第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前26~30】

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26.皮膚について正しいのはどれか。

1.自由神経終末は侵害刺激を受容する。
2.成人の右上肢は総面積の1/5を占める。
3.パチニ小体は真皮乳頭に存在する。
4.表皮は有棘細胞の分裂によって増殖する。

解答

解説
1.〇 正しい。自由神経終末は侵害刺激を受容する。侵害受容器は、組織の損傷や有害な刺激を感知する自由神経終末であり、特定の受容器構造(例えば、触覚や圧覚を感知するような特別な構造)は持っていない。

2.× 成人の右上肢は総面積の「1/5」ではなく1/10を占める。成人の熱傷面積概算には「9の法則」を用いる。
9の法則とは、体表面積を9%ごとに、11のブロックに分けたものである。熱傷評価などで用いられる。部位は、①頭部、②〜④体幹(前面、後面、胸部、腹部)、⑤〜⑥上肢(左・右)、 ⑦〜⑪下肢(左・右、前・後)である。残りの1%は外陰部である。ちなみに、小児は、5の法則となる。頭部15%、前面体幹部20%、後面体幹部15%、左右上肢各10%、左右下肢各15%である。

3.× パチニ小体は、「真皮乳頭」ではなく真皮の深層や皮下組織に存在する。パチニ小体とは、振動や圧力の感覚受容器である。ちなみに、真皮乳頭に存在するのは、触覚を感知するメルケル細胞やマイスナー小体である。

4.× 表皮は、「有棘細胞」ではなく基底細胞の分裂によって増殖する。有棘細胞とは、皮膚の表皮中間にある有棘層を構成する細胞で、基底細胞が分裂し、成熟した細胞である。分裂能を持たない。

(※図引用:「皮膚に分布するヒトの触覚センサー、指の表面変形を捉える」著:田中 由浩)

 

 

 

 

 

27.健康成人において血圧低下を起こすのはどれか。

1.血中ナトリウム濃度の上昇
2.レニン分泌の増加
3.心収縮力の増大
4.細動脈の拡張

解答

解説
1.× 血中ナトリウム濃度が上昇した場合、血圧は上昇する。なぜなら、血中ナトリウム濃度が上昇すると、体内の水分保持が増加し、循環血液量が増えるため。ちなみに、ナトリウムとは、人体に必要なミネラルの一種で、主に食塩の形で摂取される。ナトリウムは、浸透圧の調整、細胞外液の量の調節、血圧の変動に関わる働きをする。1日の食塩摂取量の目標は、男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満、高血圧の予防・治療のためには6グラム未満とされている。

2.× レニン分泌が増加した場合、血圧は上昇する。レニンとは、腎臓から分泌されるホルモンである。レニンは、腎血流量の減少により作動し、血圧上昇させる働きがある。

3.× 心収縮力が増大した場合、血圧は上昇する。なぜなら、心収縮力が増大すると心拍出量が増加するため。

4.〇 正しい。細動脈の拡張は、健康成人において血圧低下を起こす。なぜなら、血管の直径が血流に影響を与えるため。

血圧とは?

血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積で規定される。
収縮期血圧:心臓が収縮しているときの最大血圧である。この短時間の強い圧力により弾性血管である大動脈は拡張し、血液を貯留する。
拡張期血圧:心臓の拡張期の最小血圧である。心臓が拡張している間、大動脈に貯留された血液が末梢に送られ、拡張期血圧を形成する。

 

 

 

 

 

28.ヘーリング・ブロイエル反射について正しいのはどれか。

1.受容器は圧受容器である。
2.求心路は交感神経である。
3.反射中枢は視床下部にある。
4.吸息中枢が抑制される。

解答

解説

ヘーリング・ブロイエル反射とは?

ヘーリング・ブロイエル反射とは、肺の伸展・縮小により肺伸展受容器が刺激された場合に、その刺激が迷走神経を介して延髄に伝達され、呼吸が抑制されることである。 吸気を抑制する肺膨張反射、呼気を抑制する肺縮小反射に分類される。遠心路は運動神経である。

1.× 受容器は、「圧受容器」ではなく肺伸展受容器である。ちなみに、圧受容器とは、動脈における血圧を感知する器官である。頚動脈洞や大動脈弓に存在し、変化に応じて血圧を調整する。

2.× 求心路は、「交感神経」ではなく迷走神経である。迷走神経とは、感覚神経・運動神経の一つである。嚥下運動や声帯の運動、耳介後方の感覚などに作用する。内臓(胃、小腸、大腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。刺激すると徐脈、咳、嘔吐などを生じる。強い痛みや精神的ショックなどが原因で、迷走神経が過剰に反応すると、心拍数や血圧の低下、失神などを引き起こす(迷走神経反射)。

3.× 反射中枢は、「視床下部」ではなく延髄(呼吸中枢)にある。視床下部とは、間脳に位置し、内分泌や自律機能の調節を行う総合中枢である。 ヒトの場合は脳重量のわずか0.3%、4g程度の小さな組織であるが、多くの神経核から構成されており、体温調節やストレス応答、摂食行動や睡眠覚醒など多様な生理機能を協調して管理している。つまり、視床下部は自律神経の最高中枢である。

4.〇 正しい。吸息中枢が抑制される。肺が過度に膨張すると、肺の伸展受容器が刺激され、迷走神経を通じて延髄の呼吸中枢に情報が伝えられる。その結果、吸息中枢が抑制され、呼吸が切り替わって呼息が促進される。この機能は、肺の過膨張を防ぐ重要な役割を果たす。

 

 

 

 

 

29.ATPに含まれるのはどれか。

1.アクチン
2.チミン
3.デオキシリボース
4.リン酸

解答

解説

MEMO

ATP(アデノシン三リン酸)は、筋肉の収縮など生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・利用にかかわる。

A:アデノシン(塩基の一種)
T:3つという意味。
P:リン酸

1.× アクチンとは、細胞骨格や筋収縮に関与するタンパク質である。

2.× チミンとは、DNAにのみ存在する塩基である。塩基にはプリン塩基であるアデニンとグアニン、ピリミジン塩基であるシトシン、チミン、ウラシルがある。アデニン、グアニン、シトシンはDNA・RNAに共通であるが、チミンはDNAにのみ、ウラシルはRNAにのみ存在する。特殊な例を除き、DNAは2本鎖、RNAは1本鎖である。

3.× デオキシリボースとは、DNAの骨格を構成する糖である。DNA(デオキシリボ核酸)は、「ヌクレオチド」が連続した鎖状の構造をもつ。ヌクレオチドは、①リン酸、② デオキシリボース(五炭糖)、③塩基(グアニン、 アデニン、チミン、 シトシンの中のいずれか1つ)より構成される。その際に、アデニンはチミンと、グアニンはシトシンと結合し互いにねじれて二重らせん構造をとる。

4.〇 正しい。リン酸は、ATPに含まれる。ATPは、アデノシン三リン酸という。

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
②ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる。
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

 

 

 

 

 

30.腎臓の尿細管で分泌されないのはどれか。

1.尿素
2.重炭酸イオン
3.水素イオン
4.カリウムイオン

解答

解説

MEMO

尿細管とは、糸球体と腎盂をつなぐ、無数の管(ホースのようなもの)である。多数の毛細血管が取り巻いている。 そのうち、糸球体に近い場所にある管を近位尿細管、ヘンレループの後に続く管を遠位尿細管という。近位尿細管の働きは、アミノ酸、ブドウ糖のほとんど、および水やナトリウムイオン、カリウムイオン、重炭酸イオンなどのイオン類が吸収される。

(図引用: 泌尿器のしくみと働き

1.× 尿素は、腎臓の尿細管で分泌される。尿素とは、動物の尿中に含まれる有機化合物であり、たんぱく質や核酸の分解生成物中の窒素分を体外に排出する役割を受け持っている。

2.〇 正しい。重炭酸イオン(HCO₃⁻)は、腎臓の尿細管で分泌されない。重炭酸イオンとは、体が酸性に傾いたとき、腎臓によって、血液中に重炭酸イオン(アルカリ性物質)を放出し、アシドーシスを防ぐ働きをするものである。

3.× 水素イオンは、腎臓の尿細管で分泌される。水素イオンは、腎臓が血液のpHを調整するために分泌される。

4.× カリウムイオンは、腎臓の尿細管で分泌される。カリウムイオンは、主に遠位尿細管や集合管で分泌される。

尿細管で吸収されるもの

◎近位尿細管で再吸収されるもの
グルコース・アミノ酸・ビタミン・水・ナトリウムイオン・カリウムイオン・カルシウムイオン・リン酸イオン・重炭酸イオン

◎ヘンレループで再吸収されるもの
水・ナトリウムイオン・クロールイオン

◎遠位尿細管で再吸収されるもの
水(抗利尿ホルモンにより促進される)・ナトリウムイオン(アルドステロンにより促進される)

 

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