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56.尿所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。
1.膿尿:急性糸球体腎炎
2.褐色尿:ネフローゼ症候群
3.血尿:尿管結石
4.蛋白尿:前立腺肥大症
解答3
解説
尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し
薬剤感受性を検査することが基本である。
【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。
(※引用:「尿路感染症」総合南東北病院より)
1.× 膿尿は、「急性糸球体腎炎」ではなく尿路感染症でみられる。膿尿とは、尿中に白血球が混じって肉眼でも白色に濁っている状態を指す。尿路感染症や泌尿器系の疾患のサインである(※読み:のうにょう)。ちなみに、糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。
2.× ネフローゼ症候群は、「褐色尿」ではなく蛋白尿がみられる。ネフローゼ症候群とは、尿から大量の蛋白が漏れ出すことで血液中の蛋白が減少、血液の浸透圧が低下し水分が血管内から血管外へ移動することで、全身の浮腫や腹水・胸水などを引き起こすものである。小児の治療として、ステロイド治療により改善することが多い。ネフローゼ症候群に対する食事に関しては、蛋白尿が陽性の間は減塩食にする。一般的に水分の制限は必要ないとされており、その理由は水分制限による脱水や血栓症の危険性が増加するためである。
・褐色尿は、筋肉崩壊(横紋筋融解症)や大量の赤血球破壊(溶血性貧血)によるヘモグロビン尿、または胆汁系の異常(胆汁うっ滞)によるビリルビン尿で見られる。
3.〇 正しい。血尿:尿管結石
なぜなら、尿管結石によって、尿路を傷つけるため。ちなみに、尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。
4.× 蛋白尿は、「前立腺肥大症」ではなくネフローゼ症候群でみられる。前立腺肥大症とは、男性の膀胱の隣にある前立腺という臓器が大きくなっている状態で、排尿症状や蓄尿症状、排尿後症状などが現れる。原因ははっきりと断定できていないが、男性ホルモンの関与が指摘されている。また、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症なども関係があるといわれている。
57.口腔内所見と疾患の組合せで正しいのはどれか。
1.う歯:悪性貧血
2.アフタ性口内炎:潰瘍性大腸炎
3.舌炎:くる病
4.口角炎:ビタミンA欠乏症
解答2
解説
1.× う歯(虫歯)は、「悪性貧血」ではなく口腔衛生の問題でみられる。う歯(虫歯) は、歯の表面が細菌感染により崩壊する病態である。一方、悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。
2.〇 正しい。アフタ性口内炎:潰瘍性大腸炎
・アフタ性口内炎とは、潰瘍性口内炎としても知られ、痛みを伴う潰瘍が繰り返し形成されることを特徴とする口内炎である。潰瘍が現れる部分に1~2日前から痛みが生じる。
・潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。
3.× 舌炎は、「くる病」ではなく悪性貧血でみられる。
くる病とは、小児期に見られる骨の石灰化不全であり、主に成長障害と骨の弯曲が起こる疾患である。ビタミンDの代謝あるいは感受性の障害により、骨に石灰化が起こらず、強度が不足する病気である。 成人期ではビタミンD依存性骨軟化症と呼ばれる。小児期には成長も障害され、骨X線検査で特徴的な所見を呈し、ビタミンD依存性くる病とも呼ばれる。
4.× 口角炎は、「ビタミンA欠乏症」ではなくビタミンB2や鉄の欠乏でみられる。
・口角炎とは、口の両端(口角)に炎症が起き、赤み、腫れ、亀裂、かさかさ、かゆみ、痛みなどの症状が現れる病気で
・ビタミンA欠乏で、夜盲症となる。夜盲症とは、暗いところではたらく網膜の細胞に異常があり暗順応が障害されて、暗いところや夜に見えにくくなる病気である。
58.筋萎縮性側索硬化症でみられるのはどれか。
1.膀胱直腸障害
2.感覚障害
3.嚥下障害
4.眼球運動障害
解答3
解説
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)
1.× 膀胱直腸障害/感覚障害/眼球運動障害は、筋萎縮性側索硬化症の4大陰性徴候に当てはまる。したがって、終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
3.〇 正しい。嚥下障害は、筋萎縮性側索硬化症でみられる。なぜなら、筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、延髄にある運動ニューロンが障害されるため。したがって、球症状(言語障害、嚥下障害など)がみられる。
59.甲状腺機能亢進症でよくみられる症状はどれか。
1.体重減少
2.発汗量減少
3.食欲低下
4.記憶力低下
解答1
解説
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の症状として、発汗や食欲亢進、体重減少、下痢、振戦、メルセブルグ3徴(眼球突出、甲状腺腫、頻脈)がみられる。放射線性ヨウ素内用療法は、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)や甲状腺がんに対して行われる治療のひとつである。甲状腺機能亢進症では、放射性ヨウ素から放出されるベーター線で正常な甲状腺細胞を破壊し、甲状腺機能亢進症を改善させる。
1.〇 正しい。体重減少は、甲状腺機能亢進症でよくみられる。なぜなら、甲状腺ホルモンの過剰により代謝が著しく亢進し、エネルギー消費が増加するため。ちなみに、甲状腺ホルモンとは、サイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があり、新陳代謝を調節している。脈拍数や体温、自律神経の働きを調節し、エネルギーの消費を一定に保つ働きがある。
2~3.× 発汗量/食欲は、「減少」ではなく増加する。なぜなら、甲状腺ホルモンの過剰により代謝が著しく亢進し、エネルギー消費が増加するため。ただし、代謝亢進に伴い、食べても体重は減少する。
4.× 記憶力は、「低下」ではなく増加する(物忘れは見えられにくい)。一方、代謝の亢進を促すため、神経過敏、不安感、集中力の低下、不眠などが見られる。。
記憶力低下は甲状腺機能低下症で見られる。
橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。ちなみに、口内乾燥症はSjögren症候群(シューグレン症候群)の特徴である。Sjögren症候群(シューグレン症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。
60.皮膚筋炎でみられるのはどれか。
1.ヘリオトロープ疹
2.コプリック斑
3.スワンネック変形
4.ソーセージ様手指
解答1
解説
多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。
(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)
1.〇 正しい。ヘリオトロープ疹は、皮膚筋炎でみられる。ヘリオトロープ疹とは、上眼瞼の腫れぼったい紅斑のことである。
2.× コプリック斑が出現するのは、麻疹(はしか)である。
Koplik斑(コプリックはん)とは、麻疹 (はしか) 患者の大部分に現れる頬粘膜の斑点である。臼歯に対する部分に境界明瞭なやや隆起した粘膜疹ができる。麻疹とは、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。
3.× スワンネック変形が出現するのは、関節リウマチなどによっておこる。
スワンネック変形とは、MP関節屈曲、PIP関節過伸展、DIP関節屈曲する変形をいう。
4.× ソーセージ様手指が出現するのは、強皮症などによっておこる。ソーセージ様手指とは、指がソーセージ状に腫れる症状である。ちなみに、強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどである。
関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。
(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)