第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後81~85】

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問題81 マレットフィンガーⅢ型で正しいのはどれか。

1.裂離骨折である。
2.腫脹は軽度である。
3.屈曲強制で発生する。
4.DIP関節伸展位で固定する。

解答

解説

MEMO

マレットフィンガーとは、槌指やハンマー指、ベースボールフィンガー、ドロップフィンガーのことである。DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。

【末節骨骨折・マレットフィンガーの分類】
Ⅰ型(腱断裂):終止腱の断裂
Ⅱ型(裂離骨折):終止腱の停止部での裂離骨折
Ⅲ型(関節内骨折):末節骨の背側関節面を含む骨折

1.× 裂離骨折であるのは、Ⅱ型である。剥離骨折とは、骨の衝突、摩擦が原因で発生する骨折のことをいう。

2.× 腫脹は、「軽度」ではなく重度である。症状として、DIP関節の腫脹・疼痛、DIP関節の伸展障害がみられる。

3.× 屈曲強制で発生するのは、Ⅲ型に限ったことではない。マレットフィンガーの受傷起点として、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。ちなみに、DIP関節を過伸展すると転位が増悪する。

4.〇 正しい。Ⅲ型はDIP関節伸展位で固定する。他は、MP関節軽度屈曲、PIP関節90屈曲、DIP関節過伸展位で5~6週の期間を固定する。ちなみに、Ⅰ型は6~8週間固定する。

 

 

 

 

 

問題82 骨盤骨裂離骨折の部位と原因の組合せで正しいのはどれか。

1.腸骨稜-腸腰筋の牽引
2.上前腸骨棘-縫工筋の牽引
3.下前腸骨棘-大腿筋膜張筋の牽引
4.坐骨結節-長内転筋の牽引

解答

解説
1.× 腸腰筋の牽引は、「腸骨稜」ではなくで大腿骨の小転子ある。腸腰筋は、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子

2.〇 正しい。縫工筋の牽引は、上前腸骨棘に骨裂離骨折が起こりやすい。
縫工筋の【起始】上前腸骨棘、【停止】脛骨粗面の内側(鵞足を形成)である。

3.× 大腿筋膜張筋の牽引は、「下前腸骨棘」ではなく上前腸骨棘である。
大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面である。

4.× 長内転筋の牽引は、「坐骨結節」ではなく恥骨結節である。
長内転筋の【起始】恥骨結節の下方、【停止】大腿骨粗線内側唇の中部1/3である。

 

 

 

 

 

問題83 大腿骨骨幹部骨折で正しいのはどれか。

1.近位1/3部骨折の近位骨片は内転する。
2.近位1/3部骨折の遠位骨片は外旋する。
3.中央1/3部骨折の近位骨片は外転する。
4.中央1/3部骨折の遠位骨片は内旋する。

解答

解説

大腿骨骨幹部骨折とは?

大腿骨骨幹部とは、大腿骨の真ん中を指す。この部分が骨折した場合に大腿骨骨幹部骨折と呼ぶ。成人は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多く、ケガをした直後は激しい痛みがあり歩行困難なる。また、高エネルギー外傷でその他の部位(四肢など)の骨折や他の外傷(頭部、胸部、腹部)を伴うことも多く注意が必要である。

【転位】
①近位1/3部骨折:近位骨片は屈曲、外転、外旋。遠位骨片は内上方へ短縮転位し、近位骨片の後方に位置する。
②中央1/3部骨折:近位骨片は屈曲、内転。遠位骨片は後上方へ短縮転位する。
③遠位1/3部骨折:近位骨片は中間位。遠位骨片は後方に転位、短縮する。

1.× 近位1/3部骨折の近位骨片は、「内転」ではなく屈曲・外転・外旋する。なぜなら、近位1/3部骨折の近位骨片は、股関節外転筋群の影響が強いため。

2.〇 正しい。近位1/3部骨折の遠位骨片は、外旋する。内上方へ短縮転位する。

3.× 中央1/3部骨折の近位骨片は、「外転」ではなく屈曲・内転する。なぜなら、中央1/3部骨折の近位骨片は、内転筋群の影響が強いため。

4.× 中央1/3部骨折の遠位骨片は、「内旋」ではなく外旋する。後上方へ短縮転位する。

 

 

 

 

 

問題84 膝蓋骨骨折で誤っているのはどれか。

1.膝蓋支帯断裂の合併は転位高度となる。
2.介達外力で粉砕骨折が発生する。
3.腱膜下骨折は膝伸展可能である。
4.分裂膝蓋骨と鑑別を要する。

解答

解説

膝蓋骨骨折とは?

膝蓋骨骨折の原因は、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。

1.〇 正しい。膝蓋支帯断裂の合併は転位高度となる。なぜなら、膝蓋支帯は膝蓋骨を安定させる役割を果たしているため。膝蓋支帯とは、膝蓋骨の内側を縦に走る線維束で、膝関節の伸展機構の一部として機能している。

2.× 介達外力で、「粉砕骨折」ではなく横骨折が発生する。ちなみに、横骨折とは、骨折線が骨の長軸方向に対してほぼ垂直に入る骨折のことである。

3.〇 正しい。腱膜下骨折は膝伸展可能である。なぜなら、膝蓋支帯が残存しているため。腱膜下骨折とは、膝蓋骨を覆う腱膜に断裂がなく、骨片の転位も軽度である骨折である。

4.〇 正しい。分裂膝蓋骨と鑑別を要する。分裂膝蓋骨とは、先天的なものであり、通常は痛みがないが、膝蓋骨が2つ以上に分かれている状態のことをいう。10代のスポーツをしている子に多く、症状が出ない場合もある。有痛性分裂膝蓋骨は、激しいスポーツ動作などをきっかけに分裂した箇所にストレスが加わることで痛みが出現する。症状が出ている場合(痛みが出ている場合)を有痛性と分類される。有痛性分裂膝蓋骨の症状は、膝蓋骨の割れた分裂部に炎症が起き、ズキズキした痛みを伴う。膝の曲げ伸ばしにはお皿が押し付けられるような力や、大腿四頭筋の牽引力が加わり、痛みが起こり、ジャンプなど運動強度が増すと痛みが増す。

 

 

 

 

 

問題85 内果・外果および脛骨遠位関節面後縁を骨折したものはどれか。

1.ポット(Pott)骨折
2.チロー(Tillaux)骨折
3.コットン(Cotton)骨折
4.デュピュイトラン(Dupuytren)骨折

解答

解説
1.× ポット(Pott)骨折は、足部の回内/外旋により、①三角靱帯断裂、②遠位脛腓関節の完全離開、③腓骨骨幹部または頸部の螺旋状骨折の3つを合併したものを指す。デュピュイトラン(Dupuytren)骨折とは、①三角靱帯断裂しているかどうかが鑑別基準となっている。

2.× チロー(Tillaux)骨折とは、前脛腓靭帯の強い牽引力によって生じた脛骨側での剥離骨折である。前脛腓靱帯は、内返し捻挫時に損傷しやすい。

3.〇 正しい。コットン(Cotton)骨折は、内果・外果および脛骨遠位関節面後縁を骨折したものである。足関節果部骨折のうち、内果・外果・後果の三果の同時骨折(脛骨・腓骨の同時骨折)を指す。

4.× デュピュイトラン(Dupuytren)骨折は、足部の回内/外旋により①内果骨折、②遠位脛腓関節の完全離開(三角靭帯裂)、③腓骨骨幹部または頸部の骨折(脛腓靭帯結合より高位の腓骨骨折)の3つを合併したものを指す。

 

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