第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後81~85】

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専門基礎科目

問題81 中殿筋のMMTについて正しい組合せはどれか。

1.MMT1:中殿筋に筋収縮がみられる。
2.MMT2:重力に抗して股関節外転を保持できる。
3.MMT3:中等度の抵抗に抗して股関節外転を保持できる。
4.MMT4:高度の抵抗に抗して股関節外転を保持できる。

解答

解説

MMTとは?

徒手筋力テスト(MMT:manual muscle testing)は、筋力を測定するための方法のひとつである。筋収縮のまったくみられない場合「0」、正常を「5」として6段階で評価する。

0(Zero:ゼロ):「筋収縮のまったくみられない」状態である。
1(trace:不可):「関節の運動は起こらないが、筋のわずかな収縮は起こる。筋収縮がみえる、または触知できる」状態である。
2(poor:可):「重力を除けば全可動域動かせる」状態である。
3(fair:良):「重力に打ち勝って全可動域動かせるが、抵抗があれば行えない」状態である。
4(good:優):「ある程度、徒手抵抗を加えても、全可動域動かせる」状態である。
5(normal:正常):「強い抵抗(最大抵抗)を加えても、完全に運動できる」状態である。

1.〇 正しい。中殿筋に筋収縮がみられる場合、「MMT1」と評価できる。

2.× 重力に抗して股関節外転を保持できる場合、「MMT2」ではなくMMT3と評価できる。

3.× 中等度の抵抗に抗して股関節外転を保持できる場合、「MMT3」ではなくMMT4と評価できる。

4.× 高度の抵抗に抗して股関節外転を保持できる場合、「MMT4」ではなくMMT5と評価できる。

 

 

 

 

 

問題82 車いすのタイプで、起立性低血圧発作のある場合に用いるのはどれか。

1.リクライニングタイプ
2.スポーツタイプ
3.トラベラータイプ
4.スタンダードタイプ

解答

解説

起立性低血圧とは?

起立性低血圧とは、急に立ち上がったり、起き上がった時に血圧が低下し、軽い意識障害、いわゆる立ちくらみをおこすことである。機序として、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。

1.〇 正しい。リクライニングタイプが、車いすのタイプで、起立性低血圧発作のある場合に用いる。なぜなら、起立性低血圧が起きた場合、背もたれを倒して頭部を下げることで血圧を上げやすくし、症状を軽減できるため。リクライニングタイプの車いすは、背もたれの角度を調整でき、後ろに倒すことが可能である。したがって、座位で疲労しやすい人や起立性低血圧のある人、また、重症心身障害児などの姿勢変換が困難な人に勧められる。

2.× スポーツタイプは、軽量で操作性に優れ、アクティブに活動するための車いすである。

3.× トラベラータイプは、旅行や外出に便利なように折りたたみが可能で、軽量なものが多い。

4.× スタンダードタイプより優先されるものが他にある。なぜなら、スタンダードタイプの車いすは、一般的な用途で使われる車いすで、姿勢調整機能がないため。

 

 

 

 

 

問題83 一生続く姿勢反射はどれか。

1.自動歩行
2.モロー反射
3.パラシュート反射
4.非対称性緊張性頭反射

解答

解説
1.× 自動歩行は、1~2か月前後で消失する。自動歩行とは、脊髄の原始反射の一つであり、乳児を垂直に保持し足底を床につけ、その後、体を前に倒すとリズムよく足踏みする反射のこと。

2.× モロー反射は、4~6か月前後に消失する。Moro反射とは、原始反射の一つであり、頭を落下すると、手指を開き上肢を広げる。その後、上肢屈曲位に戻る反射のこと。

3.〇 正しい。パラシュート反射は、一生続く姿勢反射である。パラシュート反応は、生後7~9か月頃出現し、生涯続く。パラシュート反応とは、転倒するときに手が出るように、四肢伸展してけがを最小限にする反射である。

4.× 非対称性緊張性頭反射(ATNR)は、新生児期からみられ、4~6か月前後に消失する。頚部を回旋すると、顔面を向けた方の上・下肢が伸展、反対側の上・下肢が屈曲する。

 

 

 

 

 

問題84 右大脳半球の脳卒中でよくみられるのはどれか。

1.右片麻痺
2.球麻痺
3.失語症
4.左半側空間無視

解答

解説


1.× 右片麻痺は、「」大脳半球の脳卒中ではみられる。これは、錐体路が錐体交叉しているためである。ちなみに、錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

2.× 球麻痺は、延髄にある神経核が障害された状態を指し、舌咽・迷走・舌下神経が障害される。したがって、嚥下・構音障害、舌萎縮、線維束攣縮などがみられる。

3.× 失語症は、言語中枢がある「」大脳半球(左側頭葉や左前頭葉)の障害で起こる。

4.〇 正しい。左半側空間無視は、右大脳半球の脳卒中でよくみられる。左半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。右大脳は劣位半球にあたる。劣位半球頭頂葉が障害されると、①対側の半側空無視、②着衣失行、③病態失認が起こる。

 

 

 

 

 

問題85 体内力源式上腕義手について正しいのはどれか。

1.力源は患側の肩の力を利用する。
2.ケーブルによって力が伝達される。
3.操作の練習は主に理学療法士によって行われる。
4.手先具を動かす場合は肘継ぎ手の固定を解除する。

解答

解説

体内力源式とは?

能動義手には、①体内力源義手と②体外力源義手が存在する。
①体内力源義手とは、従来の「使える義手」のことであり、肩甲帯と体幹の動きを利用して、ハーネス・コントロールケーブルシステムを介して、切断者の身体の動きによって操作する。
②体外力源義手とは、動力義手とも呼ばれ、義手を操作する力源として切断者自身ではなく外部の力に依存するものである。筋電制御で行う筋電義手が代表的なものである。作業用義手は労働作業に適した機能を最優先した義手であり、外観にはとらわれない。手先具としては色々なものがあり、例えば双嘴鈎や曲鈎がある。
(※引用:「義手の可能性」著:陳 隆明より)

1.× 力源は、「患側」ではなく健側の肩の力を利用する。

2.〇 正しい。ケーブルによって力が伝達される。体内力源義手とは、従来の「使える義手」のことであり、肩甲帯と体幹の動きを利用して、ハーネス・コントロールケーブルシステムを介して、切断者の身体の動きによって操作する。

3.× 操作の練習は主に、「理学療法士」ではなく作業療法士によって行われる。
・作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職である。つまり、食事動作等、日常生活動作の回復が役割である。
・理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。つまり、関節可動域や筋力の向上などが役割である。
・義肢装具士とは、法律上、「医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」と定められ、医師の処方に従い患者さんの採型や採寸を行い、これを元に義肢装具を製作して、病院などで適合を行う。

4.× 手先具を動かす場合は、肘継ぎ手の固定する。肘継ぎ手が固定されていないと、手先具を安定して操作することが難しい。

 

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