第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前46~50】

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問題46 四肢の周径の計測で誤っているのはどれか。

1.上腕周径は上腕二頭筋部最大径で測る。
2.前腕周径は前腕部最大径で測る。
3.大腿周径は大腿部最大径で測る。
4.下腿周径は下腿部最大径で測る。

解答

解説
1.〇 上腕周径は、上腕二頭筋部最大径で測る。ただし、「上腕中点」で測定する参考書もある。

2.〇 前腕周径は、前腕部最大径で測る。測定方法として、腕を下垂させ、肘関節のやや下方の最大周径で拳をつくらないで測定する。

3.× 大腿周径は、「大腿部最大径」ではなく膝蓋骨上縁(または膝関節裂隙)から中枢10cm(または5、10、15、20cmと複数)で測る。ちなみに、膝関節伸展位(股関節屈曲・外転位)で測定する。

4.〇 下腿周径は下腿部最大径で測る。測定時の注意点として、下腿周径の測定時には、特別に下腿後面をベッドに密着させない。下肢全体をリラックスさせたうえで膝を軽度屈曲させ、下腿三頭筋がベッドに接触しないようにする。

 

 

 

 

 

問題47 下肢の徒手検査法はどれか。

1.アイヒホッフテスト
2.トムゼンテスト
3.アプレイテスト
4.ライトテスト

解答

解説
1.× アイヒホッフテスト(フィンケルシュタインテスト)とは、母指を握り込ませて手関節尺屈すると、陽性の場合手関節橈側の疼痛が増強する。狭窄性腱鞘炎が疑われる。de Quervain病とは、狭窄性腱鞘炎ともいい、短母指伸筋腱と長母指外転筋腱が原因で起こる腱鞘炎である。母指の使いすぎや妊娠出産期、更年期の女性に多く見られる。手首に腫れと痛みを伴い、母指を小指側に牽引したときに痛みが増強する。また、親指を握って尺屈すると疼痛が出現するフィンケルシュタインテスト(アイヒホッフテスト)で陽性となる。

2.× トムゼンテストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起きる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

3.〇 正しい。アプレイテストは、下肢の徒手検査法である。一般的にApleyテスト(アプレーテスト)といっても、アプレー・スクラッチテスト(Apley scratch test)やアプレー圧迫・牽引テストとApleyとつくテストがいくつかある。アプレー・スクラッチテスト(Apley scratch test)は、棘上筋腱の変性性筋炎を疑う。アプレー圧迫テストは下肢の半月板損傷、アプレー牽引テストは、下肢の側副靭帯損傷を疑う。

4.× ライトテスト陽性は、胸郭出口症候群において陽性となる。座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。

 

 

 

 

 

問題48 腸閉塞に特徴的な聴診所見はどれか。

1.グル音
2.捻髮音
3.水泡音
4.金属音

解答

解説

腸閉塞とは?

 イレウス(腸閉塞)とは、何らかの原因により、腸管の通過が障害された状態である。主に、①機械的イレウス(腸閉塞とも呼び、腸内腔が機械的に閉塞されて起こる)、②機能的イレウス(腸管に分布する神経の障害により腸内容が停滞する)に大別される。

①機械的イレウスには、器質的異常を伴うものをいい、単純性イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分類される。機械的イレウスは血流障害の有無によって、さらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分類される。絞扼性(複雑性)イレウスは、腸間膜血行の停止により腸管壊死を伴うイレウスであり、急激に病状が悪化するため緊急に手術を要する。

②機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

1.× グル音とは、消化管の運動によって生じる音であり、腹部を聴診すると聴こえる腸の活動音である。つまり、打診で聴くものではなく、聴診で聞くものである。蠕動運動に伴って出るゴロゴロという音を、慣習的にグル音や腸雑音(正確には腸蠕動音)と呼ぶ。

2.× 捻髪音は、硬くなった気道が、吸気時に急に開くときの、「パチパチ」という肺音である。聴取される代表的な疾患は間質性肺炎である。

3.× 水泡音は、気道内に溜まった分泌物が呼吸にともなう空気の移動で震えて破裂することで生じる肺音である。聴取される代表的な疾患は肺水腫や細菌性肺炎である。

4.〇 正しい。金属音は、腸閉塞に特徴的な聴診所見である。なぜなら、腸閉塞が起こると、腸管内のガスや液体が閉塞部位で滞留し、腸の蠕動運動が亢進するため。この状態では、腸が鋭く響く「チンチン」といった金属的な音が聞こえる。したがって、腸閉塞が進行すると、蠕動音が減少または消失することもある。

 

 

 

 

 

問題49 多毛症がみられるのはどれか。

1.クッシング症候群
2.ターナー症候群
3.甲状腺機能低下症
4.クラインフェルター症候群

解答

解説

副腎皮質ホルモン剤の副作用

副腎には、①副腎皮質と②副腎髄質からホルモンが分泌される。①副腎皮質ホルモンとは、副腎皮質より産生されるホルモンの総称で、①アルドステロン、②コルチゾール、③アンドロゲンがある。炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、免疫反応など広範囲の生理学系に関わっている。②副腎髄質からはアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。

副腎皮質ステロイドの副作用は、易感染、中心性肥満、満月様顔貌、高血糖、筋萎縮、赤色皮膚線条、多毛症、精神症状などがみられる。

1.〇 正しい。クッシング症候群は、多毛症がみられる。クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

2.× ターナー症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみ(翼状頸)があり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。女性特有の染色体異常である。

3.× 甲状腺機能低下症とは、胎児期または周産期に何らかの原因で甲状腺ホルモンの産生が不足したり、作用が不全になったりして、生まれつき甲状腺の働きが弱くなる病気である。全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

4.× クラインフェルター症候群とは、男性の性染色体にX染色体が一つ以上多いことで生じる一連の症候群で性染色体異常ある。高身長、やせ型、長い手足になることが多い。

 

 

 

 

 

問題50 脈拍について正しいのはどれか。

1.鉄欠乏性貧血では徐脈を呈する。
2.うっ血性心不全では頻脈を呈する。
3.甲状腺機能低下症では頻脈を呈する。
4.出血性ショックでは徐脈を呈する。

解答

解説
1.× 鉄欠乏性貧血では、「徐脈」ではなく頻脈を呈する。なぜなら、鉄欠乏性貧血では、酸素を運ぶ能力(鉄)が低下するため。したがって、体は酸素供給を補おうとして心拍数が増加し、頻脈が見られる。ちなみに、鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

2.〇 正しい。うっ血性心不全では頻脈を呈する。なぜなら、うっ血性心不全では、心臓が十分に血液を送り出せないため。したがって、体は心拍数を上げて血液循環を補おうする結果、頻脈が見られる。ちなみに、うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が弱まり、充分な量の血液を全身に送れなくなって、血液の滞留(うっ血)が起こしている状態である。 このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。BNPが 100pg/mL以上であることが診断基準である。

3.× 甲状腺機能低下症では、「頻脈」ではなく徐脈を呈する。なぜなら、甲状腺機能低下症では、代謝が低下するため。したがって、全体的な代謝が低下し、心拍数も減少する。ちなみに、甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

4.× 出血性ショックでは、「徐脈」ではなく頻脈を呈する。なぜなら、出血性ショックでは、大量出血により血液量が減少、血圧が低下し、これを補うために心拍数が増加(頻脈)するため。ちなみに、出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。
【ショックの診断】
・心拍数:100回/分以上
・呼吸数:22回/分以上
・低血圧(収縮期血圧90mmHg)、または通常の血圧から30mmHgの低下
・尿量:0.5mL/kg/時
・意識障害が見られる。

心不全

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

左心不全:呼吸困難(起座呼吸)、尿量減少など。
右心不全:頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など。

 

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