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76.「20歳の女性。呼吸困難、全身倦怠感の精査のため受診。胸部レントゲン写真で心拡大と肺うっ血を認めた。心エコー検査では左室内腔は著明に拡大し、心室中隔と左室後壁は薄くなっていた。」
本疾患に最も有用な血液検査項目はどれか。
1.ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド
2.アルカリフォスファターゼ
3.ロイシンアミノペプチダーゼ
4.リパーゼ
解答1
解説
・20歳の女性(呼吸困難、全身倦怠感)。
・胸部レントゲン写真:心拡大、肺うっ血。
・心エコー検査:左室内腔は著明に拡大、心室中隔と左室後壁は薄くなっていた。
→本症例は、拡張型心筋症が疑われる。拡張型心筋症とは、心臓(特に左心室、時として両心室)の筋肉の収縮する能力が進行性に低下することにより左心室が通常よりも大きくなってしまい、血液を適切に全身に送ることができなくなって心不全や不整脈を生じる病気である。
→肺うっ血とは、心不全などの循環不全により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。
1.〇 正しい。ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチドは、本疾患に最も有用な血液検査項目である。なぜなら、心不全が進行すると、血中ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値は上昇するため。心臓にかかる負荷が増加し、心筋からヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が分泌される。したがって、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心不全の診断・予後や治療効果の判定に有用である。
2.× アルカリフォスファターゼとは、リン酸化合物を分解する働きを持つ酵素で、肝臓や小腸、腎臓、骨などの多くの臓器や器官に存在している。これらの組織に異常があるとアルカリフォスファターゼが血液のなかに漏れ出てくる。基準値:38〜113U/L(成人男女)である。
3.× ロイシンアミノペプチダーゼとは、胆道系の閉塞や肝疾患で上昇する酵素である。基準値は、30~70U/Lである。異常高値で、肝胆道系閉塞性疾患(原発性・転移性肝腫瘍、胆道癌、胆石症、胆のう炎)が疑われる。
4.× リパーゼとは、膵炎(特に急性膵炎)の診断に用いられる酵素である。一般的に、リパーゼとは、中性脂肪を脂肪酸とグリセリンに加水分解する反応を触媒する酵素である。
心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(肺のうっ血による症状と全身の血圧低下が主体)。
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(上下大静脈のうっ血が主体。右心不全の代表的な症状として、①頚静脈怒張、②下腿浮腫、③肝腫・黄疸、④肝頚静脈逆流、⑤Kussmaul徴候)。
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。
77.「45歳の男性、高血圧、頻拍発作の精査で受診。血中ナトリウム、カリウム値は正常範囲内であったが、腹部CTにて右副腎部に腫瘍病変を認めた。」
本患者によくみられる所見はどれか。
1.頭痛
2.発汗量減少
3.低血糖
4.貧血
解答1
解説
・45歳の男性(高血圧、頻拍発作)
・血中ナトリウム、カリウム値:正常範囲内
・腹部CT:右副腎部に腫瘍病変あり。
→本症例は、褐色細胞腫が疑われる。褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。
1.〇 正しい。頭痛は、本患者によくみられる所見である。本症例は、褐色細胞腫が疑われる。褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。
2.× 発汗量は、「減少」ではなく増加する。なぜなら、交感神経が優位となるため。
3.× 「低」ではなく高血糖となる。なぜなら、カテコールアミンの作用により、肝臓での糖新生やグリコーゲン分解が促進されるため。カテコールアミンとは、アドレナリンやノルアドレナリンなどのことで、血管を収縮させ、心拍数を増加させる。
4.× 貧血は一般的にみられない。貧血とは、「単位容積の血液中に含まれているヘモグロビン(Hb)量が基準値より減少した状態」と定義している。基準値を、小児および妊婦では血液100mLあたり11g未満、思春期および成人女性では12g未満、成人男性では13g未満と定めている。【貧血の要因】鉄分不足、ビタミンB12や葉酸などの造血因子の不足、腎臓の病気によるエリスロポエチンの産生抑制、内分泌器官の低下によるホルモン分泌のバランスの崩れ、過剰な出血(失血)、赤血球の過剰な破壊など。
78.「45歳の男性。高血圧、頻拍発作の精査で受診。血中ナトリウム、カリウム値は正常範囲内であったが、腹部CTにて右副腎部に腫瘍病変を認めた。」
本疾患の診断に最も有用な測定項目はどれか。
1.尿中アルブミン
2.尿中アミラーゼ
3.血中カテコールアミン
4.血中CK
解答3
解説
・45歳の男性(高血圧、頻拍発作)
・血中ナトリウム、カリウム値:正常範囲内
・腹部CT:右副腎部に腫瘍病変あり。
→本症例は、褐色細胞腫が疑われる。褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。
1.× 尿中アルブミンとは、腎糸球体障害の進行に伴い尿中排泄量が増加する物質で、腎機能の障害(例:糖尿病性腎症、慢性腎疾患)を評価するための指標である。ちなみに、一般的に、アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。
2.× 尿中アミラーゼとは、尿のなかにどの程度アミラーゼが排泄されているかを示し、膵炎や膵管障害の評価に使用される項目である。ちなみに、一般的に、アミラーゼとは、でんぷんを分解して糖にする酵素である。体内では主に、膵臓、耳下腺(唾液腺)から分泌される。
3.〇 正しい。血中カテコールアミンは、本疾患の診断に最も有用な測定項目である。なぜなら、褐色細胞腫は、副腎髄質でカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)が過剰に産生される腫瘍であるため。ちなみに、一般的に、カテコールアミンとは、アドレナリンやノルアドレナリンなどのことで、血管を収縮させ、心拍数を増加させる。ちなみに、副腎髄質から分泌される。
4.× 血中CKとは、筋肉にエネルギーを貯めるときに働く酵素で、全身の運動をつかさどる筋肉(骨格筋)や心臓の筋肉(心筋)に多く含まれる。したがって、それらの筋肉が傷害されたときに、血液中で高値となる。例えば、筋肉疾患(例:横紋筋融解症、筋ジストロフィー)や心筋障害(心筋梗塞)を評価する指標である。
79.「70歳の男性。嚥下障害と体重減少で来院し、食道癌と診断された。さらに右眼瞼下垂と縮瞳が認められた。」
本疾患について適切なのはどれか。
1.腺癌が多い。
2.中部食道に多い。
3.化学療法は用いられない。
4.予後は良い。
解答2
解説
・70歳の男性(嚥下障害、体重減少)。
・診断:食道癌。
・右眼瞼下垂と縮瞳あり。
→本症例は、ホルネル症候群が疑われる。食道癌が周囲組織に浸潤し、交感神経経路を障害していると考えられる。ホルネル(ホルナー)症候群とは、交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。
1.× 「腺癌」ではなく扁平上皮癌が多い。腺癌とは、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがんである。 胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆のうなどに発生する。なかでも、胃がんの90%以上は、胃壁の最も内側の粘膜上皮細胞から発生する腺癌である。
2.〇 正しい。中部食道に多い。なぜなら、食道癌は、特に胸部の食道に腫瘍が発生した場合、近くを走行する交感神経に影響を与えるため。食道癌は食道に発生した上皮性腫瘍のことである。組織学的に約90%が扁平上皮癌である。好発部位は、胸部中部食道、胸部下部食道の順で、胸部中部食道が約50%を占める。アルコール、喫煙、熱い食事、Barrett食道、アカラシアなどが誘因である。
3.× 化学療法は「用いられる」。食道癌の治療には、手術、化学療法、放射線療法が用いられる。進行度に応じて、これらを組み合わせた治療が行われる。
4.× 予後は良いとはいえない。食道癌は、早い段階でみつかった場合(食道粘膜の表層までの浸潤)であれば、5年生存率は75%以上である。ただし、診断時に進行している例が多く、周囲組織への浸潤やリンパ節転移が見られることが多い。遠隔転移をきたした最も病状が進行した場合は、5年生存率は約20%程度となる。
80.「70歳の男性。嚥下障害と体重減少で来院し、食道癌と診断された。さらに右眼瞼下垂と縮瞳が認められた。」
本症例にみられる合併症はどれか。
1.上大静脈症候群
2.反回神経麻痺
3.顔面神経麻痺
4.ホルネル症候群
解答4
解説
・70歳の男性(嚥下障害、体重減少)。
・診断:食道癌。
・右眼瞼下垂と縮瞳あり。
→本症例は、ホルネル症候群が疑われる。食道癌が周囲組織に浸潤し、交感神経経路を障害していると考えられる。ホルネル(ホルナー)症候群とは、交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。
1.× 上大静脈症候群とは、上大静脈への圧迫または浸潤に起因し、頭痛または頭部充満感、顔面または上肢の腫脹、仰臥位での息切れ、頸、顔、および体幹上部の静脈怒張、ならびに顔面および体幹の紅潮(多血)を引き起こす。原因としては、肺癌や縦隔腫瘍が多い。
2.× 反回神経麻痺とは、嗄声や飲み込み困難が主な症状である。反回神経とは、胸腔内で迷走神経から分枝した神経で、右は鎖骨下動脈、左は大動脈弓(正確には動脈管索)を前方から後方へ回り、気管と食道の間の溝を通って喉頭へ行く。気管には気管枝、食道には食道枝を送る。
3.× (急性)顔面神経麻痺とは、ある日突然顔の半分、あるいは一部分が思うように動かせなくなる状態である。その中で最も多いのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」という呼ばれるウイルスが顔面神経管の中の顔面神経に感染して生じる。
4.〇 正しい。ホルネル症候群は、本症例にみられる合併症である。ホルネル(ホルナー)症候群とは、交感神経遠心路の障害によって生じる。三大徴候:中等度縮瞳、眼瞼下垂(眼裂狭小)、眼球陥凹(眼球後退)とする症候群である。眼の徴候以外は、顔面の発汗低下と紅潮を特徴とする。