第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午後81~85】

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問題81 手指の中節骨掌側板付着部裂離骨折の固定肢位で正しいのはどれか。

1.MP関節伸展位、PIP関節屈曲位、DIP関節伸展位
2.MP関節伸展位、PIP関節伸展位、DIP関節屈曲位
3.MP関節屈曲位、PIP関節屈曲位、DIP関節伸展位
4.MP関節屈曲位、PIP関節伸展位、DIP関節伸展位

解答

解説

(※引用:「イラスト素材:手の骨」illustAC様より)

掌側板とは?

掌側板とは、四角い線維軟骨性の板で、関節の掌側にひろがってその底部を形成している。停止部の厚さは2~3mmであるが、中枢に向かって薄くなり、弾力性のある膜状構造となっている。

1.× MP関節伸展位、PIP関節屈曲位、DIP関節伸展位
2.× MP関節伸展位、PIP関節伸展位、DIP関節屈曲位
3.× MP関節屈曲位、PIP関節屈曲位、DIP関節伸展位
これらは、掌側板に過度なストレスがかかり、修復が困難となる。

4.〇 正しい。MP関節屈曲位、PIP関節伸展位、DIP関節伸展位は、手指の中節骨掌側板付着部裂離骨折の固定肢位である。
手指の中節骨掌側板付着部裂離骨折とは、指の第2関節(PIP関節)近くの骨に、掌側板(関節を安定させる靱帯の一部)が付着する部分で起こる剥離骨折である。したがって、掌側板を適切な緊張に保ち、再付着を促すことができる

 

 

 

 

 

問題82 槌指で正しいのはどれか。

1.固定期間は2週とする。
2.腱性槌指は保存療法を行う。
3.DIP関節を軽度屈曲位で固定する。
4.軸圧損傷では末節骨が背側に転位する。

解答

解説

槌指とは?

槌指とは、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。原因として、鋭利な刃物などによる直接的な腱の切断、バレーボール、バスケットボール、野球などの球技による外力での腱断裂があげられる。

1.× 固定期間は、「2週」ではなく6週とする。

2.〇 正しい。腱性槌指は保存療法を行う。なぜなら、腱は自然な癒合が期待できるため。一方、骨性槌指は、放置すると関節の脱臼を起こしてしまうため、手術による整復固定が原則である。

3.× DIP関節は、「軽度屈曲位」ではなく軽度伸展位で固定する。なぜなら、DIP関節屈曲位での固定では、断裂したDIP関節の伸筋腱に伸張ストレスがかかるため。

4.× 軸圧損傷では、末節骨が「背側」ではなく掌側に転位する。なぜなら、槌指とは、DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こるため。つまり、軸圧損傷といえども、伸筋腱が断裂しているため、重力により掌側方向へ転位しやすい。

 

 

 

 

 

問題83 骨盤骨裂離骨折の好発年齢はどれか。

1.5~8歳
2.15~18歳
3.25~28歳
4.50~53歳

解答

解説

MEMO

骨盤骨裂離骨折とは、筋肉や靭帯が骨に強く引っ張られた際に、骨盤の一部が骨ごと引き剥がされるようにして起こる骨折である。主に若年者のスポーツ中に発生しやすく、股関節付近に急な痛みが走る。

1.× 5~8歳/25~28歳/50~53歳は、骨盤骨裂離骨折の好発年齢とはいえない。

2.〇 正しい。15~18歳は、骨盤骨裂離骨折の好発年齢である。なぜなら、筋肉や靭帯が骨に強く引っ張られた際に生じやすいため。思春期に当たり、骨端線がまだ閉鎖しておらず、一方で、筋肉の成長が著しく、スポーツ活動が非常に活発になる時期に生じやすい。特に、ダッシュ、キック、ジャンプ、急停止などの瞬発的な動作を伴うスポーツ(サッカー、陸上競技、野球など)にみられる。

 

 

 

 

 

問題84 大腿骨頸部骨折で正しいのはどれか。

1.外転型骨折では下肢長は短縮する。
2.背臥位膝伸展位で下肢挙上は可能である。
3.他動的可動域訓練を中心とした後療法を行う。
4.長期臥床による続発症に深部静脈血栓症がある。

解答

解説
1.× 下肢長は短縮するのは、「外転型骨折」ではなく内転型骨折である。なぜなら、外転型骨折は、骨片が外側に開くような形で、骨折部が大きくずれにくく、圧迫力がかかることで安定しやすい傾向にあるため。したがって、外反股を呈するが、歩行可能な場合が多い。

2.× 背臥位膝伸展位で下肢挙上は、「困難なことが多い」。なぜなら、下肢挙上(股関節屈曲)により、骨折部にずれや剪断力のストレスが加わるため。したがって、強い痛みやさらなる骨折部の転位を引き起こす。

3.× 他動的可動域訓練を中心とした後療法を行う「優先度は低い」。なぜなら、大腿骨頸部骨折の術後の後療法では、早期からの積極的なリハビリテーションが重要であるため。手術後のプロトコル(スケジュール)に沿って、リハビリテーションを行い、状態に合わせて、関節可動域訓練、筋力増強訓練、荷重訓練などを段階的に行う。
・後療法とは、損傷した組織を回復させる治療法の事をいう。後療法には大きく3つの治療法(物理療法・運動療法・手技療法)がある。目的は、早期に社会復帰させることである。

4.〇 正しい。長期臥床による続発症に深部静脈血栓症がある。なぜなら、長期臥床により、下肢の血液循環が滞りやすくなり、血管内に血の塊(血栓)ができやすくなるため。特に、大腿骨頸部骨折の手術後など、活動性が低下する期間が長い場合に発症しやすい。予防のためにフットポンプの使用、弾性ストッキングの着用、早期離床や運動療法などが推奨される。
・深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題85 外転型足関節骨折で起こりにくいのはどれか。

1.三角靱帯損傷
2.内果裂離骨折
3.前距腓靱帯損傷
4.遠位脛腓靱帯損傷

解答

解説

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

1.〇 三角靱帯損傷は、外転型足関節骨折で起こりやすい。なぜなら、三角靱帯は、足関節内側に位置するため。

2.〇 内果裂離骨折は、外転型足関節骨折で起こりやすい。なぜなら、外転型足関節骨折は、足関節の内側が開くように受傷するため。
・内果裂離骨折の原因は、靭帯や腱の無理な牽引である。組織が損傷して治癒する過程で「癒着」が発生する。周囲の軟部組織を癒着が巻き込むことで関節の可動域が制限される関節拘縮が起きやすくなる。裂離骨折とは、剥離骨折ともいい、靭帯や筋肉の牽引によってその付着部が引きはがされて損傷してしまった状態を指す。

3.× 前距腓靱帯損傷は、外転型足関節骨折で起こりにくい。なぜなら、前距腓靱帯損傷は、足関節の外側に位置するため。

4.〇 遠位脛腓靱帯損傷は、外転型足関節骨折で起こりやすい。なぜなら、外転型足関節骨折は、足関節の内側が開くように受傷するため。(内果裂離骨折=腓骨が引っ張られるようなストレスが加わり、遠位脛腓靱帯に強い力が伝わる)
・遠位脛腓靱帯は、脛骨と腓骨をつなぐ靭帯で、足関節の安定性を保つ役割を持つ。

 

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