第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後96~100】

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問題96 経脈病証で前胸部、心下部、腋下部の圧迫感、下肢内側の腫れや痛みがみられるのはどれか。

1.陽明胃経病証
2.太陰脾経病証
3.少陽胆経病証
4.厥陰肝経病証

解答

解説
1.× (足の)陽明胃経病証は、顔面神経麻痺、喉や膝の皿が腫れたり痛んだりする。胃腸が張る。気衝~髀関、足の甲と流注上に痛みや熱感が出る。食べても食べてもお腹が空き、濃黄色の小便が出る。びっくりして不安な状態になる。独り塞ぎこんで窓を閉め家の中に閉じこもっている。高い所に登って歌を歌いだす。羞恥心を無くしたように裸になって走り出す。また、六部定位脈診によると、脈が右関上に浮滑である場合、胃である。

2.〇 正しい。太陰脾経病証は、前胸部、心下部、腋下部の圧迫感、下肢内側の腫れや痛みがみられる。足の太陰脾経病証は、舌が強ばりやすくなり、食べるとからえずきし、胃の辺りが痛み、腹部が張ってよくゲップが出る。大便や放屁すると今まであった不快感がなくなり楽になる。身体全体が重くなる。舌本が痛み、身体が動かしにくく、食べた物がつかえてなかなか下に降りていかない。横になっても不快感や胸苦しさで寝付きが悪くなり、無理に立とうとすると膝の内側が腫れて引きつってくる。足の親指が動かしにくい。

3.× (足の)少陽胆経病証は、口苦が起こり、大きなため息をつく、寝返りが打てない。顔に少し垢が付いたように黒くなる。体の艶が無くなる。足外反しほてる。頭やエラの所が痛む。まなじりが痛む。首に結核性のリンパ節炎ができる。往来寒熱の状態になり、あらゆる関節が痛む。

4.× (足の)厥陰肝経病証は、腰痛が起こり、仰向けになったりうつ伏せになれなくなる。男性は睾丸が腫れ少腹が拘急疼痛し、婦人は少腹が腫れる。のどが乾き、顔面が垢がたまっている様に黒くなる。嘔吐や粥状の下痢をしたり、鼠径ヘルニア、小便失禁、尿開が起きる。

六経弁証

太陽病:外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮など。
少陽病:半表半裹証。発汗、寒熱往来、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦など。
陽明病:裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。
太陰病:裏虚寒証(初期)。食欲不振、腹部膨満感、水様便など。
少陰病:外感病の極期~後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。
厥陰病:外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢など。

 

 

 

 

 

問題97 脈診で左手関上「浮」に配当される臓腑の墓穴はどれか。

1.日月
2.関元
3.章門
4.石門

解答

解説

六部定位脈診

【部位】
①左:浮・沈
寸:小腸・心
関:・肝
尺:膀胱・腎

②右:浮・沈
寸:大腸・肺
関:胃・脾
尺:三焦・心包

1.〇 正しい。日月は、脈診で左手関上「浮」に配当される臓腑の墓穴である。左手関上「浮」=である。日月は、胆の募穴である。日月(※読み:じつげつ)は、前胸部、第7肋間、前正中線の外方4寸に位置する。女性では、鎖骨中線と第7肋間との交点に取る。

2.× 関元は、小腸の募穴である。ちなみに、関元(※読み:かんげん)は、下腹部、前正中線上、臍中央の下方3寸に位置する。

3.× 章門は、脾の募穴である。ちなみに、章門(※読み:しょうもん)は、側腹部、第11肋骨端下縁に位置する。

4.× 石門は、三焦の募穴である。ちなみに、石門(※読み:せきもん)は、下腹部、前正中線上、臍中央の下方2寸に位置する。

 

 

 

 

 

問題98 次の文で示す患者の病証でみられる舌象はどれか。
「43歳の男性。主訴は頭痛。めまい、目赤、胸脇苦満を伴う。最近、仕事上のストレスを抱えている。」

1.紫舌
2.紅舌
3.青舌
4.淡白舌

解答

解説

本症例のポイント

・43歳の男性(主訴:頭痛)。
・めまい、目赤、胸脇苦満を伴う。
・最近、仕事上のストレスを抱えている。
→本症例は、肝火上炎が疑われる。

1.× 紫舌は、血瘀の舌象である。血瘀の病証とは、疼痛(固定痛・刺痛、夜間に増悪)、腫脹、腫塊、肌膚甲錯。瘀斑、月経痛・血塊、皮下出血斑、色素沈着、紫舌・暗紅舌である。

2.〇 正しい。紅舌は、本症例の病証(肝火上炎)でみられる舌象である。肝火上炎は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などがみられる。

3.× 青舌は、実寒、陽虚(寒凝血瘀の重症)の舌象である。気滞血瘀とは、気滞(気の流れの滞り)と血瘀が同時に起こる病証である。気鬱(気滞)は、 脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感など。増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。

4.× 淡白舌は、気血不足、寒証の舌象である。気血虚とは、気虚(気の不足)と血虚(血の不足)が同時に起こる病証である。血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などである。

舌色

淡紅:正常、表証(外感病の初期)
淡白:気血不足、寒証
紅・絳:実熱、陰虚による熱証
青:実寒、陽虚(寒凝血瘀の重症)
紫(暗):血瘀 ※淡暗は気虚血瘀、暗紅は熱証、青紫は寒証、瘀斑・瘀点は血

 

 

 

 

 

問題99 難経六十九難により腎虚の補法を行う選穴部位はどれか。

1.上腕二頭筋腱外方の陥凹部、肘窩横紋上
2.手関節前面横紋上で、橈骨動脈拍動部
3.足内側、舟状骨粗面の下方、赤白肉際
4.太渓の上方2寸で、アキレス腱と長指屈筋との間

解答

解説

MEMO

腎の虚証(補法)の対象は、復溜・経渠となる。
・復溜(※読み:ふくりゅう)は、下腿後内側、アキレス腱の前縁、内果尖の上方2寸に位置する。
・経渠(※読み:けいきょ)は、前腕前外側、橈骨下端の橈側で外側に最も突出した部位と橈骨動脈の間、手関節掌側横紋の上方1寸に位置する。

1.× 上腕二頭筋腱外方の陥凹部、肘窩横紋上は、尺沢である。
肺の実証(瀉法)である尺沢(※読み:しゃくたく)は、肘前部、肘高横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部に位置する。上腕二頭筋の治療穴である。

2.× 手関節前面横紋上で、橈骨動脈拍動部は、大陵である。
心包の実証(瀉法)である大陵(※読み:だいりょう)は、手関節前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上に位置する。

3.× 足内側、舟状骨粗面の下方、赤白肉際は、然谷である。
腎経の栄火穴である然谷(※読み:ねんこく)は、足内側、舟状骨粗面の下方、赤白肉際に位置する。

4.〇 正しい。太渓の上方2寸で、アキレス腱と長指屈筋との間は、難経六十九難により腎虚の補法を行う選穴部位(復溜)である。
復溜(※読み:ふくりゅう)は、下腿後内側、アキレス腱の前縁、内果尖の上方2寸に位置する。

難経六十九難に基づく取穴

【部位】虚証(補法):実証(瀉法)
【肝】曲泉・陰谷:行間・少府・労宮
【肺】太淵・太白:尺沢・陰谷
【心】少衝・大敦:神門・太白
【腎】復溜・経渠:湧泉・大敦
【脾】大都・少府・労宮:商丘・経渠
【心包】中衝・大敦:大陵・太白
【胆】侠渓・足通谷:陽輔・陽谷・支溝
【大腸】曲池・足三里:二間・足通谷
【小腸】後渓・足臨泣:小海・足三里
【膀胱】至陰・商陽:束骨・足臨泣
【胃】解渓・陽谷・支溝:厲兌・商陽
【三焦】中渚・足臨泣:天井・足三里

 

 

 

 

 

次の文で示す患者について、問題100、問題101の問いに答えよ。
「31歳の女性。主訴は頭痛と肩こり。月経は不定期で月経時に頭痛が増悪し、下腹部痛も出現する。月経血に血塊がみられ、舌下静脈の怒張もみられる。」

問題100 本患者の痛みの特徴はどれか。

1.夜間に痛みが増悪する。
2.だるい感じの痛みが現れる。
3.冷やすと疼痛が軽減する。
4.痛む部位が移動する。

解答

解説

本症例のポイント

・31歳の女性(主訴:頭痛と肩こり)。
・月経は不定期で月経時に頭痛が増悪し、下腹部痛も出現する。
・月経血に血塊がみられ、舌下静脈の怒張もみられる。
→本症例は、血瘀が疑われる。血の病証である血瘀は、疼痛(固定痛・刺痛、夜間に増悪)、腫脹、腫塊、肌膚甲錯。瘀斑、月経痛・血塊、皮下出血斑、色素沈着、紫舌・暗紅舌があげられる。

1.〇 正しい。夜間に痛みが増悪する。本症例は、血瘀が疑われる。血の病証である血瘀は、疼痛(固定痛・刺痛、夜間に増悪)、腫脹、腫塊、肌膚甲錯。瘀斑、月経痛・血塊、皮下出血斑、色素沈着、紫舌・暗紅舌があげられる。

2.× だるい感じの痛みが現れるのは、主に湿邪の症状である。湿邪は、陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。

3.× 冷やすと疼痛が軽減するのは、主に火邪(熱邪)の症状である。火邪(熱邪)は、陽性の邪気で炎上性があり、気・津液を損傷する。また、生風、動血という特徴も持つ。

4.× 痛む部位が移動するのは、主に風邪の症状である。風邪は、陽性の邪気で軽揚性、開泄性、遊走性があり、他の外邪の先導役となる(百病の長)。

 

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