第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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61.小児の骨折について正しい記述はどれか。

1.不全骨折の比率が低い。
2.骨端線損傷は成長障害の原因にならない。
3.自家矯正能は旺盛である。
4.骨癒合が遅い。

解答

解説
1.× 不全骨折の比率は「高い」。なぜなら、小児の骨は、柔軟性が高く弾性力も強いため。
①完全骨折とは、骨が完全にぼきっと折れてしまっている状態である。一般的な骨折とはこの完全骨折を意味する。
②不全骨折とは、何らかの理由により骨が連続性を完全に失わない状態の骨折を指す。いわゆる骨にヒビが入っている状態である亀裂骨折や、緻密層以下の部分が離断しているにも関わらず骨膜に損傷がないため、外形的には変化が見られない骨膜下骨折などがこの不全骨折の典型例である。

2.× 骨端線損傷は成長障害の原因「となる」。骨端線とは、成長軟骨帯(成長板)と呼ばれる成長期特有の軟骨組織のことである。骨に置き換わる現象(骨化)がおこり、骨は長軸方向に伸びていく。

3.〇 正しい。自家矯正能は旺盛である。なぜなら、主な要因は、成人よりも新陳代謝が盛んであるため。

4.× 骨癒合が「早い」。なぜなら、主な要因は、成人よりも新陳代謝が盛んであるため。

 

 

 

 

 

62.慢性膵炎で正しい記述はどれか。

1.胆石によるものが多い。
2.便秘が多い。
3.腹部超音波検査で石灰化像がみられる。
4.病初期より糖尿病が発症する。

解答

解説

慢性膵炎とは?

慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気である。
【原因】男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多くみられる。膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられている。
【症状】
・初期(代償期):膵臓の機能は保たれているが、腹痛がある。
・中期(移行期):次第に膵臓の機能が低下。
・末期(非代償期):膵臓の機能は著しく低下、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じる。
【治療】
・生活習慣の改善:禁酒、禁煙を行う。
・腹痛:鎮痛剤や蛋白分解酵素阻害薬を使用。
・手術が適応になることもある。①膵管ドレナージ手術と②膵切除術に分けられる。①膵管ドレナージ手術は、拡張した膵管を切開して腸管とつなぎ、膵液を腸管に流して膵管内の圧を下げる手術である。膵管の拡張がない場合は、膵管の狭窄が最も強い部位の②膵切除術を行う。(※参考:「急性膵炎と慢性膵炎」日本肝胆膵外科学会様HPより)

1.× 胆石によるものが多いのは、「急性膵炎」である。慢性膵炎の主な原因は、アルコールの多量摂取である。

2.× 「便秘」ではなく下痢が多い。なぜなら、慢性膵炎では、膵臓の機能不全による消化吸収不良が進行するため。すなわち、膵外分泌機能不全により消化酵素が不足し、脂肪の消化吸収が不完全になる。下痢や脂肪便(脂肪分の多い軟便)がみられる。

3.〇 正しい。腹部超音波検査で石灰化像がみられる。なぜなら、慢性膵炎では、膵管の閉塞や膵実質の線維化が進行するため。

4.× 糖尿病が発症するのは、「病初期」ではなく末期である。なぜなら、膵臓の機能にはインスリンの分泌があるため。
膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。
②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。
③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるδ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

 

 

 

 

 

63.院内感染と関連が深いのはどれか。

1.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌
2.A群溶血連鎖球菌
3.肺炎球菌
4.破傷風菌

解答

解説

MEMO

院内感染とは、病院において様々な疾患を持った患者さんが、検査や治療・ケアを受ける状況下で、もとの疾患とは別にかかった感染症である。感染症は、人の身体に常在する微生物や外から入ってきた微生物によって起こる。

1.〇 正しい。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は、院内感染と関連が深い。多剤耐性菌とは、多くの抗菌薬(抗生物質)に耐性を獲得した菌のことをいう。代表的なものとして、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、多剤耐性結核菌、緑膿菌などがある。

2.× A群溶血連鎖球菌は、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状 を引き起こす。日常よくみられる疾患として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱がある。

3.× 肺炎球菌とは、肺炎の原因となる細菌である。肺炎球菌の主な感染経路は、飛沫感染である。 肺炎球菌は、主に、子どもがもっているが、咳やくしゃみで広がり、抵抗力の低下した高齢者に感染した場合には、肺炎を起こし、肺炎球菌感染症は重症化しやすい。

4.× 破傷風菌とは、破傷風の原因菌で、接触感染により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

 

 

 

 

 

64.全身性エリテマトーデスについて正しい記述はどれか。

1.血清γ-グロブリン値は低下する。
2.末梢白血球数は減少する。
3.補体値は高値となる。
4.HLA-B51が陽性である。

解答

解説

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

1.× 血清γ-グロブリン値(免疫グロブリン)は、「低下」ではなく増加する。なぜなら、自己抗体の産生が増加するため。血清γ-グロブリン値(免疫グロブリン)とは、免疫活性を持つたんぱく質で、B細胞リンパ球より産生される。侵入した異物の排除に働く。

2.〇 正しい。末梢白血球数は減少する。なぜなら、自己免疫反応が白血球を攻撃するため。したがって、血液中の白血球数が減少する。このほか、赤血球や血小板の減少も見られることが多く、全血球減少症が生じることがある。

3.× 補体値は、「高値」ではなく低値となる。なぜなら、免疫複合体が補体を活性化により、補体(C3、C4)が消費されるため。ちなみに、補体とは、免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、動物血液中に含まれる。補体は、体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体を攻撃し、体内から排除する働きがある。

4.× HLA-B51が陽性であるのは、「ベーチェット病」である。HLA-B51とは、ヒト白血球抗原(HLA)のB抗原の1つの型である。ちなみに、ベーチェット病とは、自己免疫疾患で、四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。

 

 

 

 

 

65.疾患と症状との組合せで正しいのはどれか。

1.再生不良性貧血:ハンター舌炎
2.悪性リンパ腫:レイノー現象
3.皮膚筋炎:陰部潰瘍
4.ベーチェット病:口腔内アフタ性潰瘍

解答

解説
1.× ハンター舌炎は、「再生不良性貧血」ではなく巨赤芽球性貧血でみられる。
・巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。
・再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などが指定されている。

2.× レイノー現象は、「悪性リンパ腫」ではなく強皮症でみられる。
・強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。
・レイノー現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。

3.× 陰部潰瘍は、「皮膚筋炎」ではなくベーチェット病でみられる。
・皮膚筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、多発性筋炎の症状(主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下)に加え、典型的な皮疹を伴うものをさす。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)。

4.〇 正しい。ベーチェット病:口腔内アフタ性潰瘍
・ベーチェット病とは、自己免疫疾患で、四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。

 

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