第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

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126.次の文で示す症例について、施術対象となる椎間関節部位で最も適切なのはどれか。
 「19歳の男性。体操競技選手。体幹のひねり動作時に腰部に違和感を訴え、近医にて分離すべり症と診断された。母趾の背屈力が弱い。」

1.L2-L3間
2.L3-L4間
3.L4-L5間
4.L5-S1間

解答

解説

本症例のポイント

・19歳の男性(体操競技選手)。
・体幹のひねり動作時に腰部に違和感を訴えた。
・診断:分離すべり症
母趾の背屈力が弱い
→分離すべり症の好発部位は、L5が最も多く、次いでL4である。母趾の背屈(母趾伸展)を司る筋肉は、前脛骨筋や長母趾伸筋である。これらは、L5神経根によって支配されている。本症例で「母趾の背屈力が弱い」という神経症状があることから、L5神経根が圧迫または障害されていると推定される。

1.× L2-L3間の場合、L2神経根が障害される。

2.× L3-L4間の場合、L3神経根が障害される。

3.× L4-L5間の場合、L4神経根が障害される。

4.〇 正しい。L5-S1間は、この症例に対する施術対象となる椎間関節部位である。分離すべり症の好発部位は、L5が最も多く、次いでL4である。母趾の背屈(母趾伸展)を司る筋肉は、前脛骨筋や長母趾伸筋である。これらは、L5神経根によって支配されている。本症例で「母趾の背屈力が弱い」という神経症状があることから、L5神経根が圧迫または障害されていると推定される。

脊椎分離症・脊椎分離すべり症とは?

「脊椎分離症」・・・疲労骨折などにより、椎骨が椎弓の関節突起間部で分離したものをいう。

「脊椎分離すべり症」・・・脊椎分離症から、さらに分離した椎体が前方に転位したものをいう。

【特徴】
日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。Kempテスト(ケンプテスト)で他動的に体幹を後側屈・回旋させると椎弓根が狭窄され下肢に放散痛が生じる (Kemp徴候)。

【X線45° 斜位像】
椎間関節や椎弓根の狭窄を確認する。脊椎分離(テリアネックサイン)が特徴的である。

【治療】
①若年での発症が多いこと、②症状が腰部に限局し下肢症状がないことから、保存的治療(安静・コルセット装着・消炎鎮痛)が優先になる。重度の障害がある場合に手術が検討される。

 

 

 

 

 

127.次の文で示す症例に対する鍼施術で治療対象となる筋はどれか。
 「17歳の女子。陸上部の長距離選手。練習開始時、脛骨内側縁の中1/3と下1/3の境界付近に軽い痛みを覚えるようになったが、日常生活に支障はない。エックス線像に異常は認めない。」

1.長母指伸筋
2.前脛骨筋
3.ヒラメ筋
4.長腓骨筋

解答

解説

本症例のポイント

・17歳の女子(陸上部の長距離選手)。
・練習開始時:脛骨内側縁の中1/3と下1/3の境界付近に軽い痛み。
・日常生活に支障はない。
・エックス線像に異常は認めない。
→本症例は、ヒラメ筋のシンスプリント(過労性骨膜炎)が疑われる。シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。超音波にて治療を行う際は、下腿中央から遠位1/3部の脛骨後内方前脛骨筋部骨間膜などに照射する。

1.× 長母指伸筋の【起始】尺骨体中部背面、前腕骨間膜背面、【停止】母指の末節骨底の背側、【作用】母指の伸展、内転である。

2.× 前脛骨筋の【起始】脛骨外側面、下腿骨間膜、【停止】内側楔状骨と第1中足骨の底面、【作用】足関節背屈、内返しである。本症例の痛みの部位から、前脛骨筋が優先度が下がるといえる。

3.〇 正しい。ヒラメ筋は、この症例に対する鍼施術で治療対象となる筋である。ヒラメ筋の【起始】腓骨頭と腓骨後面、脛骨のヒラメ筋線と内側縁、腓骨と脛骨間のヒラメ筋腱弓、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節底屈、踵の挙上である。

4.× 長腓骨筋の【起始】腓骨頭、腓骨体外側面の上半、一部は筋膜と前下腿筋間中隔、【停止】第1,2中足骨底、内側楔状骨、【作用】足関節底屈、外返しである。

 

 

 

 

 

128.消穀善飢を伴う消渇病の食事療法について、最も摂取を控えなければならない味はどれか。

1.酸味
2.苦味
3.甘味
4.辛味

解答

解説

本症例のポイント

・消穀善飢を伴う消渇病の食事療法
・最も摂取を控えなければならない味。
→消穀善飢は、食欲旺盛で食べてもすぐに空腹感があるものである。
→消渇の特徴は、多飲、多食、多尿で糖尿病を指す言葉である。

1.2.4.× 酸味/苦味/辛味より控えるべき味が他にある

3.〇 正しい。甘味は、消穀善飢を伴う消渇病の食事療法について、最も摂取を控えなければならない味である。なぜなら、糖尿病は、血糖が高い状態であるため。

糖尿病とは?

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 

 

 

 

129.「51歳の女性。主訴は股関節の痛み。痛みのため台所の立ち仕事が長く続けられない。近医にて変形性股関節症と診断された。」
 パトリックテストの操作として適切なのはどれか。

1.右の股関節を90度屈曲位に保ったまま膝だけを伸展させる。
2.右膝を胸に近づけるように股関節と膝を深く曲げる。
3.右足を左膝の上に乗せ股関節を開排させた後、右膝の内側を下方に押す。
4.右足を左膝の外側にもっていき右膝の外側を健側方向に押す。

解答

解説

パトリックテストとは?

Patrickテスト(パトリックテスト)は、股関節の炎症や痛みのテストである。背臥位で評価側の足背を反対側の膝蓋骨に載せ、評価側の膝を床へ押さえる。鼠径部に痛みが出れば陽性である。

1.× 右の股関節を90度屈曲位に保ったまま膝だけを伸展させる。
これは、Lasegue test(ラセーグテスト)である。ラセーグテストは、椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、横靭帯肥厚、脊柱管狭窄症など神経根障害を検査する。背臥位で下肢を伸展したまま持ち上げると70°に達するまでに下肢に疼痛を訴え、それ以上の挙上が不可となるものを陽性とする。

2.× 右膝を胸に近づけるように股関節と膝を深く曲げる。
これは、トーマステストである。トーマステストとは、股関節屈曲拘縮を診るテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。トレンデレンブルグ徴候は、中殿筋機能が低下して起こる。患肢で片脚立ちをしたとき、健肢側の骨盤が下がる現象である。エリーテストは、大腿直筋の短縮のテストである。短縮していた場合、腹臥位で膝関節を最大屈曲した際に、股関節が屈曲し、殿部が持ち上がる(尻上がり現象)。

3.〇 正しい。右足を左膝の上に乗せ股関節を開排させた後、右膝の内側を下方に押す
これは、パトリックテストの操作である。

4.× 右足を左膝の外側にもっていき右膝の外側を健側方向に押す。
これは、Kボンネットテストである。Kボンネットテストとは、梨状筋症候群の診断に使用される誘発テストである。やり方は、背臥位の被検者は、検査側の膝関節屈曲位にて、対側の脚の上に乗せる(梨状筋に伸展ストレスを加える)。殿部から太ももにかけて、放散痛が出た場合は陽性である。

 

 

 

 

 

130.「51歳の女性。主訴は股関節の痛み。痛みのため台所の立ち仕事が長く続けられない。近医にて変形性股関節症と診断された。」
 この患者に勧める運動指導で最も適切なのはどれか。

1.散歩
2.水中歩行
3.ラジオ体操
4.スクワット

解答

解説

本症例のポイント

・51歳の女性(主訴:股関節の痛み)。
・痛みのため台所の立ち仕事が長く続けられない。
・診断:変形性股関節症
→一次性変形性股関節症とは、原因がわからずに関節軟骨がすり減り、骨が変形するもの。二次性変形性股関節症とは、何らかの病気(ペルテス病や先天性股関節脱臼)やケガが原因でおこっているものをいう。日本では、この二次性が大半を占め、先天性股関節脱臼と臼蓋形成不全によるものが約90%、圧倒的に女性に多い。壊死部は修復過程を経て正常の骨組織に戻るが、形態異常を伴って修復完了した場合、将来的に変形性股関節症を生じる可能性がある。

1.3.4.× 散歩/ラジオ体操/スクワットより優先されるものが他にある。なぜなら、これらは股関節に負荷がかかりやすく、痛みが発生しやすいため。

2.〇 正しい。水中歩行は、この患者に勧める運動指導である。なぜなら、水による浮力が働くことで、股関節への負荷を軽減しつつ、全身運動や筋力トレーニングが可能であるため。また、全身の血流促進や可動域の改善も図れる。

 

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