第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後136~140】

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136.「63歳の男性。手のふるえ、歩行困難、歯車様の筋強剛がみられる。」
 本患者の臓腑病証に基づいて九刺による鍼治療を行う場合の組合せで適切なのはどれか。

1.肺兪:太淵
2.肝兪:太衝
3.脾兪:太白
4.心兪:神門

解答

解説

本症例のポイント

・63歳の男性。
・手のふるえ、歩行困難、歯車様の筋強剛。
→本症例は、パーキンソン病が疑われる。手のふるえ、歩行困難、筋強剛は、肝の病証である。 

1.× 肺兪:太淵
・肺の兪穴である肺兪(※読み:はいゆ)は、上背部、第3胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
・肺の原穴である太淵(※読み:たいえん)は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。

2.〇 正しい。肝兪:太衝
肝の兪穴である肝兪(※読み:かんゆ)は、上背部、第9胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
肝の原穴である太衝(※読み:たいしょう)は、足背、第1~2指中足骨間、中足骨底接合部遠位の陥凹部、足背動脈拍動部に位置する。

3.× 脾兪:太白
・脾の兪穴である脾兪(※読み:ひゆ)は、上背部、第11胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
・脾の原穴である太白(※読み:たいはく)は、足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

4.× 心兪:神門
・心の兪穴である心兪(※読み:しんゆ)は、上背部、第5胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
・心の原穴である神門(※読み:しんもん)は、手関節前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋上に位置する。

 

 

 

 

 

137.「42歳の男性。腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便が2か月続いている。近医の診察で機能性胃腸症と言われた。ストレスが多い仕事に就いている。強いストレスがかかると症状が増悪する。舌苔は白膩。脈は弦。」
 最も適切な病証はどれか。

1.脾胃の病証
2.脾腎の病証
3.肝胃の病証
4.肝脾の病証

解答

解説

本症例のポイント

・42歳の男性(機能性胃腸症)。
・腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便が2か月続いている。
・ストレスが多い仕事に就いている。
・強いストレスがかかると症状が増悪する。
・舌苔は白膩。脈は弦。
→脾の症状:腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便。
→肝の症状:ストレスで症状が増悪し、弦脈。

1.× 脾胃の病証
・脾の主な症状として、食欲不振、腹臓、下痢、浮種、身体の重だるさ、やせ、腹鳴などがみられる。
・胃の生理として、①受納(口から入った飲食物を受け入れる)、②腐熟(飲食物の初歩的な消化を行う)、③和降(消化した飲食物を小腸に下降させる)、④降濁(胃は濁なるものを腸へ送ること)などである。

2.× 脾腎の病証
腎の主な症状として、耳鳴、難聴、健忘、腰膝酸軟、尿閉、遺尿、浮腫、不妊、閉経、陽萎などがみられる。膀胱の機能失調で(小便不利、排尿痛)などである。

3.× 肝胃の病証
肝の主な症状として、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、目赤、目のかすみ、舌辺紅、脈弦など。※胆の機能失調で口苦・耳鳴・眩暈などである。

4.〇 正しい。肝脾の病証は、最も適切な病証である。
→脾の症状:腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便。
→肝の症状:ストレスで症状が増悪し、弦脈。

 

 

 

 

 

138.「42歳の男性。腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便が2か月続いている。近医の診察で機能性胃腸症と言われた。ストレスが多い仕事に就いている。強いストレスがかかると症状が増悪する。舌苔は白膩。脈は弦。」
 本患者の腹痛の性質はどれか。

1.隠痛
2.脹痛
3.刺痛
4.酸痛

解答

解説

本症例のポイント

・42歳の男性(機能性胃腸症)。
・腹痛、腹部膨満感、食欲不振、軟便が2か月続いている。
・ストレスが多い仕事に就いている。
・強いストレスがかかると症状が増悪する。
・舌苔は白膩。脈は弦。
→本症例は、肝脾不和が疑われる。肝脾不和とは、肝臓と脾臓の連携が乱れ、脾臓から肝臓への受け渡しがうまくいかない状態である。症状として、胃痛、腹痛、食欲不振、お腹や胸の張り、イライラ、憂うつ感などである。

1.× 隠痛は、虚証にみられる痛みの性質である。気虚(倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒など)がみられる。

2.〇 正しい。脹痛は、本患者の腹痛の性質である。脹痛は、気滞にみられる痛みの性質である。(気鬱)気滞は、脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感などで、増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。

3.× 刺痛は、瘀血にみられる痛みの性質である。瘀血(おけつ)とは、血液が汚れたり、滞ったり、固まりやすくなった状態のことである。瘀血になると、血の流れが悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、さまざまな症状が現れやすくなる。

4.× 酸痛は、気血不足・湿邪にみられる痛みの性質である。湿邪は、陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。

 

 

 

 

 

139.「28歳の女性。第一子を出産したが、乳房の張り感はなく、母乳の出が悪い。産後の疲労感はある。なお、出産時には出血量が多かった。顔色はくすんだ黄色、舌質は淡白、脈は虚細。」
 本症例で最も考えられる病証はどれか。

1.陽虚
2.痰飲
3.血瘀
4.気血両虚

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の女性(第一子を出産)。
・乳房の張り感はなく、母乳の出が悪い。
産後の疲労感はある。
・出産時には出血量が多かった。
・顔色はくすんだ黄色、舌質は淡白、脈は虚細
→本症例は、気血両虚が疑われる。気虚は、倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒などである。血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などである。

1.× 陽虚(虚寒)は、寒証+気虚症状。寒がり、四肢の冷え、顔面蒼白、下痢、白色帯下、腹痛、自汗、倦怠感、息切れ、食欲不振、脈遅・弱などである。

2.× 痰飲は、体内の水液運化が失調し、身体のある部位に停滞したことによって発生する病証である。

3.× 血瘀は、疼痛(固定痛・刺痛、夜間に増悪)、腫脹、腫塊、肌膚甲錯。瘀斑、月経痛・血塊、皮下出血斑、色素沈着、紫舌・暗紅舌があげられる。

4.〇 正しい。気血両虚は、本症例で最も考えられる病証である。
→気虚の根拠として、乳房の張り感がなく、産後の疲労感があり、顔色がくすんだ黄色、脈虚があげられる。
→血虚の根拠として、出産時の出血量が多く、舌質淡白、脈細があげられる。

 

 

 

 

 

140.「28歳の女性。第一子を出産したが、乳房の張り感はなく、母乳の出が悪い。産後の疲労感はある。なお、出産時には出血量が多かった。顔色はくすんだ黄色、舌質は淡白、脈は虚細。」
 本症例の乳汁分泌を促すために頻用されている経穴はどれか。

1.地機
2.至陰
3.膻中
4.関衝

解答

解説

本症例のポイント

・28歳の女性(第一子を出産)。
・乳房の張り感はなく、母乳の出が悪い。
産後の疲労感はある。
・出産時には出血量が多かった。
・顔色はくすんだ黄色、舌質は淡白、脈は虚細
→本症例は、気血両虚が疑われる。気虚は、倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒などである。血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などである。

1.× 地機(※読み:ちき)は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、陰陵泉の下方3寸に位置する。ヒラメ筋や長趾伸筋の治療穴である。

2.× 至陰(※読み:しいん)は、足の第5指、末節骨外側、爪甲角の近位外方1分(指寸)、爪甲外の垂線と爪甲基底部の水平線の交点に位置する。経絡の流注で横隔膜を貫かないのは膀胱経のみである。

3.〇 正しい。膻中は、本症例の乳汁分泌を促すために頻用されている経穴である。なぜなら、第4肋間は、乳首に位置するため。膻中(※読み:だんちゅう)は、前胸部、前正中線上、第4肋間と同じ高さに位置する。第4肋間の高さにある穴は、膻中【任】-神封【腎】-乳中【胃】-天池【包】-天渓【脾】-輒筋【胆】-淵腋【胆】である。

4.× 関衝(※読み:かんしょう)は、薬指、末節骨尺側、爪甲尺側縁の垂直線と爪甲基底部の水平線との交点に位置する。

 

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