第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前71~75】

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71.肺癌の検査法で適切でないのはどれか。

1.超音波検査
2.CT検査
3.MRI検査
4.PET(ポジトロンCT)検査

解答

解説
1.× 超音波検査は、肺癌の検査法で適切でない。なぜなら、超音波検査は、主に実質臓器(肝臓、腎臓など)や液体を含む病変(胸水など)の評価に適しているため。ちなみに、超音波検査とは、「高い周波数の音」を用いる検査で、肝臓や胆のう、膵臓、腎臓、膀胱、卵巣、子宮、前立腺などの腹部にある臓器や、甲状腺や乳腺などさまざまな臓器にできたがんで検査する。主な禁忌としては、血管の疾患(血栓性静脈炎など)、急性敗血症(感染の拡大や塞栓剥れの為)、放射線療法(少なくとも6ヶ月は禁忌)、腫瘍(成長促しや転移が生じる為)、心疾患(心臓を刺激する為、星状神経節や迷走神経部位は避ける)、妊婦、成長期の子供の骨端線への照射などである。

2.〇 CT検査とは、脳内や肺の腫瘍や出血などの異常の有無や程度が分かる。出血部位は低吸収域(黒)としてうつる。エックス線を使用した撮影である。

3.〇 MRI検査とは、核磁気共鳴現象を利用して生体内の内部の情報を画像にする方法である。治療前にがんの有無や広がり、他の臓器への転移がないかを調べたり、治療の効果を判定したり、治療後の再発がないかを確認するなど、さまざまな目的で行われる精密検査である。

4.〇 PET(ポジトロンCT)検査とは、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種である。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化する。PET検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されている。アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われている。

 

 

 

 

 

72.気胸について正しい記述はどれか。

1.突然嗄声が出現する。
2.肥満は危険因子である。
3.自然気胸は成人女性に多い。
4.緊張性気胸は緊急処置が必要となる。

解答

解説

気胸とは?

【原発性自然気胸】
原発性自然気胸とは、肺疾患のない人に明らかな原因なく起こる気胸のこと。通常、肺のややもろくなった部分(ブラ)が破裂した際に発生する。特徴として、40歳未満で背が高い男性の喫煙者に最もよくみられる。ほとんどの人が完全に回復するが、最大で50%の人に再発がみられる。

【続発性自然気胸】
続発性自然気胸とは、基礎に肺疾患がある人に発生する気胸のこと。最も多いものは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある高齢者である。他にも、嚢胞性線維症、喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシス、肺膿瘍、結核、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎など、その他の肺疾患の患者でもみられる。特徴として、基礎に肺疾患があるため、原発性自然気胸に比べて症状や治療成績は一般に悪くなる。再発率は、原発性自然気胸と同程度である。

1.× 突然嗄声が出現するのは、「反回神経の障害」である。反回神経の枝は喉頭や声帯に分布し、障害により嗄声を生じる。反回神経は、右が鎖骨下動脈を、左が大動脈弓を前方から後方へ回り、この周囲に癌が浸潤することで嗄声が生じる。嗄声とは、声帯を振動させて声を出すとき、声帯に異常が起こり「かすれた声」になっている状態である。嗄声の原因は、①声帯自体に問題がある場合と、②声帯を動かす神経に問題がある場合がある。

2.× 「肥満」ではなく瘦せ型は危険因子である。
3.× 自然気胸は、「成人女性」ではなく男性に多い。
気胸の危険因子(特に原発性自然気胸)には、痩せ型の若年男性や喫煙が挙げられる。

4.〇 正しい。緊張性気胸は緊急処置が必要となる。なぜなら、心臓や大血管を圧迫し生命を脅かす状態であるため。ちなみに、緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。

 

 

 

 

 

73.自動体外式除細動器(AED)について誤っている記述はどれか。

1.薬事法に定められた医療機器である。
2.除細動の時は対象者の体に触れない。
3.使用するには医師の指示が必要である。
4.AEDは自動的に心室細動を判定し除細動する。

解答

解説

AEDとは?

自動体外式除細動器とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。AEDの除細動の適応は、①心室細動(VF)、②無脈性心室頻拍(VT)である。

1.〇 正しい。薬事法に定められた医療機器である。薬事法とは、医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品などの有効性、安全性、品質等の確保を目的として、一定の基準や取り扱いを定め、必要な規制を行うための法律である。自動体外式除細動器は、薬事法に規定する高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器に指定されており、適切な管理を行わなければ、人の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある医療機器である。

2.〇 正しい。除細動の時は対象者の体に触れない。なぜなら、自動体外式除細動器による除細動の際、対象者に触れると除細動の電流が施術者に伝わり、危険であるため。ただし、除細動を実行する前に「離れてください」と、機械からもアナウンスがあり、機械のアナウンス通りに従うことで安全に実行できる。

3.× 使用するには医師の指示が「不要である」。なぜなら、自動体外式除細動器により、電気ショックの必要性を判断してくれるため。一般市民でも操作が簡単であり、音声ガイドに従って誰でも使用できるよう設計されている。

4.〇 正しい。AEDは自動的に心室細動を判定し除細動する。自動体外式除細動器には、心電図解析機能が搭載されており、心室細動(VF)や無脈性心室頻拍(VT)を自動的に判定する。除細動が必要な場合にのみ、除細動ボタンが作動可能となる。

 

 

 

 

 

74.胃切除後のダンピング症候群の所見で誤っているのはどれか。

1.冷汗
2.腹痛
3.高血糖
4.下痢

解答

解説

ダンピング症候群とは?

ダンピング症候群とは、胃切除後、摂取した食物が急速に小腸に流入するために起こる。2種類に分類され、①早期ダンピング症候群:食事中や直後(30分程度)にみられる早期と、②後期ダンピング症候群:食後2~3時間たってみられる後期(晩期)に分けられる。早期ダンピング症候群は、食物が腸に急速に流れ込むことで起こる。主な症状は、動悸、めまい、冷汗、顔面紅潮、全身倦怠感など。腹痛、下痢、悪心、嘔吐などの腹部症状がみられる場合もある。

1.〇 正しい。冷汗は、胃切除後のダンピング症候群の所見である。なぜなら、急激な血糖値の低下(低血糖)が起こり、交感神経が活性化されて冷汗、動悸、振戦などがみられるため。機序として、食物が腸に移動し、短時間で吸収されるため、一時的に血糖が上昇する。これに反応してインスリンという血糖を下げるホルモンがたくさん分泌され、逆に低血糖になって起こる。

2.〇 正しい。腹痛は、胃切除後のダンピング症候群の所見である。なぜなら、急激な胃内容物の腸への流入による腸管の過伸展や血流変化が起こり、腹痛や膨満感がみられるため。

3.× 高血糖は、胃切除後のダンピング症候群の所見ではない。血糖値が一時的に上昇した後、過剰なインスリン分泌により血糖値が急激に低下する(低血糖)。ダンピング症候群では、持続的な高血糖はみられないため、高血糖症状もみられにくい。

4.〇 正しい。下痢は、胃切除後のダンピング症候群の所見である。なぜなら、大量の胃内容物が急速に腸に流入することで、腸管運動が亢進するため。

ダンピング症候群の食事

【早期ダンピング】
早期ダンピング症候群では、食後30分以内に全身症状と腹部症状が起こります。全身症状には、眠気・全身倦怠感・冷汗・動悸などです。腹部症状には腹部膨満・腹鳴・腹部不快感・下痢などがあります。
・1回の食事量を減らし、回数をわけて少しずつ食べましょう。
・食事中の水分量は少なめにし、流し込むような食べ方はやめましょう。
・お茶漬けにも注意しましょう。
・よく噛んでゆっくり(30分以上)時間をかけて食べるようにしましょう。
・症状がでた時は、頭を高くして横になって休みましょう。

【後期ダンピング】
後期ダンピング症候群は食後90分~3時間くらいで発症する低血糖症状です。
・予兆がある場合は早めに甘いもの(飴、ジュース、角砂糖)を摂りましょう。
・いつ起きても安心なように外出時は飴や角砂糖を持ち歩くようにしましょう。
・頻繁に起きる場合は、食後2時間くらいに糖質を多く含む捕食を摂るようにしましょう。
・症状がでた時は、甘いものを摂り、頭を高くして横になって休みましょう。

(※引用:「症状対処編」国際医療福祉大学様HPより)

 

 

 

 

 

75.痛風の食事療法で摂取制限をするのはどれか。

1.糖分
2.アルコール
3.水分
4.塩分

解答

解説

痛風とは?

痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

1.× 糖分の制限は、「糖尿病」において行うことが多い。糖質制限を行うことで、血糖値が上がりづらくなり、インスリンの働きが穏やかになり、ブドウ糖が脂肪に変換されにくくなることが期待できるため。

2.〇 正しい。アルコールは、痛風の食事療法で摂取制限をする。なぜなら、アルコール(特にビールや焼酎など)は、プリン体を多く含み尿酸値を上昇させる作用があるため。

3.× 水分の制限は、痛風に推奨されている。なぜなら、水分摂取を増やすことで、尿量を増加させ、尿酸の排泄を促進するため。

4.× 塩分の制限は、「高血圧」において行うことが多い。塩分を摂りすぎると、体内の塩分濃度を一定に保つために体内に水分がため込まれる。この結果、血液量が増え、心臓から送り出された血液が血管に強い圧力をかけるため、血圧が上昇する。

 

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