第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

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問題126 レイノー現象を呈する患者の局所へ低周波鍼通電療法を行う場合、最も適切なのはどれか。

1.八邪
2.四華
3.闌尾
4.四神聡

解答

解説

レイノー現象とは?

Raynaud現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。

1.〇 正しい。八邪が、レイノー現象を呈する患者の局所へ低周波鍼通電療法を行う。
奇穴の八邪(※読み:はちじゃ)は、手背、手を軽く握り、各中手指節関節の間の背側に取る。
【主治】頭痛、歯痛、手の痛み(中手指節関節の疾患、手の拘縮、関節リウマチ)

2.× 四華(※読み:しか)
四華は、紐を使い、背部に計4穴を取る。
【主治】呼吸器疾患(特に肺結核・喘息)、心疾患

3.× 闌尾(※読み:らんび)
闌尾は、足三里(胃)の下約2寸に取る。
【主治】急性虫垂炎

4.× 四神聡(※読み:ししんそう)
四神聡は、頭部、百会(督)を中心に前後左右それぞれ1寸の部に4穴を取る
【主治】頭痛、眩量、精神病、中風

鍼通電装置とは?

特殊鍼法である鍼通電は、鍼に低周波通電する方法で、鍼麻酔が代表的である。鍼の腐食を考慮し、3~5番鍼(20~24号銅)以上の鍼を用いる。通電(電気療法)は妊婦、ペースメーカー、知覚脱失、循環障害、重篤な動脈疾患、原因不明の発熱、強い皮膚病変などの患者には禁忌とされる。また、通電装置の出力に影響を及ぼすため、通電装置と超短波治療器あるいはマイクロ波治療器を近接して使用すべきではない。20号鍼(3番鍼)以上の太さが推奨される。病的共同運動には高Hz(100HZ)で行うとよい。

 

 

 

 

 

問題127 高齢者の歩行能力に対する鍼治療の効果を評価するのに最も適切なのはどれか。

1.RDQ
2.改訂PGCモラールスケール
3.ハミルトン評価尺度
4.タイムドアップアンドゴーテスト

解答

解説
1.× RDQ
RDQ(Roland-Morris Disability Questionnaire)は、腰痛による日常生活の障害を患者自身が評価する尺度である。腰痛のために、「立つ」、「歩く」、「座る」、「服を着る」、「仕事をする」などの日常の生活行動が障害されるか否かを、「はい」、「いいえ」で尋ねる24の項目からなる。

2.× 改訂PGCモラールスケール
改訂PGCモラールスケールとは、Lawtonによって開発された尺度で、「I:心理的動揺」「II:老いに対する態度」「III:孤独感・不満足感」を下位概念としたモラールを測定する尺度である。ちなみに、モラールとは、士気ややる気とも訳され、集団の目標達成のために積極的に貢献しようとする意欲・態度のことを表す。

3.× ハミルトン評価尺度
HRS-D(Hamilton rating scale for depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、うつ病にみられる17の項目についてその重症度を医療者が評価するものである。

4.〇 正しい。タイムドアップアンドゴーテストは、高齢者の歩行能力に対する鍼治療の効果を評価するものである。
タイムドアップアンドゴーテスト(TUG:Timed Up and Go Test)は、運動器不安定症の指標である。椅子から3m離れたところにコーンなどを置き、被検者が椅子から立ち上がりコーンを回って戻り再び椅子に座るまでの時間を測定する。下肢の筋力、バランス、歩行能力、易転倒性といった日常生活機能との関連性が高いことが示唆されている。ちなみに、カットオフ値は14秒程度である。

 

 

 

 

 

問題128 眼の疲労に対して下頭斜筋ヘ刺鍼する場合、最も適切なのはどれか。

1.玉枕
2.風池
3.大杼
4.頭維

解答

解説
1.× 玉枕(※読み:ぎょくちん)
玉枕は、頭部、外後頭隆起上縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸3分に位置する。後頭筋の治療穴である。

2.〇 正しい。風池は、眼の疲労に対して下頭斜筋ヘ刺鍼する。
風池(※読み:ふうち)は、前頸部、後頭骨の下方、胸鎖乳突筋と僧帽筋の起始部の間、陥凹部に位置する。深部に椎骨動脈が通る。頭板状筋、頭半棘筋、胸鎖乳突筋の治療穴である。ちなみに、後頭下筋群とは、後頭部から首を繋ぐ小さな筋肉(小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)をまとめた呼び方である。下頭斜筋の【起始】軸椎の棘突起、【停止】環椎の横突起、【作用】頭を後方に引いて直立位に保持する、【支配神経】後頭下神経(第1頚神経の後枝)である。

3.× 大杼
大杼(※読み:だいじょ)は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

4.× 頭維
頭維(※読み:ずい)は、頭部、額角髪際の直上5分、前正中線の外方4寸5分に位置する。前頭筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

問題129 次の文で示す症例について、身体診察でみられる可能性が最も高いのはどれか。
 「54歳の男性。半年前から右肩関節の疼痛が出現した。最近では疼痛は幾分軽減したが運動制限が顕著となった。ADLでは衣服の着脱が不自由であり、結帯動作の制限がある。医療機関で肩関節周囲炎と診断されている。」

1.ドロップアームサイン陽性
2.ルーステスト陽性
3.肩甲上腕リズム正常
4.エンドフィール明瞭

解答

解説

本症例のポイント

・54歳の男性(肩関節周囲炎)。
・半年前:右肩関節の疼痛が出現。
・最近:疼痛は幾分軽減したが、運動制限が顕著。
・ADL:衣服の着脱が不自由、結帯動作の制限。
→本症例は、肩関節周囲炎である。疾患の特徴をしっかり押さえておこう。肩関節周囲炎(五十肩)は、慢性炎症に分類される。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。

1.× ドロップアームサインは、「陽性」と断言できない
Drop armテスト(ドロップアームテスト)は、腱板損傷の検査である。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離すテストである。

2.× ルーステストは、「陽性」と断言できない
Roosテスト(ルーステスト)は、胸郭出口症候群で陽性となる検査である。腕を外転90度、外旋90度、肘を90度曲げた状態にし、この状態で指の曲げ伸ばし(グー・パー)を行う。これを3分間続けられなければ、陽性と判断する。

3.× 肩甲上腕リズムは、「正常」と断言できない
なぜなら、本症例は、半年前から右肩関節の疼痛が出現し、最近は運動制限が顕著であるため。肩甲上腕リズムについて、肩関節外転は、肩甲上腕関節のみでは外転90~120°までしかできない。これは肩峰と鳥口肩峰靭帯によって阻害されるためである。さらなる外転位をとるには、肩甲骨・鎖骨を動かすことにより可能となる。上腕骨の外転と肩甲骨の動きを合わせて肩甲上腕リズムという。肩関節を外転させていく際の肩甲上腕リズムの比率は「肩甲上腕関節:肩甲胸郭関節=2:1」である。

4.〇 正しい。エンドフィール明瞭が、身体診察でみられる可能性が最も高い。
明瞭とは、はっきりと見分け(認め)られることである。正常な最終域感(end feel:エンドフィール)は、①軟部組織の接近、②筋の伸張感、③関節包・靭帯の伸張、④骨性などがあげられる。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。つまり、③関節包・靭帯の伸張、④骨性に該当する。

肩関節周囲炎とは?

肩関節周囲炎(五十肩)は、慢性炎症に分類される。肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。肩関節周囲炎は痙縮期、拘縮期、回復期と分けられ、筋萎縮は拘縮期に肩甲帯筋の廃用性萎縮としてみられる。リハビリとして、Codman体操(コッドマン体操)を実施する。肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。

①痙縮期(約2~9か月):急性期で疼痛が主体となる。明らかな誘因はなく、肩の違和感や痛みで出現。運動時痛や安静時・夜間時痛が出現し、急速に関節が硬くなる。局所の安静、三角巾固定痛みの出る動作は避ける。

②拘縮期(約4~12か月):亜急性期で拘縮が主体となる。徐々に安静時痛・夜間痛は軽減しますが、肩関節は拘縮し、可動域制限が残りやすくなる。過度に動かすと強いつっぱり感が出現する。徐々に運動範囲を広げる(お風呂やホットパックでの保温、愛護的に関節可動域の拡大)

③回復期(約6~9か月):慢性期で、症状は徐々に改善する。可動域制限も徐々に回復し、運動時痛も消失する。積極的な運動(ストレッチング)を実施する。

 

 

 

 

 

問題130 局所治療穴として曲池が最も適切なのはどれか。

1.ティネル徴候陽性
2.ファレンテスト陽性
3.チェアテスト陽性
4.フローマン徴候陽性

解答

解説

曲池(※読み:きょくち)

曲池は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。

1.× ティネル徴候陽性
ティネル徴候の陽性は、正中神経麻痺(手根管症候群)が疑われる。Tinel徴候は、損傷神経を叩打すると支配領域にチクチク感や走感を生じる現象で、神経の回復状況を知る目安となる。機序は、末梢神経の切断後、近位端から軸索の再生が始まるが、再生軸索の先場はまだ髄鞘に覆われていないため起こる。絞扼性神経障害など神経の連続性が保たれている場合、Tinel様徴候とよばれる。

2.× ファレンテスト陽性
ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。1分以内の症状出現で、正中神経麻痺を疑う。

3.〇 正しい。チェアテスト陽性は、局所治療穴として曲池である。
Chairテストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、患者さんに肘関節伸展位のまま手で椅子を持ち上げてもらう。ちなみに、曲池は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。

4.× フローマン徴候陽性
Froment徴候(フローマン徴候)とは、尺骨神経麻痺の症状としてみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

 

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