第20回(H24年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

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76.アルツハイマー病で適切な記述はどれか。

1.大脳皮質に老人斑を認める。
2.病初期からゲルストマン症候群がみられる。
3.片麻痺がみられる。
4.まだら認知症が特徴的である。

解答

解説

アルツハイマー病とは?

アルツハイマー病とは、認知症の中で最も多く、病理学的に大脳の全般的な萎縮、組織学的に老人斑(アミロイドβの蓄積)・神経原線維変化の出現を特徴とする神経変性疾患である。特徴は、①初期から病識が欠如、②著明な人格崩壊、③性格変化、④記銘力低下、⑤記憶障害、⑥見当識障害、⑦語間代、⑧多幸、⑨抑うつ、⑩徘徊、⑩保続などもみられる。Alzheimer型認知症の患者では、現在でもできる動作を続けられるように支援する。ちなみに、休息をとることや記銘力を試すような質問は意味がない。

1.〇 正しい。大脳皮質に老人斑を認める。老人斑とは、神経細胞外にアミロイドβ蛋白が蓄積してできた異常構造物である。このアミロイドβ蛋白が細胞毒性を発揮し、神経細胞の変性・消失が起こることでアルツハイマー病が生じると現在では考えられている。

2.× 病初期から、「ゲルストマン症候群」ではなく病識欠如がみられる。病識欠如とは、自分の病気を認識することができず、「自分は病気ではない」と思い込む症状である。ちなみに、ゲルストマン症候群とは、優位球の角回の障害で起こる①手指失認、②左右失認、③失書、④失算の四徴のことである。

3.× 片麻痺がみられるのは、脳血管障害(脳梗塞や脳出血)などが原因となる。片麻痺とは、左右どちらか一側の上・下肢の麻痺が起きている状態である。錐体路の障害で起きやすい。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

4.× まだら認知症が特徴的であるのは、「血管性認知症」である。まだら認知症とは、部分的に障害されるため機能低下と正常が混在する状態である。動揺性(まだら)で階段状に進行する経過をたどる。脳血管性認知症とは、脳血管が詰まったり破れたりすることで突然発症する。その後、脳血管が詰まったり破れたりするたびに、症状が悪化する特徴を持つ。その部位や範囲によって症状は様々である。他の症状として、巣症状(失語、失行、失認など脳の局所性病変によって起こる機能障害)や階段状に認知障害が進行することが特徴である。

 

 

 

 

 

77.「65歳の男性。3週間前に転倒し、前頭部を強打した。その時以後両上肢のしびれ感と歩行困難が出現している。」
 最も考えられるのはどれか。

1.頸椎骨折
2.頸髄中心性損傷
3.頸髄腫瘍
4.腕神経叢障害

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・3週間前:転倒、前頭部を強打。
・その時以後:両上肢のしびれ感歩行困難
→ほかの選択肢を消去できる理由もおさえておこう。

1.× 頸椎骨折より考えられるものが他にある。なぜなら、頸椎骨折の場合、頸部以下の運動は行えない可能性が高いため。本症例は、両上肢のしびれ感歩行困難で、頸椎骨折としては症状が軽い。

2.〇 正しい。頸髄中心性損傷は、最も考えられる。中心性頸髄損傷は、転倒などにより、脊髄全体に外力が加わり、中心に近い脊髄灰白質が障害されたものである。高齢者において、脊椎の変形あるいは後縦靭帯骨化症などを合併して脊柱管狭窄をきたしている場合に、中心性頸髄損傷が発生しやすい。交通事故などの頸髄損傷に比べ、機能予後はよいが、下肢より上肢の運動障害が顕著であり、上肢の障害は残存することが多い。

3.× 頸髄腫瘍より考えられるものが他にある。なぜなら、頸髄腫瘍は、徐々に進行するため。本症例のように、転倒後に発症することは考えにくい。

4.× 腕神経叢障害より考えられるものが他にある。なぜなら、腕神経叢障害の場合、歩行困難は考えにくいため。腕神経叢麻痺とは、腕神経叢が損傷することで、上肢のしびれや感覚障害、筋力低下になることである。つまり、下位運動ニューロン障害をきたす。原因として、オートバイ走行中の転倒、スキーなど高速滑走のスポーツでの転倒、機械に腕が巻き込まれたときなどがあげられる。

 

 

 

 

 

78.「65歳の男性。3週間前に転倒し、前頭部を強打した。その時以後両上肢のしびれ感と歩行困難が出現している。」
 この患者の症状で誤っている記述はどれか。

1.横隔膜呼吸が消失する。
2.両上肢の脱力がみられる。
3.膝蓋腱反射が亢進する。
4.排尿困難がある。

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・3週間前:転倒、前頭部を強打。
・その時以後:両上肢のしびれ感歩行困難
頸髄中心性損傷は、最も考えられる。中心性頸髄損傷は、転倒などにより、脊髄全体に外力が加わり、中心に近い脊髄灰白質が障害されたものである。高齢者において、脊椎の変形あるいは後縦靭帯骨化症などを合併して脊柱管狭窄をきたしている場合に、中心性頸髄損傷が発生しやすい。交通事故などの頸髄損傷に比べ、機能予後はよいが、下肢より上肢の運動障害が顕著であり、上肢の障害は残存することが多い。

1.× 横隔膜呼吸が消失するのは、頸髄損傷(C3~C5)で生じる。なぜなら、横隔神経は、第4頚神経を中心に構成されるため。横隔神経は、運動神経、感覚神経、交感神経の線維を含む。 横隔膜は、この神経のみで運動と感覚を支配されている。 感覚神経は、腱中心からの情報を受け取る。 胸郭においては、縦隔胸膜と心膜に枝を出す。

2.〇 両上肢の脱力がみられる。なぜなら、頸髄中心性損傷の特徴的症状であるため。中心性頸髄損傷は、転倒などにより、脊髄全体に外力が加わり、中心に近い脊髄灰白質が障害されたものである。高齢者において、脊椎の変形あるいは後縦靭帯骨化症などを合併して脊柱管狭窄をきたしている場合に、中心性頸髄損傷が発生しやすい。交通事故などの頸髄損傷に比べ、機能予後はよいが、下肢より上肢の運動障害が顕著であり、上肢の障害は残存することが多い。

3.〇 膝蓋腱反射が亢進する。なぜなら、頸髄中心性損傷は、上位運動ニューロン障害の特徴も兼ね合わせているため。特に、歩行困難や下肢の痙縮がみられる場合、反射亢進がみられる。

4.〇 排尿困難がある。なぜなら、自律神経機能にも影響が及ぶため。排尿困難や膀胱直腸障害がしばしばみられる。

 

 

 

 

 

79.「78歳の女性。大腿骨頚部骨折の術後3日間ベッド上安静であったが、突然胸痛、呼吸困難が出現した。胸部単純エックス線写真でうっ血所見はなく、肺野の透過性増大がみられた。血性クレアチニンキナーゼ値は正常、D-ダイマー値上昇が認められた。」
 本疾患の発症を予測するのに最も有用な検査はどれか。

1.ホルター心電図
2.負荷心筋シンチグラフィ
3.頸動脈超音波検査
4.下肢静脈超音波検査

解答

解説

本症例のポイント

・78歳の女性。
・大腿骨頚部骨折の術後3日間:ベッド上安静
・突然:胸痛呼吸困難が出現。
・胸部単純エックス線写真:うっ血所見なし、肺野の透過性増大あり。
・血性クレアチニンキナーゼ値:正常
・D-ダイマー値:上昇
→本症例は、深部静脈血栓症が疑われる。なぜなら、Dダイマーが高値であるため。Dダイマーとは、フィブリンがプラスミンによって分解される際の生成物である。つまり、血液検査において血栓症の判定に用いられる。

・深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水や肥満、化学療法などがあげられる。

・肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。多く原因は、足の深いところにある静脈(深部静脈)に血液の塊である血栓ができて、その血栓が血流に乗って心臓を介して肺動脈に詰まることである。

1.× ホルター心電図では長時間(24時間)にわたり心電図を記録する。この心電図の解析を通して日常生活における心臓の動き(拍動)を調べ、異常がないかを検査する。不整脈狭心症などの検索に用い、脳塞栓の原因を探ることが多い。

2.× 負荷心筋シンチグラフィは、放射性同位元素を注射し、心筋に取り込まれた放射性同位元素から放出される放射線を撮影することにより、心筋の血流や心筋のダメージの程度を評価する検査である。負荷心筋血流シンチグラフィでは、心臓の状態や動きを調べ、狭心症心筋梗塞心筋症などの病気の有無やその程度を診断する。また、心臓の心筋に栄養を運ぶ血流の流れ(状態)を見るのに有用な検査である。具体的な血管まで見えず、設問で求められている狭心症の手術に最も重要な検査とはいえない。

3.× 頸動脈超音波検査は、動脈硬化性病変の評価や脳梗塞のリスク評価に用いられる。

4.〇 正しい。下肢静脈超音波検査は、深部静脈血栓症の発症を予測するのに最も有用な検査である。深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。

 

 

 

 

 

80.「78歳の女性。大腿骨頚部骨折の術後3日間ベッド上安静であったが、突然胸痛、呼吸困難が出現した。胸部単純エックス線写真でうっ血所見はなく、肺野の透過性増大がみられた。血性クレアチニンキナーゼ値は正常、D-ダイマー値上昇が認められた。」
 本疾患の危険因子として最も重要なのはどれか。

1.脱水
2.貧血
3.運動
4.徐脈

解答

解説

本症例のポイント

・78歳の女性。
・大腿骨頚部骨折の術後3日間:ベッド上安静
・突然:胸痛呼吸困難が出現。
・胸部単純エックス線写真:うっ血所見なし、肺野の透過性増大あり。
・血性クレアチニンキナーゼ値:正常
・D-ダイマー値:上昇
→本症例は、深部静脈血栓症が疑われる。なぜなら、Dダイマーが高値であるため。Dダイマーとは、フィブリンがプラスミンによって分解される際の生成物である。つまり、血液検査において血栓症の判定に用いられる。

・深部静脈血栓症とは、長時間の安静や手術などの血流低下により下肢の静脈に血栓が詰まってしまう病気である。下肢の疼痛、圧痛、熱感などの症状がみられる。ほかのリスク因子として、脱水肥満化学療法などがあげられる。

・肺血栓塞栓症とは、肺の血管(肺動脈)に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。多く原因は、足の深いところにある静脈(深部静脈)に血液の塊である血栓ができて、その血栓が血流に乗って心臓を介して肺動脈に詰まることである。

1.〇 正しい。脱水は、この本疾患の危険因子として最も重要である。なぜなら、脱水は、血液の粘稠度を増加させ、静脈血栓形成のリスクを高めるため。ほかにも、リスク因子として、肥満化学療法などがあげられる。

2.× 貧血は、血栓形成のリスクを低下させる要因である。なぜなら、血液の粘稠度を低下させるため。

3.× 運動は、血栓形成のリスクを低下させる要因である。なぜなら、血流を促進させるため。つまり、ベッド上安静や運動不足が血栓形成のリスクを高める要因である。

4.× 徐脈は、肺血栓塞栓症の直接的な危険因子ではない。肺血栓塞栓症の重症例で、右心不全に伴う徐脈やショックが発生する症状である。つまり、頻脈は原因ではなく結果である。ちなみに、徐脈とは、50回/分以下を定義される。

 

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