第20回(H24年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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61.手術の麻酔で使用されない神経ブロックはどれか。

1.星状神経節ブロック
2.腕神経叢ブロック
3.硬膜外ブロック
4.指神経ブロック

解答

解説
1.〇 正しい。星状神経節ブロックは、手術の麻酔で使用されない神経ブロックである。なぜなら、星状神経節ブロックは、交感神経系をブロックするための治療法であるため。したがって、主に、反射性交感神経性ジストロフィー(CRPS)や肩手症候群などの治療に用いられる。

2.× 腕神経叢ブロックは、手術の麻酔で使用される。腕神経叢ブロックは、上肢の手術で広く使用される局所麻酔法である。

3.× 硬膜外ブロックは、手術の麻酔で使用される。硬膜外ブロックは、脊髄周囲の硬膜外腔に局所麻酔薬を注入して感覚を遮断する方法である。主に、分娩麻酔や下腹部、下肢の手術(整形外科手術、泌尿器科手術など)に用いられる。

4.× 指神経ブロックは、手術の麻酔で使用される。指神経ブロックは、指の手術(切創の縫合、骨折整復など)で使用される局所麻酔法である。

 

 

 

 

 

62.胸郭出口症候群で適切な記述はとれか。

1.高齢者に多い。
2.前斜角筋による圧迫が原因となる。
3.動脈は圧迫されない。
4.上肢帯の筋力は症状と関連しない。

解答

解説

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

1.× 「高齢者」ではなく若年~中年層の女性に多い。なぜなら、体型(肩幅が狭くなで肩)や姿勢(ディスクワーク)が関与することが多いため。

2.〇 正しい。前斜角筋による圧迫が原因となる。胸郭出口症候群は、鎖骨、肋骨、斜角筋群(特に前斜角筋)などの周囲構造物による神経・血管の圧迫が原因である。特に、前斜角筋が圧迫することで腕神経叢や鎖骨下動脈が影響を受けることが多い。

3.× 動脈は圧迫されないとは断言できない。むしろ、鎖骨下動脈が圧迫されることが多く、しばしば血流障害を引き起こす。

4.× 上肢帯の筋力は症状と「関連する」。上肢の神経障害が筋力低下として現れる。上肢を挙上する動作を行うと現れやすい。

 

 

 

 

 

63.肩関節脱臼で正しいのはどれか。

1.病的脱臼が多い。
2.後方脱臼が多い。
3.腕神経叢麻痺を起こす。
4.関節強直を起こす。

解答

解説
1.× 病的脱臼は比較的低い。なぜなら、肩関節脱臼の大部分は、外傷性脱臼が原因であるため。ちなみに、病的脱臼とは、関節の組織自体に異常があり、わずかな力でも、ずれたり外れたりする脱臼のことである。関節包の断裂はないことが特徴である。3種類あげられる。①拡張性脱臼:股関節結核、急性化膿性股関節炎など、破壊性脱臼:関節リウマチなど、麻痺性脱臼:片麻痺の関節不全脱臼など。

2.× 後方脱臼は比較的低い。なぜなら、肩関節脱臼の約90%は前方脱臼であるため。

3.〇 正しい。腕神経叢麻痺を起こす。腕神経叢麻痺とは、腕神経叢が損傷することで、上肢のしびれや感覚障害、筋力低下になることである。つまり、下位運動ニューロン障害をきたす。原因として、オートバイ走行中の転倒、スキーなど高速滑走のスポーツでの転倒、機械に腕が巻き込まれたときなどがあげられる。腕神経叢は、後傾三角(胸鎖乳突筋後縁と僧帽筋前縁、鎖骨上縁で囲まれた部分)で触知できる。

4.× 関節強直は起こらない。なぜなら、関節強直は、主に後天性の場合、脱臼後に適切な治療が行われず、慢性化した際に起こるものであるため。ちなみに、関節強直とは、徒手的には改善困難な関節可動域制限の状態で、関節が破壊されて変形を起こし、機能しなくなった状態である。原因は先天性、骨折による関節面の破壊や感染、後天性があり、強直を有する病名には顎関節強直症、強直性脊椎炎、関節リウマチなどがある。 

烏口下脱臼とは?

烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。

 

 

 

 

 

64.脊椎分離すべり症について正しい記述はどれか。

1.青少年にはみられない疾患である。
2.胸腰椎移行部に起こる頻度が高い。
3.上関節突起と下関節突起間に病変がみられる。
4.腰椎後弯が増強する。

解答

解説

脊椎分離症・脊椎分離すべり症とは?

「脊椎分離症」・・・疲労骨折などにより、椎骨が椎弓の関節突起間部で分離したものをいう。

「脊椎分離すべり症」・・・脊椎分離症から、さらに分離した椎体が前方に転位したものをいう。

【特徴】
日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。Kempテスト(ケンプテスト)で他動的に体幹を後側屈・回旋させると椎弓根が狭窄され下肢に放散痛が生じる (Kemp徴候)。

【X線45° 斜位像】
椎間関節や椎弓根の狭窄を確認する。脊椎分離(テリアネックサイン)が特徴的である。

【治療】
①若年での発症が多いこと、②症状が腰部に限局し下肢症状がないことから、保存的治療(安静・コルセット装着・消炎鎮痛)が優先になる。重度の障害がある場合に手術が検討される。

1.× 青少年に「みられやすい」疾患である。なぜなら、スポーツ活動が盛んな成長期に、腰椎に繰り返し負荷がかかることで発生するため。

2.× 「胸腰椎移行部」ではなく第5腰椎に起こる頻度が高い。なぜなら、ストレスがかかりやすく、角度が急であるため。

3.〇 正しい。上関節突起と下関節突起間に病変がみられる。なぜなら、この部分が疲労骨折することで分離が生じ、すべり症を引き起こすことが多いため。つまり、解剖学的に最も負荷が集中しやすい狭い部分であるためである。

4.× 腰椎「後弯」ではなく前弯(腰椎前凸)が増強する。なぜなら、分離すべり症では、第5腰椎が前方へずれるため。したがって、つられるように、腰椎全体が前弯する。

 

(※図引用:「イラスト素材:脊柱(側面)」illustAC様より)

 

 

 

 

 

65.癌と腫瘍マーカーとの組合せで正しいのはどれか。

1.大腸癌:CEA
2.子宮体癌:SCC
3.胃癌:CYFRA
4.乳癌:AFP

解答

解説
1.〇 正しい。大腸癌:CEA
CEA(Carcinoembryonic Antigen)は、大腸がん、胃がんなどの消化器系がんの腫瘍マーカーである。健康な人でも約3%の人は基準値を超える場合があるとされており、高齢や喫煙、肝硬変、糖尿病でもやや上昇する傾向がある。

2.× SCCは、「子宮体癌」ではなく子宮頸癌(特に扁平上皮癌)である。SCC抗原(squamous cell carcinoma)は、扁平上皮がん関連抗原であり、宮頸部扁平上皮がんで発見されたタンパク質で、扁平上皮がんで高値を示すがん関連抗原である。子宮頸癌、外陰・膣癌、肺癌、食道癌、頭頸部癌、皮膚癌、口腔・舌・上顎癌など多くの扁平上皮癌で陽性となる。

3.× CYFRAは、「胃癌」ではなく肺癌である。CYFRA(サイトケラチン19フラグメント)とは、肺がんのうち、扁平上皮がんで陽性率が高い腫瘍マーカーである。

4.× AFPは、「乳癌」ではなく肝臓癌である。AFP(α-フェトプロテイン)とは、肝臓の疾患を見つける腫瘍マーカーのひとつである。健康な成人の血液には含まれないが、肝臓がんになると血液中に増加するため、肝臓がんのスクリーニング検査として用いられる。C型肝炎ウイルスが原因で肝細胞がんが発生することがある。C型肝炎に感染すると、約70%が慢性肝炎に移行し、そのうちの約60%が肝硬変へと進展する。

 

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