第20回(H24年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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156.灸刺激の伝導路に関与するのはどれか。

1.後索核
2.延髄網様体
3.内側毛帯
4.腹側脊髄視床路

解答

解説
1.× 後索核は、深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路である。後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野をたどる。

2.〇 正しい。延髄網様体は、灸刺激の伝導路に関与する。脊髄網様体路は、脊椎動物の姿勢や歩行(移動)動作に関与する運動性下行路である。痛みに関しては、侵害刺激をポリモーダル受容器で受容→C線維(伝導速度0.5-2m/sec)→脊髄後角→前脊髄視床路・脊髄網様体→視床髄板内核・視床下部→大脳(辺縁)皮質である。

3.× 内側毛帯は、深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路に関与する。【深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路】後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

4.× 腹側脊髄視床路(前脊髄視床路:粗大な触覚・圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。

 

 

 

 

 

157.透熱灸刺激によって生じる局所炎症反応の際に起こるのはどれか。

1.ヒスタミンの分解
2.痛覚過敏
3.虚血
4.血管透過性の低下

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。

1.× ヒスタミンは、「分解」ではなく放出する。ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

2.〇 正しい。痛覚過敏は、透熱灸刺激によって生じる局所炎症反応の際に起こる。透熱灸刺激による局所炎症では、ヒスタミンやプロスタグランジンなどの炎症性メディエーターが放出され、これが痛覚受容器を刺激し、痛覚過敏を引き起こす。

3.× 「虚血」ではなく血流の増加である。局所炎症反応として、①血管拡張、②血流増加、③血管透過性の亢進に伴う血漿成分の血管外への漏出、④白血球(赤血球)の血管外へ遊走などが主に生じる。

4.× 血管透過性は、「低下」ではなく亢進する。血管透過性とは、血管とその周りの組織との間で起こる水分や栄養分などの移動のことである。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

158.施灸直後の反応でみられないのはどれか。

1.ヒスタミン放出
2.白血球増多
3.赤血球増多
4.CGRP放出

解答

解説

MEMO

局所炎症反応として、①血管拡張、②血流増加、③血管透過性の亢進に伴う血漿成分の血管外への漏出、④白血球(赤血球)の血管外へ遊走などが主に生じる。

1.〇 ヒスタミン放出は、施灸直後の反応である。ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

2.〇 白血球増多は、施灸直後の反応である。特に好中球の数が一時的に増加するのが一般的である。なぜなら、局所炎症反応が起こると、白血球が炎症部位に集まるため。

3.× 赤血球増多は、施灸直後の反応でみられない。赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。ちなみに、ヘモグロビンのヘム鉄が、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。

4.〇 CGRP放出は、施灸直後の反応である。CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。軸索反射(フレア現象)の神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

159.内因性オピオイドの特徴について正しい記述はどれか。

1.血液脳関門を通過することができる。
2.βエンドルフィンは脊髄後角に多く含まれる。
3.ナロキソンにより作用が増強する。
4.体内では短時間で分解される。

解答

解説

内因性オピオイドとは?

内因性オピオイドは、体内で作られ、生理的な状況や危機が迫ったときに放出される物質され、脳や脊髄に存在するオピオイド受容体に作用し、鎮痛作用をもたらす。主に、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィンなどあげられる。また、痛みによる不快な感覚の抑制、下降性抑制神経系の賦活化、恐怖という情動の抑制、脳内報酬系における重要な伝達物質でもある。

1.× 血液脳関門を通過すること「はできない」。なぜなら、内因性オピオイドはペプチド(タンパク質)であるため。これらの物質は脳内で合成され、脳や脊髄内で作用する。ちなみに、血液脳関門を通過できるのは、脂溶性が高い物質が主である。

2.× βエンドルフィンは、「脊髄後角」ではなく主に視床下部や下垂体に多く含まれる。βエンドルフィンは、主に視床下部や下垂体で合成される内因性オピオイドである。一方、脊髄後角には別の内因性オピオイド(エンケファリンなど)が多く分布し、痛みの調節に関与する。

3.× ナロキソンにより作用が増強ではなく「抑制」する。ナロキソンとは、オピオイド受容体の拮抗薬であり、内因性オピオイドや外因性オピオイド(モルヒネなど)の作用を阻害する。

4.〇 正しい。体内では短時間で分解される。なぜなら、内因性オピオイドはペプチドで構成されており、体内では酵素によって短時間で分解されるため。

 

 

 

 

 

160.セリエのストレス学説に関する事項はどれか。

1.条件反射
2.警告反応期
3.反応の非恒常性
4.発汗の減少

解答

解説

ストレス学説とは?

ストレス学説とは、ストレスに対する適応症候群(防御反応)である。発生機序として、ストレスが人体に加わると適応ホルモンとして脳の下垂体から副腎に副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、さらに副腎は副腎皮質ホルモンを分泌して人体を保護する。人体にストレス刺激が加わりストレス状態が続くと、副腎皮質が肥大する。第1期(警告反応期)→第2期(抵抗期)→第3期(疲憊期)という過程をたどる。

1.× 条件反射とは、パブロフの学説に関連する概念であり、特定の刺激と反応が繰り返し組み合わされることで学習される生理的現象である。

2.〇 正しい。警告反応期は、セリエのストレス学説に関する事項である。警告反応期は、ストレッサーに曝露されると、交感神経系と副腎髄質が活性化し、アドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。これにより、心拍数や血圧が上昇し、体がストレスに対処する準備をする。

3.× 反応は、「非恒常性」ではなく恒常性(非特異的)である。つまり、ストレッサーの種類にかかわらず、身体は基本的に同じ反応(交感神経系の活性化など)を示す。

4.× 発汗は、「減少」ではなく増加である。なぜなら、ストレスにさらされると交感神経系が活性化するため。

 

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