第20回(H24年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

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146.我が国の単回使用毫鍼について誤っている記述はどれか。

1.構造はJISで規定されている。
2.無菌性が保証されている。
3.ホルマリンガスが充填されている。
4.製造業者の表示が義務付けられている。

解答

解説

単回使用毫鍼とは?

単回使用毫鍼とは、流通・保護のため通常、 複数の一次包装された毫鍼のことをいう。

1.〇 正しい。構造はJISで規定されている。JIS規格とは、日本産業規格(JIS=Japanese Industrial Standardsの略)で、日本の産業製品に関する規格や測定法などが定められた日本の国家規格のことである。自動車や電化製品などの産業製品生産に関するものから、文字コードやプログラムコードといった情報処理、サービスに関する規格などもある。単回使用毫鍼のJIS規格は、「JIS T 9301」に規定されている。

2.〇 正しい。無菌性が保証されている。なぜなら、単回使用毫鍼は、無菌性を担保し包装された毫鍼であるため。

3.× 「ホルマリンガス」ではなく酸化エチレンガスが充填されている。酸化エチレンガス滅菌は、温度や湿度の繊細な医療器具に適した滅菌方法である。酸化エチレンガスとは、比較的低い温度でも極めて強い殺菌力を発揮し、金属・非金属の区別なく利用できるため理想的な滅菌法として普及している。適用:カテーテル類、プラスチック製品、不織布、ゴム製品など。適用外:液体、ガスが通りにくい形状のもの、直ぐに使用したいもの。欠点として、滅菌処理・エアレーション時間(ガスの残留毒性が強いため、これらを除去する処理)が長いことがあげられる。

4.〇 正しい。製造業者の表示が義務付けられている。これは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の63条1項に規定されている。63条第五節(医療機器の取扱い:直接の容器等の記載事項)には「医療機器は、その医療機器又はその直接の容器若しくは直接の被包に、次に掲げる事項が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。一 製造販売業者の氏名又は名称及び住所」と記載されている(※引用:「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」e-GOV法令検索様HPより)。

 

 

 

 

 

147.刺激量を鍼の上下動で調整する手技はどれか。

1.旋撚術
2.鍼尖転移術
3.副刺激術
4.雀啄術

解答

解説
1.× 旋撚術は、刺入または抜鍼時、鍼を左右に半回転ずつ交互にひねりながら行う。

2.× 鍼尖転移術は、鍼尖を皮下に留め、押手・刺手と共に皮膚を縦横または輪状に動かす。

3.× 副刺激術は、刺入した鍼の周囲を鍼管や指頭で叩き、響きを与える。(気拍法)

4.〇 正しい。雀啄術は、刺激量を鍼の上下動で調整する手技である。雀啄術は、刺入時または一定の深さで鍼を上下に進退させる。

 

 

 

 

 

148. 鍼刺激による血流改善に関与するのはどれか。

1.交感神経節後ニューロンの興奮
2.軸索反射によるCGRPの放出
3.刺鍼部位でのセロトニンの遊離
4.尾側延髄腹外側部の興奮

解答

解説

フレア現象とは?

フレア現象とは、お灸の熱刺激によって細胞レベルで微細な火傷が起こり、神経から脳に「ここにケガがあるから治すために血液を送ってください」と連絡が入ることで起こる軸索反射のこと。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

1.× 交感神経節後ニューロンの興奮は、血圧の上昇、心拍数の上昇、筋肉の緊張、発汗の促進などの作用が起こる。自律神経の作用であるため、フレア形成(軸索反射)とは異なる。

2.〇 正しい。軸索反射によるCGRPの放出は、鍼刺激による血流改善に関与する。なぜなら、刺鍼時のフレア形成に関与するため。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

3.× 刺鍼部位でのセロトニンの遊離は、血管収縮作用となる。セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

4.× 尾側延髄腹外側部の興奮は、交感神経を介して血管収縮を引き起こす役割を担う。尾側延髄腹外側部は、血圧や交感神経活動の調節に関与する部位である。

 

 

 

 

 

149.内因性オピオイドが主に関与するのはどれか。

1.ナトリウムポンプ
2.下行性抑制系
3.TCAサイクル
4.レニン・アンジオテンシン系

解答

解説

内因性オピオイドとは?

内因性オピオイドは、体内で作られ、生理的な状況や危機が迫ったときに放出される物質され、脳や脊髄に存在するオピオイド受容体に作用し、鎮痛作用をもたらす。主に、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィンなどあげられる。また、痛みによる不快な感覚の抑制、下降性抑制神経系の賦活化、恐怖という情動の抑制、脳内報酬系における重要な伝達物質でもある。

1.× ナトリウムポンプは、細胞内外のイオンバランスを維持するための基本的な機構である。

2.〇 正しい。下行性抑制系は、内因性オピオイドが主に関与する。鎮痛作用は、内因性モルヒネ様物質、下行性抑制系などによる鎮痛が起こる。

3.× TCAサイクルは、細胞内でエネルギー(ATP)を産生するための代謝経路である。

4.× レニン・アンジオテンシン系は、血圧調節や体液量の調整を行うシステムである。

MEMO

アンジオテンシン(II)は、血圧上昇作用を持つ。腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠという物質をつくる。アンジオテンシンⅠとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換される。アンジオテンシンⅡとは、全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させる。アルドステロンは、Naを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加する。これをレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System:RAAS)といい、血圧上昇後にはレニンの分泌は抑制され、この系の働きが低下する。

 

 

 

 

 

150.サイバネティックスと関連するのはどれか。

1.条件づけ
2.フィードバック機構
3.緊急反応
4.交絡抵抗

解答

解説
1.× 条件づけとは、学習理論(パブロフの古典的条件づけやスキナーのオペラント条件づけなど)に関連する概念である。

2.〇 正しい。フィードバック機構は、サイバネティックスと関連する。サイバネティックスとは、ノーバート・ウィナーが唱えたフィードバック機構によって自動調整されている回路のことである。

3.× 緊急反応とは、身体がストレスや危機的状況に直面した際の反応のことである。副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、交感神経系が活性化される。これらのホルモンは、体内の特定の受容体に作用して、心拍数や血圧の上昇、呼吸の促進など、身体を戦闘状態または逃走状態に適した準備に導く一連の反応を提唱した。

4.× 交絡抵抗(期)とは、ストレス学説ひとつの時期である。反ショック相(交絡抵抗期)は、第1期(警告反応期)の後半である。生体が積極的な防衛反応を示し始める時期である。 副腎皮質が肥大して副腎皮質ホルモンの分泌が増加し、体温や血圧の上昇、筋の緊張、血糖値の上昇などがみられ、与えられたストレッサー以外の刺激に対しても抵抗を示す。

MEMO

汎適応症候群(ストレス学説)とは、ハンス・セリエが提唱した。ストレッサーの種類に関係なく、心身に同じ反応が起きること、また、その症状が全身に及ぶことから、「汎適応症候群」という。ちなみに、ストレス学説とは、ストレスに対する適応症候群(防御反応)である。発生機序として、ストレスが人体に加わると適応ホルモンとして脳の下垂体から副腎に副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、さらに副腎は副腎皮質ホルモンを分泌して人体を保護する。人体にストレス刺激が加わりストレス状態が続くと、副腎皮質が肥大する。第1期(警告反応期)→第2期(抵抗期)→第3期(疲憊期)という過程をたどる。

 

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