第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 切迫性尿失禁に対して体性-内臓反射に基づいた治療穴として最も適切なのはどれか。

1.三焦兪
2.志室
3.中髎
4.中注

解答

解説

MEMO

切迫性尿失禁とは、膀胱が自身の意思に反して収縮することで、急に排尿したくなりトイレに行くまでに我慢できずに漏れてしまう失禁である。原因として膀胱にうまく尿がためられなくなる過活動膀胱が多く、脳血管障害など排尿にかかわる神経の障害で起こることもある。過活動性膀胱に対して、電気刺激療法や磁気刺激療法が有効とされる。

体性内臓反射とは、【求心路】が体性感覚神経、【遠心路】が自律神経系からそれぞれ構成される反射機構である。これは、皮膚に侵害性刺激(いわゆる痛み刺激)を加えると交感神経系の機能が亢進し、心拍数の増大、血圧の増加等が生じる反射である。

仙髄排尿中枢は、第2~3に位置する。

1.× 三焦兪(※読み:さんしょうゆ)
三焦兪は、腰部、第1腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

2.× 志室(※読み:ししつ)
志室は、腰部、第2腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。第12助骨端下縁の内方にあたる。

3.〇 正しい。中髎は、切迫性尿失禁に対して体性-内臓反射に基づいた治療穴である。
なぜなら、仙髄排尿中枢は、第2~3に位置するため。ちなみに、中髎(※読み:ちゅうりょう)は、仙骨部、第3後仙骨孔に位置する。

4.× 中注(※読み:ちゅうちゅう)
中注は、下腹部、臍中央の下方1寸、前正中線の外方5分に位置する。

 

 

 

 

 

問題132 次の文で示す症例に対して神経を介した治療部位として最も適切なのはどれか。
 「52歳の女性。1年前に子宮癌で摘出手術を受けた。転移はない。会陰部の痛みとともに、尿失禁も起こるようになった。」

1.上後腸骨棘と大転子頂点の中点の下方4cmの点
2.上後腸骨棘と坐骨結節下端内側を結ぶ線の上から50〜60%の点
3.仙骨角と大転子頂点の中点
4.尾骨先端と大転子頂点の中点

解答

解説

本症例のポイント

・52歳の女性。
・1年前:子宮癌で摘出手術。
・転移はない。
会陰部の痛み尿失禁も起こる。
→本症例は、会陰部の痛みに対し治療を実施する。会陰部の皮膚を支配するのは、陰部神経であり、S2~4の枝である。

1.× 上後腸骨棘と大転子頂点の中点の下方4cmの点は、坐骨神経の治療部位である。

2.〇 正しい。上後腸骨棘と坐骨結節下端内側を結ぶ線の上から50〜60%の点が、神経を介した治療部位である。
なぜなら、陰部神経の刺激点であるため。また、会陰部の皮膚を支配するのは、陰部神経であり、S2~4の枝である。

3~4.× 仙骨角と大転子頂点の中点/尾骨先端と大転子頂点の中点は、S1の領域である。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

問題133 次の文で示す症例の圧痛点に対する局所治療穴として最も適切なのはどれか。
 「20歳の女性。高校時代にバレーボール部の活動で前距腓靱帯損傷を繰り返し起こしていた。罹患靱帯のやや下方に圧痛と歩行時痛があり、近医で足根洞症候群と診断された。」

1.解渓
2.照海
3.申脈
4.丘墟

解答

解説

本症例のポイント

・20歳の女性(診断:足根洞症候群)。
・高校時代にバレーボール部:前距腓靱帯損傷を繰り返す。
・罹患靱帯のやや下方に圧痛と歩行時痛。
→足根洞とは、外果のやや前方にあるへこみの奥の部分である。足根洞には浅腓骨神経から分岐する中間足背皮神経の枝と、腓腹神経から分かれる距骨下関節枝の枝が分布し、脂肪組幟や骨間距踵靱帯には固有知覚を司ると思われる神経終末器官や神経自由終末が存在し、後足部の運動制御や知覚に重要な役割を果たしている。足根洞症候群とは、その足根洞に炎症が起こっている状態ことである。原因は、明確ではないが、距骨下関節嚢や骨間距盤戦帯とその周囲軟部組織の損傷による慢性滑膜炎を中心とした炎症と損傷部での修復機転による線維組織と神経終末の侵入、癒痕化による骨間距腫靭帯の機能不全などがあげられている。

1.× 解渓(※読み:かいけい)
解渓は、足関節前面、足関節前面中央の陥凹部、長母指伸筋腱と長指伸筋腱の間に位置する。内果尖と外果尖との中点にあたる。また、長指伸筋、長母指伸筋の治療穴である。

2.× 照海(※読み:しょうかい)
照海は、足内側、内果尖の下方1寸、内果下方の陥凹部に位置する。また、後脛骨筋、長指伸筋の治療穴である。

3.× 申脈(※読み:しんみゃく)
申脈は、足外側、外果尖の直下、外果下縁と踵骨の間の陥凹部に位置する。また、長腓骨筋、短腓骨筋の治療穴である。

4.〇 正しい。丘墟は、圧痛点に対する局所治療穴である。
なぜなら、本症例の疼痛部位などが合致するため。丘墟(※読み:きゅうきょ)は、足関節前外側、長指伸筋腱外側の陥凹部、外果尖の前下方に位置する。外果尖の前下方にあたる。また、長指伸筋の治療穴である。

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靴帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靴帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

 

 

 

 

 

問題134 より高次な生活能力を評価する指標(老研式活動能力指標)に含まれる項目はどれか。

1.髪を整える
2.衣服の着脱
3.階段の昇降
4.銀行預金の出し入れ 

解答

解説

老研式活動能力指標の質問項目(主に3項目)

①手段的自立(日用品の買い物ができますか、自分で食事の用意ができますか、請求書の支払いができますか、銀行貯金・郵便貯金の出し入れが自分でできますかバスや電車を使って1人で外出できますか)、

②知的能動性(年金などの書類が書けますか、新聞を読んでいますか、本や雑誌を読んでいますか、健康についての記事や番組に関心がありますか)

③社会的役割(友だちの家を訪ねることがありますか、家族や友だちの相談にのることがありますか、病人を見舞うことがありますか、若い人に自分から話しかけることがありますか)となる。

1~3.× 髪を整える/衣服の着脱/階段の昇降
これらは、基本的日常生活動作(ADL)に含まれる。主に、日常生活動作(ADL)を評価する尺度であるFIMやBarthel Indexに含まれる。ちなみに、FIMの評価項目は、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。

4.〇 正しい。銀行預金の出し入れは、より高次な生活能力を評価する指標(老研式活動能力指標)に含まれる項目である。
手段的日常生活動作に含まれる。手段的日常生活動作(IADL:Instrumental Activities of Daily Living)とは、日常生活動作(ADL)のなかでも、道具を使う、段取りを考えて行うなど、複雑で判断力を要する身体活動のことである。ADLは、①BADL(基本的日常生活動作)と、②IADL(手段的日常生活動作)に大別される。
①BADL:食事、排泄、入浴、整容など基本的な欲求を満たす身の回りの動作。
②IADL:買い物、洗濯、電話、服薬管理などの道具を用いる複雑な動作。

老研式活動能力指標

「手段的自立」
①バスや電車を使って一人で外出できますか
②日用品の買い物ができますか
③自分で食事の用意ができますか
④請求書の支払いができますか
⑤預貯金の出し入れが自分でできますか

「知的能動性」
⑥年金などの書類が書けますか
⑦新聞を読んでいますか
⑧本や雑誌を読んでいますか
⑨健康情報についての記事や番組に関心がありますか

「社会的役割」
⑩友人の家を訪ねることがありますか
⑪家族や友達の相談にのることがありますか
⑫病人を見舞うことがありますか
⑬若い人に自分から話しかけることがありますか

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。
 「18歳の男性。昨日雨に濡れ、その夜から悪寒、発熱、後頭部痛が出現した。脈は浮緊、舌は淡紅で薄白苔。咳、痰、鼻水はない。」

問題135 本症例の病証で最も適切なのはどれか。

1.肺気虚証
2.手太陰経脈病証
3.足太陽経脈病証
4.風寒表実証

解答

解説

本症例のポイント

・18歳の男性。
・昨日:雨に濡れ、悪寒、発熱、後頭部痛が出現。
・脈は浮緊、舌は淡紅で薄白苔。
・咳、痰、鼻水はない。
→本症例は、風寒表実証が疑われる。風寒表実証とは、風邪の風熱型で、発汗がないタイプ指す。実証とは、体力や抵抗力が充実している状態である。

1.× 肺気虚証
肺気虚は、無力な咳嗽・息切れ、倦怠感、鼻汁、痰、易感冒、自汗などがあげられる。

2.× 手太陰経脈病証
手の太陰肺経:あえぎ、咳、喉の痛み上腕、前腕の経所の流れる所が痛んだり、感覚異常が起きる。手の平が熱くなる。肩背が痛み、風寒の邪が襲ってくると汗が出る。小便が少しずつ出で回数が多い、もしくは小便がしばしば出てあくびをする。肩背が冷えて痛み、酸素不足の様な感じがする。尿の色が変わる。

3.× 足太陽経脈病証
足の太陽膀胱経:腰が折れる様に痛む。膝裏の辺りが引きつって結ばれたようになる。下腿三頭筋辺りが裂けるような感じがする。痔、マラリアまたはマラリア様の熱病、精神疾患、癇癪、頭頂部から項にかけて痛む。目が黄ばんだり、充血したり、涙が出たり鼻閉が起こり鼻血が出る。項から背部、膝裏まで流れる経脈の流注上が痛む。

4.〇 正しい。風寒表実証が、本症例の病証である。
本症例は、風寒表実証が疑われる。風寒表実証とは、風邪の風熱型で、発汗がないタイプ指す。実証とは、体力や抵抗力が充実している状態である。

MEMO

風邪の初期は、①風寒型、②風熱型の大きく2つの「証」に分けられる。①風寒型は、「青い風邪」ともいわれ、悪寒、発熱、頭痛、鼻水、関節の痛みなどの症状が見られる。その中でも、発汗の有無によって、「風寒表実証」と「風寒表虚証」に分かれる。

 

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