第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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問題61 中皮腫と関連するのはどれか。

1.塩蔵食品
2.アルコール
3.アスベスト
4.アセトアルデヒド

解答

解説
1.× 塩蔵食品は、胃癌と関連性が高い。胃がんの危険因子は、他にも、ヘリコバクター・ピロリ感染、アルコール、喫煙、遺伝などがある。 一方、リスクを下げるものとして野菜・果物、緑茶などがある。ちなみに、塩蔵品とは、魚介類など腐敗しやすい食品を食塩に漬けて細菌を繁殖させにくくし、長期保存できるように加工された食品である。塩蔵品には、塩蔵魚卵(たらこ、いくらなど)、塩蔵魚(めざし、塩サケなど)や塩辛、練りうになどがある。

2.4.× アルコール(アセトアルデヒド)は、口腔、咽頭、食道の発がんリスクが高まる。アセトアルデヒドとは、アルコールが体内で分解されてできる物質である。アルコールの分解酵素の働きが弱い人が多量飲酒すると、口腔、咽頭、食道の発がんリスクが高まる。

3.〇 正しい。アスベストは、中皮腫と関連する。アスベストは、中皮腫(悪性胸膜腫)の主要な外因である。悪性胸膜中皮腫とは、胸膜(胸部にある膜)の中皮細胞(中間層の細胞)ががん化した状態を指す。悪性胸膜中皮腫は、アスベスト(石棉)の長期曝露によって引き起こされることが多いが、他にも遺伝子変異や環境因子、慢性的な感染などが考えられる。症状として、胸水、胸痛、呼吸器系の症状、疲れなどがあり、進行性に重症で、治療は困難であることが多い。早期発見と、アスベスト露出を減らすことが重要である。

病因とは?

病因とは、病気の原因をといい、①内因と②外因に分けられる。

①内因とは、生体側の因子で,病気にかかりやすい準備状態を指す。内因のみでは病気は発現しない。内因は素因ともいう。
例:①生理的素因(年齢、人種、性など)、②病理的素因(個人的素因:皮膚癌を生じやすい紅皮症、アレルギー体質、糖尿病の易感染性など)

②外因とは、外部から生体に対し障害性に働くものをいう。
例:①栄養的外因(蛋白質過剰による痛風、ビタミンB1欠乏による脚気など)、②物理的外因(外傷、熱傷、放射線障害など)、③化学的外因(重金属中毒、医薬品、体内で産生されるエンドトキシン、アンモニア、アセトンなど)、④病原微生物(ウイルス、細菌、原虫など)

 

 

 

 

 

問題62 肺癌について正しいのはどれか。

1.死亡数は女性が多い。
2.骨転移はまれである。
3.小細胞癌が最も多い。
4.受動喫煙は危険因子である。

解答

解説

(※図引用:「最新がん統計」がん情報サービス様HPより)

1.× 死亡数は、「女性」ではなく男性が多い。なぜなら、喫煙率が男性で高いことが一因であるため。

2.× 骨転移は「まれ」とはいいがたい。肺がんが脳に転移する頻度は、全臨床経過では12.5~20.6%、剖検例では28~42%と報告されている。

3.× 「小細胞癌」ではなく非小細胞癌(腺癌)が最も多い。小細胞癌とは、肺がんの分類の一種で、肺がんの約10%を占め、肺がんの組織型の中では3番目に多いものである。 肺癌は、がんの組織の状態(組織型)によって、小細胞癌と非小細胞癌に分けられる。小細胞肺がんは、ほかの組織型と比べて進行が速く転移しやすいため、外科治療(手術)が可能な時期に発見されることは少なく、手術が行われることはまれである。発見した時には腫瘍やリンパ節転移が大きくなっていることが多く、根治することが難しいのが特徴である。タバコとの関係が強いがんのひとつで、気管支が分かれて肺に入っていく肺門(肺の中心部)に発生しやすいが、細い気管支が広がっている肺野どちらにも発生する。

4.〇 正しい。受動喫煙は危険因子である。なぜなら、肺がんの最大の危険因子は喫煙であるため。 喫煙者が肺がんになる危険性は、非喫煙者に比べ男性で4.8倍、女性で3.9倍である。非喫煙者でも、受動喫煙の影響により危険性が約1.3倍になるといわれている。

 

 

 

 

 

問題63 脂肪肝に関係ないのはどれか。

1.肥満
2.糖尿病
3.肝硬変
4.胆嚢ポリープ

解答

解説

脂肪肝とは?

脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に多くたまった状態である。原因としては、お酒の飲みすぎや肥満、メタボリックシンドロームなどである。初期は、ほとんど症状がないが、進行した場合は、①食欲不振、②体のだるさなどの症状がみられる。治療は、飲酒制限や食事療法、運動療法、減量に加えて、脂質異常症や糖尿病に対する薬物療法などがある。

1~3.〇 肥満/糖尿病/肝硬変は、脂肪肝に関係する。これらは脂肪肝の原因となりえる。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

4.× 胆嚢ポリープは、脂肪肝に関係ない。 胆嚢ポリープとは、胆嚢の粘膜に発生した、突起物のことで、大きさはほとんどが10mm以下、良性のものが多い。胆嚢ポリープの原因は不明であることが多い。

メタボリックシンドロームとは?

メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。

【診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上) 
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)

 

 

 

 

 

問題64 感染症に罹患しやすいのはどれか。

1.血友病
2.悪性リンパ腫
3.鉄欠乏性貧血
4.遺伝性球状赤血球症

解答

解説

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

1.× 血友病とは、血液を固めるのに必要な血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。伴性劣性遺伝(男児に多い)で、生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。治療として、凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーションが行われる。

2.〇 悪性リンパ腫は、感染症に罹患しやすい。なぜなら、免疫系に関与するリンパ組織ががん化することで、免疫力が低下するため。特に治療として行われる化学療法や放射線療法も免疫機能を抑制するため、感染リスクがさらに高くなる。ちなみに、悪性リンパ腫とは、血液細胞(血液中に存在する細胞)の中のリンパ球ががん化する病気である。一般的に、首や腋(わき)の下、脚の付け根などにあるリンパ節にしこりが生じる。進行した場合の症状として、発熱、体重減少、寝汗をかきやすくなるなどである。悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などによって70以上もの種類に分類されており、それぞれ症状や進行の仕方などの特徴が異なる。そのため、治療方針もさまざまである。治療では、放射線治療や薬物療法、造血幹細胞移植などが行われる。

3.× 鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

4.× 遺伝性球状赤血球症とは、赤血球膜の遺伝的異常により赤血球が破壊され、貧血を来たす疾患である。 赤血球破壊による貧血・黄疸と脾腫が主症状であるが、小児期に重度の貧血・黄疸で診断される重症例や成人期まで診断されない軽症例など、症状の出現時期や程度に個人差が大きい。

”血友病とは?”

血友病とは、血液を固めるのに必要な「血液凝固因子(第Ⅷ因子または第Ⅸ因子)が不足・活性低下する病気のことである。

【概念】
伴性劣性遺伝(男児に多い):生まれつき発症することがほとんどであるため、幼少期から①些細なことで出血する、②出血が止まりにくいといった症状が繰り返される。
血友病A:第Ⅷ凝固因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ凝固因子の活性低下

【症状】関節内出血を繰り返し、疼痛、安静により関節拘縮を起こす。(筋肉内出血・血尿も引き起こす)肘・膝・足関節に多い。鼻出血、消化管出血、皮下出血等も起こす。

【治療】凝固因子製剤の投与、関節拘縮・筋力低下に対するリハビリテーション

(※参考:「血友病」Medical Note様HP)

 

 

 

 

 

問題65 感染症について正しいのはどれか。

1.インフルエンザウイルス感染は迅速な検査が可能である。
2.麻疹は「三日ばしか」と言われている。
3.帯状疱疹は単純ヘルペスウイルスによる感染である。
4.梅毒はクラミジアによる感染である。

解答

解説

麻疹とは?

麻疹とは、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。

1.〇 正しい。インフルエンザウイルス感染は迅速な検査が可能である。一般的に、インフルエンザの検査には、迅速抗原検出キットが用いられる。この検査は、鼻腔や咽頭の分泌物を採取し、ウイルスの抗原を検出する。

2.× 「三日ばしか」と言われているのは、「麻疹」ではなく風疹である。風疹とは、風疹ウイルスに感染することで引き起こされる感染症である。俗に「三日ばしか」と呼ばれる。風疹ウイルスに感染してからおよそ2~3週間の潜伏期間を経て、発疹や発熱などの症状が現れる。ただし、症状がない、もしくは気付かないほど軽いこともある。一般的な症状として、発熱、皮膚の発疹、リンパ節の腫れ、関節痛などである。多くの場合、特別な治療をしなくても自然に治るため、症状を和らげる治療が行われるが、妊娠中に風疹にかかると赤ちゃんに悪影響が出ることもあるため、予防接種をすることがすすめられる。

3.× 帯状疱疹は、「単純ヘルペスウイルス」ではなく水ぼうそうのウイルスによる感染である。帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。

4.× 梅毒は、「クラミジア」ではなくスピロヘータ(細菌)による感染である。梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。

性器クラミジア感染症とは?

性器クラミジア感染症とは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾患である。感染症法下では4類感染症定点把握疾患に分類されている。感染機会があってから2〜21日後に外陰部の不快感、掻痒感等の前駆症状ののち、発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴って、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に出現する。

クラミジアとは?

クラミジアとは、日本国内で最も多い性感染症(STD)の一つで、クラミジア感染症とも呼ばれており、クラミジア・トラコマチスという病原体(細菌)が、性行為などにより粘膜に感染する。 感染した場合、クラミジア性尿道炎(男性)、クラミジア性子宮頚管炎(女性)、咽頭クラミジア(男性・女性)などの病気を引き起こす。また、出産時に母子感染する場合、分娩時の産道感染を引き起こす。出生後1週間前後に発症する結膜炎(目が赤くなり「目やに」の増加)、出生後1カ月前後には肺炎( 咳、哺乳力が低下)する。陽性者には内服薬(抗菌薬)を投与して治療する。ちなみに、淋菌感染症とは、淋菌の感染による性感染症である。淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅する。したがって、性交や性交類似行為以外で感染することはまれである。女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがある。米国ではクラミジア感染症とともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の主要な原因となっている。その他、咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、これらの部位も感染源となる。淋菌感染症は何度も再感染することがある。

 

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