第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 次の文で示す症例で行った検査法はどれか。
「55歳の男性。最近、耳の聞こえが悪くなり来院した。音叉を鳴らし、その把持部を乳様突起に当て、音が聞こえなくなった後、外耳孔近くで音叉の音を聞かせた。」

1.リンネ検査
2.ロンベルグ検査
3.ビング検査
4.ウェーバー検査

解答

解説
1.〇 正しい。リンネ検査は、本症例で行った検査法である。リンネ検査とは、伝音性障害や感音性障害を調べる聴力検査の一種で、音叉を使って空気伝導と骨伝導による聴力を比較する。まず、音叉を鳴らし、その把持部を乳様突起に当てる。音叉から骨に伝わる振動音を聴かせ、聴こえなくなった後、音叉を外耳孔から数cmのところで、空気を伝わって耳に入ってくる振動音(気導音)を聴かせる。骨導音より気導音のほうが聴こえにくい、あるいは気導音が聴こえない場合は、伝音性難聴である。ちなみに、伝音性難聴とは、外耳や中耳などの「伝音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。一方、感音性難聴とは、内耳や聴神経など「感音器」と呼ばれる部分の障害によって起こる難聴である。老人性難聴は、感音性難聴のひとつであり、加齢により内耳などが衰える事により発症する。

2.× ロンベルグ検査とは、被験者に足をそろえ、目を閉じて直立する検査で、陽性(閉眼時)では、脊髄性障害(脊髄癆)では動揺が大きくなる。ちなみに、開眼時・閉眼時ともに動揺がみられる場合は小脳障害を考える。

3.× ビング検査をご存じの方いらしたら、コメント欄にて教えてください。あまり有名ではない?検査で覚えなくともよいかもしれません。

4.× ウェーバー検査とは、簡易聴力検査のひとつである。方法として、音叉を前頭部頭頂部下顎先端部などに当てて、聴こえる音がどちら側に偏るかを調べる。①正常、②伝音性難聴、③感音性難聴、④混合性難聴を判断できる。伝音性難聴の場合、聞こえにくい方の耳側が大きく聴こえる。なぜなら、骨伝導の音が際立って大きく聴こえるため。感音性難聴の場合、聞こえにくい方の耳側が小さく聴こえる。なぜなら、音が感じにくく、骨伝導にしても音は小さくなるため。

 

 

 

 

 

問題132 下顎を挙上し後方移動すると顎関節が痛む場合、主動作筋への局所治療穴として最も適切なのはどれか。

1.下関
2.曲鬢
3.顴髎
4.頬車

解答

解説

咀嚼筋とは?

咀嚼筋とは、下顎骨の運動(主に咀嚼運動)に関わる筋肉の総称である。咀嚼筋は一般的に、咬筋、側頭筋、外側翼突筋、内側翼突筋の4種類が挙げられる。咀嚼筋は、主にⅤ:三叉神経支配である。

・閉口筋:咬筋、側頭筋、外側翼突筋(上頭)、内側翼突筋
・開口筋:顎舌骨筋、オトガイ舌骨筋、顎二腹筋、外側翼突筋(下頭)

1.× 下関(※読み:げかん)は、顔面部、類骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部に位置する。

2.〇 正しい。曲鬢は、下顎を挙上し後方移動すると顎関節が痛む場合、主動作筋(側頭筋)への局所治療穴である。
・曲鬢(※読み:きょくびん)は、頭部、もみあげ後緑の重線と耳尖の水平線の交点に位置する。
・側頭筋の【起始】側頭鱗外面と側頭筋膜の深葉の内面、【停止】下顎骨の筋突起、【作用】下顎を上げて、歯をかみ合させる(閉口)ほか、後部は下顎骨を後ろへ引く。【神経】下顎神経の深側頭神経である。

3.× 顴髎(※読み:けんりょう)は、顔面部、外眼角の直下、頬骨下方の陥凹部に位置する。下関(胃経)の前方にあたる。

4.× 頬車(※読み:きょうしゃ)は、顔面部、下顎角の前上方1横指(中指)に位置する。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題133、問題134の問いに答えよ。
「24歳の男性。1か月前から右下肢痛を自覚。近医を受診してMRI検査にて椎間板ヘルニアと診断された。SLRテスト陽性。アキレス腱反射減弱。」

問題133 痛みを評価する方法として最も適切なのはどれか。

1.CMI
2.ローランドモリス ディスアビリティ クエスチョナリー(RDQ)
3.ニューメリカル レイティング スケール(NRS)
4.ロールシャッハテスト

解答

解説

本症例のポイント

・24歳の男性(1か月前から右下肢痛)。
・診断:椎間板ヘルニア
SLRテスト陽性アキレス腱反射減弱
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× CMI(Cornell Medical Index)は、心の健康度を測るテストである。心身面の自覚症状を多数列記し「はい」「いいえ」の項目に本人が○を記入する方式のテスト。リウマチ患者の心のケアとして使われることがある。

2.× ローランドモリス ディスアビリティ クエスチョナリー(RDQ:Roland-Morris Disability Questionnaire)は、腰痛による日常生活の障害を患者自身が評価する尺度である。腰痛のために、「立つ」、「歩く」、「座る」、「服を着る」、「仕事をする」などの日常の生活行動が障害されるか否かを、「はい」、「いいえ」で尋ねる24の項目からなる。

3.〇 正しい。ニューメリカル レイティング スケール(NRS:Numeric Rating Scale)は、痛みを評価する方法である。NRS(numerical rating scale:数字評価スケール)では、0(痛みなし)~10(想像できる最大の痛み)の数字で11段階に区分し、現在の痛みの程度を示してもらう。

4.× ロールシャッハテスト(Rorschachテスト)は、投影法の人格検査である。10枚の図版 (いわゆるインクのシミ)を被験者に見せて、どのように見えるかを答えさせる。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題133、問題134の問いに答えよ。
「24歳の男性。1か月前から右下肢痛を自覚。近医を受診してMRI検査にて椎間板ヘルニアと診断された。SLRテスト陽性。アキレス腱反射減弱。」

問題134 障害神経根のデルマトーム領域に治療穴を求める場合、最も適切なのはどれか。

1.陥谷
2.太渓
3.殷門
4.束骨

解答

解説

本症例のポイント

・24歳の男性(1か月前から右下肢痛)。
・診断:椎間板ヘルニア
SLRテスト陽性アキレス腱反射減弱
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下

1.× 陥谷は、L5領域であるため。陥谷(※読み:かんこく)は、足背、第2~3中足骨間、第2中足指節関節の近位陥凹部に位置する。

2.× 太渓は、L4領域であるため。太渓(※読み:たいけい)は、足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部に位置する。

3.× 殷門は、S2領域であるため。殷門(※読み:いんもん)は、大腿部後面、大腿二頭筋と半腱様筋の間、殿溝の下方6寸に位置する。深部に坐骨神経が通る。

4.〇 正しい。束骨を実施する。なぜなら、束骨は、S1領域であるため。束骨(※読み:そっこつ)は、足外側、第5中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。
「68歳の男性。主訴は呼吸困難。体を動かすと呼吸が苦しくなる。樽状胸を呈し、痩せている。呼吸機能検査で1秒率の低下および胸部エックス線写真で肺野の透過性亢進を認めた。ブリンクマン指数は960。」

問題135 本症例の疾患で最も考えられるのはどれか。

1.気管支拡張症
2.肺癌
3.COPD
4.間質性肺炎

解答

解説

本症例のポイント

・68歳の男性(主訴:呼吸困難)。
・体を動かすと呼吸が苦しくなる。
樽状胸を呈し、痩せている。
・呼吸機能検査:1秒率の低下、胸部エックス線写真:肺野の透過性亢進を認めた。
・ブリンクマン指数:960
→喫煙指数 (Brinkman指数:ブリンクマン指数)とは、一日に吸うたばこの本数と喫煙年数をかけたものである。例えば、毎日1箱(20本入り)を20歳から吸っている40歳の人は、20本 × 20年 = 400となる。この数値が400を超えると肺がんを発症する危険性が高くなり、600以上は肺がんの高度危険群といわれている。

1.× 気管支拡張症とは、気道(特に中小気管支)が恒久的に拡張し、不可逆的な変化が生じる疾患である。主な症状は、咳・痰・血痰(喀血)である。原因は、先天的な原因や幼小児期の肺炎、繰り返す感染などで、気管支壁が壊れたり弱くなることにより生じる。異物を排除して感染予防に重要な呼吸器系の線毛の機能が低下するため感染が生じ易くなり、その結果、副鼻腔炎と気管支拡張症を生じる。また、線毛と関連して精子の鞭毛の異常を伴う。

2.× 肺癌とは、肺の気管支や肺胞の細胞が何らかの原因でがん化した病気である。肺がんは、肺細胞の遺伝子に傷がつくことで発生し、喫煙との関連が非常に深い。初期には自覚症状がないことが多く、他の呼吸器疾患との区別がつきにくい。主な所見として、咳、痰、血痰、発熱、息苦しさ、動悸、 胸痛などがあげられる。

3.〇 正しい。COPDが本症例の疾患で最も考えられる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
・増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
・減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

4.× 間質性肺炎とは、肺の間質組織の線維化が起こる疾患の総称で、慢性的かつ進行性の特徴を持つ。病因は、喫煙、職業上の曝露、感染、免疫不全などである。症状は咳、痰、呼吸困難などで、早期には特徴的な症状がないこともある。

 

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