアル様HPより)

2.〇 ジョーンズ(Jones)骨折は、第5中足骨疲労骨折である。第5中足骨疲労骨折とは、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど素早い動きを繰り返して行うスポーツの競技選手によく発生する。ランニングやジャンプ動作による過度の体重負荷が、長時間、足部アーチに繰り返し加わることで発生するオーバーユースに起因するスポーツ障害である。疲労骨折の発生が早期に見つかった場合は、骨折の原因になった活動や悪化させる運動を中止して松葉杖を使用する。ときにギプスによる固定が必要である。

3.〇 モートン(Morton)病とは、足趾へと向かう神経が、足趾の付け根の部位で圧迫を受けることで生じる神経障害である。 神経が圧迫される原因には、ハイヒールなどの爪先が細くヒールが高い靴を履くことや、外反母趾など骨の形態異常がある。

4.× キーンベック(Keinbock)病は、「足部」ではなく手部に生じる。キーンベック病は、月状骨軟化症とも呼ばれ、月状骨がつぶれて扁平化する病気をいう。月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つでほぼ中央に位置している。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つである。10~50歳代、男性、大工など手をよく使う人に好発する。治療は、初期では装具固定、進行例では手術療法を検討する。

 

 

 

 

 

問題67 78歳の女性。自宅で尻もちをついた際に腰痛が生じ、動けなくなったため救急車で病院へ搬入された。腰痛は強かったが、下肢の動きは保たれていた。単純エックス線像を下に示す。
 正しいのはどれか。

1.脆弱性骨折である。
2.皮膚症状を合併する。
3.疼痛は軟骨の摩耗による。
4.手術治療が第一選択である。

解答

解説

本症例のポイント

・78歳の女性。
・自宅で尻もちをついた際に腰痛が生じ、動けなくなった。
・腰痛は強かったが、下肢の動きは保たれていた。
・単純エックス線像:①膨張した椎間板、②魚椎変形(楔状変形)、③骨陰影の減少など。
→本症例は、圧迫骨折が疑われる。圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。

1.〇 正しい。脆弱性骨折である。脆弱性骨折とは、骨量の減少や骨質の劣化によって骨強度が低下し、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折である。 軽微な外力とは、立った姿勢からの転倒かそれ以下の外力をさす。転んで手をついた、重いものを持ち上げた、尻もちをついた、など健康な方では折れないような外力による骨折のことをさす。【高齢者の4大骨折】骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。

2.× 皮膚症状を合併するとは断言できない。なぜなら、圧迫骨折は、一般的に軽微な外力によって発生した非外傷性骨折であるため。ただし、しりもちをついた際の衝撃で、内出血や腫れが皮膚に影響を与えることがある。

3.× 疼痛は軟骨の摩耗によるとは断言できない。むしろ、軟骨の摩耗による痛みは、変形性関節症にみられる症状である。本症例の場合は、尻もちをついた際に生じた軟部組織の損傷と考えられる。

4.× 第一選択は、「手術治療」ではなく保存的治療(安静、疼痛管理、骨粗鬆症治療)が多い。

 

 

 

 

 

問題68 運動器損傷で正しいのはどれか。

1.打撲では介達痛がある。
2.脱臼では異常可動性がある。
3.靱帯断裂では最終域感がある。
4.末梢神経損傷では代償運動がある。

解答

解説
1.× 打撲では、介達痛はみられにくい。なぜなら、打撲では局所の痛みや腫れ、内出血が主な症状であるため。介達痛とは、 軸圧痛ともいい、骨折の患部から離れた場所を刺激した際、患部に生じる痛みのことである。介達痛は骨折だけでなく、骨や骨周囲の炎症、腫瘍、半月板や関節軟骨といった関節内構成物の損傷などでも認めることがある。

2.× 脱臼では、「異常可動性」ではなく弾発性固定がある。【脱臼の固有症状】①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。

3.× 靱帯断裂では最終域感がみられにくい。なぜなら、靭帯の働きとして、関節の固定・安定化があげられるため。したがって、靱帯断裂では、関節の安定性が失われ、正常な動きを制限する「最終域感」は失われる。

4.〇 正しい。末梢神経損傷では代償運動がある。なぜなら、末梢神経損傷(特に運動神経の障害)により、その神経が支配する筋肉が機能しなくなるため。したがって、他の筋肉がその機能を補う。これを代償運動という。

正常な最終域感(end feel)

軟部組織の接近
筋の伸張感
関節包・靭帯の伸張
骨性

 

 

 

 

 

問題69 神経麻痺と症状の組合せで誤っているのはどれか。

1.総腓骨神経-下垂足
2.長胸神経-翼状肩甲
3.閉鎖神経-ハサミ足
4.後骨間神経-下垂指

解答

解説
1.〇 正しい。総腓骨神経は、下垂足が起こる。下垂足は足背屈筋が収縮できず、足クリアランス低下が生じるため、背屈補助が必要となる。総腓骨神経麻痺は、下垂足となり、鶏歩がみられる。

2.〇 正しい。長胸神経は、翼状肩甲が起こる。翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺があげられる。

3.× ハサミ足は、「閉鎖神経」ではなく痙性対麻痺(脳性麻痺など)で起こる。はさみ足歩行は、痙性対麻痺(錐体路障害)などで認める。足尖で歩行し、両膝をするように歩く。

4.〇 正しい。後骨間神経は、下垂指が起こる。下垂指とは、手首の背屈は可能だが、手指の付け根の関節の伸展ができなくなり、指のみが下がった状態である。

前骨間神経と後骨間神経について

前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。

【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。ほかにも、長母指屈筋、方形回内筋を支配する。
→涙のしずくが陽性。

【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。

 

 

 

 

 

問題70 施術録へ記録するSOAPでAはどれか。

1.評価
2.判断
3.治療
4.教育計画

解答

解説

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題志向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

1.〇 正しい。評価は、Aである。
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)

2.× 判断は、SOAPに含まれない

3~4.× 治療/教育計画は、Pである。
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

 

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